流石に私もどうリアクションすればいいのかわからないので……
イッセーside
おっぱいドラゴンショーの翌日。俺は一年生の教室の前にいた。小猫ちゃんとギャスパーのクラスの教室だ。
「あ、兵藤先輩こんにちは。……私の胸見ないでくださいね」
「こっちに来るの久々ですね。また他の女子から追いかけられてるんですか?」
「先輩……今度、ミッテルトちゃんと一緒でいいんで数学とか教えてもらっていいですかね? あ、セクハラは無しでお願いしますね」
男女問わず、一年生の後輩たちに声をかけられ、俺も軽い挨拶を返す。
それにしても、最初に比べると随分変わったな。変態三人組として俺の噂は入学したての一年生の中でも話題に上がってたらしく、当初は一年生達の目も酷いものだった。だが、ミッテルトを通して接していくうちに、少しずつ態度は軟化していき、今ではこうして割と友好な関係を築けているのだ。
「あら、イッセーも様子見?」
「あ、部長もですか?」
聞き覚えのある声が下方向に振り向くと、そこには部長の姿があった。
「ええ、ちょっと気になってね」
「まあ、俺もそうですよ」
今日、このクラスに転校生がやって来る。
フェニックス家のお嬢様────レイヴェルが転入してきたのだ。部長以上に生粋の箱入り娘であるレイヴェルは、勿論一般人の学校に通うことなど初めてだそうだ。
この学び舎できちんと生活できてるかどうか。それが気になってこうしてやってきたのだ。
部長と共に俺はクラスの中を見てみる。小猫ちゃんとギャスパーは目立たないところで会話してるな。レイヴェルは────お、いた。
相変わらず立派なドリル式縦ロールだ。学校の制服も中々どうして似合っているな。
「フェニックスさん、教科書はあるの?」
「フェニックスって珍しい苗字だね。カッコいい!」
「ギャー君に続いて外国の転入生が入ってくるなんて、このクラスでよかったわ!」
などとクラスの女子達に囲まれている様子。まあ、転入してきたばかりだしな。言い寄られても仕方がないか。外国からの美少女転入となると、今日ばかりは本当にアイドル扱いだろう。
対してレイヴェルは反応に困っている様子。絶え間ない周囲からの質問に四苦八苦してるみたいだ。
さっきから、「あ、あの……」とか「えーと……」といった感じで視線も行ったり来たりしている。相当困ってるな、アレは。
やがて、その視線が俺と部長の方に向かれる。それを見たレイヴェルは、途端に「失礼します」と席を立ち、俺達の方に近づいていく。
レイヴェルは俺と部長の手を取ると、そのままどこかに連れて行こうとする。廊下を曲がったところで手を離したけど……。
「だ、大丈夫か、レイヴェル?」
相当困ってたんだろうな。レイヴェルは気恥ずかしそうにして頬を染めている。
「……て、転校が初めてですので、ど、どう皆さんと接したら良いかわからなくてろ……。わ、私悪魔ですし、人間の方々とどう話せばいいか……」
まあ、そうだよね。ずっと悪魔の学校で過ごしてきた中、いきなり人間の平民の学校に来れば、どうすればいいかわからないよね。
「でも、会話をしたくないわけではないのでしょう?」
「も、勿論ですわ。わ、私だって、成長しているんです! 家族以外の方とお知り合いになって平民の生活から学ぶことだって大切だと思っているんです!」
部長の問いかけに答えるレイヴェル。
本当に立派だな。ライザーはスケベ方面の根性が高かったけど、この娘もこの娘で良い根性持ってやがる。
とはいえ、フォローは必要だろうな。ミッテルトは同じ一年だけど、クラスが違うし……ここは小猫ちゃんに任せるかな?
「よし。ちょっと待っててくれ。小猫ちゃんに────」
「……呼びましたか?」
おっと、呼びに行こうと思ってたけど、すぐ近くにいた。ギャスパーもいるな。レイヴェルを追ってきたのか?
「なあ、小猫ちゃん。お願いがあるんだけど、レイヴェルの話し相手……というか、学校生活のフォローをお願いしてもいいか? 同じ学年で同じクラス……同じ家で生活する仲間だしさ。頼むよ」
小猫ちゃんは学園アイドルの一人だし、クラスメイトとも上手くやってると聞く。最近では少し明るくなったと評判だし、小猫ちゃんを介して会話をつなげればレイヴェルもクラスメイトと打ち解けられると思うんだよな。
しかし、小猫ちゃんは不機嫌そうに眉毛を寄せ、三角口になっている。可愛いけど、なんだこの反応?
小猫ちゃんは複雑そうに少し考える。
「…………。……先輩がそう言うなら、別にいいですけど……」
そう答えてくれた。さすが小猫ちゃん! 頼りになる! こういう役回りはギャスパーにはまだ難しいからな!
「てなわけで、レイヴェル。小猫ちゃんがフォローして────」
「……ヘタレ焼き鳥姫」
俺の言葉を遮り、小猫ちゃんがボソリと呟く。
その言葉を聞いたレイヴェルはこめかみに青筋を浮かべている。
「い、いま、なんとおっしゃいましたか……?」
震えた声で聞き返すレイヴェル。
「……ヘタレ」
間髪入れずに返す小猫ちゃん!
え? どうしたの!? 何があったの!? 状況について行けてないんですけど!?
見ると、部長やギャスパーも驚いてる!
「あ、あ、あなたね! フェニックス家の息女たる私にそのような物言い……!」
「……そんなこと言ってるから、いざという時にヘタレるんじゃないの? イッセー先輩の手を煩わせるなんて……世間知らずの焼き鳥姫」
ブチンッ
何かがキレる音が聞こえた。レイヴェルは
小猫ちゃんは可愛い顔で睨み返してる。
「むむむむむ! わ、私はイッセー様のお手を煩わせるようなことなんて……! こ、この猫又は……!」
「焼き鳥姫」
……なんか既視感あると思ったらアレだ。カレラさんとウルティマさんだ。
ウルティマさんが煽り、カレラさんがそれを買う。丁度そんな感じの雰囲気だコレ。
「あぅぅぅぅっ……イッセー先輩、こ、怖いですぅ!」
ギャスパーも女子二人の迫力に恐れを抱き、俺の背後に隠れた。
まあ、無理もない。俺も怖い。カレラさんとウルティマさんの喧嘩もそうだけど、触らぬ神に祟りなしというか、仲裁しようとしてもロクなことにならない気がするんだよな。
でも、先輩として止めるべきなんだよな。俺は深呼吸をし、意を決して二人の間に割って入る。
「まあまあ、落ち着いて。同じクラスなんだから仲良くしろよ」
二人の間に入る俺。だが、二人の背後から猫と鳥の幻影がすごい形相でお互い期を睨み合ってる。
なんだろうコレ……イナズマ◯レブンの化身?
いや、イカンイカン。迫力に負けてる場合ではないな。うん。
「小猫ちゃんもレイヴェルもケンカしちゃダメだぞ? 俺ならいつでも頼ってくれていいからさ」
「「どっちの味方ですか!?」」
異口同音で聞かれる俺。そんな事言われましても……。
「あっ」
そこへ別の一年女子が通りかかり、持ってたプリントをバサッと廊下にぶちまけた。
取り敢えず拾おうとすると、レイヴェルが基地早く手を伸ばしてプリントを拾い出していた。
「大丈夫ですか? 確か同じ教室の……室田さんですわね」
「あ、ありがとうございます。覚えていてくれたんですね、フェニックスさん」
「レイヴェルでいいですわ」
レイヴェルはそう言いながら、プリントを拾い集めてる。
優しい子だな。自然に手が伸びたということは、それが彼女の本質ということだ。転校してきてすぐにクラスメイトの顔を覚えてるのもポイント高い。相手も感動してる。
続いて小猫ちゃんとギャスパーもプリントを拾い出す。
ふと、プリントを拾い合う小猫ちゃんとレイヴェルの目が合った。
「「ふんっ!」」
プイッと顔を逸らす二人……。前途多難かもな、これは。
「まあ、喧嘩するほど仲が良いっていいますし、この二人はこれでイイんじゃないっすか?」
隣のクラスからミッテルトもやってきた。どうやら、魔力感知で状況は把握してたみたい。
ミッテルトの言う通りかもな。犬猿のように見えてウルティマさんとカレラさんもなんやかんやで仲が良い。
レイヴェルはクラスメイトと打ち解けることもできたみたいだし、小猫ちゃんもなんやかんやで面倒を見てくれるだろう。
レイヴェルの学園生活はいいスタートを切れた。そう思うことにしよう。
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「それでは、作業を始めましょう」
「張り切っていくっすよ────っ!」
『お────っ!!』
放課後。レイヴェルの入部のあいさつが終わった後、俺達は部長の号令のもと、学園祭の準備作業に入っていた。
オカルト研究部の出し物はズバリ『オカルトの館』!
旧校舎全体を使っていろいろな催しをしようというもので、お化け屋敷に喫茶店、占い部屋にオカルトの研究報告など多種多様な催しを採用している。
旧校舎全体を任されてるオカルト研究部の強みを活かしたいい案だと思う。使ってない部屋とかも結構あるしな。
そんなわけで現在改装中。手作りで行ってるわけだが、中々に大変だ。ミルドさんやゴブキュウ親方のところでバイトをしてた経験がなければもっと苦労してたなこりゃ。
女子は衣装作りに模様替えを担当している。喫茶店やお化け屋敷の衣装を作りつつ、空いてる教室を専用のスペースに変えていく。
レイヴェルは初参加なだけあり、新鮮なことばかりで驚きながらも一生懸命手伝ってる様子だ。
「イッセー君は本当に何でもできるんだね」
「まあ、魔国では色々なバイトしてたからな」
警備隊に建築、服飾、鉄板焼、教師に研究員……我ながら本当に色々やってるな。
最終的には教師と研究員の二つに落ち着いたわけだが、この学生生活を通して、それまでの経験もしっかり生きてるのがよくわかる。
それでも人手の足りない感は否めないな……。まあ、旧校舎全体の改装となると、俺達だけだとどうしても手の届かないところが出てきてしまう。アザゼル先生とロスヴァイセさんは学園祭の会議で忙しいからな……。なんでも、学園祭当日の細かい部分がまだ決定してないとのことだ。確か、保護者への注意事項だったかな?
父さんと母さんは当日休みを取ったらしく、二人とも来る予定だ。まあ、アーシアとミッテルト中心になるっぽいけどね。
部長の親御さんは当然来るとして、サーゼクスさんやセラフォルーさんも張り切ってるとのこと。魔国勢も何人が来ると言ってたな……暴走しないことを祈ろう。
「イッセー! ここ、もう少し可愛い装飾にしてほしいっす。シュナさんとこで働いた経験生かしてアドバイスくれないっすか?」
そう言いながら、ミッテルトがやってきた。今回、ミッテルトは滅茶苦茶張り切っている。
というのも、今回の学園祭にはミッテルトの親御さんも来るとのことだ。
ミッテルトは父母と再会したあの日以来、文通を通して近況報告や色々なことを伝えているらしい。
場所が遠く離れてるから中々会えない親御さん達に会えること、案内をすることが楽しみで仕方がないみたいだ。
「ありがとうっす! ……イッセー、学園祭ではエロい事するんじゃないっすよ。見苦しいところをパパママに見せるんじゃないっすからね」
「わかってるって」
「ならいいっす! こっちも落ち着いたら手伝うんで、その間諸々頑張るんすよ」
そう言いながら、ミッテルトは駆け足で部長達のもとに戻っていく。
この注意も最近では日常になってきたな。それだけ、学園祭が楽しみなのだろう。
俺は微笑ましい気持ちにで木材をガリガリ削っていく。
ふとした時、木場が話しかけてきた。
「ねえ、イッセー君。ディハウザー・ベリアルって知ってるかい?」
「王者だろ。レーティングゲームの。愛と同じ無価値の力を持つ“皇帝”だ」
「そう。正式なレーティングゲームの現一位。ベリアル家当主にして“
俺自身会ったことはないが、この人の存在は実は前から知っていた。
こっちの世界にいた時のことをあまり語りたがらないクレーリアさんだが、兄貴分だったというディハウザーさんについては嬉しそうに語っていたのだ。
俺自身、映像越しに彼の戦いを見たが、中々に凄まじい使い手だった。
魔王種を獲得していることは確実。下手したら魔王であるセラフォルーさんより強いかもしれない。
「彼だけじゃない。ランキング二十位からは別次元の強さを誇り、トップテンは英雄とすら称される。ランキング五位から上はここ数十年変動がない。特に三位のビィディゼ・アバドン、二位のロイガン・ベルフェゴール、一位のディハウザー・ベリアルは現魔王に匹敵する最上級悪魔。数多くの試合の末に生み出された結晶だと褒め称えられている」
ビィディゼ・アバドン、ロイガン・ベルフェゴール。この二人も何度か映像を見ているが、甲乙つけがたい強さだ。だが、少しチグハグな印象も受けるという不思議な人達なんだよな。
少なくとも、ミッテルトや黒歌達はそんな違和感持ってないみたいだし、俺の考えすぎだとは思うんだけどね。
「レーティングゲームは悪魔の実戦不足を補うために作り出されたゲームだ。でも、ゲームと実戦は似て非なるもの。ゲームでは特殊なルールも多いし、実戦とは戦術の巡らせ方も異なると最近は見てる」
「まあ、そうだろうな。いろいろと特殊なルールもあるし、実戦が強くてもゲームだと足元すくわれる……なんてこともあり得るだろうな」
思い返すはミリムさん。ミリムさんは戦闘となると馬鹿みたいに強いが、ドッジボールや野球といったルールのあるゲームだと、その強さを発揮することなく倒されることもよくあった。
ドッジボールなんてルール聞いてなかったのかボールを後ろに弾いてアウト貰ってたしな。
少し違うかもしれないが、俺もレーティングゲームの特殊ルールには全く慣れてない。ルール次第では足元を掬われると見ている。
これはゲームを見た率直な感想だけど、多分俺とディハウザーさんが戦えば俺が勝つ。でも、レーティングゲームで戦うとなると、正直勝てる可能性は滅茶苦茶低い。俺がディハウザーさんとゲームでやり合うとなると、百回はレーティングゲームに挑戦しないと駄目だと思う。それほどまでに、ディハウザーさんはレーティングゲームを知り尽くしている。
ま、彼と戦うのは暫く先のことか。今は目前の課題を考えないとな。
「とりあえずはサイラオーグさんとの試合か」
木場も大きく頷いた。木場達も特訓で強くなってるし、データ通りならバアル眷属の人達に後れは取らないと思うが、油断はできない。
向こうも向こうで鍛えてるはずだし、何よりサイラオーグさんが相手では木場達ではまだ荷が重い。
「僕らには魔国よりもたらされた武器があるけど、それを差し引いてもサイラオーグ・バアルは強敵だ。こちらの手札は知られてないとは言え、油断はできないね」
実際、サイラオーグさんに確実に勝てるのは俺くらいだ。だが、参加する権利こそ得たもののルール次第では俺とサイラオーグさんがぶつからない可能性だって全然あり得る。
木場や小猫ちゃんなら善戦できるだろうけど、勝てるかは分からない。可能性があるとしたら、ゼノヴィアとリアスの必殺くらいだが、大振りの攻撃が簡単に当たる相手でもない。
「でも、負けるつもりはないんだろう?」
「まあね。もう少しで新技も完成するし、少なくとも負けるつもりはないよ」
新技か……最近何かを練習してるのは知ってたけど、どんな技なんだろう。楽しみだな。
「あ、イッセー。まだ作業してたのね」
「あれ、部長。どうしたんですか?」
ここでリアスがこちらにやってきた。ちなみにまだ部活動中なので部長呼びだ。メリハリはつけないとな。
「実は、サイラオーグの執事があなたにお願いがあるんですって」
予想外の言葉が告げられる。俺はその言葉に疑問符を浮かべるのだった。