イッセーside
「ふわぁ……」
「眠そうっすね……」
眠いな……。昨日はかなり夜更かししたからな……。
今日はティアマットさんが用事があるらしく、トレーニングは休みだ。
ミッテルトと二人だけでやるのもありっちゃありなんだが、昨日のバックドロップの件でかなり怒ってたからな……。
マッサージで機嫌直しては貰ったが、蒸し返すのもあれなんで、休みにしたって訳だ……。
ミッテルトと別れた俺はアーシアと共に教室に向かう。
すると突如として何かが俺のもとへ近づこうとしているのを察知した。
「イッセェェェェェェ!!」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
駆け寄ってきたのは松田と元浜だ。どちらも憤怒の形相でラリアットの体勢にはいる。
俺はすかさずしゃがんで回避。二人が俺に当てようとしたラリアットは見事に不発。松田と元浜がそれぞれ喰らうこととなった。
「「うご!?」」
かなりの力を込めてたのか、互いのラリアットの痛みに耐えるように二人は首もとを押さえる。
「だ、大丈夫か?」
そんな俺の言葉に二人はギロリと俺を睨み付け、慟哭する。
「ふざけんなぁぁ!!!」
「ぶち殺すぞイッセェェ!!」
二人とも殺意マシマシだ。
まあ、心当たりはある……ていうか一つしかないな……。
「なんなんだよあれは!?格闘漫画とかにでてくる漢じゃねえか!?ふざけんな!?」
「……だから最初に漢女だって言ったじゃないか」
「字が違えんだよ!?なんだ漢女って!?ただの世紀末覇者じゃねえか!?」
まあ、ミルたんは俺自身よくわかってないからな……。
北○の拳にでも出てきそうな筋骨隆々の肉体をもち、それでいて魔法少女を目指しており、この世界の存在の筈なのに何故か聖人級にまでエネルギーを高めている漢女。それがミルたんなのだ。
魔素の薄いこの世界では進化することはないが、向こうに行ったらその瞬間覚醒を果たすことだろう。
……想像したくねえけど。
「しかも、おま、お友達とか言ってミルたんと同じような化け物が複数集まってきたんだぞ!?あの時は死を覚悟したね!!」
なんと……。あんなのがまだいたのか……。
流石にミルたん級ではないとは思われるけど……、言いきれないのが怖いんだよな……。
ほんと、どこであんなのが生まれたのか……。
「俺は魔法世界とやらについて延々と語られたんだぞ!?そんなの知らねえって言ってんだよぉ!!」
「俺はダーククリーチャーとやらと遭遇したときの対処法を習ったんだ……。特殊なアイテムがどうのこうのって、明らかにミルたんの正拳突きのほうが効くだろ……」
そうか、大変な目にあったんだな……。
「よ、よかったじゃないか……。これからはダーククリーチャーと出くわしても勝てるぞ」
そう言った瞬間、松田と元浜はドロップキックを仕掛けてきた。
罪悪感の凄い俺はあえて二人の攻撃を喰らってやったのだった……。
*******
「ふい~、疲れたっす~」
「お疲れさま」
放課後。
補習を終えたミッテルトが一年の教室から出てくる。
今回の件は俺に責任があるため、彼女の補習が終わるまで、教室の前で待っていたわけだ。
これはミッテルトが昨日出した昨日の件を許すためのもう一つの条件でもある。
「こんな時くらいでないと、なかなか二人っきりっていうのはないっすからね……」
なんでも最近はアーシアも一緒に帰ることが多くなり、それももちろん楽しいのだが、二人きりになれないことが少しだけ寂しく感じたんだと。こういうところがあるから本当に可愛い奴である。
「そうだ、オカルト研究部行く前になんか買ってく?」
「あ、いいっすね」
早速購買にでも行こうと思った矢先、俺とミッテルトは旧校舎から何やら大きな
これは……、部長と同じ悪魔だな。
「なんスカね……?」
「さあ、でも、早くいったほうがよさそうだな……」
「……なんで今日に限って……」
ちょっとしたデート気分から一転して面倒ごとが起きたことを嘆くミッテルト。
気持ちはわかるけど、仕方がないよな……。
俺たちは急いでオカルト研究部の部室へと向かった。
**********
木場side
「そう、ミッテルトさんは補習で……」
「はい、それで、イッセー先輩も少し遅れるとのことです」
「うう、うらやましいです……」
クラスが同じだからかいつも小猫ちゃんと一緒に来るミッテルトさんが今日はいないことが気にかかり、聞いてみるとなんでも昨日のテストの結果がよくなかったようで、今日の放課後に補習を喰らったそうだ。
イッセー君もそれが原因で少し遅れるとのこと……。
アーシアさんは少し羨ましそうにしている。
「それにしても、最近部長の様子も変だし……、何かあったのかな……?」
「副部長なら何か知ってるかもしれませんね……」
そうこうしているうちに、僕たちは部室の前へと到着した。
部室を開けると何やら神妙な顔をした部長と副部長が待っていたんだ。
いったい何があったんだろう……。
そう考えながら、部室に足を踏み入れると、僕たち以外の存在がこの部室にいることに初めて気が付いたんだ。
「僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」
そこにいたのは、グレモリー家のメイドにして部長の義姉君、魔王サーゼクス・ルシファー様の奥方、グレイフィア・ルキフグス様だった。
なんでこの人がここに……?
「イッセーとミッテルトは?」
「少し遅れるとのことです」
「そう……」
小猫ちゃんの言葉を聞いて部長は少し悩むそぶりを見せる。
「時間がないからもう話すわね。実はあなたたちに話があって……」
瞬間、突如として部室の隅に描かれた魔法陣が光りだした。
これは転移現象……?でも部室にはイッセー君とミッテルトさんを除けば全員いるし、グレイフィア様もここにいる。
あれは……フェニックスの紋章?
「フェニックス……?」
そして光が晴れてその場に姿を現したのは金髪の男性だった。
「ふぅ、人間界は久しぶりだな……」
現れたのは赤いスーツを着崩したホスト風の男性だ。
その人は部長の姿を確認するや、少しいやらしい笑みを浮かべる。
「愛しのリアス、君に会いに来たぜ」
直接会ったことはないけど間違いない……。この男性がリアス部長の婚約者、ライザー・フェニックスだ。
**********
「いやー、リアスの『女王』がいれてくれたお茶は美味いな」
「痛み入りますわ」
副部長はニコニコしているがあれはかなり不機嫌になっていそうだ。
何度か噂で聞いたことがあるがあれが部長の婚約者……、実際に見るのは初めてだけど、すさまじい力を感じる。
もしかして最近の部長の様子と何か関係があるのかな?
「所でリアス、さっそくだが式場を見に行こうか、日取りも決まっているんだ、早め早めがいい」
「いい加減にして、ライザー!!」
先程から肩や髪を触られていた部長がとうとうキレたのか立ち上がってライザーを睨みつける、当の本人はヘラヘラと笑って余裕の笑みを浮かべているだけだ。
「以前にも言ったはずよ、私は貴方とは結婚するつもりはないと!私は自分の意志で旦那様を決めるって!」
「そうだったな。だがリアスよ。それを聞いて、はいそうですかとはいかないんだよ。
先の戦争で純血悪魔の大半が塵と消えた、戦争を脱したとはいえ天使、堕天使達とは拮抗状態にある。だからこそ純血の血を引く俺のフェニックス家と君のグレモリー家、二つの強い血を混ぜて更に強い新生児を生んでいく……これは俺と君の父上、そして魔王サーゼクス様の意志でもあるんだ。君は身勝手な我儘でグレモリー家を潰すつもりなのか?」
「家は潰さないわ!私は次期当主、婿くらい自分で決める。私が本気で好きになった人を婿にする。それくらいの権利は私にもあるわ」
部長が真剣な表情でそういうと流石に今まで余裕の笑みを浮かべていたライザーも不機嫌な表情になり舌打ちをする。
「……なあリアス、俺もフェニックス家の看板を背負っているんだ、だからこの名前に泥を塗る訳にはいかないんだよ。これ以上駄々をこねるっていうなら君の眷属を全員燃やしてでも君を連れ帰るぞ?」
そういうと、ライザーはすさまじいプレッシャーを放つ。
ライザーの体から炎があふれ出しチリチリと火の粉が舞う。
ぐ、なんてプレッシャーだ……。
このままでは……。そう考えたその時、後ろの扉が音を立てて開き、聞き覚えのある声が部屋の中に響き渡った。
「すみません遅くなりました」
「……ん?誰っすか?」
やってきたのはイッセー君とミッテルトさん。
一触即発だった空気の中、頼もしい二人がやってきたのだった。
**********
イッセーside
「なんだ貴様……、人間?なぜ人間がこんなところにいる?」
少し急いで部室に来た俺の前には妙なホスト風のチャラ男がいた。
何だこいつ……。悪魔なのはわかるけど、人間への嫌悪感を隠せていない……。なんていうか……、すげえ小物臭い。
「あなたがお嬢様の報告にあった今代の赤龍帝、兵藤一誠様にその恋人でおられる堕天使のミッテルト様ですか?」
そんなことを考えていた俺たちに話しかけてきたのはメイド服を着た強そうなメイドさんだ。
この人……、たぶん覚醒する前のフレイさん並に強いな……。
魔王種を獲得してるし、ただものではなさそうだ……。かつてメイドに化けていたルミナスさんという例もあるし、もしかしたら変装したこの世界の魔王様かも……?
そう思った俺はふとその疑問を口に出してしまった。
「ひょっとして魔王様か何かで……?」
その言葉を聞いて少し動揺した様子のメイドさん。
「……なぜ、そう思ったのですか?」
「だって、明らかにそこの赤い変な悪魔や部長より何十倍も強そうだったし、もしかしたら……と思いまして……」
少し腑に落ちたような顔をするメイドさん。反応から察するに魔王本人ではなさそうだな……、でも、近しい存在なのは間違いない。
「いいえ、違います。私はグレモリー家のメイドにして魔王であるサーゼクス様の
おお、魔王様の
ティアマットさんいわく、サーゼクスは悪魔の突然変異ともいわれる存在であり、
そういえば、サーゼクスさんは部長のお兄さんだって以前ティアマットさんが言っていたな。もしかしたらそれ経由でメイドをやっているのかもしれない……。
「貴様……、さっきからこの俺に対し、無礼だぞ!」
「あ」
そうだ、一瞬忘れかけてた。コイツいったい何者なんだ?
「そのお方はお嬢様の婚約者、ライザー・フェニックス様です」
部長の婚約者……。なるほど……。ふむふむ……。
・・・・・・・・・・・・
「……ってはあ!?」
「え!?部長結婚するんすか?」
「しないわよ!!私は認めてないわ!!」
ああ、なるほど。なんとなく理解した。
要するに親が結婚相手を決めたいわゆる政略結婚ってやつか……。
部長の話によると、純血の悪魔は戦争でかなりの数亡くなり、それで転生悪魔が生まれたわけだ……。
でもそれじゃあ純血の悪魔がいなくなるかもしれないから、悪魔の血を絶やさないために純血悪魔同士で結婚させようとか、そんな感じらしい。
部長が反対するわけだ……。それは部長の考えを無視している。確かに種の存続も大事なことなんだろうけど、普通に好きな人と結ばれたいという部長の気持ちもよく理解できる。
そもそも、長い寿命を持つ悪魔という種族においては、まだそこまで急ぐほどのことでもない気がする。
「ふん、そもそも人間ごときが立ち入っていい場所ではない!今すぐ消えるんだな……」
そういうとライザーは殺気とともに妖気を高める。
なるほど、部長と比べると上位の力を持っていそうだな……。魔王種とまではいかなくても普通にAランクオーバー、上位魔人程度の力がある。ライザーの殺気にあてられ、部長や木場たちは冷や汗を流す……。
でも……
「俺だってオカルト研究部の部員なんだ。立ち入る権利は少しくらいはあると思うんだけどな……」
「な、なに!?」
そういいながら俺も英雄覇気を放出する。予想を上回るオーラにライザーも冷や汗を流し出した。見下していた人間から異常なまでのオーラが出てることに戸惑っているようだ。
それでもそのプライドからか、ライザーは妖気とともに炎を出そうとする。
「おやめください、兵藤様、ライザー様」
そんな俺たちを見かねてかグレイフィアさんも魔力を放出しだした。
グレイフィアさんから発せられる魔力もかなり高いレベルだ。意識してか、無意識なのかは知らないけど、これは間違いなく魔王覇気だ。
さすがはこの世界最強の魔王様の配下筆頭ってところか……。ティアマットさんでも勝てるかどうかわからないという魔王さまの
よく見ると俺とライザー、グレイフィアさんのオーラが場を支配している影響で、部長たちにかなりの負担がかかっている。
ミッテルトはこの中で一番弱いアーシアをかばうように立ってるし、少し落ち着いたほうがいいかもな。
「私はサーゼクス様の命によりここにいます故、この場に置いて一切の遠慮はしません」
「すみません」
「最強の女王と称されるあなたに言われたら俺も止めざるを得ない」
俺たちがオーラを出すのをやめると安心したのか、部長たちはため息をつく。ライザーもかなり消耗したらしくソファーに腰掛ける。そんな中平然としているグレイフィアさんはさすがだな。
「大丈夫っすか?部長?」
「え、ええ。ありがとうミッテルト」
ミッテルトに支えられながら部長も腰掛ける。
なんか悪いことしたな……。後で謝っとこ……。
「グレモリー家もフェニックス家も当人の意見が食い違うことは分かっていました。ですので、もしこの場で話が纏まらない場合の最終手段を用意しました」
「最終手段? どういうことかしら、グレイフィア?」
部長はグレイフィアさんにそう質問すると、グレイフィアさんは話し続ける。
「お嬢様が自らの意思を押し通すのであれば、この縁談をレーティングゲームにて決着を着けるのはいかかでしょうか?」
レーティングゲーム……。
聞いたことがある。確か上級悪魔が己の眷属同士で競い合う冥界のゲームだ。
「お嬢様もご存じのとおり、公式のレーティングゲームは成熟した悪魔しか参加できません。しかし、非公式のゲームならば、半人前の悪魔でも参加できます。この場合、多くが──」
「身内同士か御家同士のいがみ合い、よね」
部長は嘆息しながら言葉を続ける。
「つまり、お父様方は私が拒否した時のことを考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようってハラなのね? ……どこまで私の生き方を弄べば気が済むのかしら……!」
まあ確かに、ゲーム感覚でこんなこと決められたらたまったもんじゃないよな。
「では、お嬢様はゲームも拒否すると?」
「まさか。こんな好機はないわ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」
レーティングゲームへ参加する事を了承する部長の言葉を聞き、ライザーは口元をにやけさせながらこう言った。
「ふん、無駄なことを。俺は何度もレーティングゲームを行った経験がある。そんな少ない人数で俺自慢の眷属たちに勝てると思っているのか?」
ライザーが指を鳴らすと再び魔法陣が光りだして光が晴れるとそこには15人の女性が現れた、そう、15人全員が女性だ。
騎士や魔法使い、小さな女の子といった美少女達がライザーの周りに集まる。
な、なんて光景だ。
う、うらやましすぎる……。
「な、なんだ?さっきまでと雰囲気違いすぎないか?」
「ああ、すみませんね。この子かなりスケベでして、実はハーレムというものにあこがれを持ってるんすよ。ほらイッセー、正気に戻るっす」
その言葉を聞いてライザー眷属の女の子と小猫ちゃんは汚物を見るような目で俺を見る。
「最低です。いつもそんなこと考えていたんですか?」
「キモいですわ」
ぐふ!?女の子たちの軽蔑の視線と侮蔑の声が俺の心を傷つける。
ち、違うんだ小猫ちゃん。確かにハーレムにあこがれは持ってるし作りたいとか考えることもあるけど、別にそれ目当てでオカ研入ったわけじゃないんだ。
「まあ、いい。今すぐ始めてもいいが、十日の猶予をやろう。せいぜいこの世界の友人に別れのあいさつでもしてるんだな」
別れだって!?どういう……
……ってそうか、もし部長が負ければ部長はもう人間界の学校にいられなくなるんだ。
そうなればオカルト研究部もなくなる。
もしかしたら眷属のみんなともお別れになるかもしれない。
それは絶対ヤダ。
ミッテルトもそのことに行きついたらしく、顔をしかめている。
「……一つ聞きたいんですけど、そのレーティングゲーム、眷属以外の人間が参加しても大丈夫ですか?」
俺の発言にグレイフィアさんやライザー、部長たちも驚いたように俺を見る。
少し考えるそぶりを見せた後、グレイフィアさんは口を開く。
「……公式なら眷属以外の参加は禁じられております。ですが、今回行われるのは非公式のレーティングゲーム。ルール上は問題ないかと思われます。まあ、相手から許可を取る必要がありますが……」
そう言って、グレイフィアさんはライザーを見る。
「俺は構わん。人間ごときの分際で俺をコケにした愚かさ。後悔させてやろう」
「なら、俺とミッテルトも参加する」
「また勝手に。でも、今回はうちも全力でやるっすよ……」
「ふん、今のうちにほざいておくがいい」
こうして俺たちの参加も決まり、ライザーとグレイフィアさんも戻っていった。
あと十日か……。
今のうちに準備しないといけないな。
そう考え、俺たちも今後の方針に合わせて話し合うのだった。