イッセーside
「いやー、食った食った! 和洋中豪華なバイキングなんて、駒王学園の生徒で本当に良かったぜ」
「全くだ」
夕食後、風呂に入り、松田と元浜が満足そうに部屋でくつろいでいる。
渡月橋での戦いの後、俺達は予定通り二条城を観光し、ホテルに帰還していた。
明日は修学旅行の最終日なので、京都駅周辺を見て回って、お土産を買うだけになる。
そんなわけで、今からこの三日間で回った京都の景色を部屋に備え付けてある薄型テレビで観賞することになったんだ。
元浜がデジカメの撮影データをテレビに接続していると、部屋の扉が開かれた。
「ちわー。風呂上がりの美少女四人がやって来たわよ、エロども」
パジャマ姿の桐生がアーシア達を連れて部屋に入ってくる。
「おおおっ! アーシアちゃんのパジャマ姿最高じゃん! んじゃ、早速鑑賞会と行きますか!」
テンション高めの松田は最初の写真をテレビに映す。
新幹線の写真から始まり、京都駅、ホテル、伏見稲荷、清水寺、渡月橋、二条城と京都の様々な景色がテレビに映し出されていく。
松田と元浜、桐生達が写真についての思い出を語り、俺達はそのたびに爆笑する。
大切な修学旅行の思い出だ。
この思い出を楽しいままで終わらせたい。女の子の涙が残る結末なんかで終わらせたくない。
俺は静かに拳を握りしめた。
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鑑賞会も終わり、就寝時間が間近になった。
今、俺の部屋にはグレモリー眷属とイリナ、シトリー眷属、アザゼル先生、ジウ、トーカ、セラフォルーさん、ヒナタさん、テスタロッサさんの全員が集まっていた。
八畳一間の部屋にこの人数はは狭いがこの際仕方がないだろう。俺とグレモリー眷属、シトリー眷属の一部は立ち見でセラフォルーさんにヒナタさん、テスタロッサさん等のお偉方が座ってる感じだ。
ちなみにゼノヴィアとイリナは押し入れが気に入ったらしく、押し入れの中から参加してる。
ロスヴァイセさんは酔覚ましの薬を調合したようだが、体調が良くないのか真っ青になっている。
「では、作戦を伝える。現在、二条城と京都駅を中心に非常警戒態勢を敷いた。京都で活動していた悪魔といった三大勢力の関係者および妖怪達を総動員して怪しい輩を探っている。今だ英雄派は動きを見せないが、京都の各地から不穏な気の流れが二条城に集まってきているのは計測できている」
「不穏な気の流れ?」
木場が先生に尋ねる。
「ああ。そもそも京都ってのは陰陽道、風水に基づいて作られた大規模な術式都市だ。それゆえに各所にパワースポットを持つ。晴明神社に鈴虫寺、伏見稲荷とかもそうだな。他にも挙げればキリがないほど不思議な力を持つ力場が京都には存在する。それらが現在、乱れて二条城の方にパワーを流し始めているんだよ」
「アザゼル殿言う通り。元々ここは地脈の核の一つのようで、星のエネルギーが重点的に集っているわ。どうやら敵はそれを使って何かしようとしてるのかもしれないわね」
なるほど……確かに、京都は駒王町や他の場所に比べて地脈の流れが強い。
京都全体の地脈のエネルギーを焦点させれば、それだけで凄まじいエネルギーになるだろう。敵はそれが狙いなのだろう。
「ど、どうなるんですか?」
匙が生唾を飲み込みながら訊く。
「わからん。だが、ろくでもないことは確かだ。奴らは九尾の御大将を使って実験とやらを開始すると言っていたからな。それを踏まえて作戦を伝える」
先生はテーブルに京都の全体図を敷いて、指指しながら伝える。
「まず、シトリー眷属。おまえ達は京都駅周辺で待機。このホテルを守るのもおまえらの仕事だ。一応、このホテルは強固な結界を張ってはいるが、有事の際はおまえ達で当たってほしい。不審なものが近づいてきたらシトリー眷属で対処しろ」
「了解です」
先生の指示にシトリー眷属の皆が返事をする。
「次にグレモリー眷属とイリナ、そしてジウ。いつも悪いがおまえ達はオフェンスだ。このあと二条城の方に向かってもらう。神祖の高弟“ダイスケ”を除外しても相手の戦力は未知数だ。危険な賭けだが優先すべきは八坂の姫を救うこと。ダイスケはイッセーが、他のメンバーはジウの指揮下で抗戦、八坂の姫を救い出すことができたら一旦撤退しろ」
「あれ? テスタロッサさんやヒナタさんは?」
配置の仕方に思わず疑問の声を上げる。
正直、神祖の高弟が確定な以上、ヒナタさんかテスタロッサさんの両方、もしくはどちらかは必要な人材だと思うんだが……。
その事を察したアザゼル先生はポリポリと申し訳なさそうに頭をかく。
「実はな……俺たちが渡月橋で襲撃を受けたと同時に、セラフォルー達も襲撃を受けたんだ……“神祖の高弟”のな」
「えっ!? マジですか!?」
なにそれ初耳! 俺は驚きの表情でセラフォルーさん達を見つめる。
その言葉にヒナタさんは頷き、肯定する。
「ええ、本当よ。私達が会談を行っていた“裏京都”に“神祖の高弟”のドォルグが襲撃したのよ」
「しかも、厄介なことに“新生十二蟲将”とやらを複数体連れていたのよね。どうやら下位の者だったらしいけど、それでも覚醒魔王に匹敵するエネルギーを秘めていたわ」
お、俺達が襲撃を受けている裏でそんな事があったのか。
ちなみにドォルグは取り逃がしたものの、“十二蟲将”はテスタロッサさんが殲滅したそうだ。
下位とはいえ、相性の悪い“蟲魔人”を簡単に返り討ちにするあたり流石はテスタロッサさんといったところだろう。
「と、いうわけで“裏京都”の防衛は必須であるということになってね。私がそこを守ることになったのよ」
なるほどな。確かに裏京都は数多くの妖怪たちが住む都だ。
民間人の安全のためにも二人は動かせないというわけか。まあ、仕方がないか。
「安心しろ。テロリスト相手のプロフェッショナルを呼んでおいた。流石にイッセーには及ばないものの、強さの面ではジウと同等かそれ以上。各地で“禍の団”相手に大暴れしてる最強の助っ人だ。それが加われば奪還の可能性は高くなる」
「助っ人? 俺の知ってる人ですか?」
「いや。だが、凄まじい力を持つ使い手ということは覚えておけ。コレはいい知らせだな」
ふむ。先生がそこまで言うのなら相当な助っ人だろう。
あ、そういえば元々八坂さんはアジア最大の神話勢力“須弥山”の主神・帝釈天の遣いとの会談に向かう最中に拐われたんだったか。
と、なると助っ人は須弥山関連かな? 資料で見たけど、あそこは確か“戦の神”である帝釈天の率いていて、全神話で見ても上位に位置すると称されるんだったか。
もし、それが本当なら強そうだ。ちょっと楽しみだな。
「それと、テンペストより新たに支給品がある」
そう言いながら、アザゼル先生は異空間から何かを取り出す。それは見覚えのあるものだ。
リムルを模した容器になみなみと詰められた青い液体。これが何なのかわかっていない皆は首を傾げている。
「これはなんなんですか?」
「そいつは“
「テンペストの?」
匙は容器を持ち上げながら、まじまじと完全回復薬を眺めている。そんな様子に呆れながらもアザゼル先生はかつて失った腕を皆に見せる。
「こいつはすげえ薬だぜ。何せ、失った四肢をも完全復活させるんだからな。死んでなければどんな傷でも癒せるらしいぞ」
「はぁ!? マジですか!?」
皆は一斉にアザゼル先生の腕に着目する。先生の腕は見事な復活を遂げており、以前のような機械の義手ではなく、生身の肉体に戻っていた。
それを確認した木場達は完全回復薬のヤバさに冷や汗をかいている。
「失った四肢を取り戻すなんて、“フェニックスの涙”でも不可能とされているのに……なんて薬だ」
「こんなのがあったら、フェニックス家の商売も上がったりだな」
匙は呆れながらそう言うが、俺はそうは思わない。フェニックスの涙には、完全回復薬よりも優れている点があるからだ。
「いや、そうとも限らねえぞ。こいつは再生させる力こそフェニックスの涙を上回っているが、フェニックスの涙と違って魔力までは回復しないからな」
アザゼル先生がそれを肯定するように言う。
フェニックスの涙は回復能力で言えば、“
しかも、回復量の割合はかなり高い。魔王級の魔力を持つものが魔力を枯渇させたとしても、フェニックスの涙はたちまち失った魔力を回復させてしまうだろう。
創るのにかなり時間がかかると言うが、それも頷ける性能だ。正直、完全回復薬と比べても甲乙つけがたい壊れ性能だと思うぞ。
「そんなフェニックスの涙も今回は支給される。三つだけだがな」
「み、三つ!? 足りなくないですか!? 一応、テロリスト相手ですよ!?」
匙が素っ頓狂な声を上げて先生に問う。
「ああ。わかってるが、今は世界各地で“禍の団”がテロってる状況。涙の需要も急激に跳ね上がっている。テンペストが完全回復薬を支給してくれたおかげで大分マシになったらしいが、それでも戦闘中に魔力すらも回復させてくれるフェニックスの涙の価値は変わらん。元より貴族連中しか買えん高級品だったってのに、値段も高騰して、桁が一つ増えちまうレベルだ。今後、レーティングゲームでの使用も制限されるって噂もあるし、これからも価値は上がるだろうな」
まあ、当然のことだな。
傷だけ完全復活しても、魔力が回復しなきゃ戦線復帰はできないわけだし、もしもリムルが完全回復薬を仕入れてくれなければ、桁はさらに一つ二つ増えててもおかしくない。むしろ、三つもただで貰えるだけありがたいと思わなきゃな。
「てなわけだ。オフェンスのグレモリーに2個、サポートのシトリーに1個涙を支給する。完全回復薬はお前達一人ひとつずつだ。上手に使えよ」
『はい!』
先生の指示に皆が返事をする。それを満足気に見つめると、先生は匙に視線を移した。
「匙。おまえは作戦時、グレモリー眷属の方につけ」
「お、俺っすか?」
匙は自分に指さしながら言う。予想外のオファーに戸惑ってるみたいだ。
「おまえのヴリトラの力────特に龍王形態は使える。あの黒い炎は相手の動きを止めて力を奪うからな。今回もサポートにまわってくれ」
「そ、それはいいんですけど、あの状態って意識失いかけて暴走気味になりやすいんです。向こうで修行したおかげで、数分程度ならコントロールできますけど」
「問題ない。仮に暴走しても今のコイツラなら容易く負けるなんてことはないだろうしな」
「暴走する前提ですかっ!?」
先生の意地悪な答えに叫ぶ匙。まあ、流石に冗談だとは思うけどな。
「安心しろよ匙。いざとなれば俺が片手間で抑えてやるからさ」
「片手間って……まあ、わかった。頼りにしてるぞ、兵藤」
そういいながら、匙はため息をつく。どうやら観念した様子だな。
まあ、あの形態をコントロールできるいい機会かもしれないし、暴れたとしても英雄派を薙ぎ倒すという意味では問題はないだろう。
そこでイリナが手を挙げる。
「この作戦は各勢力に伝わっているのですか?」
「当然だ。今京都には悪魔、天使、堕天使、妖怪が大勢集結している。奴らが逃げられないように、各勢力の人員が包囲網を張っているんだ」
セラフォルーさんが先生の言葉に続く。
「外の指揮は私に任せてね☆ 悪い子がお外に出ようとしたら、私が一気に畳み掛けちゃうんだから♪」
「もしも、包囲網に神祖の高弟を筆頭とした“超級覚醒者”が現れた場合は私が対処することになっているわ。“悪魔召喚”の術式は教えているし、すぐに移動できる手筈よ」
「その場合は私も向かうわ。神祖の高弟にしろ十二蟲将にしろ、私が斬るつもりよ」
魔王であるセラフォルーさんに、原初の悪魔のテスタロッサさん、勇者であるヒナタさんがいるのなら、打ち漏らしはないだろうな。神祖の高弟にしろ、新生十二蟲将にしろ、相手が可哀想になってくる布陣だ。
「それと駆王学園にいるソーナにも連絡はしておいた。あちらもあちらで出来るバックアップをしてくれるようだ」
ほう。会長達もあちらで動いてくれてるのか。
そうなってくると、気になるのはうちの部長達なんだが……。
「先生、うちの部長達は?」
俺の質問に先生は少し顔をしかめた。
「ああ、伝えようとしたんだが……タイミングが悪かったらしくてな。あいつらはグレモリー領にいる」
「何かあったんですか?」
「どうやら、グレモリー領で旧魔王派の残党が暴動を起こしやがったみたいでな。あいつらはそれの対応に向かっているのさ」
暴動って……。“禍の団”か? 何を考えてるのやら。
「どうやら、旧魔王派が起こしたらしくてな、“禍の団”の関与もないらしい。一応、将来自分の領地になるわけだし、アイツラが直接出てったというわけさ。新しい力を試す機会だとウズウズしてるらしい」
いや、“禍の団”ですらないんかいっ!
聞いてみると、どうやら、旧魔王の娘であるツファーメが再び現れたことで触発された連中が起こした暴動らしい。
旧魔王派もとことん面倒なやつらだな! というか、ツファーメとやらは正直魔王の座に興味薄そうに感じたし、意味ないと思うんだが……。
「ついでにグレイフィアとグレモリー現当主の奥方も出陣したそうだ。グレモリーの女を怒らせた奴らは大変だろうな」
先生が若干体を震わせながら言った。まあ、魔王級の力を持つグレイフィアさんに、最上級悪魔並の力を持つであろう部長のお母さんだからな。ミッテルトもいるだろうし、そこらの暴徒じゃお話にもならないだろう。
「まあ、“亜麻髪の
セラフォルーさんが楽しげに言う。
部長の二つ名は知ってたが、グレイフィアさんとヴェネラナさんにも二つ名があったのか。なんか、剣也とかフィオとかがはしゃぎそうな厨二心溢れた二つ名だな。
絶滅、滅殺、殲滅って……。物騒だけど、少し憧れるな。
「あら? 貴方にも“乳龍帝おっぱいドラゴン”っていう立派な二つ名があるじゃない」
ニヤニヤと笑いながら、ジウが俺にそんな事を言う! その二つ名は好きで手に入れたんじゃねえよ!
「フフ、似合ってると思うわよ……」
「ええ。イッセー殿にはお似合いですわ」
見ると、テスタロッサさんにヒナタさんもプルプルと笑いをこらえてやがる!
『う、うおおおおおおぉぉぉぉんっ!!』
ドライグはその嘲笑に耐えきれず、ついに慟哭する!
なんかゴメンねドライグ! ドライグを慰めながら、会議は幕を閉じるのであった。