帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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元の世界に帰ります

 イッセーside

 

 

 

 

「じゃあ、皆。忘れ物とかないか?」

 

 昨日の楽しい観光から一夜明け、俺達は帰宅の準備に取り掛かっていた。

 俺は皆の方に振り向き、忘れ物の有無を確かめる。

 

「あっ、ちょっと待ってイッセー。“リムル様キーホルダー”が何処かに……」

 

「……買いましたね……部長」

 

 どうやら部長はかなりの量のお土産を買ったみたいで、ぶっちゃけ鞄の中に入りきってない。

 

「リアスは観光好きですからね。遠出をすると、いつもこうですわ」

 

 そうなんだ。確かに部長の部屋って京都土産っぽいのが凄い数あったしな……。何だか部長の意外な一面を見たぜ。

 

「それにしても、相変わらずこの国は楽しいところだったな」

 

「本当よね。“スイーツコロシアム”で出されたお菓子もとっても美味しかったしね」

 

 父さん母さんは俺達がいない間大分満喫してたみたいだな。というか、“スイーツコロシアム”行ったの? 

 

「ええ。イッセー達が迷宮に行ってる間、セラちゃんといったのよ」

 

「特別にお菓子を提供してくれてさ……ああ、また食べたいな……」

 

「凄い美味しかったの!」

 

 迷宮に行ってる間か……いつの間に……。一応、昨日皆で吉田さんのケーキ屋行ったけど、スイーツコロシアムではいつもに輪をかけて豪華なスイーツが出てくるからな……。くそっ、俺も行きたかったぜ……。

 

「お待たせしました」

 

「あ、会長。匙も」

 

「よう、兵藤!」

 

 そうこうしていると会長と匙もこちらにやって来た。二人は部長達が迷宮に籠もっている間、学園にて学校の見学をしていたわけだけど……。

 

「あら? ソーナ、なんだが雰囲気が見違えたわね」

 

「こちらのセリフですよリアス。貴女も相当修行したようで……」

 

 部長の言う通り、会長と匙は目に見えてレベルアップしていた。纏う雰囲気も違うし、魔力の流れもいつもに増してスムーズだ。どうやら、会長もかなりの修行をしてきたようだな。

 

「ええ、“聖騎士(ホーリーナイト)”のリティスさんに水の扱いを習いました」

 

「あっ、リティスさんか!」

 

 なるほど、それなら納得だ。リティスさんは“十大聖人”屈指の水使い。それも凄まじい練度の技巧派だ。水を操る会長の長所を伸ばすのにこれ以上ない師となるだろう。

 

「となると、匙も“聖騎士”に?」

 

「おお、アルノーさんとレナードさんに色々と教えてもらったんだ」

 

 部長達がゴズールメズールと戦っている間に、会長と匙は“聖騎士”相手に修練を積んでいたってわけか。

 “十大聖人”は皆が皆最上級悪魔とも遜色ない力を持つ“仙人級”。そんな相手に修行を付けてもらったのであれば、会長達のレベルアップにも納得だな。

 

「なるほど。ソーナ達も強くなったってことね。でも、こっちだって負けないわよ」

 

「こちらも負けるつもりはありませんよ」

 

 バチバチと火花を散らす会長と部長。健全なライバル関係って感じがして凄くいいな。

 

「……ところで、お兄様は? 見た所、アザゼル先生もいないみたいだけど……」

 

「そういえば……」

 

 見ると、アザゼル先生にサーゼクスさん、セラフォルーさんにガブリエルさんといった重鎮の方々がいないようだ。

 別に帰るタイミングはいつでもいいからいいんだけど、どこにいるんだろう? 

 

「サーゼクス殿達を筆頭とした異世界の重鎮の方々は、まだまだ話し合いを残しているからな。そちらに戻るのは少しかかるだろう」

 

「あっ、ベニマルさん!」

 

 疑問に思っていると、俺たちを見送りに来てくれたベニマルさんが教えてくれた。何でも、サーゼクスさん達三大勢力が同盟を結んだのは、現時点ではテンペストのみ。

 他の主要な国々とも話し合い、今後の基軸世界との付き合い方の方針を共有するつもりみたいだ。

 

「なるほど……それでサーゼクスさん達は帰還のタイミングがずれると」

 

 でも、それだと転移門を多く使う分、神祖に察知される可能性もなくない? そう考えていると、それを察したベニマルさんが苦笑しながら答えてくれる。

 

「確かにお前の懸念も理解はできるさ。だが、問題はない。リムル様とヴェルドラ様の二重隠蔽が施された結界……聞いた所、お前達の家にも冥界とやらにつながる門が作られてると聞く。その起動と誤認させれば神祖にも気づかれないはずだ」

 

 ちなみにこの策はリムルの太鼓判も押されてるらしい。こういう時のリムルの案は基本的に外れることないし、問題はなさそうだな。既にソウエイさんとモスさんも家の警護してるはずだし。

 

「まあ、サーゼクスさんについてはわかったけど、ヴァーリは?」

 

「ヴァーリ? ……ああ、確かお前のライバルだったか?」

 

 ベニマルさんはどうやらヴァーリの行方は知らない……というか、そもそもヴァーリ自体をわかってないらしい。

 まあ、アイツここに来てすぐにヴェルザードさん相手に喧嘩売るとかいう頭沸いてることした後、すぐに何処かへ連れて行かれたからな……そもそも生きてるのか? 

 まあ、ヴェルザードさんも案外優しい(?)ところあるし、多分大丈夫だろう。

 ちなみにルフェイも、ヴァーリが戻ってくるまではアダルマンさん達のところで修行するつもりらしい。アイツも律儀な娘だよな。あんな良い子が妹とか、マジでアーサーが羨ましいっ!! 

 

「貴殿達も息子が世話になったな。改めて礼を言う」

 

「いえいえ、こちらこそ、アカヤ君と桜姫ちゃんには勉強させてもらいました」

 

 部長はそう言いながら、ミリキャスと接している子ども達を見つめる。皆随分楽しそうだな。

 

「息子達も新たな友ができて嬉しそうだな……」

 

「ええ。ミリキャスも凄く楽しそう……でも……」

 

「ええ。わかってるわ。ミリキャス、そろそろ元の世界に戻るわよ!」

 

「あ、はい。わかりました、リアス姉様……」

 

 グレイフィアさんは愛おしそうにミリキャスを見つめている。ミリキャスには今まで同年代の友達がいなかったらしいからな。その分、滅茶苦茶はしゃいでいたし、凄く名残惜しそうだ。

 

「お別れなんて寂しいですね。また遊びに来てくださいね」

 

「ぼ、僕もです! こ、今度は皆さんがグレモリー邸に遊びに来てください!」

 

 ミリキャスのやつ……あんな約束までして……。グレイフィアさんも困ったように苦笑している。

 何しろ、文字通り世界が違うからな……本来ならそう簡単に約束できる事柄じゃない。実際、ミリキャスも不安そうにチラチラとこちらを見てるくらいだしな。

 でも、いつもは年齢不相応なくらい、ちゃんとしているアイツが普通の子どもみたいにしてるわけだし、ちょっとくらいいいだろう。

 

「安心しろよミリキャス。あの門は自由に使っていいし、またいつでも遊びに行ける……勿論、逆もな」

 

 俺の言葉にミリキャスはパーッと明るい顔となる。ミリキャスだけでなく、子ども達皆が嬉しそうだ。何だか微笑ましい気持ちになるな。

 

「じゃあ、そろそろ帰るか……」

 

「ちょっと待つにゃ────っ!!!」

 

 瞬間、バァンと勢いよくドアから黒歌が現れた! そういえば黒歌のやつ、後から合流するとか言って、結局来なかったな……何かあったのか? 

 

「姉様、何やらお疲れのようですが……」

 

「にゃあ……ルイとギュンターの奴、私の“三公”の仕事をやらずに貯めてたんだにゃ……終わらせるのに苦労したにゃん」

 

 ああ、なるほど。聞いた話によると、ルミナスの命令で基軸世界に出向こそしたものの、黒歌の仕事自体は残っていたわけだ。もともと黒歌は怠け癖があり、ルミナスさんのメイド業以外の仕事はだいたいサボってたらしいからな……。しかも、その仕事をいつも二人に押し付けていたらしいし、今回はルイさんとギュンターさんの些細な報復といったところかな? 

 ……というか……。

 

「黒歌もなんか変わった?」

 

「ああ、ルイとギュンター……あと、ヒナタ相手に組手をひたすらやってたにゃん」

 

 ああ……なるほど。通りで“天魔大戦”時の雰囲気を纏ってると思った。

 あの大戦が終わり、平和な時代が十年以上続いていたからな……。俺も平和ボケしてたし、神祖と戦うためにも心構えをしっかりしないとだな。

 

「ヒナタ……名前からして日本人かしら? どんな人なの?」

 

 部長はどうやら気になってる様子。そういえば、ヒナタさんとは会ってなかったな。まあ、ずっと黒歌と鍛錬してたらしいし、会う機会ないか。

 

坂口日向(ヒナタ・サカグチ)。ルミナスさんの右腕と呼べる人で、実力的には黒歌を超えるルベリオスのナンバー2。この世界の人類最強候補にも挙げられる”勇者“ですよ」

 

「姉様より……そんな人もいるんですね……」

 

 黒歌より強いと聞いて、小猫ちゃんも戦慄してるな。実際、あの人滅茶苦茶怖いし、俺もできるなら関わりたくない。いいおっぱいしてるんだけど、滅茶苦茶近寄りがたいんだよな……。本能が警鐘を鳴らすレベル。原初とはまた違った強さがある。

 

「ま、納得だぜ。黒歌も黒歌で強くなったってことだな」

 

「イッセーもミッテルトも同じでしょ? 数日前より雰囲気が鋭くなっているにゃん」

 

「……ま、そうっすね」

 

 かく言う俺達もただ部長達の修行を見て過ごしていたわけじゃない。暇な時間は組手を行ってたし、ゼギオンさんと組手なんかしたりした。

 ミッテルトもアピトとクマラ相手に特訓してたし、お互いに相当レベルアップできたはずだ。

 

「……私は次こそメロウを仕留める。次アイツとやる時は()()を使うつもりにゃん」

 

「え? あれを使うの?」

 

「にゃ。母を弄んだメロウを確実に仕留めるため……封印していたあの力を解放するつもりだにゃん」

 

 あれとは黒歌の奥の手……”護猫之王“の禁じ手じみた奥義のことだ。黒歌が”悪夢の黒猫(ナイトメアキャット)“と呼ばれる由縁。確か、イヴェラージェとの戦いには使ってたけど、あれ以来は迷宮……それも、数えるほどしか使ったところを見たことがない。

 

「確かに、あの力ならメロウを仕留めることができるかもっすね」

 

「ルイとギュンターにも言われてね……あれを使えば負けはしなかったろうってね……」

 

 確かに……メロウとの初戦では黒歌は追い詰められてたわけだけど、あれを使えばメロウを楽に倒せただろう。でも、まあ、躊躇はするよな。あれを使えば……下手すれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わけだし。

 

「ま、黒歌っちなら制御もできるし問題ないっしょ」

 

「だな」

 

 ミッテルトの言う通り。実際、黒歌なら問題ないだろ。むしろ、あの状態の黒歌を相手することが確定したメロウが可哀想になるレベルだ。

 

「じゃあ、改めて帰るとしようぜ。俺たちの家に……」

 

 俺の言葉に皆は笑顔で頷き、魔法陣の上に乗り込んでいく。それを見たミリキャスは、涙を流しながらシンシヤ達と握手を交わし、魔法陣に乗る。子供たちも少し涙ぐんでるみたいだな。

 

「大丈夫だよミリキャス。またいつでも遊びに行かせてやるよ」

 

「ありがとうございます。イッセー兄様」

 

 力強く頷くミリキャスに満足し、俺は周囲を見渡す。この場の全員が魔法陣の上に乗ったことを確認し、魔法陣に魔力を流す。瞬間、視界は白で覆われた。

 

 

 

 

 ****************************

 

 アザゼルside

 

 

 

 

 

「ふう、柄にもなく緊張するね」

 

「なんだよサーゼクス。お前らしくもないな」

 

「あら? そういうアザゼル君だって、少し顔色悪いわよ☆」

 

 サーゼクスの呟きに苦笑して返すが、セラフォルーに見抜かれたように俺自身も相当緊張している。何せ、異世界の魔王様に重鎮共だ。会ったことも見たこともない強者達。はてさてどんな奴らがいるのやら……。

 

「ミカエル様の代理として、恥ずかしくないように振る舞わなくてはなりませんね」

 

「……うん。私もレヴィアタンとして、異世界の魔王たちにも負けられないわ☆」

 

 会議室の前に立ち、俺達は顔を見合わせ、扉を開ける。

 

 ギィ……ッ! 

 

 扉の向こうには人の良さそうな笑顔で座るリムルの姿。リムルは俺たちを見ると、笑顔で言う。

 

「よく来てくれました。サーゼクス殿にセラフォルー殿。アザゼル殿にガブリエル殿。どうぞ、着席ください」

 

 席に座ることを促され、俺達は席に座り、周囲を観察する。

 リムルの他にはあの時蟲の女王と死闘を繰り広げていたルミナス・バレンタインに迷宮の主であるラミリスの姿が見える。

 他にも褐色肌の西洋風鎧の男に、エルフの祖と瓜二つの女。見る限り魔王共には劣っているが、それでも各神話の主神級と比べても遜色ない力を持ってやがる。

 その隣に座るイッセー達と同じくらいの歳であろう、金髪の少年にいたっては、俺も思わずビビっちまうくらいの威圧感を放っている……。

 ……だが、真に恐ろしいのは魔王連中だ。

 

(あの眠りこけてるのが、恐らく堕天した”始原の天使“だろう。ただ眠ってるだけだっつうのに落ち着かねえな……)

 

 イッセーがミドガルズオルムのような奴と言っていたが、危険度が段違いだ。一見魔力はたいしたことないように見えるが、同じ堕天使だからこそわかる。オーフィスにだって引けを取らねえ力を持ってやがるな……コレは。

 

(あの金髪が魔王レオンか……そして、その横に座るのがダグリュール……)

 

 魔王レオンもヤバいがダグリュールはもっとヤバイ。アレは別次元。オーフィスをもぶっちぎってやがる。

 

 ガチャ……ッ! 

 

「よぉ、来てやったぜ……」

 

「来たぞ! リムル!」

 

「……ハハッ、マジかよ……」

 

 そこに入ってきたのは赤髪の悪魔と桃髪の少女。どちらもダグリュール以上の威圧感を放ってやがる。恐らく、コイツラがギィ・クリムゾンにミリム・ナーヴァなのだろう。ここまで来ると笑えねえな。

 

(イッセー達が強かった理由がよくわかったよ)

 

 こんな化け物共に囲まれてりゃ、そりゃ強くなるし肝も座るだろうな。

 ギィとミリムが着席したことを確認すると、リムルは立ち上がり、宣言する。

 

「……それでは、第一回の世界間会議を始めましょう」

 

 その一声で会議が始まる。世界間交流……神祖と戦うためにも、この会議は絶対に成功させる必要がある。負けてられねえな。

 俺は小さく首を振るい、真っ直ぐと前を見据え、会議を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 三人称side

 

 

 

 

 “冥府”────冥界の下層に存在する、地獄の底とも称される世界である。オリュンポスに属するこの場所は、生命の魂を司り死者の魂の選別が行われており、冥界に比べ、荒れ地が広がる生物の住むことのできない死の領域である。

 だが、現在冥府は荒れていた。近頃冥府の監獄に投獄された“堕天使”により、最上級を含む数多の死神が負傷し、その爪痕が今も残っていたからだ。

 そんな状況の冥府の宮殿に鎮座する何者かは来客が来たことを察し、存在しない瞳を動かす。その姿に肉は存在せず、司祭の着るような祭服に身を包んでおり、頭部にはミトラを被っている。その様相はイッセーが見れば、テンペストの幹部“アダルマン”を彷彿としただろう。

 

「……何奴だ?」

 

「……ここが冥界ですか……何だか辛気臭いところですね」

 

 玉座の主────“冥府の王”ハーデスは突如根城に現れし来客に問う。

 ローブに身を包んだその男は人を丁寧だがどこか人を小馬鹿にしたような口調でハーデスに話しかける。

 

「お初にお目にかかります。私、“禍の団英雄派”の者です。本日はお日柄もよく、ハーデス様に頼みたいことがあってやってきました」

 

 表面上は丁寧だが、その仕草はまるで友人とでも接するかのように自然。その態度が癇に障ったのか、道化師が被りそうな仮面をつけた“死神(グリム・リッパー)”が鎌を構え、英雄派だという男に突きつけようとした。

 

「貴様……ハーデス様に対して無礼ですよ……」

 

 道化の仮面をつけた最上級死神“プルート”は覚醒魔王に匹敵するその力を開放し、“魔王覇気”を放つ。だが、男はそれを見ても一切態度を変えようとしない。

 それを見たプルートは訝しげにしながらも無礼な人間の首を切り落とさんと鎌を突きつける。

 

「よい、プルート」

 

 ハーデスの言葉にプルートは覇気を霧散させ、即座に後ろに控える。ハーデスは眼の前の男を観察する。一見すると普通の人間。エネルギーも大したことはない。だが、ハーデスはその男の立ち振舞いに既視感を盛っていた。そして、今の覇気を平然と受け流したのを見て確信をした。

 

「……プルート。貴様達は下がるがよい」

 

「しかし……」

 

「構わん」

 

 ハーデスの言葉に不満げながらもプルートを筆頭とした死神達は忌々しげにしながらも神殿を後にする。

 

「よろしいんですか?」

 

 それを確認した男は周囲を見回し、意外そうに呟く。それを聞いたハーデスは愉快そうに笑い出した。

 

「ファファファ、その堅苦しい口調を止めよ」

 

 ハーデスの言葉に男は笑みを深め、フードを取る。そこにいたのは平凡な顔立ちの黒髪の男、しかし、その笑みからは異質なものを感じ取れる。それを確認したハーデスは()()()()()の来襲に懐かしいものを感じていた。

 

「気付いてたんだ。流石はハーデスさん」

 

「魂を刈り取る死神を誤魔化せると思うな。やはり貴様か────“ダイスケ”」

 

 ダイスケと呼ばれた男はこれまた愉快そうに宙に腰掛ける。そこには風によって形作られた椅子があり、彼はまるで冥府の王と同格であるかのように頰杖をかく。

 

「貴様が“英雄派”とはな……。何を企んでいる?」

 

「混沌と破滅。この世界を目茶苦茶にするのさ。英雄派に所属してるのは“禍の団”を監視するため……かな?」

 

「ファファファ、なるほど。世界を破滅させ、新たなる種族の世界を作るつもりか。“()()”の考えそうなことよ」

 

「この説明だけでそれだけわかるんだ。流石はハーデスさん」

 

「当然よ。で、貴様自信は何を望む?」

 

「そうだな……やっぱり可愛い子を集めてのハーレムかな? 知っての通り、僕って女の子が大好きだし……あ、そうだ。ハーデスさん可愛い女の子の魂とか持ってない? あったら欲しいんだけど?」

 

「黙れ」

 

 世間話のつもりだったが聞くんじゃなかったとハーデスは軽く後悔した。その視線はとっとと本題に入れと言っているようにも見える。それを察したダイスケは英雄派の主に頼まれた仕事をとっとと遂行しようと考える。

 

「まずは英雄派としての要件。“龍喰者(ドラゴン・イーター)”。あれを貸してほしいんだ」

 

 ピクリとハーデスの瞳が揺れる。

 

「……あれは“竜種”相手に効果はない。紛い物の竜を撃つだけのものだぞ?」

 

「わかってるさ。だから使う相手は“竜種”じゃない。紛い物の頂点に立つ“無限”さ」

 

 ダイスケの言葉にハーデスは暫し考えるように天を仰ぐ。やがて、ダイスケと改めて向き合い、答えを出した。

 

「ふむ……よかろう」

 

「あれ? もっと渋ると思ってたんだけど?」

 

「ファファファ、ここで断れば貴様は私と戦い力尽くで奪うであろう。流石にそれは御免被る」

 

「つまんないの。ハーデスさんとなら面白い戦いができると思ってたのに……」

 

 無論、ハーデスとしても簡単に負けるつもりもないが、眼の前の男の実力を知ってる身としては、断るほうが危険が高いと判断した。他神話からの批判は受けるであろうが、証拠も何も無い状況ではそれ以上のことはできまい。のらりくらりと躱せばいいとハーデスは考えていた。

 

「……で、神祖の弟子としての要件は?」

 

 重要なのは此方の方だ。それを聞いたダイスケは不気味な笑みを浮かべながら椅子を壊す、

 

「……ハーデスさん的には、今の世の中ってどう思う?」

 

 質問の意図を測りかねながらも、ハーデスは考え、やがて肉のない剥き出しの口で自らの考えを述べ始める。

 

「気に食わん」

 

 ハーデスはそう言いながら立ち上がり、ダイスケの方へと近づく。

 

「各神話間の和平? 笑わせる。ヴェルダナーヴァ様亡き今、そんなことをする必要はない。神がいなくとも世界は回る。ならば、神亡き今、世界をどうしようが余の勝手よ……」

 

 ハーデスは神話同士の和解を嫌っていた。それは一重にヴェルダナーヴァがいないからこそである。ヴェルダナーヴァ亡き今、世界は自分達神々の物とすればいい。それがハーデスの考えである。しかし、それはゼウスにポセイドンといったギリシャの神に諌められ、他の神話の神々にも殆ど聞き入れられなかった考え。

 故にハーデスは世界を自分とそれに準ずる神のものにするため、力を蓄えていた。

 しかし、聖書の神はそれを予期した。聖書の神は魔素の少なく、進化しづらい人類に神器という力をばらまき、危険な神々を抑えようと試みたのだ。

 

(聖書の神め……余計なことをしてくれたものよ……)

 

 神器の力は馬鹿にはできない。特に“神滅具“を持つ者は神にも比肩する力を持つこととなる。一部の“禁手”に至る者達もそれは同じであり、各神話間の牽制も相まり、ハーデスは迂闊に動けずにいたのだ。

 ここで各神話間の和平が進めば、危険な思想を持つハーデスはますます孤立し、動けなくなるだろう。

 

「やっぱりそうだよね。ハーデスさんはこの世界を自分たちのものにしたい。でも、それってこっちの目的とも通ずるものがあると思わない?」

 

 ダイスケはそう言うと大袈裟に手を広げる。

 

「……ねえ、ハーデスさん。こっちに来ない?」

 

 神祖高弟第11位にして、基軸世界()()の異世界人“田中大介(ダイスケ・タナカ)”は軽い口調で冥府の王を勧誘する。それに対し、冥府の王は深い笑みを浮かべるのだった。




これにて「物置部屋のテンペスト」編は終了となります。
ミッテルト対イッセーを書いたらしばらく書き溜めするので、次の章はだいぶ先になると思います。
寛容な心で待っていただければ幸いです。

イッセー対ミッテルト

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