帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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狐少女の襲撃です

 イッセーside

 

 

 

 

 

 “幻獣族(クリプテッド)”。

 “滅界竜”イヴァラージェの力を受け継ぐ直属の系譜。

 ゼギオンさんやアピト達“蟲魔族(インセクター)”の起源でもあり、その姿は多種多様。

 その中でも魔王に匹敵する力を持つ“幻獣族”こそ、“九頭獣(ナインヘッド)”。九尾の狐とも称される種族でもあり、クマラ────そして、目の前の少女の種族。

 それが、何故かとてつもない殺意を俺に放ちながら、眼前に立ち塞がっている! 

 

「しかし、驚いた。京都の妖怪のボスは九尾の狐って話だったけど……本当に“九頭獣”だったのか……」

 

 でも、考えてみればそりゃそうか。あらゆる世界で暴威を振りまいたというイヴァラージェの系譜である“幻獣”が他の世界に誕生しないなんて道理はない。

 黒歌と小猫ちゃんにも幻獣種の血が色濃く流れてるのは知ってるし、直系である“九頭獣”がこの世界にいてもおかしくはないか。

 なんて思ってると獣耳の少女は俺を激しく睨み、吐き捨てるように叫ぶ。

 

「余所者め! わけのわからんことを……っ! かかれっ!」

 

 少女の掛け声と共に林から山伏の格好で黒い翼を生やした頭部が鳥の連中と、神主の格好をして狐のお面を被ったやつらが現れる! 

 あの鳥は天狗か? モミジさんとはまるで違うけど、気配は似ているな。

 つーか、いきなり何!? 話し合いもなし!? そんなにヤバいことしたのか俺!? ただ頂上に来ただけなのに!? 

 

「おいおい、そんなにここ来ちゃ駄目なとこだったの!? なら、さっさと帰るから取り敢えず落ち着いて……」

 

「黙れ余所者がっ! 母上を返してもらうぞ!」

 

「はあ!?」

 

 母上!? どういうこと!? 

 俺は困惑しながらも襲ってくる烏天狗と狐面達の攻撃をいなす。

 

「何いってんだ!? お前の母親なんか知らないぞ!」

 

 てっきりこの場に来たことがコイツラの琴線に触れたのかと思ったけど、そうでもないみたいだ。

 マジでこいつの母ちゃんなんか知らん! そもそも俺たちは京都に来て数時間しか経ってないっての! 

 しかし、少女は問答無用のようだ! 

 

「嘘を付くな! 私の目は誤魔化しきれんのじゃ!」

 

 誤魔化してないんですけど!? 京都に着いて早々なんだってんだ! 

 アザゼル先生のいたずらから始まり、今のところ碌なことないぞ! 

 

 ギンッ! 

 

 誰かが烏天狗の錫杖を弾く。烏天狗は錫杖ごと吹き飛ばされ、俺の前に二つの人影が舞い降りる。

 

「どうしたんだ? イッセー」

 

「何々? 妖怪さんよね?」

 

 ゼノヴィアとイリナだ。二人共先ほどお土産屋で買ってた木刀を手にしている。

 少し遅れてアーシアも駆けつけてきたようだ。

 そんな俺達の様子を見て、少女一行様達は驚き、怒りを一層深めてやがる。

 

「……そうか、お前達が母上を……もはや許すことはできん! 不浄なる魔の存在め! 神聖な場所を汚しおって! 絶対に許さんぞ!」

 

 何もしてないんですけど!? なんなんだよマジで……訳がわからねえ……。

 そんな殺気立つ妖怪の皆々様を見て、ゼノヴィアは大きく頷きながら木刀を構える。

 

「フッ、よくわからんが面白い。ミッテルトの愛刀と同じものがここに売ってるのは僥倖だった。この木刀の錆にしてくれる!」

 

「ええ! この木刀の力! 思い知るといいわ!」

 

 おいおい! 何ノリノリになってるんだこの阿呆二人! 

 そ、そういえば、木刀を見た時ミッテルトと同じ刀だとか言ってはしゃいでたなコイツ等……。

 でも、ここは焦ってはいけない。取り敢えず、大人な対応をするか……。

 

「なあ、あんたら。一体何だったんだよ? よくわからないけど、まずは話し合いをだな……」

 

「問答無用っ! 母様を返せっ!」

 

 うん、駄目でした。どうやら話し合いに応じる気は毛頭ないようだ。

 こうなったら、取り敢えずこの場を凌ぐしかないか……。

 

「……アーシア。取り敢えず、結界貼っといてくれ」

 

「は、はい」

 

 アーシアは“祈の護符”を取り出し、結界を張る。

 自分の周りには退魔の結界、そして天狗達には気付かれないよう周囲に“衝撃吸収領域(アンチショックエリア)”を展開してる。

 

「流石アーシア。成長したな」

 

「ありがとうございます。イッセーさん」

 

 何やら相手は敵意を向けてるが、ここは京都。彼女達の領域であり、俺達は部外者だ。

 どれだけ理不尽だろうが、相手や周囲の物を傷つけると面倒くさいことになりかねん。

 だからこそ、アーシアも“衝撃吸収領域”を選択したのだろう。

 これは、物理攻撃の衝撃を九十九%遮断するという優れモノであり、斬撃にも有効だ。

 これで、ゼノヴィアやイリナが木刀で相手を殺してしまう……なんてことは起こり得ないだろう。

 

「感謝するよアーシア。これで全力で戦える!」

 

「さあ、行くわよ!」

 

 そう言いながら、ゼノヴィアとイリナは木刀で無双を開始する。

 ゴズールメズールとの戦いを経て、さらに動きが洗練されてるな。

 今の二人なら、あの程度の使い手敵ではないだろう。

 俺? 俺は今も烏天狗達の攻撃をいなし続けてる。躱し、受け流し、たまに反撃。

 “衝撃吸収領域”もあるし、俺自身大した力はいれてないのであまり効果はないだろうけどな……。

 

「がはっ!?」

 

 あ、吹き飛んだ。加減ミスったかな? まあ、フラフラながら立ち上がったし、大した怪我ではない様子だけど……。

 

「くっ、なんて結界だ!」

 

 烏天狗と狐面達は全く動かないアーシアに狙いを定め、アーシアに攻撃を仕掛ける! 

 でも、アーシアの結界はコイツラ程度の使い手が破壊できるものではない。

 しかし、本当にアーシアは成長したな。結界の中からじっと烏天狗達の攻撃を見据えてやがる。その瞳からは、恐怖や不安は微塵たりとも感じられない。いつ結界が破られても、即座に回避ができるように構えてるうえ、俺達の状況も魔力感知で俯瞰して見てるようだ。多分、俺達の誰かが怪我を負ったら即座に回復できるようにしてるんだろうな。

 

「油断大敵だ! はあっ!」

 

「えいっ!」

 

 ガガギィィィィンッ!! 

 

「かっ……!?」

 

 結界を破壊しようとしていた烏天狗達にゼノヴィアとイリナの鋭い一撃が入る! 

 木刀とは言え、斬撃は“衝撃吸収領域”でも完全に防げるわけじゃないので、烏天狗達は悶絶しながら吹っ飛んでいった。

 それを見た少女は俺達が格上であると認識し、後方に退いていった。

 少女は俺たちを憎々しげに睨んだあと、手を挙げて烏天狗と狐面に合図を送る。

 

「……撤退じゃ。今の戦力ではこ奴らに勝てぬ。邪悪な存在め、必ず母上を返してもらうぞ!」

 

 少女はそれだけ言い残すと、一陣の風とともに消え去った。

 一体何だったんだ? 

 俺達は構えを解きつつも、この意味不明で理不尽な襲来に困惑していた。

 

「私が追跡して調べておくわ」

 

「……わかった。アザゼル先生にもそう言っとくよ」

 

 音もなくトーカが降り立ち、俺にそう言う。トーカは頷くと、再度気配を消し、彼女達の後を追った。

 ────猛烈に嫌な予感がする。

 俺は旅の幸先を不安に思いながら、松田達のもとに戻るのだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 

『ごちそうさまでした』

 

 俺たちはホテルの夕食を終え、一息ついていた。

 帰ってから、アザゼル先生とロスヴァイセさんの二人に事を報告すると、やはりというかなんというか、二人共揃って困惑していた。

 そりゃそうだ。

 事前に俺達が京都旅行することは、ここを統べる者たちに伝えてあるはずなんだから。

 先生はもう一度確認を取ると言って姿を消した。

 部長に報告することも考えたけど、余りにも情報が不足しすぎてるんだよな。

 部長の事だから、こっちに飛んできかねないし、暫くは喋らないほうがよさそうだ。

 トーカもいるし、ジウにも連絡は行き届いているはず。何かわかればすぐにでも連絡してくれることだろう。俺は役に立てそうにないから、そういうのは上役や隠密の皆さんに一任することにした。

 

「……さてと」

 

 頃合いだろう。

 俺はその場で立ち上がり、部屋の扉を静かに開ける。左右確認、誰もいないな。

 よしよし、俺は音と気配を殺しながら、部屋をそろりと抜け出し、階段の扉を開ける。

 ……この時間帯、女子たちが大浴場でお風呂タイムのはず! ならば、覗くしかあるまい! くくく、楽しみだぜ! 

 どうやら、ロスヴァイセさんが非常階段を見張っているようだが、俺ならば問題はない。

 気配を遮断しつつの空間転移! これなら、ロスヴァイセさんに気づかれることなく大浴場へ……

 

「悪いけど、見張りは彼女だけじゃないわ」

 

「げっ!? ジウ!?」

 

 空間転移の座標を設定しようとしたタイミングで、ジウが後ろから俺の肩を掴み、話しかけてくる! 

 それに気づいたロスヴァイセさんも、一気に階段を駆け上がり、俺の方へと飛んでくる! 

 

「貴方がお風呂場に行くことなんて、最初から分かりきってたことです。でも、私じゃ防ぎ切ることができないこともわかっていたので、ジウさんに頼んで正解でしたね」

 

 クソッ! ぬかった! ジウが覗き防止にスタンバってるとなると、話は変わってくるぞ! 

 ジウは暗殺者であると同時に卓越した魔力と精霊に愛される才能を持つ“精霊使い(エレメンタラー)”! 

 空属性の精霊の力を借りれば、空間転移の察知など朝飯前だろう! 

 

「まさか、ジウを味方につけるとは……」

 

「ええ。悪いですけど、私は教師! どんな手を使ってでも、教師として、女生徒の裸は私が死守します!」

 

 俺はジウの拘束を解き、飛び上がりながら、階段を下る。

 

「ロスヴァイセさん……ジウ……いくら仲間でもコレは譲れない。俺は女風呂を覗きます」

 

「な、なんて澄んだ瞳を……」

 

「……相変わらず清々しいまでのド変態ね。気持ち悪いわ」

 

 ジウはそう言いながら、レイピアを取り出し、ロスヴァイセさんも魔力を放出する。

 

「とおっ!」

 

 ババッ! 

 

 俺とロスヴァイセさん、そしてジウの戦いが非常階段にて火蓋を切る! 

 ホテルでは派手な戦闘などできないため、攻撃は控えめ。

 それでも、気迫は実戦のそれと大差がない! 

 

「くっ! 鋭い攻撃ですね! それに……重い……!」

 

「貴女にはまだ荷が重いわ」

 

 俺の一撃を受け止めながら、ロスヴァイセさんは歯を食いしばる。そして、ロスヴァイセさんと入れ替わるようにジウがレイピアで俺を攻撃してきた! 

 

 ガガギィン! 

 

 ジウのレイピアと俺の拳が交差する! 

 

「全く、呆れて物が言えないわね。ほとんど毎日赤髪達の裸体を観てると言うのに、まだ物足りないと言うの?」

 

「それはそれ! これはこれなんだよ!」

 

 軽口を叩きながらも、俺とジウの攻撃はどんどん速度を増していく! これ以上はホテルにも負担になるかもしれない! 

 

「言っときますけど、私もいるんですからね!」

 

 そう言いながら、ロスヴァイセさんは氷の魔術を使い、隙を縫って俺に攻撃してくる! 

 くっ、これはマズイ! 本気を出せない現状じゃ、いずれ攻撃を喰らっちまうかもしれない! 攻撃を喰らうと隙ができて、ジウに更なる連撃を使われるから、非常にまずい状況だぞ! 

 

「ちなみにですが、私たちを突破しても、シトリー眷属の二年生の方々が見張ってます。通路内ではここよりもさらに動きが制限されるので、お風呂を覗くことは困難ですよ!」

 

 クソッ! 既に陣形は整っていたのか! 流石はロスヴァイセさんにシトリー眷属だぜ! 

 こうなったら、無理やりにでも隙を作るしかないか……。

 

「少しは見逃してください! そのくらい寛容じゃないと、彼氏なんてできませんよ!」

 

「かかかかかかかか、彼氏のことは関係ないじゃないですか! ど、どうせ私は処女のヴァルキリーですよ!」

 

 バチッ! バチッ! 

 

 涙目になりながら、非常階段を揺らすほどの魔力を出すロスヴァイセさん! 

 

「もう許しませんからね!」

 

 かかった! ロスヴァイセさんは縦横無尽の雷の魔力を放ち、俺を襲おうとする! 

 

「くっ! 冷静に……」

 

 ジウは慌てて言うが、もう遅い。こうも密着した状態では、ジウも電撃を食らってしまう! ジウは慌てて回避しようとするが、俺はそのジウの背に隠れ、彼女の肩を鷲掴みにする! 

 

 バチバチィィッ! 

 

「くっ!」

 

「あ、し、しまった! ご、ごめんなさいジウさん!」

 

 高い自然耐性の聖人と言えど、突然電気攻撃を喰らえば隙もできる! 俺はジウを盾にすることで雷を回避し、ジウ……そして、ロスヴァイセさん用に貯めていた魔力を一気に解放した! 

 

「バラバラになれぇ! “洋服崩壊(ドレスブレイク)”!」

 

 怯むジウ。慌てて駆け寄るロスヴァイセさん。その一瞬の隙を突き、俺は二人の服に一気に魔力を送り込む! 

 すると、ジウの服とロスヴァイセのジャージがビリビリッと豪快な音を立てて弾け飛んだ! 

 

「くっ……」

 

 ジウの慎ましくも美しい裸体! ロスヴァイセさんのナイスプロポーション! どっちも最高だ! 

 ジウも見事だが、ロスヴァイセさんも凄い! 初めてお目にするロスヴァイセの裸体は美しい美脚にくびれた腰! 芸術品のような美しさだ! 

 そこまで考えて俺はハッとする。

 恥部を隠しながら真っ赤な顔で俺を睨みつけるジウに、涙を流すロスヴァイセさん。これは……やりすぎたな……。

 

「う、うぅ……」

 

「ご、ごめんなさい……つい」

 

「ついで済ませるつもりですか!? あのジャージ、特売で買ったもので、今買うと三倍はするんですよ! 下着だって安い時に買ってきたんだから!」

 

「いや、そっちなの!?」

 

 思わずジウも素で驚いてる! 裸見られたことより服の方!? 

 

「はっ、や、ヤダ! お嫁にいけなくなっちゃいます!」

 

「いや、今頃ですか!?」

 

 そこまで叫んで思い出したかのように裸体を隠すロスヴァイセさん! 順序が逆で流石に戸惑うぞ! 

 

「今頃ってなんですか!?衣類をバラバラにするのがどれだけもったいないことか!貴方の技は環境に優しくありません!先生そういうのは許しませんよ!資源は尊いんですから!」

 

ドレスブレイク自体じゃなくて、破壊されたものの尊さを語られた。こんなの初めてだ。ロスヴァイセさんは環境を大事にしてる人なんだな……。

 

「……なんか、ズレてるわねこの人」

 

おいジウ。俺も思ったけど口に出すんじゃない。

ジウは空間収納で閉まっていた予備の衣服をいそいそと着ながら呆れた目でロスヴァイセさんを眺める。

なんていうか……もはや、女風呂どころじゃなくなったな……。

 

「あー、楽しんでるところすまない」

 

そこにアザゼル先生がやってきた。秘書であるレイナーレとトーカも後ろにいる。

トーカがいるということは……どうやら先ほどの騒乱について何かわかったようだな。

 

「何かわかったんですか?」

 

俺の問いかけにアザゼル先生はポリポリと頭を掻きながら、頷く。

 

「ああ。取り敢えず、俺とお前たちに呼び出しがかかってる。近くの料亭に来い」

 

「呼び出し?誰から?」

 

俺が聞くと、先生は笑みを浮かべながら言う。

 

「魔王少女様だよ」

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