帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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孫悟空登場と事件の終演です

 ジウside

 

 

 

 

 ギィンッ! ガギィンッ! 

 

「“五色精霊剣(エーテルブレイク)”!」

 

「ほぅ?」

 

 私は5属性の精霊力を闘気に変換し、レイピアと同一化させることでその力を強化する。精霊の力が合わさった伝説級(レジェンド)の一撃はソウソウの胸を貫かんとするが、奴はそれを神話級(ゴッズ)の槍で簡単に防いでくる。

 

「いい攻撃だ。直撃すれば致命傷だろう。だが、この程度では俺の聖槍の防御を抜くことはできないぞ」

 

 ソウソウは自慢げに神話級の槍を見せびらかしながら言う。あの神祖の高弟……ダイスケとやらに修行をつけてもらったのかもしれないわね。槍捌きが少し似てる印象がある。

 

「あっそ。じゃあ、こういうのはどう?」

 

「なにっ!?」

 

 私は“代行者(リプレスメント)”の力を発動させ、姿と気配を完全に隠蔽する。

 曹操は私の姿を完全に見失ったらしく、周囲をキョロキョロさせている。勿論、魔力感知はフルに発動してる様子だ。

 

(でも、その程度で私の隠蔽は防げないわよ)

 

 ビュカッ! 

 

 気配、姿、音をも消した“暗殺の必撃(アサシンブレイク)”。無音の必殺は確実にこの一撃はソウソウの首を跳ね飛ばす────

 

 ガギィィィィンッ! 

 

「!?」

 

 はずだった! 

 しかし、曹操は咄嗟に槍を構え、私の一撃を防いできた! 

 ありえない……気配も姿も音も何もかもを消した上での一撃。防ぎきれるはずが……。

 

「危ないところだったな。俺の感覚をフルにしても分からないほどの気配遮断とは大したものだ。だが、姿を消してるらしいということが分かれば、槍から聖なる波動をレーダーのように展開すれば良い。姿は消えても存在はしてるのであれば、波が動いたところを構えればいいだけだからね」

 

 チッ! そういうことか。私のはあくまで姿を消しているだけで存在はしている。私の今の隠蔽力は“代行権利(オルタナティブ)”には及ばない。究極付与(アルティメットエンチャント)を持たない今の私では、この男の感知は掻い潜れても、神話級武器の探知を掻い潜ることはできなかったということね。

 

「ふむ……正面も強い。絡め手もいける。本当にすごいな、君は!」

 

「っ!」

 

 力を込めた神話級の一撃は防御ごと私を吹き飛ばす。やはり、強い。バーニィ以上の槍術に加え、武器の格で上回られているときた。

 現状、身体能力は私のほうが上だからこそ拮抗してるけど、このままじゃ不味いわね。今のままなら勝ち筋はまだまだあるけど、奴が禁手なる力を使えば盤上はひっくり返るでしょう。

 さて、どうしたものか……。

 

 ドゴォォォォォォォォォォォンッ!! 

 

「「っ!」」

 

 互いに硬直状態になったと同時に上空から一際大きい爆風が吹き荒れる。

 それと同時にボロボロのイッセー……そして、ダイスケとやらが向かい合うように降り立った。

 

「ふぅ、いやー強い強い。本当に大したものだよ」

 

「ほう。ダイスケがそこまでボロボロになるとはな。やはり、俺が戦りたかったよ」

 

「やめときな。曹操じゃ、多分数秒持たないよ。というか、君もずいぶん消耗してるね」

 

「ああ。あのジウとかいう少女がこれまた素晴らしい使い手でな。禁手を使おうかどうか悩んでたところだ。同じ人間だし、是非ともこちらに引き入れたいものだね」

 

 楽しそうに笑うダイスケとソウソウ。ソウソウは笑顔でそんな事を言うが、冗談じゃない。こっちから願い下げだ。

 そんな奴らを見て、私は怪訝に思う。イッセーのやつ、何故降りてきたんだろう? はっきり言ってこの二人の戦いは聖人の私から見ても別次元。だからこそ、被害が出ないようにはるか上空で戦っていたはずなんだけど……。

 

「大丈夫か、ジウ!」

 

「ええ。問題ないわ」

 

 所々に傷を負っている私を見てそう言うド変態。どうやら本気で心配している様子だ。

 そういう優しいところはマサユキ様に似てるのよね。コイツ。

 

「で、なんで降りてきたわけ?」

 

「……ああ。それは……」

 

 イッセーが何か言おうとした瞬間、バチバチと空間を震わす音がする。

 そちらの方を見ると、空間に大きな穴が生まれつつあった。

 

「なるほど。これに対処するためってわけね」

 

「ああ。本当にグレードレッドが出てくるなら敵の計画が進んでるってことだし、ヤバいかもと思ってダイスケ叩き落として急いだんだ……けど……」

 

 けど? その言葉に疑問をいだいていると、ソウソウが嬉しそうに叫んでいるのが耳に入った。

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

 俺はダブルスレッジハンマーでダイスケを叩き落とし、そのままジウの所へ舞い降りた。

 ジウが一番危険だと感じたからだ。思ったとおり、曹操は他の英雄派達とは次元の違う力を秘めてたみたいだな。

 ジークフリートとやらとは違い、仙人級でありながら神話級の力を十全に使いこなしてる様子だ。ジウが追い込まれるのも頷ける。

 このまま素の状態で戦えばジウが勝てるだろうが、相手が禁手を使えば勝機もなかっただろう。

 だが、どうやら大きな怪我もなかったようで少しホッとした。

 俺はジウの傷の具合を確認したあと、すぐに次元の綻びに目を向ける! 

 

 バジッ! バジッ! 

 

「どうやら、始まったようだな」

 

 曹操が嬉しそうに笑ってる。九尾の御大将の力を使った魔法陣にグレードレッドがおびき寄せられた────そう、思い込んでいるのだろう。

 

「あの魔法陣。そして君とダイスケの膨大なパワーが真龍を呼び寄せたのかもしれないな」 

 

「────いや、違うよ」

 

 ダイスケは呆れを含めた笑みで曹操を見ている。それに気づいた曹操は目を凝らして次元の裂け目を観察してる。そして、徐々に疑問に生じた表情となっていく。

 

「……違う。グレートレッドではない? あれは……それにこの闘気はっ!」

 

 オオオオォォォォォンッ! 

 

 空間の裂け目から飛び出したのは────十数メートルほどの大きさのドラゴン! ガイアやヴェルザードさんみたいに細長い東洋タイプの竜だな! 

 それを見た曹操が叫ぶ。

 

「────“西海龍童(ミスチバスドラゴン)”、玉龍(ウーロン)か!」

 

 ほう、あれが五大龍王の一角、玉龍! 

 確かに強いオーラだが、それよりもやばいのが上にいる。存在値から見て覚醒魔王級の奴があの龍の上に乗っている! 

 龍の背中からひょっこりと現れる小さな人影が一つ。人影はそのままぴょんと跳びはね、スッと地上に舞い降りる。

 

「大きな『妖』の気流、それに『覇』の気流。それらによって、この都に漂う妖美な気質がうねっておったわ」

 

 小さい人影は年老いた男性の声音でゆっくりとこちらに近づいてくる。背丈は幼稚園ほどで金色に輝く体毛と法衣を纏う猿のような姿の人が現れた。

 ────強いな。EPは129万3590の超級覚醒者(ミリオンクラス)。それでいて、携えてる長い棍は神話級ときた! 

 恐らく、この人がアザゼル先生の言ってた助っ人だ! サイバーなデザインのサングラスにでかい煙管となかなかファンキーそうなおじいさんだ。

 

「オー、久しい限りじゃい。聖槍の。あのクソ坊主がデカくなったじゃねーか」

 

 猿の爺さんが曹操にそう言う。この口ぶりからして、曹操とは知己らしい。曹操は目を細めて笑っている。

 

「これはこれは、闘戦勝仏殿。まさか、貴方がここに来られるとは。各地で我々の邪魔をしてくれているそうですね?」

 

「坊主、悪戯が過ぎたぜぃ。ワシがせっかく天帝からの使者として九尾の姫さんと会談しようと思ってたのによぉ。拉致たぁ、やってくれるもんだぜぃ。ったく、関帝となり神格化した英雄もいれば、異形の業界の毒になる英雄もいる。『覇業は一代のみ』とはよく言ったもんじゃ」

 

「毒、ですか。貴方に称されるなら、大手を振って自慢できる」

 

 闘戦勝仏……ってことは、この人がかの有名な西遊記の孫悟空か! すげえビッグネームだ! 神話とか知らない人でも絶対知ってるような人だもんな! 

 見ると、曹操も畏敬の念を持って接してるみたいだ。英雄派の連中も初代孫悟空の“魔王覇気”に圧倒されてるみたいだ! 

 

「それにしても、とんでもない坊主どもじゃな。赤龍帝の坊やも然ることながら、あそこの坊主も儂以上の使い手と見た。天帝から聞いてはいたが、“基軸世界”の強者ってのはとんでもないのぅ」

 

「基軸……世界……?」

 

 初代孫悟空の言葉に首を傾げる曹操。だが、初代の爺さんは構わずに神話級の“金剛如意”を構えている。

 

「赤龍帝の坊や。よー頑張ったのぉ。儂らが助っ人じゃい。────玉龍、おまえはヴリトラを助けてやれぃ。九尾を頼むぜぃ」

 

『おいおい、来て早々龍使いが荒いぜ、クソジジイ! オイラ、ここに入るだけでチョー疲れてんですけど! ってか白龍皇の仲間の魔女っ子に手助けしてもらったんだけどよ! つーかヴリトラだ! どれくらいぶりだぁ? ドライグも元気そうじゃねぇか!』

 

 なんかテンション高いな、あのドラゴン。あのテンションの高さは師匠をどことなく思い出させるな。

 

『変わらずだ』

 

 そうなんだ。ドライグが呆れながら玉龍を見つめてる中、初代の爺さんは煙管を吹かして言う。

 

「後で京料理をたらふく食わせてやる。それでよかろうて」

 

『言ったな! 後で絶対食わせろよ! 助太刀するぜヴリトラ! うおおおお! 狐の姉ちゃん! オイラは強ぇぇぞ!』

 

『あ、ありがとうございます!』

 

 文句たらたらに玉龍は御大将と向かい合う。二頭の龍と九尾の狐が向かい合う姿はさながら日本の絵巻みたいでとても様になっている。

 そんな中、フェニックスの涙で回復したジークフリートが神話級の剣を構え、初代に突貫する。

 

「エネルギーの回復していない二人などいつでも片付けられる! ならばお猿の大将! 貴方と戦る方が楽しめそうだ!」

 

「ジーク! 相手にするな! お前では────」

 

 曹操の静止の言葉も聞かず、禁手を再び展開するジークフリート。どうやら、伝説級の魔剣がなくとも予備の光の剣の六刀流で相手するつもりのようだ────アホか? 

 

「あの孫悟空なら相手にとって不足は────」

 

「伸びよ、棒よ」

 

 ドンッ! 

 

 初代が静かに漏らしたあと、如意棒は凄まじい速度で伸び、ジークフリートを吹き飛ばした! 

 

「────っ!?」

 

 ドォォォォォォンッ! 

 

 ジークフリートは一発で瓦礫の中に吹き飛ばされてしまった。

 うん、まあ当然の結果だな。ジークフリートは神話級の剣を持ってると言えど、仙人級。しかも、曹操と違って真価を引き出せてる感じはまるでしない。

 しかも、魔力や傷は回復してても全快ではない上、伝説級の武器が削がれた状態では手も足も出ないに決まってる。

 観察してる感じ、ジークフリートの技術(レベル)は木場よりちょい上程度だったし、それであんなに慢心してるようじゃ本物には勝てないだろう。慢心さえなければ、数分くらいは粘れたかもだけどな。

 

「儂にとっては不足じゃったようだの。若い魔剣使い、腰が入っとらん。走り込みからやり直せい」

 

 初代は興味なさそうにジークフリートを一瞥すると、曹操相手に向かい合う。俺から見ても曹操は強い。

 恐らく、下手な超級覚醒者と比べても遜色ないだろう。実際、ジウと互角にやり合ってるわけだしな。

 そこで霧使いのゲオルクが初代に手を突き出す。現状、初代の爺さんの方が脅威だと考えてるのかもな。

 まあ、無理だろうけど。

 

「捕縛する! 霧よっ!」

 

「────天道、雷鳴をもって龍の顎へと括り通す。地へ這え」

 

 トンッ

 

 初代が詠唱と共に如意棒で地面を叩くと霧が霧散する。地面に雷を這わせ、その衝撃で霧を散らしたようだ。

 うむ、強い。少なくとも、並の魔王種では歯が立たないだろう。

 

「神器の練り方が甘いの。そこの赤龍帝の坊やみたいに神器と語り合ってから出直せい」

 

「────っ! あの挙動だけで我が霧を……っ! 神滅具の力を散らすか!? 赤龍帝ですら成す術なく転移させた我が霧を!」

 

「ふん、何を言っとる? お前さんが赤龍帝の坊やを転移できたのはそこの生意気そうな坊主の助力があったからじゃろう。それがなければその程度の力で強制転移などできるわけなかろうて」

 

 初代の爺さんが呆れたように言う。それを聞いたゲオルクは歯軋りしている。

 実際俺は空間支配の権能があるため、あの程度の使い手の転移魔法など簡単に妨害できる。一回目はダイスケの助力があったから。今回に関しては御大将救出のため自分から入っただけだしな。

 あの神滅具も防御力に関しては据え置きでオーディンの爺さんでも破壊困難な結界を張る優れものだが、それ以外の捕縛能力や強制転移みたいな権能はゲオルクの力に比例するから、魔王種は封じ込めても覚醒魔王級の存在を封じるのは現状不可能だろう。

 

「槍よ!」

 

 ギュゥゥゥゥゥゥンッ! 

 

 隙をついた曹操が聖槍の切っ先を伸ばし、奇襲する。

 それに対し、初代は如意棒でそれを受け止めた! 武器の格は互角。レベルも恐らく近しい感じ。ならば、その勝敗を決めるのは身体能力の差だ! 

 

 ガギィィィィィィィンッ! 

 

「チィ!?」

 

 初代の爺さんはそのまま曹操を弾き飛ばす! 痺れた腕を一瞥しながら、面白そうに曹操と向かい合っている。

 

「良い鋭さじゃわい。腕を上げたのぅ。そこの坊主の影響か? じゃが、この程度ではまだまだ他の神仏は滅せられんよ」

 

「なるほど。化け物ぶりはご健在の様子だ」

 

 曹操は肩を竦めながら言う。ダイスケは少し悩んだ素振りを見せた後、瓦礫に埋もれたジークフリートを抱えて曹操に告げる。

 

「曹操。ここまでにしよう。兵藤一誠を僕が抑えたとしても、超級覚醒者級二人を相手にすれば曹操が禁手使っても勝利するかは賭けになる。あの爺さん、まだまだ権能隠し持ってそうだし、グレートレッドも来なさそうだからね」

 

 それを聞いた曹操は周囲を見渡す。木場とゼノヴィアは油断なく構えており、イリナはジャンヌと。ロスヴァイセさんとアーシアはヘラクレスと未だ一進一退の戦いを繰り広げている様子だ。

 

「……退却時か。まさか、赤龍帝以外の者たちがあそこまで強くなってるとは……見誤ると深手になりそうだ」

 

 バッ! 

 

 曹操が合図を出すと、英雄派幹部連中は一箇所に集結し、霧使いが巨大な魔法陣を展開する。

 空間支配で妨害……は無駄か。ダイスケが空間を操ってやがる。

 

「ここまでにしておくよ。初代、赤龍帝、グレモリー眷属。再び相まみえよう」

 

「待て! 母上をあんな目に合わせて逃げる気か!」

 

 アーシアの結界で隠れていた九重が涙ながらに叫ぶ! だが、曹操達はどこ吹く風。興味もなさげだ。

 俺はそれにプッツン来た。やっぱり彼奴等英雄じゃねえ。ただの卑怯者だ! 

 

「……安心しろ九重。このままじゃ済まさねえよ」

 

「え?」

 

 俺は安心させるようにポンと九重の頭に手を置く。

 それと同時に。俺はもう片方の手の指に魔力を集中させる! そして、曹操の脳天に正確に狙いをつけた! 

 

「お咎めなしで帰れるわけねえだろ。京都土産だ。くれてやるっ!」

 

 ドォォォォォンッ!! 

 

 俺は魔力を濃縮した“赤死銃弾(デスクリムゾン)”を指から放つ! それを見たダイスケはすかさず風を風を纏った腕でキャッチしようとする────が

 

 ズボッ! 

 

「ぐっ!」

 

 赤い弾丸はダイスケの腕を突き抜け、そのまま曹操の顔面を捕らえた! 

 

 バシュンッ!! 

 

「ぐわあぁぁぁぁぁっ!?」

 

 曹操は反応することすらできず、そのまま顔面を抑える。

 赤い煙を上げながら、曹操はゆっくりとこちらに顔を向ける。

 そこには右目から鮮血を散らしながら、狂気に顔をゆがませる曹操の姿があった。

 チッ、脳天ぶち抜くつもりだったんだが、ダイスケの腕で軌道も威力も殺されたか。“赤死銃弾”は貫通力と速度に特化してる。本来なら眼球ごと頭貫通しててもおかしくないんだが、目がつぶれただけとはな。

 

「目が……。赤龍帝ぇぇぇぇっ!」

 

「うるせぇ! 目がつぶれたぐらいだガタガタ抜かすんじゃねえ! ちっとは九重の恨み思い知ったか!」

 

 こちとら目が潰れたり四肢が欠損したりは日常なんだよ! 迷宮修行舐めんじゃねえぞ! 

 曹操は俺の言葉にブチギレたらしく、槍を構えて呪文を唱えだした! 

 

「────槍よっ! 神を射抜く真なる聖槍よっ! 我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの────」

 

 瞬間、ジークフリートかま曹操の口と体を手で押さえた! 

 

「曹操! 唱えては駄目だ! “覇輝(トゥルースイデア)”を見せるのはまだ早い!」

 

 覇輝────聞いたことがある。確か、聖槍版覇龍のことだ。それを使うつもりだったのか。

 ジークフリートの言葉で冷静さを取り戻した曹操は残った左目で俺を睨みつける。

 

「わかっているさ……赤龍帝。いや、兵藤一誠。ここで撤退させてもらうが、次会った時は聖槍の真の力で貴様を葬ってやろう!」

 

 魔法陣の輝きが強くなり、奴らはそのまま転移した。

 ……できればここで仕留めておきたかったな。

 

「ありがとうなのじゃ。赤龍帝」

 

 九重はポツリと呟く。それに対し、俺は九重の頭を撫でてやることで応えるのだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 英雄派が逃げた。だが、まだ問題は残ったままだ。

 俺達は視線を一点の方向に向ける。

 

『うおおおおおおっ! おい、クソジジイ! この狐強えぞぉぉぉっ!』

 

 九つの尻尾に締め付けられる玉龍。匙は黒い焔で応戦してるが、御大将の狐火に阻まれ決定打を打ち込めない状況のようだ。

 

『玉龍さん! 俺が動きを止めます! その隙に!』

 

 そう言いながら、匙は呪の力で御大将の動きを止める! 匙はまだヴリトラの力の全てを使いこなせないので、動きを止められるのはほんの数秒────だが、その数秒で玉龍は拘束を解き、凄まじいブレスを御大将に直撃させる! 

 

 ドゴォォォォォォンッ! 

 

『ギャンッ!?』

 

 九尾の御大将は吹き飛び、そのまま地に伏せる。どうやら勝負あったみたいだな。

 

『あー、しんどかっな。ヴリトラいなきゃ、辛かった……』

 

「こ、こちらこそ……玉龍さんの助けがなければどうなってたか……」

 

「だ、大丈夫ですか、匙さん。今回復を……」

 

 匙は元の人間形態に戻り、アーシアの治療を受ける。お疲れさん。

 しかし、どうしたものか……。匙と玉龍のおかげで何とか動きは止めたものの、御大将は人間の姿に戻ることはなかった。しかも、瞳は今だに洗脳の色を浮かべたままだ。

 

「母上! 母上!」

 

『…………』

 

 九重が泣きながら八坂さんを呼ぶが……反応は一切ない。それどころか、実の娘にすら敵意を向けてるように感じる。

 

「さて、どうしたもんかいの。仙術で邪な気を解いてもいいんじゃが、ここではちと時間がかかるのぉ」

 

 初代も煙管を吹かしながら思慮しているようだ。

 確かに仙術を使えば元に戻りそうだが、相当長時間術をかけ続けたんだな。結び目が幾重にも重なってる。

 ……でも。こいつは呪縛。言うなれば呪の類だ。ならば、俺の力ならなんとかできる!

 

「俺なら何とかできると思います」

 

「ほう? 本当かぃ?」

 

「ええ」

 

 俺は初代の爺さんの言葉に答えると、ゆっくりと御大将に近づき、赤龍帝の籠手を取り出し、魔力を集中させる。

 そこで、心配そうに俺を見つめる九重の姿が視界の端に映った。そんな心配そうな顔するなよ。

 俺がなんとかしてやるからよ! 

 

「御大将の呪縛を打ち砕け! “呪縛崩壊(カースブレイク)”!!」

 

 俺は魔力を帯びた拳を優しく御大将に打ち付ける! すると、御大将に纏わりついていた嫌な空気が徐々に霧散していく! 

 

 ウォォォォォォォォォン!! 

 

 呪縛に縛られた御大将の悲痛な叫びが木霊する! それを聞いた九重は御大将に駆け寄っていき、その巨体に抱きついた! 

 

「母上……母上……聞こえますか、母上!」

 

 九重は大粒の涙をボロボロと溢しながら、御大将に語りかける。

 

「……もう、わがままは言いません。嫌いな野菜も魚も食べます。夜中に京都に飛び出すこともやめます。……だから、どうか、どうかいつもの母上に戻ってくだされ。九重を……許してくだされ……。母上……」

 

 ……悲痛な願いだった。九重は何度も何度も謝りながら、八坂さんに語りかける。

 ────その時だった。

 

『…………く、の、う……』

 

 微かだが確かに聞こえた! 九重は顔を上げ、涙と共にぐしゃぐしゃながら精一杯の笑顔を見せた! 

 

「母上! 九重はここです! また歌を歌ってくだされ! また舞を教えてくだされ! 九重は、九重は良い子になります! また一緒に母上と……京都を……この都を歩きたいのです!」

 

 パァァァァァッ! 

 

 全ての呪縛が解けると同時に優しい光が八坂さんと九重を包み込む。その光は徐々に小さくなっていく。

 光が止んだとき、八坂さんは人間サイズに戻っていた。

 よし! やったぜ! 俺は思わずガッツポーズを取る! 

 

「……ここは?」

 

 八坂さんは前後の記憶がない様子で、キョロキョロと辺りを見渡している。そんな八坂さんを見た九重は駆け寄って、その胸に飛び込み、大声で泣き叫んだ! 

 

「母上ぇぇぇっ! 母上ぇぇぇっ!」

 

 八坂さんは現状を理解できないながらも、優しく九重を抱きしめ頭を撫でた。

 

「全く、お前は何時までたっても泣き虫じゃな。じゃが。意識がない中でもお主の声、しかと届いたぞ。ありがとう、九重」

 

「いいのです! 母上が、母上がもとに戻ってくれれば! また、一緒に暮らすことができれば……」

 

 感動のワンシーンだ。見ると、涙もろいアーシアなんかはボロボロと泣いている。

 それを確認した初代の爺さんが締めの言葉をつぶやく。

 

「ま、何はともあれ一件落着じゃの」

 

 初代の爺さんの言う通り! これで、ようやく九重に本当の笑顔が戻ったたんだ! 

 こうして、九尾の御大将救出大作戦は色々と巻き起こしながらも幕を閉じることになったのだった────。

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