イッセーside
俺とグレモリー眷属、イリナにトーカ、ジウ達は夜にホテルを抜け出し、先生先導のもと街の一角にある高級そうな料亭の前に立っていた。
「この料亭にセラフォルーさんがいるわけか……」
どうやらこの世界の魔王の一角、セラフォルー・レヴィアタン様が京都に来ているらしいのだ。
俺達はそのセラフォルーさんからお誘いを受け、ここに来たというわけだ。
中に通され、和の雰囲気が漂う通路を抜けるの個室が現れる。
戸を開けると、そこには着物姿のセラフォルーさんと────同じく着物を身に纏う“原初の白”テスタロッサさんとルベリオス最強の騎士、
「ハーロー! 赤龍帝ちゃん、リアスちゃんの眷属の皆! 魔国以来ね☆」
「久しぶりねイッセー殿。その他の皆様も初めまして。私、テンペストの“外交武官”テスタロッサと申しますわ。どうぞよろしくお願いします」
「ルベリオス所属“聖騎士団団長”の坂口日向よ。よろしく頼むわ」
いつもながらのテンション高めのセラフォルーさん。淡々と挨拶をするテスタロッサさんとヒナタさん。どうやら相変わらずのようだ。
「……なるほど、“原初の悪魔”ってやつだな。見た感じから察するに、“
どうやら、既に向こうの知識も仕入れているらしいアザゼル先生はテスタロッサさんの正体にいち早く気づいた様子。それに対して、皆は驚きつつも納得してるみたいだ。
まあ、テスタロッサさん只者じゃない雰囲気が漂ってるしな……。
「ヒナタ……というと、黒歌の言っていたルミナス様の右腕か……なるほど、凄まじい威圧を感じるね」
ゼノヴィアはヒナタさんをマジマジと観察しながら冷や汗をかいている。見ると、イリナと木場も同じような反応をしているし、同じ聖なる力を使う剣士として、ヒナタさんの力を感じ取りやすいのかもしれないな。
「よ、よお、兵藤も来たのか」
匙とシトリー眷属の二年生女子。どうやら先に来てたみたいだな。
「よう匙。京都はどう? 午後何処か行った?」
「こちとら生徒会だから今日は先生の手伝いで終わったよ……というか、よく来てくれたな」
嬉しそうにする匙。どうやら、お偉いさん二人の纏う空気に息が詰まる思いをしてた様子だ。大変なこって。
まあ、それはいいとして、“騎士”の巡さんに“戦車”の由良さん、“僧侶”の花戎さんと草下さん。シトリー眷属の女子たちも綺麗な子が滅茶苦茶多いよな〜。生徒会一人の匙が羨ましいぜ!
「考えてることが丸わかりよ。変態ドラゴン」
「真面目な話するんだから自重しなさい」
うっ! ジウとトーカに考えを読まれたか! 見ると、アーシアも目をうるうるしてるし、ゼノヴィアも何やら訝しげに考え込んでいる様子。
そんな俺達に気にせず、セラフォルーさんとテスタロッサさんは箸を進めている。
「ここのお料理とても美味しいの。特に鳥料理が絶品なのよ☆テスタロッサさんにヒナタさんもどうですか?」
「あら? でしたらいただきましょうか」
「ええ。どれも美味しそうだわ」
「どうぞどうぞ! 赤龍帝ちゃん達も匙君達もたくさん食べてね♪」
俺たちが席に着くなり、セラフォルーさんはどんどん料理を追加していく。
うん、美味い。確かにコレは絶品だ。シュナさんが見れば嬉々としてレシピを解析するんだろうな……。
「それで、セラフォルーさんとテスタロッサさん、あとヒナタさんはどうしてここに?」
俺の問いかけにセラフォルーさんは横チェキをして答えられる。
「今回ここに来た目的は二つ! 一つは京都の妖怪さん達と協力体制を得るため……もう一つはテスタロッサさん達テンペスト陣営との連携の強化♪ 今回はお互いをよく知りましょうってことで、一緒にお食事に来ていたの☆」
「私自身、リムル様の故郷であるこの国には興味があったし、妖怪陣営とやらの動向も無視はできない事柄なのよ。私達と組むにしろ組まないにしろ、見ておくことは損ではないわ」
「私も同じよ。ルミナス様の命で三大勢力との連携を強化するために来たの。特に日本は私の故郷、文化を知ってる分、交渉もしやすいでしょ?」
つまり、外交ということだ。
そういえば、セラフォルーさんも魔王の中でも外交面が担当だと言ってたっけ。確かに、観光名所である京都であれば、テンペスト、ルベリオスの面々との連携を強めつつ、妖怪陣営とも協力体制をとる交渉も捗るだろうな。
ところが、セラフォルーさんは箸を置き、可愛い顔を少々陰らせる。
「そうだったんだけど……どうにも大変なことになってるみたいなのよ」
「大変なこと?」
俺の問にテスタロッサさんはお茶を啜りながら答える。
「どうも、この地を束ねていた妖怪の御大将が先日から行方不明らしいわ。聞いた所によると、クマラ殿と同じ“
俺はその一言を聞いて、昼間の出来事がフラッシュバックした。
────母上を返せ!
繋がった。そういうことだったのか。
「……つまり」
「ええ、アザゼルちゃんから貴方達の報告を耳にしたけど、恐らくそういうことよね」
ヒナタさんが盃の酒を煽り、一息ついて言う。
「今、地球の裏側で“神祖”以外の厄介事も抱えているというのは聞いてるわ。今になって神祖が単体で“魔王種”程度の存在に目をつけるとは考えづらいし、恐らく主導しているのは……」
「ああ、“
アザゼル先生は真剣な面立ちでいう。
ここに来てあのテロリスト集団かよ……面倒くさいな……しかも、計画自体は多分“禍の団”主体なんだろうけど、監視役として神祖の高弟がいるってことも予想できる。
これだけ大掛かりな計画だし、“旧魔王派”を仲間に引き入れようとしていたカグチなら全然あり得そうだ。
でも、これで把握はした。あの“九頭獣”の女の子は母親を突然拐われた。それで、俺達を誘拐犯だと考えたわけだ。
「お、お前らまた厄介なことに首突っ込んでるのか?」
「突っ込みたくて突っ込んでるわけじゃねえよ……」
目元を引くつかせる匙に答える。どうにも俺達はトラブルに巻き込まれることが多いな。ドラゴンが力を引き寄せるってこういうことなのか? 本当に申し訳ない。
「ったく、こちとら修学旅行の学生の面倒だけで手一杯だってのにな。やってくれるぜテロリストども」
先生は忌々しそうに吐き捨てる。いや、あんたはさっきまで舞妓さんと遊んでたんだろうが!
「どちらにしても、まだ公にすることはできないわね。なんとか私たちだけでことを収束しなければならないの。私はこのまま協力してくださる妖怪の方々と連携して事に当たるつもりよ。……もし、神祖の高弟が現れたら、申し訳ないけど二人に頼ることになるかもしれないわ……」
「いえ、適材適所ですわ。私達はこの地では無名の存在。橋渡しは任せますわ、セラフォルー殿」
「テスタロッサ殿の言う通りね。もとより、ルミナス様に害をなす存在は私が斬る予定だもの」
少ししょんぼりしながら、申し訳無さそうにするセラフォルーさん。
セラフォルーさんも近頃力不足を痛感し、鍛えなおしていると噂では聞いているが、まだ神祖の高弟に対抗するには力不足だろう。
「ありがとう……でも、私も足手纏いで終わるつもりわないわ! “魔法少女マジカル☆レヴィアたん”は挫けないんだから☆」
お、おお……。流石はマジカル☆レヴィアたん。どうやら、このままで終わるつもりは毛頭ないようだ。
セラフォルーさんもそうだけど、魔王の方々は本当に努力家だよな。
格上と命懸けですらない勝負で心が折られて引き篭もる上級悪魔の方々も見習って欲しいものだぜ。
「そういうことなら、俺も独自に動こう。ったく、今回は完全に休暇のつもりだったってのに……京都に来てまでやってくれるぜ、奴さんどもよ」
酒を煽りながら毒づく先生。相当頭にきてるみたいだな。
かくいう俺も結構ムカついてる。人様の迷惑を考えてほしいものだぜ。
「じゃあ、俺も手伝いますよ」
「いや、お前らは取り敢えず旅行を楽しめ」
「え?」
まさかのお言葉に俺は思わず疑問符を返す。そんな俺の反応に、先生は俺の頭をわしゃわしゃ撫でてきた。
「何かあったら呼ぶ。だが、お前らガキにとっちゃ貴重な修学旅行だろ? 俺たち大人ができる限りはなんとかする。今は京都を楽しめよ」
「……俺、一応実年齢は成人済みなんですけど?」
「ん? そういやそうだったな。だが、俺達にとっちゃ全然ガキだ。ガキはガキらしく、大人の甘言に甘えとけ」
そんな先生の言葉に少しグッとくる。
普段はおちゃらけてるというのに、こういう時はいいこと言うよなこの人。
「そうよ、赤龍帝ちゃん、ソーナちゃんの眷属達も、今は京都を楽しんでね。私も楽しんじゃうんだから☆」
セラフォルーさんもそうおっしゃっている。
それを見たテスタロッサさんとヒナタさんは少し呆れながらも瞑目する。
「まあ、私が過ごすことができなかった学園生活……折角過ごせるのなら、ちゃんと過ごしたほうがいいと思うわ」
「向こうから貴方達にアプローチを仕掛ける場合もあるでしょうけど……それまでは私達が調査をしているわ。どの道、貴方にできることはなさそうだもの」
それはご尤も。俺は隠密でもなければ、この地に縁のある者でもない。
調査となると、多分何もできないだろう。
仕方がないか。だったら、俺達はしばらくの間、京都観光を継続させてもらうか……。
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「じゃあ、野郎共! 行くわよ!」
「「「おおーっ!」」」
修学旅行二日目。桐生はメガネをキラリと光らせながら、バス停を指さす。それに対し、俺たち男子は雄叫びをあげた。
取り敢えず、妖怪の御大将の事は気になるけど、テスタロッサさんの言う通り、出来ることが現状ほとんどないに等しい。だから、暫くは観光をすることにした。
観光名所を回っていれば、地形も把握できるし、案外御大将の誘拐された場所とかも感知できるかもしれないからな。
と、いうわけで二日目は清水寺行きのバスに乗ることから始まった。見知らぬ街の風景をつぶさに観察しながら、下車して周辺を軽く探索しながら、清水寺を目指す。趣のある日本家屋のお店が立ち並んでるな。流石は和の都京都といったところか。
「ここ、三年坂って言って、転ぶと三年以内に死ぬらしいわよ?」
「はぅぅぅっ! それは怖いです!」
桐生の悪戯にアーシアは怖がりながら、俺の腕に捕まる、まあ、ただの迷信だけど、アーシアは少しドジっ子な面があるし、捕まってたほうがいいかもな……そう考えていると、ゼノヴィアも俺の腕に捕まってきた。なんだ? 少し、震えている?
「……日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな」
いや、お前も信じるんかい!? ゼノヴィアさん、たまに壮大な勘違いをなさるね! というか、そんな大層な術式が仕込まれてたら、さすがに気付くだろう! でも、そういう天然なところがこいつの可愛いところなんだよな。
こうして俺は二人の美少女を両脇にしながら坂を登る。ふふふ、適度な嫉妬が心地良いぜ。
そうこうしているうちに、坂を登りきると、大きな門が現れた! これが清水寺か!
「見ろ、アーシア! 異教徒の文化の粋を集めた寺だ!」
「はい! 歴史を感じます!」
「異教徒バンザイね!」
教会トリオは興奮気味に失礼なことを言い合っている。一応、ここにも神様仏様がいるんだぞ。
「ここから落ちても助かるケースも多いらしいわよ」
桐生が解説をくれる。
落ちる人いるんだ。この高さから落ちて人間って助かるものなのか? いや、鍛えていれば平気か? 仙人とまではいかずとも、Cランクくらいまで達してる冒険者ならいけるかもな……。
まあ、この世界の人にそこまでの力を持つものがどれだけいるのかって話だけど……。
境内には安全と合格の祈願や恋愛成就を願う小さなお社があった。
取り敢えず、賽銭箱に入れてお祈りをする。これからも平穏でいられますように……あと、エッチなイベントがたくさん起きますように!
「ねえ、兵藤。アーシアと恋愛みくじやってみたら?」
「恋愛みくじ?」
俺とアーシアで? 俺、一応ミッテルトという恋人がいるんだけど……。見ると、アーシアは乗り気な様子。まあ、仕方がないか。
と、言うわけでくじを引く俺とアーシア、相性はどれどれ?
「大吉……将来安泰。俺達お似合いらしいぜ、アーシア」
まだ日本語を読むのが少し難しいアーシアにくじの内容を伝えると、アーシアは頬を赤く染めて大喜びをした。
「はい! 嬉しいです! ……嬉しいです、本当に……」
くじを大切そうに抱いて、涙ぐむアーシア。
ここまで喜んでくれるとは、俺も嬉しくなってくるな! ここの仏様は俺とアーシアの仲を保証してくれたってことだな。ありがとうございます。
今度はミッテルトともくじで相性を見てみたいな。俺は拝みながら、そう思った。