ヒーローショーです
イッセーside
「ずむずむいやーん!」
「「「「ずむずむいやーん!」」」」
ステージに立つ俺の掛け声に客席の子供達も最高の笑顔で反応した。
学園祭を目前にして、俺は冥界の旧首都であるルシファードにあるコンサート会場のステージ中央でショーを繰り広げていた。
もちろん、『乳龍帝おっぱいドラゴン』のヒーローショーだ。いつもは代役の方がコスチューム着てやってるところ、今回は本物の俺が出演する運びとなっているのだ。
「いくぜ、ドラゴンキック!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁ!?」
俺が飛び蹴りを敵役の怪人にぶつけると、怪人は大げさな動作をしながら吹き飛んでいく。
勿論、手加減してるので安心安全。これはリハーサル通りだ。リハーサルと違うところと言えば……。
「キックかっこいい!」
「頑張れ! おっぱいドラゴン!!」
俺がリアクションの度に子供達が反応してくることだ。いや、うん。これはかなり恥ずかしいね!
けど、恥ずかしさと同時に凄まじい高揚感がある。いつものバトルとはまた違う感じだ。
会場は満席。お子様とお母さんでいっぱいだ。
「先生、頑張れー!」
「そこよ! そのまま目潰ししなさい!」
「面白いですね! パパ!」
「あ、ああ……そうだな……」
勿論、冥界に視察に来ていたリムルも子供達を連れてショーを見に来てる。てか、愛よ。これはショーなのだから目潰しはいかんだろ……。
「ふん、どうやらピンチみたいっすね。おっぱいドラゴン」
「お、お前は……フォールンレディ!?」
「か、勘違いしないことっすね。あんたが死ぬと、色々と面倒だから来てあげただけなんすからね」
俺がピンチになったタイミングでミッテルトが登場する。ミッテルト────否、フォールンレディがつっけんどんな態度でそう言う。このツンデレ描写から、かなりのファンを獲得しているらしい。
その他にも部長ことスイッチ姫や悪役であるダークネスナイトファングの木場もステージに立っている。
スイッチ姫専用ドレスの部長が手を振ると、大きなお友達一同が歓声を上げ、木場の方はお母さんをはじめとした多くの女性ファンがついている。……チッ、木場のやろう。なんて羨ましいんだ!
「「「おっぱいドラゴ────ン!!!」」」
うん。まあ、それでもああいう可愛いチビッ子達の声援を貰えるってのはやっぱり嬉しいもんだぜ!
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「ふぅ〜」
ヒーローショーでの出演を終えた俺は舞台裏で一息ついていた。
これが終わったら次は人間界で学園祭の準備再開か……。わかっちゃいたけど、結構ハードスケジュールだな。
結構大掛かりなものを用意する予定だけど、男手が足りないから、結構突貫工事で大変なんだよね。
『では、おっぱいドラゴンのクイズコーナーです』
「「「「うおおおおおおっ!! ヘルキャットちゃぁぁぁぁぁん!!!」」」」
舞台ではクイズコーナーの司会を担当する小猫ちゃんに、大きなお友達の声援が向けられているようだ。
小猫ちゃんはロリ好きの人達に人気なんだよね。小猫ちゃん目当てでここに来る者達も少なくないと言う……。気持ちは滅茶苦茶わかるけどな! 小猫ちゃん滅茶苦茶可愛いし!
「それにしても……」
なんか俺達、想定とは違う方向で有名になってるよな。まさか、ここまで『乳龍帝おっぱいドラゴン』が人気コンテンツになるとは思ってなかった。それだけ冥界には娯楽が少ない証拠でもあるんだけどな。
「つい最近まで冷戦状態だったって言うしな。やっぱり、民の豊かさがないと娯楽とかは生まれないってことだな」
リムルが子供達と一緒にジュースを飲みながら、そんな事を言う。
娯楽のために国を豊かにしてきたリムルが言うと、すげえ説得力あるな……。
「まあ、あのタイトルはどうかと思うけど……」
やかましい! それは俺も思ってることなんだよ! そりゃ、完成してから結構経ったから、最近は慣れてきたけど、今だにドライグは泣き崩れることだってあるんだからな!
「でも、先生らしいタイトルだと思うわよ」
「愛ちゃん、それはフォローになってないですの……」
「えっと……変態ドラゴンよりはずっといいと思いますよ」
「セツナちゃん、それもなんか違いますの」
愛とセツナがフォローしてる中、突っ込む桜姫。あれ? フォローされてんだよな、コレ? なんか悲しくなってきた……。
「俺はカッコいいと思うぜ! 名前はアレだけど!」
ああ、やっぱりフィオとかもそう思ってるのか……。
何にしても『乳龍帝おっぱいドラゴン』は大盛況。冥界の未来のために悪魔の子供たちを盛り上げたいと言っていたサーゼクスさんとアザゼル先生の仕掛けは見事に大当たりってわけだ。
冥界メディアでは旧魔王派やロキ襲来、英雄派との京都での事件もニュースで報じていて、作戦に参加していたメンバーのことを大々的に報道したようだ。
そのせいか、イベントで冥界に来た際にはマスコミ関係の方々に囲まれてフラッシュを滅茶苦茶焚かれた。
ニュースでも『おっぱいドラゴン! またもお手柄!』みたいな感じで報じられているし、冥界のチビッ子の間では特撮の中での俺と実際の俺が混同しているんだろうなぁ。
つまり、子供達にとっては、テレビの中のヒーローが実際に大活躍をしているってことなんだろう。
そう考えると、責任重大だ。子供達の夢を壊さないためにも、これから先も頑張らないとな。
「その意気ですよ、イッセー先生」
タオルを持ってきたアカヤがそんな事を言う。相変わらず心を読まれるな、俺。精神干渉でもされてんのか?
「イッセー先生がわかりやすいだけよ」
「そうそう。わかりやすいよね〜」
愛とミームの言葉に子供達はおろか、リムルすら同意しとる! そんなに読まれやすいのか、俺?
……うん、まあ、考えるのは辞めよう。どの道、どれだけ阻止しようとしてもミッテルトを中心とした女性陣には通じないわけだし、深く考えないほうがいいだろう。
取り敢えず、俺も飲み物買ってくるか。そう思い、通路側にでて数分歩いたところで、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「やだぁぁぁっ!」
なんだなんだ?
気になった俺は声がした方へと歩を進める。
壁の隅からチラリと見ると子供が大声で泣き叫んでいて、その子のお母さんと思われる人とスタッフの人が話していた。
「すいません。握手会とサイン会の整理券の配布は既に終わっていまして……」
スタッフの人が謝りながらそう告げる。あー、なるほどね。あの親子は握手サイン会の整理券配布に間に合わなかったようだ。
ショーが始まる前の配布だったからな。これは人間界のそういうイベント風景を真似して冥界でも取り入れた制度らしい。
「そうなんですか……。もう終わっちゃったんだって」
お母さんがそう告げると、子供はいっそう目に涙を溜めて泣き叫んだ。
「やだぁぁぁっ!! おっぱいドラゴンに会いたいよ!」
ふと子供の手元を見ると鎧姿の俺を模した人形が握られていた。
ああ、駄目だ。あんな子供の泣き顔とか見たくねえんだよな。
でも、ああいう子供はほかにもたくさんいるというのもわかる。そういう特例を作れば、新しい制度も台無しだ。あの子はよくて、この子は駄目なのかって話になる。
どうしたものか……。
「そういうことなら、俺に任せろ」
「リムル?」
そう言いながら、いつの間に着いてきていたリムルが子供の方に歩いてくる。
「君、どうしたんだい?」
「ぐすっ……おっぱいドラゴンと握手したいのに、会いたいのに、会えないの……嫌だよそんなのぉ……」
「そうか……じゃあ、お兄さんの握手券を挙げるよ」
そう言いながら、リムルは握手券を子供に渡す。子供は目をパチクリさせながら、握手券を見つめている。
「これで、堂々と……えっと、おっぱいドラゴンに会えるぞ。ほら、握手してこいよ」
リムルは子供の頭を撫でながら、俺のいる方向に指差す。助かるぜ、リムル。俺は鎧を装着し、マスクだけを収納した状態で角からひょっこり顔をのぞかせる。
「おっぱいドラゴンだ!」
子供は表情を一転させて笑みを浮かべた。俺はゆっくりと歩み寄り、しゃがみこんで子供と目線を合わす。
「君の名前は?」
「……リレンクス」
「リレンクスって言うのか。会いに来てくれて嬉しいよ。チケットは持ってるかな?」
「うん!」
そう言いながら、リレンクスは笑顔でチケットを俺に渡した。それを受け取った俺は空間収納していたマジックペンを取り出して、帽子に指差す。
「この帽子。俺の絵が描いてある帽子だな。これにサインしていいかな?」
「うん!!」
俺の言葉にリレンクスは三回も頷いた。それを見た俺は帽子にサインを書く。悪魔文字のサインだ。
書き終えると、俺はそのまま帽子をリレンクスの頭に被せた。輝くような笑顔でリレンクスは帽子を何度も脱いでは被ってた。
「リレンクス、男の子が泣いちゃ駄目だぞ。転んでも何度も立ち上がって女の子を守れるぐらい強くならないとさ」
そう言いながら、俺はリレンクスの頭に手を置いて、告げた。最後に握手をしてあげると、もう泣いていた形跡なんて微塵も感じられない。とても嬉しそうな表情になっていた。
「ありがとうございます!」
お母さんがお礼を言って、リレンクスを抱きかかえ、その場を跡にする。
「ありがとう! お姉ちゃん!」
すれ違いざま、リムルに向かってお礼を言うリレンクス。
それを聞いたリムルは数秒くらい固まって────。
「お、俺は男だ────っ!」
なんか叫んでた。
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「流石はイッセーね。立派な行いだったわよ」
「あ、リアス……」
声がする方を振り向くと、そこにはリアスとミッテルトの姿があった。今だにフォールンレディとスイッチ姫の格好だが、こうしてみるとやはり新鮮でいいよね。
「あら、嬉しいわね。ちゃんと名前で呼んでくれるのね」
「まあ、流石に学校では部長呼びさせてもらいますけどね」
あの修学旅行の行きのキス以来、俺は他の部員や生徒がいない時は部長と呼ばないことになっている。
ミッテルトもこの事は認めている様子だ。
「ま、イッセーの事っすから、リムル様の助け舟がなければそのまま子供の方に行ってたっしょ。リムル様に感謝するんすよ」
「わかってるっての……ありがとな、リムル」
「良いってことよ」
実際、リムルがいなければ俺は間違いなく飛び出して、リレンクスに無償のサービスやら何やらしてたと思う。頭では駄目だとわかってるんだけど、やっぱり自らを慕う子供がなくのを見ると、動かなきゃって気持ちになるんだよな。
その点、ミッテルトもよくわかってるようだ。
「あら? ごきげんよう、リアス、イッセーさん、ミッテルトさん。ここで何をしているのかしら?」
ここで亜麻髪の部長そっくりな女性が現れる。
「お、お母様! ミリキャスまで! いらっしゃっていたの?」
そう、リアスのお母さん────ヴェネラナさんの登場だ。
ヴェネラナさんがいることは完全に予想外だったようで、部長は素っ頓狂な声を上げている。
「リアス姉様、イッセー兄様、イベントとても楽しかったです!」
「イッセーさん、とても盛り上がっていましたわね。良いショーだったと思いますわ」
ミリキャスは相変わらず元気そうだ。ヴェネラナさんは家族サービスってところかな? 何にせよ二人とも楽しんでもらえたんなら良かったぜ。
「イッセーさんを模した特撮番組は我がグレモリーの財政を担う商業となるでしょう。もうすでに冥界の子供たちにとっては大切なものになってますわ。これからもリアスの眷属候補として、ミッテルトさんも一緒に我が家、そして娘のために奮闘してもらえると助かります」
「はい。わかりました。うちにとっても部長は大切な人ですし、これからも支え続けますよ」
「勿論俺もですよ、ヴェネラナさん。粉骨砕身で頑張ります!」
「ふふ、いいお返事ですわ。……それと、例の順番は決めたのかしら? ミッテルトさんは当然として、アーシアさんと朱乃さんもそうなんでしょう?」
例の順番……うん、まあ……どうなんでしょうね。
何度も言うが、俺は鈍感な方だがここまでアプローチされて気づかないほど愚かではない。
一番はミッテルトだが、部長もアーシアも朱乃も俺にとって大事な女の子なのだ。
「本来、グレモリー家の娘が第二などありえないこと……ですが、イッセーさん。貴方はそこのリムル殿の国の重鎮。ならば、例え第二だとしても繋がりを持てるだけで価値があります。とはいえ……リアス。その位置に甘んじてはダメよ。立場がどうあれ、貴女は当主となる身。ほかにも増える可能性があるのなら、きっちり管理しなくては駄目よ。強く魅力的な殿方に女性の心が奪われるのは世の常。早いところそういう関係になって、他の女性の主導権を握るつもりじゃなきゃ駄目よ」
ヒートアップしたヴェネラナさんのマシンガントークにリアスはかなり困惑してる様子。
「ところでイッセーさん。リアスのことは好き?」
「はい。勿論です。リアスは俺にとって、もはやなくてはならない大切な存在ですから。これからも俺が守っていきますよ」
俺の素直な思いにヴェネラナさんはウンウンと頷いてる。リアスは顔を真っ赤にしてる様子だ。うん、可愛い。
「見た感じ、貴方もリアスの気持ちに気づいてる。ならば、早いところその気持ちに決着をつけたほうが良いわよ?」
こっそりと耳打ちでそんな事を言う。ヴェネラナさん。ずっと見ていたリムルは何やら黒い笑顔だ。
おい、お前も同じだろ。正直人のこと言えんぞ、お前。
「あ! 遅いと思ったら、こんなところにいたの!」
「あ、セラ!?」
そこに駆けつけたのはセラだ。トコトコと近づいて、手招きをしてる。
「皆、ここにいたの!」
「あ、いたいた。って、ミリキャスじゃん! ミリキャスも来てたの?」
「あ、フィオ君! ────ふぇ!?」
「あー! ミリキャス君じゃないですか!」
手招きにつられて子供達がやってくる。その中で桃色の髪を確認したミリキャスは一気に顔を真っ赤にする。まるでトマトみたいだ。
「し、し、シンシヤちゃん……ど、どうも……こ、コンニチハ」
「はい、こんにちは! ミリキャス君も来ていたとは奇遇ですね〜」
「そ、ソウデスネ!」
あらら、ミリキャスのやつまたテンパってら。見ると、ヴェネラナさんも微笑ましそうにミリキャスを見てる。
暫く話し込んでいると、ミリキャスは申し訳なさそうにヴェネラナさんに向かい合う。
「お、お祖母様……大変申し訳ないのですが……」
「ええ、わかってるわ。ミリキャス。一緒に行っていいわよ」
「ありがとうございます!」
「よかったですね。じゃあ、ミリキャス君も私たちと一緒に遊びましょう!」
「はい!」
そう言いながら、ミリキャスはリムル引率の子供たちの輪の中に入る。
それを見たヴェネラナさんは、リムルと一言二言言葉を交わして、その場を跡にする。
ミリキャスはヴェネラナさんに大きく手を振りながら、見送ると移動しようとするシンシヤ達に付いて行った。
「さて、うちらもそろそろ時間っすね」
「そ、そうね。帰ったら学園祭の準備を再開するわよ」
「そうだな……」
何はともあれ、今は目先のことに集中だな。学園祭は目の前だ。
おまたせしました。
ぼちぼち再開していきます。
……最終巻、どうあがいても設定が根本的に覆ってやがる。どうすんだこれ、料理できねえぞ……
ルミナスが超強化されて竜種に近い力得ることとか、ベニマルの子供の名前判明とかくらいならまだ許容範囲内だった。
イヴァラージェともやり合うことになる以上、可能性としては最初から考えてたし、まだ言い訳のしようがあった。ベニマルの子供に関しても、その後できた子供とかにすればいいしね(精神生命体になったら子作りできないとか言う理由で進化前に子供作ってたけど、ダグリュールとかも子供いるし、竜種であるヴェルダナーヴァまでも子供作ってるんだから精神生命体でも子供作ろうと思えば作れるのではと思ってる)
でも、この設定はいくらなんでも料理できんて……どうしよ……