イッセーside
「なんか、いろいろあった一日だったな」
夜、俺は布団に寝転がりながら今日の事を振り返っていた。
妖怪の世界から帰還した俺たちはそのまま金閣寺に戻った。
寝ていた松田たちを叩き起こして観光を再開し、お土産を買って時間が来るまで金閣寺周辺を楽しんでいた。
ホテルに戻ってからは木場やシトリー眷属と情報を連携し、今後についてを話し合った。
結果として、怪しまれないように観光地巡りは続行。何かあれば即座にホテルに戻り、対応するという形になった。
正直、観光どころじゃないとはは思うが、班での団体行動が原則のため、松田達が行動するためにも俺の同行は必須なんだよな。
ただ、九重が案内してくれるというのは少し楽しみではある。初日に襲撃した時の謝罪の意味合いもあるらしく、断る理由もないから承諾した。というか、断ればあっちが気にするだろうからな。時に遠慮は相手にとって負荷になることもあるのだ。
……それはさておき、ミッテルト達どうしてるかな? 部長に朱乃さんに小猫ちゃんにギャスパー、セラに黒歌に父さんや母さんも心配だ。
流石にミッテルトくらいには連絡したほうがいいかな……でも、アザゼル先生に止められてるしな……。
俺は布団の上をゴロゴロしながら暇を持て余していた。松田と元浜は女子風呂覗きに挑戦するらしいが、今回はパス。戦闘が起こるかもしれない以上、少しでも体力は温存したほうがいいだろう。
コンコン
ふと、部屋の扉がノックされる。
この気配……アーシアだな。
「どうぞ」
扉を開けてきたのは寝間着姿のアーシア。相変わらず可愛らしいな。
「どうした、アーシア?」
「はい、遊びに来ました。後でゼノヴィアさんとイリナさんも来ますよ。桐生さんは他のクラスの女子と京都について情報交換するみたいですけど」
おお、マジか! 美少女三人がこの部屋に遊びに来る! 最高じゃないですか! まあ、流石にこんな場所でエッチな事は出来ないだろうけど、何をするかね……。
『イッセー!』
『ついに見つけたかもしれんぞ!』
廊下から松田と元浜の声。俺の部屋に入るつもりかな? まあ、丁度いいか。ゼノヴィアとイリナも来るわけだし、折角だからトランプでも……
「イッセーさん、少しいいですか?」
「え? アーシア?」
アーシアは何故か俺を連れて押し入れの中に入ろうとする。その瞳からは、何やら葛藤してる感じがする。
どうやら、アーシア個人で話……それも、他の奴らには聞かれたくない何かがあるみたいだな。
俺はアーシアの意図を汲み、そのまま押し入れの中に二人で逃げ込んだ。
『あれ? イッセーいねえじゃん』
『もしかしたら、あいつも一足先に女風呂を覗けるスポットを発見したのかもしれん』
『なに!? そりゃ大変だ! 俺達も後を追うぞ!』
女風呂を覗けるスポットだと!? なにそれ気になる! だけど、今はアーシア優先だな……そもそも、シトリー眷属はともかく護衛であるジウの警備を抜け出せるとは思えねえし……。
二人の足音が遠ざかるのを確認すると、アーシアは俺の腕をぎゅっと掴む。目をやると、少し悩んでる素振りを見せたが、何かを決意したように口を開いた。
「……イッセーさん、ミッテルトさんとリアスお姉様と……キスをしてましたよね?」
────その言葉に俺は絶句する。
見られてたのか。多分、振り返り際に偶然見かけたとかそこら辺かな? なんか、気恥ずかしくなり、俺はアーシアと目線を逸らす。
「あ、あれは別れのキスで……」
「……そ、そうですか。ミッテルトさんはともかく、リアスお姉様ともそんな親しくキスができるように……」
流石に失望ものだよな。何せ、恋人であるミッテルトはともかく、部長ともキスしちゃってんだもん。
だが、そんな俺の考えとは裏腹に、アーシアは意を決したように俺の顔を正面から見る。その表情には艶があるように見えた。
「あ、あの……イッセーさん……私ともキス……してくれますか?」
「え?」
呆ける俺にお構いなく、アーシアは俺に顔を近づけてきた。
2人の唇が自然と────本当に自然と重なった。
唇を重ねた瞬間、驚くほど安堵感に包まれる自分がいた。
そんな、なんとも言えない気分に浸っていた刹那、スーッと引き戸が開けられた。
「まっ! あらら! ちょ、ちょっとゼノヴィア! すごいわ!」
「おお、貴重なアーシアのキスシーンだ。イッセーの部屋に遊びに行こうとはこういうことか。まったく、恐れ入るな」
寝間着姿で髪を下ろしたイリナ、そしてゼノヴィアと目が合った。
な、なんてこったぁぁぁぁぁぁっ!
全然気づかんかったぞ!? 夢中になりすぎだろ俺!
完全に油断してた、ムードが上がってたから隙だらけだった!
見られた! モロに見られた! 俺とアーシアは急いで唇を離す! し、舌がちょろっと絡んだタイミングで押し入れ開けやがって!
「ぬぅ、雰囲気から察すると……初めてではないな? 流石はアーシアだ」
「そうねそうね! アーシアさんってたまに大胆だから、こういうのもスピーディなのね!」
当のゼノヴィアとイリナは興味津々と言った感じで盛り上がっている!
ボンッ!
何かが爆発する音! 見ると、アーシアが顔を最大まで真っ赤にしてやがる!
「あ、あ、あうぅぅぅ……」
アーシアは恥ずかしさに耐えきれなくなり、目をグルグルさせながら気絶する! おいおい、こんな状況で一人にしないでくれ!
「おい! しっかりしろアーシア! 恥ずかしいのは俺も一緒だから!」
「お邪魔するぞ」
「わ、私も失礼するわ」
なんでぇぇぇっ!? アーシアを介抱してたら、何故かゼノヴィアとイリナも押し入れに入ってきたぁぁっ!
しかも、ご丁寧に中から戸を閉めやがってさ!
「すまんな。魔力感知で押し入れに隠れてるのは気づいてたから、何をしてるのかと気になって開けた次第だ」
ゼノヴィアは悪びれた様子もなく淡々と説明してる! 緊急事態の会議室で飛んだ緊急事態が起きてやがる!
ゼノヴィアはそのままのそのそと近づいてくる!
「な、なんだよゼノヴィア!?」
怪訝に思う俺にゼノヴィアは平然と答える。
「アーシアの次は私だ。キス……もしくは性的なことでも構わんぞ。次にイリナだな」
「えっ!? 私も!? ウソ!」
ゼノヴィアの言葉に目が飛び出るほどの驚きを見せるイリナ。うん、俺も同意見! なんでそうなるんだよ!?
「いい機会だイリナ。お前も男を知っておけ」
「いや、知ったら私堕天しちゃうんですけど!?」
ご尤も! イリナはこの世界の天使であり、ふとしたキッカケで堕天してしまう可能性を秘めている。そんな事になったら、流石にミカエルさんの“A”はできなくなってしまうだろう……。
「そこは気合いで乗り切れ」
だが、ゼノヴィアは気にする素振りも見せない! いや、それって気合いでどうこうできるもんなの!? アザゼル先生やバラキエルさんですら堕天してるのに!?
「気合い……そ、そうなのかしら? で、でも卑猥な事をしちゃったら、ミカエル様のAとして私は……」
なんかブツブツ言って葛藤するイリナ。どうやら、ミカエルさんへの忠誠心のほうが上回ってるみたいだが、非常な
「イッセーはお買い得だぞ。いい男だし、赤龍帝だ。お前が伝説のドラゴンとの子を産めば、天界にとっても大きな戦力になるかもしれんぞ」
「イッセー君の……赤龍帝の子供……天界の戦力……」
ああ、なんかダメそう! 真剣に悩み始めてやがる!
「さて、ではどうしたものか。この狭い狭い空間に女三人男一人だ」
「おいゼノヴィア。外の先生はどうした?」
俺は一縷の望み……見周りの先生の存在に期待する。就寝前の自由時間と言えど、見回りは定期的に行っているからな。
「問題ない。天使と悪魔の力で二重に結界を貼った。問題はない。ここで艶のある声を漏らしても、誰も来ることはないだろう」
「よくわからないけど、ここは神聖な魔力に満ち溢れた空間よ!」
ゼノヴィアとイリナが親指立てていい笑顔でそう言う。バカなのかこの二人!? なんで即言う行動力はムダに高いんだよ!?
「よし、まずはキスから……」
ま、マズイ……ゼノヴィアの唇が滅茶苦茶官能的に感じる! しかも、風呂上がりだからかほのかに香るいい匂いが凄く男心燻りやがる!
「え!? ゼノヴィアもうキスするの!?」
「ああ。修学旅行でそういう事をするのも乙だと桐生が言っていたからな」
あの阿呆眼鏡なんてことをこの2人に教えてんだぁぁぁっ!?
余計な知識を増やしやがって! 本当に本当にありがとうございます!!
そうこうしているうちに、ゼノヴィアは寝間着を脱ぎだした! 徐々に裸露出していく!
相変わらず、完璧なボディラインでいつ見ても惚れ惚れするな!
「ああ、本当にするのね……わかったわ! 私もガブリエル様みたいに生命の神秘に立ち会いたいと思ってたの! これもきっと、主の信仰に繋がるんだわ!」
お前は何を言っているんだ?
「折角だ。アーシアが気づいたら同様に抱いてやるんだぞ」
お前も何を言ってるんだ?
駄目だ。滅茶苦茶言ってやがるよこの二人。
そうこうしてるうちに、ゼノヴィアは衣類を全て脱ぎ捨て、俺に抱きついてくる!
ああ、やばい! 太ももで俺の手をガッチリと挟んでやがる! すべすべムニュムニュ具合で思考が全然纏まらん!
「……ぁふ……やはり、お前の肌は心地がいいな。触れてるだけで自分が女なのだと思えるよ……」
こ、コイツ……、天然で男を言葉で殺すすべを身に着けてやがる! こ、こうなったら、覚悟を決めるしかないのか!? ここで凄いことをするしかないのか!?
「うーん、あれ? 私……」
あ、アーシアが気がついた! これで風向きが変わるか!?
のろのろと起き上がるアーシア。アーシアは寝ぼけた眼で俺たちを見て、即座に眼を丸くした!
「お、起きたかアーシア。丁度いい。今、イッセーから遺伝子をもらうところだったんだ」
「い、い、いでんし……っ!?」
ゼノヴィアの淡々とした口調にアーシアは声を上ずらせながら聞き返す。
ゼノヴィアさんや。もう少し女の子的な物言いをしようぜ。凄いこと口にしてるからな、お前。
「だ、駄目ですぅぅ! イッセーさんとの……そ、それは駄目なんですぅ!」
「む? 少しくらいいいじゃないか」
アーシアは涙目となり、頬を膨らませながら言い返す。
対してゼノヴィアは片眉を吊り上げ、怒り気味になっている。
というか、何いってんだよお前は!? 少しとかそういう問題じゃねえよ!?
「……わ、わかりました。ゼノヴィアさんがその気なら……」
暫し口論していると、アーシアは突然俺に抱きつき、大きな声で宣言した。
「私がイッセーさんの子どもを産みます!」
…………。OK。少し落ち着こう。
ちらりと見ると、ゼノヴィアとイリナもアーシアの大胆な発言に驚いている様子だ。無理もない。俺も驚いている。驚きすぎて、一周回って冷静になれたくらいだ。
アーシアは寝間着を取り払い、雪の様な白い肌を顕にする。
うん、控えめに言って天使だわ。
「す、すごいわ。異性の遺伝子をめぐる女の戦い……すごいわっ!」
ハラハラしてないで止めろよイリナ。お前は天使だろうが!
「イッセーさん! ずっと一緒にいるんですから、子供は一人はいて当然ですよね!」
そ、そういうものか? もうさ、訳がわかんなくなってきてるよ俺は。
……ここは覚悟を決めるしかないのか? 俺とて馬鹿じゃないし、
まあ、ミッテルトも一夫多妻については認めてるわけだし、俺自身アーシアとそう言う事をしたい気持ちはある。
でもな……こんな流される形でいいのかな。なんていうか、デッドヒートしすぎて、冷静さ欠いてる感じがするんだよな。取り敢えず、距離を取らなければ……。
そう思い、立ち上がろうとすると、思い切り棚板に頭をぶつけた!
狭いからちょっと体勢変えただけで何処かにぶつかるな……。頭を打った勢いで体勢が崩れ、前方に倒れ込む────。
もにゅん。
何やら、俺の手に極上の柔らか感触が……。
「…………わ、私、イッセー君……」
────っ!? 俺の目に顔を真っ赤に染めたイリナの姿が映る! どうやら、体勢を崩した拍子にイリナを押し倒してしまったみたいだ!
しかも、寝間着がはだけて、白い丸いものが丸見え! す、すげえ! これが天使のおっぱいか! つーか、もろに揉んでるしぃぃぃ!
な、なんというハプニングだ……押し入れという狭い空間だからこそ、こういうハプニングも起きちまうわけだな!
イリナの乳……凄く柔らかくてもっちりしてやがる! 瑞々しくて、まるでお餅みたいな弾力だ! 凄いモチモチ具合だよイリナ!
あ、天使の羽が点滅してる! ヤバい! 堕天するかしないかの瀬戸際になってやがる!
「……私、初めてだから……こういうとき……わ、わからないよイッセー君……わ、私を堕とす気なのね……?」
普段見せない女の子の顔のイリナ! これはいかん! ギャップで破壊力がありすぎる! しかも、髪を下ろしてるから、凄く色っぽいしさぁっ!
「ご、ゴメンイリ……」
ガゴンッ!
取り敢えず謝ろうとしたら、再び上の棚板に激突し、衝撃で顔を突っ伏す!
もにゅん。
そこにあるのは勿論イリナの柔らかマシマロ。ああ、凄くモチモチで幸せすぎる……。
「わ、私墜ちちゃう……ああ、主よ。お許しに……」
「おい。最初に抱くのがイリナというのは納得できんぞ。まずは私を……」
「いえ! 私です!」
やばい。なんか、我慢できそうにないんだけど……。
もう、理性がげんか────。
「「何してんのよ!!」」
バァァァァンッ!!
俺の理性が限界を迎えようとしたタイミングで、ジウとトーカの二人が思い切り襖を開ける!
そして、ジウは俺を押し入れの外に投げ出し……。
「フン!」
ドゴンッ!!
「ぐはっ!?」
思い切り腹パンを食らわしてきた! や、やべえ……なんて威力の拳だよ……。さすがに聖人なだけあって、徒手空拳もいけるんだなコイツ。
「イッセーさん!?」
「なっ、何を……」
「おりゃあ!」
バゴンッ!
「ごはっ!?」
そして、俺を心配して押し入れから出てきたゼノヴィアを睨みつけたトーカはゼノヴィアに綺麗な正拳突きをかました!
ゼノヴィアはトーカの正拳突きの威力に悶絶しながら、地面に突っ伏す。
「ぜ、ゼノヴィアさん! 大丈夫ですか!?」
「な、何故私だけ……」
哀れゼノヴィア。恐らく、最初に飛び出したのがコイツだったからなんだろうな。
ちなみにイリナはまだ放心中で、押し入れの中で翼を点滅させてやがる。
「あのね……貴女達、いい加減にしなさいよ……ここはそういう事をする場でもないし、そもそも貴女達はコイツの恋人でもなんでもないんだからね……」
「完全に覗きをすると油断してたわね……まさか、こんなことになっているだなんて……」
ギロリと鋭い瞳でアーシアとゼノヴィアを睨みつける二人。アーシアは達人二人の放つ殺気に少し怯んでる様子だ。
「そ、それはそうですけど……でも、それでも……」
怯みながらもアーシアは強い目でトーカを見据える。トーカはそれを見て、ため息をついてゼノヴィアとイリナを米俵みたいに抱える。
「取り敢えず、この二人は部屋に連れ帰るわ。貴女も部屋に戻りなさいよ」
「一応、ロスヴァイセから不純異性交遊をしないかの監視もしてるの。余計な仕事を増やさないで」
「ううっ……はい……」
アーシアは涙目になりながら、トーカとジウについていく。
俺はジウに殴られたダメージが中々回復せず、畳に突っ伏しながら、それを見送る。
「…………」
扉が閉まる音を聞きながら、俺はアーシアの思いにどう応えるべきか悩むのだった。