イッセーside
ライザーを迷宮に放り投げてからだいたい一週間経過した。
学校にはオカ研の合宿ってことで伝えてるけど、さすがにそろそろ戻らないと不味いかな……。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
今日もライザーは元気に悲鳴をあげながら雪山を走ってる。まあ、うん。頑張れライザー。
「……兄の様子はいかがでしょうか?」
「うーん、ごめん。わからない」
ここは“氷獄竜王”ゼピュロスの支配する九十八階層。
猛吹雪の中、俺とレイヴェルは軽いティーセットを出してのんびりとお茶会をしていた。
空間断裂を施してるから気温は適温だけど、外が猛吹雪なだけあって心なしか少し肌寒い感じするからな。お茶が染みやがる。
俺の返答を聞いたレイヴェルは心配そうにライザーを見ている。
「も、もう嫌だぁぁぁぁっ!?」
雪山の中、巨大なドラゴンに追われながら悲鳴を上げて走ってる姿は少し哀れに思える。
「まあ、文句言いつつも課題は着々とこなしてるし、何とかなるとは思うぞ」
これは俺の偽りのない本心だ。ライザーは龍王達が手加減をしているとは言え、なんやかんやで逃げ切っている。相手をよく見て動いてる証拠だ。
そもそも、生まれつきの超速再生持ち上位魔人なだけあり、強くなれる素質は全然あるのだ。
この修行をこなしていくうちに存在値も上がってきてるし、課題が終わる頃には化けてるかもしれないな。
……まあ、性根の方は知らねえけど。
「俺は昔ここの警備隊やってたけどさ、最初そこでのしごきを受けた時はあんな感じだったし、なかなか再起しなかったのは甘えもあったんじゃないか? 多分大丈夫だよ」
「そうですか……。少し安心しました」
レイヴェルはそれを聞きホッとしたような顔をする。
本当に兄貴思いないい娘だな。こんな妹がいるなんて羨ましすぎるぜ。
そう思いながら、俺はパンケーキを口に入れる。
「……美味いな。このパンケーキ」
「ほ、本当ですか……? しょ、正直なところ吉田様やシュナ様ほど上手に作れなかったのですが……」
「いや、マジで美味いって。クリームも濃厚だし、焼き加減もいい。レイヴェルはケーキ作るの得意なんだな」
この一週間俺とレイヴェルはずっと迷宮にこもってたわけではない。たまに魔国の街を案内したりしていたわけだ。
レイヴェルは目を輝かせながら街を観光していた。特に吉田さんのケーキを食べた時は目が爛々としていたものだ。
その時に吉田さんにケーキを焼くコツを教わっていたな。それが生かされてるのがよく分かる。本当に美味い。
「と、当然ですわ! 私のパンケーキを食べられるなんて、イッセー様は幸せ者ですわよ! 感謝しながら味わってもらいたいものですわ!」
「応。ありがとな、レイヴェル。滅茶苦茶嬉しいよ」
俺の言葉にレイヴェルはすごく嬉しそうな反応をする。
レイヴェルは朝早くに起きてこれを一生懸命作ったのは知ってる。本当にいい娘だ。
高飛車でお嬢様気質なのが目立つけど、芯の部分は滅茶苦茶純粋だよな。
「レイヴェルは確か小猫ちゃん達と同じ学年だっけ?」
「はい。一年生ですわね」
凄いよな。小猫ちゃんやギャスパーと同じ年齢なのにこうも発育が良いというか、二年生のアーシアよりも豊満なものを持っていらっしゃる。
おっと、いかんいかん。スケベな視線でレイヴェルを観察してしまった。後輩なんだから、そういう目で見てはいけないよな。
『何を今更……相棒の実年齢的に考えてリアス達もアウトだろ』
だまらっしゃい! それとこれとは話が別なの! 何度でも言うが、俺の心は高二なんだよ! つまり、リアス達は先輩なの! ドゥーユーアンダースタン!
「しかし、レイヴェルは駒王の制服似合いそうだよな。何だか楽しみだぜ」
「ほ、本当ですか! か、必ず着こなしてみせますので、よくご覧になってくださいまし!」
「おう、勿論だよ」
俺はレイヴェルと談笑しながらパンケーキを食べ尽くす。それと同時にミッテルトもやってきた。
「どうやら仲良くしてるみたいっすね」
ジト目で見つめるミッテルト。オレは少しいたたまれない気持ちになり、そっと目線をそらす。
「み、ミッテルトも修行は終わったのか?」
「ええ。さっきまでアピトちゃんと戦ってましたからね……やっとこさ決着ついたとこっす」
ミッテルトは大分消耗してるな。何せ、ここ一週間ずっとアピトと戦ってたからな。
ミッテルトも進化した今、アピトとの力はほぼ互角。技術面でもEP面でもほとんど同じだ。だから、必然的に二人の戦いは長期戦にもつれ込んだわけだ。
ちなみに勝ったのはミッテルトとのこと。進化したてだと言うのに流石だな。是非とも後で録画を見せてもらおう。
「部長達も今迷宮第五十五階層を突破したって話っすよ」
部長達はこの一週間で五階層先に進んだみたいだ。これでも大分早い方だが、迷宮はここからが本番だ。六十階層にいけば相手になるのは“迷宮十傑”!
手加減すると言ってたけど、それでも今の部長達で突破できるほどではない。ガドラさん相手にどこまで食い下がれるか見物だな。
……まあ、流石に今回そこまで行くのは無理だろうけどな。学校あるし。
「……で、この後はどうするんだ?」
「あー……まあ、この階層の“隠し温泉”にでも入るっすかね?」
「ほう?」
隠し温泉とは九十八階層に存在する安全地帯のことだ。「雪見温泉も風情だよな」とか呟いたリムルのリクエストに従い、発言からわずか数時間で作られたこの温泉は連なる山々と吹雪の中に巧妙に隠されており、場所を知ってても中々辿り着けないが、その分景色もいいし滅茶苦茶気持ちいいのだ。
「そんな温泉があるのですね」
「そうっすよ。なんならレイヴェルちゃんも一緒に入るっすか?」
「いいのですか?」
「当然! 部長達も来る予定っすし、うちが護衛するんで安全っすよ」
ほう。ミッテルトだけでなく、レイヴェルと部長も入るのか……。
「ぎゃあああっ!?」
あ、またライザーが吹っ飛んでる。そんなこんなで今日のトレーニングは終わったのだった。
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その夜。俺は寝床にしていた洞窟から抜け出していた。
────温泉! ミッテルト達が入る温泉!
ぐふふ。思考がピンクになっていくのを感じる! ミッテルトも部長も朱乃さんも皆来てる様子だ!
こんなところで乳乱舞の見れる機会が訪れるとはな! ミッテルトの奴め、失言だったな! 恐らくアピトとの戦闘の披露で思考が回らなくなっていたんだろうな!
そこに桃源郷があることを知って行かない奴がいるか? 断言しよう、いない!
さあ、いざゆかん! 乳乱舞の桃源郷へ!
「ん?」
ここで俺はライザーの方へ視線を向ける。ライザーの奴、寝る時はいつも文句たらたらだったというのに今日は嫌に静かだ────っ!?
「マジかアイツ!?」
即座に万能感知を発動! 俺は一気に空を駆ける!
ライザーの奴、いつの間にかに身代わり人形と入れ替わってやがった!? 思考がピンク一色に塗りつぶされてて全く気づかなかった!
「アイツ……さてはこの修行を通して魔力感知を習得しやがったな!」
恐らくアイツも俺とレイヴェル、ミッテルトの会話を聞いていたのだろう……忘れてたぜ……。
────アイツはハーレムを作ったスケベ野郎だってことをよぉ!
「クソッタレ! ミッテルトに部長、アーシアに、朱乃さん! 皆の裸を見せてたまるものかよっ!」
ふん! 俺の感知から逃れられると思うなよ! 見つけたぜ! 炎のゆらめき!
「クソッ! もうバレたか!?」
「その物言い! てめえ温泉覗くつもりだろう!」
「覗いて何が悪い! 温泉に入る女がいるなら覗くのが男だ! というか、お前も覗く気満々だろ!」
「ああそうだ! 何が悪い!」
俺は堂々と宣言し、同時にオーラを少しだけ解放する。それに対し、ライザーは気圧され、警戒するように佇んでいる。
「ふん! これしき! だが、俺は諦めんぞ! リアスの乳をお前だけが堪能するなんて許されないことなんだよ!」
こいつ、俺の気に当てられながらも言い返してきやがった……。
「俺は元婚約者だぞ! あのデカい乳を一度も生で見ないで諦めろというのか!? 俺の立場で考えてみろ!」
そう言いながらライザーは炎を放つ! 俺はそれを片手で弾き返しつつも、驚いていた!
コイツにもあるじゃねえかよ……俺にも負けない“スケベ根性”がよ!
ライザーはチラチラと温泉の方向を見ながらも、俺の力を警戒し、動こうとしない。
俺もまた、力を出しすぎればミッテルトにバレてしまうため、そこまで大きな力を出すわけにも行かない。
この硬直状態を破ったのは第三者の声だった。
「やはりいましたか。行かせませんよ、兄弟子殿」
降り立ったのはゼピュロスだ! それだけじゃない! エウロス、ノトス、ボレアスもいやがる!
「やはり覗こうとしていましたわね……イッセー殿の考えそうなことですわ」
エウロスは炎の鞭を持ちながら、構える。
これは……不味いな。ライザーだけならば正直どうにかなった。だが、コイツラ四人が相手となるとこちらも力を出さざるを得ない! そんなことをすれば、確実にミッテルトに見つかる……っ!
……いや、落ち着け。こういう時こそ冷静に対処するんだ!
「おい、ライザー。共闘と行こう」
「……なに?」
ライザーは怪訝そうな顔でこちらを見る。だが、背に腹は代えられないと感じたのか、ライザーは舌打ちしながらも了承する。
「チッ、いいだろう。なにか策でもあるのか?」
勿論! とっておきの策がある!
「ああ、まず、お前が炎を撒き散らしながら全力であの四人に突っ込む」
「……続けろ」
「その隙に俺が気配を完全に遮断し、包囲網を突破して温泉を覗くってプランだ。どうだ」
「ほう、それは名案……なわけあるか! 巫山戯るのも大概にしろ、赤龍帝!」
チッ、交渉決裂。やはり駄目か。ライザーに皆の裸を見せず、四竜王を突破し、俺は裸を覗くことができるいい案だと思ったんだがな。
「じゃあ、勝手に突破するしかないな!」
俺は四人の包囲を抜けるべく、速度を上げて一気に飛翔する!
ライザーも負けじと炎の翼を羽ばたかせ、一気に駆け抜けている!
「ほう、兄弟子殿はともかくとしてライザーもなかなかの速度ではないか」
「本当。てか、さっき修行してた時よりも速いじゃん」
四竜王はそう言いながらもブレスを放ち、俺たちの動きを止めようとする! 俺はそれを軽々と避けるが、なんとライザーも涙目になりながらも避けてやがる!
そもそもコイツは鬼ごっこで散々ブレスを受けていたわけだからな。軌道はある程度読めるようになってるってわけか!
「ライザー! 後ろだ!」
「くっ!」
ライザーのすぐ真後ろに迫っていたのはエウロスの炎鞭! ライザーの炎よりもはるかに強い炎は不死鳥たるライザーにもダメージが入る! ライザーはそれを躱し、距離を取る!
「ふん! 礼は言わんぞ赤龍帝。お前の魂胆は分かってるつもりだからな」
ライザーも気づいてるようだな。竜王達は覗きを阻止すべく、俺とライザーの二人を相手取っている。
ライザーは本来四竜王にとっては取るに足らない相手。俺と戦う上では無視しても問題ないレベルだが、今回に限っては俺だけを阻止してもライザーに温泉にたどり着かれては意味がない。必然的に四竜王はライザーにも気を配らなければならず、その分意識の配分も俺だけに向けたものではなくなるため、俺は突破しやすくなるのだ。
正直誤差の範囲かもしれんが、無いよりはマシだろう。
「くっ、相変わらずの拳捌きですね」
「流石お兄ちゃん! やっぱり私達の攻撃が全然当たんないや!」
ゼピュロスとノトスの拳の弾幕を捌きながら、俺は徐々に温泉のある場所へと向かっていく! ライザーも滅茶苦茶劣ってる癖に、そのスケベ根性で必死に食らいついてやがる!
「全く、その根性を修行に向けないか!」
ボレアスはそう言いながら、ブレスを放つ!
それに対し、ライザーは炎で目眩ましをし、なんとか追撃から逃れんと頑張っている。
ガチ戦闘じゃないとは言え、そこそこやれてんのがすげえ。本当に才能あるんだな、アイツ。マジでやったら今の部長とだって戦えるんじゃねえか?
「だが、まだ甘い!」
ドゴンッ!
「ぐわあああああっ!?」
人型となったゼピュロスの彗星キックが炸裂する!
ライザーはそのあまりの威力に白目をむきながら……温泉の方へと吹き飛んでいく!
「なっ、しまった!?」
この乱戦の中、吹き飛ぶ方向まではコントロールできなかったようだな。ゼピュロスもまだまだ甘いということか。
「……てか、このままじゃライザーにみんなの裸が見られちまう!」
クソッ! こうなったら、もう四の五の言ってる場合じゃねえ!
「悪いけど、少し吹き飛んでもらうぜ……“
「「「「なっ……ぐわああああああっ!?」」」」
ドゴォォォォォォォォンッ!
轟音とともに吹き飛ぶ竜王達! 俺は四人が彼方まで吹き飛んだのを見送り、急いでライザーを回収しに行く!
「ふぅ、危ねえ危ねえ」
ライザーは温泉に落っこちる前になんとかキャッチ! そしてそのままそこらに放り投げる。不死鳥だし、死にはしないだろう。仮に死んでも“復活の腕輪”があるしな……。
そう考えながら、俺はゆっくりと温泉に着地する。
さてと……ここからは隠密行動……
「できると思ってるんすか?」
顔を上げた瞬間、ジト目で俺を見つめるミッテルトと視線が合った。ミッテルトはバスタオルで秘部を隠している。
「すごい音がしたから誰かと思えば、イッセーじゃないの」
振り向くとそこには全裸の部長! ぷるんとした生乳! ああ、これぞヴァルハラだ……っ!
「あらあら、イッセーくん?」
「イッセーさんもいらっしゃったのですか?」
「流石はイッセーだ。温泉を覗きに来たのか」
朱乃さん! アーシア! ゼノヴィアもいる! ミッテルトと違ってタオルで隠してもない! 生乳のオンパレードだ!
「……それで許されるのは部長達だけっすよ」
「へ?」
ミッテルトが指差す方向には、顔を滅茶苦茶赤くしてるレイヴェルの姿!
「い、イッセー様?」
おお、結構おっぱいがある。これは中々……!
……って、そんなこと言ってる場合じゃねえ! 俺がぷるんとしている乳を顔見してることに気付いたレイヴェルは胸元と秘部を隠し、顔を真っ赤にしておる! それと同時に炎の翼が展開され……
「イッセー様のエッチィィィィッ!」
ゴオオオオオオオッ!
「あじゃぱあ────っ!?」
その炎の放出で俺を吹き飛ばした! それだけじゃない! 吹き飛んだ俺にミッテルトはタオルを構えて飛びかかり……
「反省してるっすよ!」
バキィッ!
「ひでぶっ!?」
そのまま遥か彼方まで吹き飛ばした! ……ああ、一瞬見えたけど、やっぱりミッテルトの裸体は綺麗だな! 俺は走馬灯のように今見た光景を思い浮かばせ、ゆっくりと瞳を閉じた。
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後日、ライザーはこの一件でだいぶ回復し、ドラゴン恐怖症も克服した様子だった。
帰り際のライザーは嫌に爽やかだった。
「リアスのことは諦める。だから、今度一度でいいからリアスの乳を見せてくれ」
「巫山戯んな焼き鳥野郎!」
一つ分かったことがある。コイツは俺の敵だ!