ミッテルトside
「しかし、すごいわねミッテルトは……。水の精霊ウンディーネを倒しちゃうだなんて……」
「ははは、あざーす」
イッセーが竜王のいるという山に行っちゃったんで、うちはうちで使い魔になってくれそうな魔物がいないか探すことにした。
面白いと思ったのが今倒したウンディーネっすかね……。見た目はごつくてリティスさんが使役していた
思念をぶつけて念話で会話してみるとうちとは真逆で数千年前の魔素だまりからこっちに来ちゃった下位の精霊が修練を積み進化した存在だったそうっす。
そんなことあんの!?と思ったっすけど、数千年前は始原の七天使が異界に旅立った時期と合致してるし、それの巻き添えをくっちゃったと思うと納得できるっすね。
ちなみに肉弾戦を好むのは変な進化しちゃったせいで変質しちゃって精霊魔法の使用が困難になったからだそうっす。
魔素量も上位精霊に比べると少なく、中位精霊にも見劣りしている。
その代わり肉体の強度が高いから、B+ランクくらいはありそうっすね……。
今のグレモリー眷属と戦っても一対一なら勝てそうだ。
「ところでミッテルトはこの精霊たちを使い魔にするつもりなの?」
「いや、もうちょっと考えさせてもらうっす」
ただ、使い魔にするかといわれると悩まざるを得ない。
面白いけど……、なんていうか……、その……、見た目が趣味じゃない。
うちもこう、可愛い系の魔物を使い魔にしたいっす。
見るとウンディーネは少しショックを受けている。
使い魔になる気満々だった様子……。
まあ、会話ができるうえ、向こうの世界のことを話せる唯一の存在だから、仕方ないかもしれないっすけど勘弁してほしいっす。
ごめんっす!
いつかラミリス様に合わせてあげるから許してほしいっす!
そう思考をぶつけると、素直に引き下がってくれた。
その感情からは喜びが感じられる。
ラミリス様に会えるかもというのがそんなにうれしいようだ。
「ん?」
空気が変わった。
見ると部長達も変化に気づいたのか辺りを見回している。
すると次の瞬間……、
ド──ン
凄まじい衝撃音が森に響いた。
どうも、イッセーの向かった山から出てる様子。
「な、なんて衝撃なんだ!?」
「これほど離れているのに吹き飛ばされてしまいそうですわ!」
「う……」
「キャア!?」
「……凄まじいわね」
「こいつはとんでもないぜぃ!」
見ると部長達はなんとか耐えてるけどしんどい様子。
ザトゥージさんも少し冷や汗かいている。
……仕方がないな……。
うちは衝撃から身を守るための結界を展開する。
「こ、これは!?」
「うちが張った結界っすよ。危ないんででないでくださいね」
多分件の竜王とイッセーが戦ってるんだろう。
籠手を使ってないっぽいけどイッセーのことだからなんやかんや勝つと思うし気楽に待とう。
そう考え、うちは持ってきた煎餅を貪った。
*******
イッセーside
「ハア、ハア……。流石竜王。やるな……」
「それはこっちのセリフよ。貴方、本当に人間?ドライグの力も借りずにこれは流石に予想外よ」
今俺は“
理由は俺の力が鈍っていることを実感したからだ。
レイナーレに放った奴の攻撃、多分以前の……天魔大戦あたりの俺なら普通に間に合っていたんじゃないかな?
あの時は生き残るために必死で鍛練してたからな……。
ところが今は平和な学生生活に
たまにミッテルトと訓練することもあるが、迷宮とは違って全力戦闘なんかは出来ないでいる。
次奴と対峙したときそんな状況では殺される。
そう考えた俺は戦闘の勘を取り戻すため、あえてドライグに頼らず戦っているわけだ。
自慢の翼で飛翔するティアマットさん。対して俺は
ランガの
「すごいわね。どうやって空中に足場なんか作ってるのかしら?」
ティアマットさんは何らかの力で空中に足場を作ってることに驚いている。が、話ながらも躊躇いなくブレスを吐き出す。
当たったら只じゃすまなそうだ。
ティアマットさんの存在値は71 万2862と覚醒魔王に限りなく近い力を持っている。迷宮を守護している四人の竜王と大体同じくらいと言えばその驚異度がわかるだろう。
竜王最強は伊達じゃないってことか……。
駆け引きもかなり上手いし
基本的には爪と牙、それからブレスで攻撃してくるわけだが、絶妙なタイミングでフェイント入れたりかと思えば苛烈と表現するほどの激しい攻撃繰り出したりと……。
想像以上に骨がおれる相手だ。多分四人の竜王より強い。正直ここまでとは思わなかったな……。
だからこそ、修行相手にちょうどいい!
俺は力一杯ティアマットさんの顔をぶん殴る。
「ぐっ!」
かなり効いたのか、苦悶の声をあげるティアマットさん。
しかし、苦悶の声をあげつつも攻撃するのは流石としか言いようがない。
後ろから迫る巨大な爪を俺は受け止める。
「ぐぎぎ……」
すげえ力だ!ティアマットさんは自らの力を完璧に制してやがる。
存在値では俺が上でも巨大さも相まってかなり堪える。
なんとか爪を弾くと今度は死角から放たれた尾の一撃が俺を弾く。
天盤を作成しに着地するとティアマットさんはその瞬間を狙って魔方陣から炎の魔法を放つ。
「くっ……」
すかさず気闘法を発動し、腕を強化。
炎の攻撃を受け流し、後方へと逃がしてやった。
チラッと後ろを見るとかなり轟々と燃えている。
危ない危ない。
「まさか炎を受け流すなんて……、長き時を生きているけどこんなの見たことないわね」
「お褒めに与りどうもありがとうございます。ついでにもうひとつとっておきを見せてあげますよ!」
その言葉にティアマットは警戒するように攻撃の密度を上げる。
それを俺はギリギリで回避し、眼前にたつ。
魔力を拳に集中させ、その拳を解き放つ。
「くらえ!“
その攻撃はティアマットさん本人には無害。
しかし、ティアマットさんの体を覆っていた魔力の防御結界は粉微塵に弾けとんだ。
「なっ……!?」
これが俺の権能、
俺の
それは服だったり、鎧だったり、結界だったり、魂を覆っている呪いでさえも解除することが出来る。
まあ、あの二人の堕天使を覆った呪いは究極の権能によるもので、なおかつかなりの熟練度なため、今の俺では解除できなかったんだが……。
だが魂を束縛するほどの呪いならばともかく、身を覆う結界を破壊する程度なら訳はない。
この力は究極保持者にも届くため、結構重宝するんだよな……。
なにせ、身を守る結界がなくなれば、防御力は極端に下がるのだから。
「ヴェルドラ流闘殺法“魔竜崩拳”!」
結界を失い、無防備となったティアマットさんに俺は渾身の一撃を叩き込む。
この技はウルティマの聖覇崩拳を師匠がアレンジした技でかなりの破壊力を持っている。
「なめるな!!」
決まったと思ったら、ティアマットさんは自らの翼を盾にしながら後方へと飛んだ。結界が破られ、動揺したにもかかわらず、魔力を一点に集中させ、自らの肉体そのものの防御力を上げているようだ……。
すげえ!土壇場でこんな対応してくるなんて……。
後方へ飛び、威力を逃がしたためか、翼はボロボロになっているものの、他の部分は無傷だ。
「すごいな……」
『これがティアマットだ。昔から二天龍と吟われた俺でさえ、苦戦するほどのドラゴンだったからな……』
封印される前のドライグが苦戦するとは相当だ。
そんなことを考えていると、ティアマットさんは愉快そうに笑っていた。
「本当にすごいわね……。正直なめてたわ。まさか、ドライグの力も借りずにここまでやるだなんて……。数万年前のあの人たちを思い出すわ……」
ん?あの人たち?
誰のことだ?ドライグわかる?
『知らん!』
不思議そうにしていると、ティアマットさんは愉快そうに話してくれた。
「あれは、三大勢力の戦争が始まる遥か前のことよ……。
まだ、今の魔王達が生まれておらず、ミカエルやアザゼルすらまだ子供だったほどの大昔、一人の人間が私に挑んできたの……」
その男は自分が貯めこんでいると噂のお宝を求めてやって来た人間だったらしい。
それまでもにたような奴は何人もいたらしいが、皆ティアマットさんが燃やし尽くしたという。
その時も深く考えず、いつもの調子で愚か者を焼き付くそうとティアマットさんは考えたそうだ。
ところが、その人間はとんでもない力で自分と互角に闘い、三日三晩の死闘の末、とうとう自分を打ち倒したらしい。
彼女はその男が使っていた技に興味を持ち、男と男と共にいた青髪の女性に弟子入りしたらしい。
……青髪の女性?
話によると、その青髪の女性はこことは異なる世界から来た異世界のドラゴンらしく、この世界最強の存在であるオーフィスやグレートレッドというドラゴンよりも遥かに上の力を感じたという。
その人たちと共に過ごしたのは数十年くらいだったらしいが、とても濃密で楽しい時間だったらしい。
……それって。
「あの?ひょっとしてその青髪の女性ってヴェルグリンドって名前だったりしない?」
「あら、貴方、ヴェルグリンド様を知っているの!?あの御方はあの人が寿命で死んでから、別の世界に行ってしまった筈なんだけど……」
間違いない!その男ってのは多分ルドラの転生体の一人だ。
そりゃ強いに決まってるわな。
「俺も異世界に行ったことがあってな、ヴェルグリンドさんの実の弟、ヴェルドラ師匠に技を教わったんだ」
「え!?」
その言葉を聞いてティアマットさんは目を見開く。
するとワナワナと震えだし、大きな声で笑いだした。
「アッハハハ!まさか、そんな偶然があるだなんてね……。そう、あの御方の弟君のお弟子さんだったの……。強いわけね……」
一通り笑うとティアマットは再び俺と向き合い、妖気を高める。
「いいわ。ヴェルグリンド様の弟子である私と、弟君の弟子である貴方、どちらの力が上か真向勝負で決着つけましょう」
「望むところだ!」
俺も闘気を全開にしてその力を拳に込める。
ティアマットさんも全ての妖気をブレスに込めているようだ。
……あれ?これって俺たちはともかく、森や山とかに被害が出たりしないか?
そうなったら、部長たちでは危ない気がするぞ……、大丈夫かコレ!?
そんなことを考えると、ティアマットさんは察してくれたのか答えてくれる。
「安心しなさい。この辺りは私が作った結界で覆われているわ。すくなくとも、貴方のお友達たちに被害はでないでしょう」
「あ、そうなんですね……」
よかった。それなら安心だ。
俺たちは改めて向かい合い、闘気を高める。
しばらく向かい合っていたが、ついにその時がやってくる。
「喰らいなさい!“
「ヴェルドラ流闘殺法“
互いの技が激突する。その威力から嵐が吹き荒れ、業火が舞う。
凄まじい炎が俺を焼く。しかし、俺は構わず貫手を繰り出す。二つの攻撃は拮抗していたが、ついに俺が炎を掻き分け、ティアマットさんに貫手をぶつける。
「ぐっ……」
しかし、ティアマットさんは負けじと炎を強くする。
炎に耐性をもつティアマットさんは自分の炎で自分を焼くなんてミスはしない。
凄まじい炎が俺を襲い、鋭い貫手がティアマットを貫く。
こうなると我慢比べだ。
やがて二つの極大なエネルギーは爆散し、激しい爆発が巻き起こった。
「ぐっ!!」
「うわぁ!!」
吹き飛ばされた俺はボロボロな体に鞭打ちながらも立ち上がろうとする。
砂埃が落ち着き、視界が開く。
目の前には倒れ伏すティアマットさんの姿があり、ボロボロになりながらも俺はなんとか立ち上がることが出来たのだった。
「ゲホ、流石ね……。本当にあの人みたいだわ……。ボロボロになりながらも私に打ち勝って見せたあの人みたい……」
「いや……、かなりギリギリですけどね……」
ここまでのダメージ食うとは思わなかった。いつ倒れてもおかしくない大怪我である。
まあ、それはティアマットさんも同じか……。
倒れ、血を吐きながらも心の底から嬉しそうなティアマットさん。
すると、ティアマットさんはボロボロの体に鞭打つように立ち上がり、宣言する。
「この勝負、私の負けよ。約束通り、貴方の使い魔になってあげるわ」
ティアマットさんは人間の形態へと変化する。
その姿はヴェルグリンドさんみたいな青い長髪にこちらも青いチャイナドレスを着ている。そのスリットから覗く生足がめちゃくちゃエロい。
「……何を見てるの?」
「あ、いえなにも……」
勘も鋭いな……。ヴェルグリンドさんににて凄まじい美女だ。どことなく似てるし正直ヴェルザードさんよりも姉妹っぽい。というか……。
「人型になれるんですね」
「まあね。ヴェルグリンド様に授かった青龍刀もあるし、こっちの姿での戦闘も自信あるわよ」
なるほど、ヴェルグリンドさんの弟子である以上人型での戦闘も得意としてると……。
さっきの龍形態より強そうだな……。
ヴェルドラ流闘殺法はどちらかというと対人格闘技だし、人型相手の方が得意なんだが、それでも人型のほうが苦戦しそうである。下手したら負けるかも……。
なんで人型にならなかったんだろう?
「先程の戦闘はあくまで試練だからね。正直人型にならなくても楽勝と思っていたし……」
曰く、先程の戦闘では人型になる暇がなかったんだと……。
まあ、かなりの激戦だったしな……。
取り敢えず休憩できたことでお互いに歩けるレベルには回復したため、部長のもとに戻ることにした。
ちなみにティアマットさんに肩を貸してもらったんだが、胸が当たってめっちゃ至福でした。
「少しスケベなところもあの人そっくり……」
ティアマットさんは呆れたようにそう呟いたのだった。
*******
「……まさか本当に竜王を連れてくるだなんてね……」
「俺も驚いたぜぃ!」
部長たちのもとに戻り、ティアマットさんを紹介すると皆驚いたような表情を浮かべている。
というか、若干引いているようだ。
「貴女がサーゼクスの妹さんね。話は聞いているわ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
少し冷や汗かきながらもティアマットさんと握手をする部長。
次にティアマットさんはミッテルトと視線を合わせる。
どうやら一目見ただけでミッテルトの強さに気づいたようだ。
「貴女がミッテルトさんね。イッセー君から聞いたわ。後で話したいことがあるんだけど、いいかしら?」
「あ、ハイ。いいっすよ」
ミッテルトにはまだティアマットさんがヴェルグリンドさんの弟子であると伝えていないので、どんな反応するか楽しみである。
ちなみにアーシアも使い魔を獲得していた。
小さくて可愛いドラゴンである。
「まさか
心が清い者にしか懐かない……か。
流石はアーシアだ。心が綺麗なんだな……。
……で、ミッテルトは……。
「あれ?お前使い魔は?」
「いや……、いいのがあんまいなくて……」
その言葉と同時に泉から異様に筋肉ムキムキの謎精霊が現れた……ってなにこれ!?
「ウンディーネ……らしいっす」
いや、嘘だろ!?
明らかに違うじゃん!?
しかもよく見ると向こうの世界の精霊に非常によくにてる。
どゆこと!?
「まあ、使い魔云々はともかく友達ということで……」
なるほど、これを使い魔にするのは気が引けるってことか……。
まあ、俺も嫌だ。
ミッテルトの使い魔探しは後日ということでひとまず俺は使い魔契約を行うことにする。
使い魔契約をするための紅い魔法陣が展開され、ティアマットさんがそのなかに入る。
「兵藤一誠の名において命ず。汝、我が使い魔として契約に応じよ!」
ティアマットさんがそれに応じると魔法陣の光が一瞬強くなり、消えていく。
「これでいいのか?」
「ええ、これからよろしくね。イッセー君」
こうしてティアマットさんが俺の使い魔になったのだった。
ティアマット
EP 71万2862(青龍刀+100万)
種族 竜王
加護 灼熱竜の加護
称号
ユニークスキル
思考加速、魔王覇気、空間操作、業炎
数万年の時を生きる五大竜王最強の存在。
数万年前、ルドラの転生体と闘い、敗れ、彼の技に興味を持ち、彼の弟子となる。
ヴェルグリンドにも師事してもらい、竜形態と人型形態両方の戦闘技術が極めて高い水準となっている。(竜形態と人型形態では、人型形態の方が強いらしい。)
竜形態では炎のブレスを得意としており、人型ではヴェルグリンドより授かった
その鍛え抜かれた
この青龍刀は彼女の宝物であり、使わずとも大抵の相手には勝てるため滅多に出さず、知っているものはほとんど存在しない。(同胞の五大竜王も知らない。)
覚醒こそしてないものの、その
ルドラ(転生体)とヴェルグリンドと共に過ごした時間は数十年。彼女にとっては短く、しかし今なお鮮明に思い出せるほど楽しい時間だったらしい。
また、数十年もの間ヴェルグリンドの妖気に当てられた影響からかユニークスキルも持っている。
あれ?究極使ってこんなもの?と思った読者もいるでしょうが、今回イッセーは究極の権能を攻撃に上乗せをしていません。
使ったのは空飛んでるティアマットに近づくための足場を作るため空間操作したことと洋服崩壊くらいです。(洋服崩壊はともかく、足場作るのは別にユニーククラスでも出きる芸当です。)
それが原因で今回苦戦したって感じです。
まあ、それ抜きにしてもティアマットの戦闘技術が異常なまでに高かったというのも原因の一つですが…。
なお、素でも聖人に進化しているイッセーは普通に覚醒魔王級の力を持っています。ぶっちゃけ覚醒前のカリオンや、迷宮の竜王よりこの強化ティアマットさんのほうが強いです