帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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不死鳥の激励と子供の夢です

 イッセーside

 

 

 

 

 専用の待機室に案内された俺達。

 そこは部屋というより広いフロアで、休憩できるテーブル一式から軽く体を動かすためのトレーニング器具まで揃っていた。

 もちろん、俺を含めた眷属の皆はジャージに着替えて軽い調整を始めていた。

 今のうちに身体をほぐしとかないと、本番調子でないこともあるからな。

 え? 精神生命体もそんな事する必要あるのかだって? ぶっちゃけないけど、こういうのは気分だ気分! 

 

「邪魔をする」

 

 俺たちがトレーニングをしていると、見覚えのある男性が入室してきた。あれは……。

 

「ライザー!」

 

「お兄様!」

 

 その男性の登場に素っ頓狂な声を出すリアスとレイヴェル。

 そう、その男性とはライザー・フェニックスだった! 会うのは以前行った『焼き鳥復活計画』以来かな? なんにせよ、久しぶりって気はしないな。

 随分と顔つきも良くなってるし、エネルギーも上昇してる。どうやら、あれ以降もきちんと修行してる様子だ。

 しかし、何の用だ? 

 

「よー、来てやったぜ。レイヴェルも元気そうじゃないか」

 

 言うなり、ライザーはフロアの椅子に座る。

 朱乃がライザーにお茶を淹れ、ライザーがカップに口をつける。

 

「ゲームについて少し話そうと思ってな。今日のゲームはプロの好カード並みに注目を集めている。ゲームの流れもプロの試合と同じだろうな。観客も席を埋め尽くす勢いだし、その中でお前たちは戦うことになる。実戦とは違うエンターテイメント性を強く感じて戸惑うこともあるだろう。だが、これだけの大舞台だ。力を発揮すれば当然、評価にも繋がる。リアス、おまえにとって一つの正念場だ」

 

 ライザーは真面目にそう語っていた。

 プロとして、先人としての意見を向けてくれていた。

 ライザーに言われ、リアスは目を細める。

 

「……私はソーナほど戦の組み立てが上手くないし、サイラオーグのようなパワーもない。ここまで来れたのは眷属のお陰よ。自分が恵まれているのは十二分に分かっている。だから、この子達を上手く導けていない自分の未熟さが腹立たしいわ」

 

 リアスはポツリとそう告白する。それは今までずっと抱えていたであろう思いの吐露だった。

 リアスも不安なんだな。

 そりゃそうだ。どんなに気丈に振る舞っていてもリアスだって一人の女の子なんだ。

 王として気丈に振る舞っていても、内心ではずっと不安だったのだろう。

 リアスの言葉を聞き、ライザーが言う。

 

「戦術、パワー、眷属を導く力。それらは俺が嫌いな『努力』って奴を積めばある程度のものは得られる。だがな、巡り合い────良い人材を引き寄せる才能は別だ。この場にいる面子はおまえの持つ巡り合いの良さで集まった眷属だと思うぞ?」

 

「けれど、それは赤龍帝であるイッセーが引き寄せた部分も強いと思うわ」

 

「だが、赤龍帝と出会ったのはおまえの運命だ。おまえが持つ、引き寄せる何かが赤龍帝と引き合わせた。だから出会った。確かにドラゴンの強者を引寄せるという特性が働いたのかもしれんが、その赤龍帝と最初に出会ったのはお前だろう」

 

「そうっすよ。うちだって、部長の人柄は認めてるんすからね。イッセーや他の面々も、部長だからこそ支えようとしてるんすよ」

 

 確かにそうだ。俺が眷属候補になることを選んだのは、リアスの人柄に惹かれたからだ。正直、ソーナ会長や他の悪魔に誘われても、俺は首を縦には振らなかったと思う。リアスだからこそ、俺もミッテルトも支える気になったんだ。

 ライザーは真っ直ぐな目でリアスに言った。

 

「自信を持てリアス。こいつらはおまえの宝だ」

 

 ライザーの奴、良いこと言うじゃないか! 

 ライザーは自分の言ったことに恥ずかしくなったのか、頬をかきながら続ける。

 

「ま、元婚約者として応援してるぜ、リアス。────勝てよ」

 

「ええ、もちろんよ」

 

 ライザーの激励にリアスは憑き物が落ちたように、晴れやかな表情で応じる。

 王としての自分にずっと頭を悩ませているようだったから、ライザーのお陰でそれが少し楽になったようだ。こうして色々なことを抱えて、悩んで、乗り越えて、人も悪魔も成長していくのかもしれないな。

 

「赤龍帝」

 

 

 ライザーが俺を呼ぶ。ライザーは握り拳を作って、俺に向けた。

 

「お前の拳、忘れられないものだったぜ。お前はまだ悪魔になっていない以上、いつになるかは分からんが、また戦おう。その時はプロのレーティングゲームを見せてやるよ!」

 

「……応、約束だ。いつか必ず再戦しよう! ま、勝ちを譲きはねえけどな」

 

「抜かせ、勝つのは俺だ!」

 

 俺達はニッと笑って互いの拳を合わせる。

 あの惨めな引き籠もりは何処へやら、すっかり男の顔になってやがる。案外、ライザーも魔王級にまで成長するかもしれないな。今後、戦う時が楽しみだぜ。

 と、ここでライザーは何かを思い出したかのようにテーブルに目線を向ける。

 すると、テーブルからパァァァッと光る魔法陣が描かれた。あれはフェニックスの紋様……でも、ライザーはここにいるし、どういうことだ。大きさからして連絡用のようだが……。

 怪訝に思っていると、魔法陣から立体映像が投射され、若い女性の顔が映し出された。あの人は……。

 

「お母様!」

 

 レイヴェルは素っ頓狂な声を出す。

 映し出されたのは、以前に会ったフェニックス夫人だ。相変わらず綺麗な人だ。

 

『ごきげんよう、レイヴェル。急にごめんなさいね……なかなか時間が取れなくて……』

 

「い、いえ……それより、突然どうされたのですか?」

 

『……リアスさんとイッセーさんはいらっしゃるかしら?』

 

 とりあえず、俺とリアスがご指名のようだ。何の用だろう? 俺とリアスは取り合えず映像の前に立つ。

 

「ごきげんよう、おばさま。お久しぶりですわ」

 

「どうも、お世話になっています」

 

『あら、リアスさんにイッセーさんも久しぶりですわね。このような挨拶で申し訳ございませんわ』

 

「いえいえ、そちらの事情も把握してますし、仕方がないことですよ」

 

 現在、フェニックス家は総出で“フェニックスの涙”の製造を行っている。

 禍の団の影響で需要が高まり、生産が間に合っていないんだとか。リムルが“完全回復薬”を流してくれたおかげで少しはマシになったようだが、それでもその需要は変わらない。今、だいぶ大変なんだろう。お疲れさまです! 

 

『本当にごめんなさいね、リアスさん。うちのライザーのケアから、レイヴェルの面倒まで見て頂いて。本来なら、映像越しではなく直接出向くべきなのだけど……』

 

「いいえ、お気持ちだけで十分ですわ、おばさま」

 

 リアスの返事を聞いて申し訳なさそうに微笑んだ後、奥方の視線は俺に向けられる。

 

『それと、兵藤一誠さん。特に娘をよろしく頼みますわ。くれぐれも変な虫がつかないように守ってやってください。数々の殊勲を立てていらっしゃる赤龍帝が一緒なら、私も夫も安心して吉報を待てますので』

 

「へ、変な虫……ですか……」

 

 人間界で男がつかないように見ていろと? ま、まあ、レイヴェルは大事な後輩だし、守る分にはいいんだけど、俺も男だよ? 

 ま、まあ、そういうことなら手は出しませんとも。

 

「わかりました。俺に何処までできるかわかりませんけだ、娘さんは俺が守ります!」

 

 俺がそう言うと、奥方はパァっと明るい表情となり、レイヴェルは顔を真っ赤に染め上げていた。どうしたんだ、レイヴェルよ? 

 

『感謝いたしますわ。……レイヴェル』

 

「はい、お母様」

 

『貴方のすべきことはわかってますね? リアスさんやそちらにいらっしゃるミッテルトさんも立て、先輩方の言うことを聞いて、その上で兵藤一誠さんとの仲を深めなさい。家の名を汚さぬよう励むのですよ』

 

「勿論ですわ!」

 

 レイヴェルの気合の入った返事に奥方はいい笑顔を浮かべている。一体何だというのか……。

 

『あら、そうそう。実は、レイヴェルは現在、私の“僧侶”ということになっておりますわ。ライザーとトレードしたのでね。よーく覚えてくださいまし? 娘はフリーですわ。もしも、イッセーさんが悪魔になった時は、お願いするのもいいかもしれないわね』

 

「あ、はい……」

 

 この人、俺がもしも悪魔に転生したら、上級悪魔になるのは間違いないって思ってるのかもな……。

 今のリアスでも俺を正式な眷属にすることは無理だけど、未来は分からない。何百……いや、何千年先になるかはわからないけど、確かにレイヴェルを眷属にするのも面白そうではあるな。

 まあ、俺が上級悪魔になったら、“女王”の枠だけは誰にするか決めてるんだけどな。

 

「……ん? なんすか?」

 

「いや、なんでもねえよ」

 

 俺はミッテルトから視線を逸らし、奥方の言葉に頷いた。

 

「わかりました。実際、どれくらい先になるかはわかりませんけど、いつかはレイヴェルに“僧侶”の座をお願いしたいです!」

 

 それを聞いて、奥方は満足そうに頷く。

 

『こちらの用事は済みました。突然のご挨拶を許してくださいましね。それでは、皆さん。ごきげんよう』

 

 その言葉を最後に、光は弾けて淡い粒子となって消えた。

 それを確認したライザーは視線をレイヴェルに向ける。

 

「赤龍帝……くれぐれもレイヴェルを頼む。こいつも中々のワガママだが、一途な奴でな。泣かしたら燃やすぞ?」

 

「お、お兄様!? よ、余計なお世話ですわ!」

 

 レイヴェルが顔を真っ赤にして返していた。

 それだけ確認すると「俺も焼きが回ったもんだ」と自嘲しながら退室していった。

 ライザーも心配性だな。だけど、それだけレイヴェルが大切だというのも伝わってきた。

 俺たちへの激励と言い、もしかしたら性根は素直でお人好しな奴なのかもしれない。なにはともあれ、ありがとな、ライザー。

 と、心の中で礼を言っていると扉が再び開き、ライザーが顔を出した。

 

「そうだ、言い忘れてた。赤龍帝、さっきサーゼクス様からおまえを呼ぶように言われてたんだった。VIPルームの方でお待ちだ。なんでも見せたいものがあるそうだ」

 

「サーゼクスさんが? 分かった行ってみるよ」

 

 見せたいものってなんだろうな? 

 俺は首を傾げながらも単身、サーゼクスさんの待つVIPルームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで、俺はサーゼクスさんのいるというVIPルームに来ていた。

 広い上に豪華な家具が揃った部屋。煌びやかだし、まさにVIP専用の部屋って感じだ。少なくとも、俺達の部屋よりはるかに充実している。

 

「悪いね、イッセー君。試合前に呼び出してしまって」

 

 サーゼクスさんが朗らかに迎えてくれた。

 

「いえいえ。ウォーミングアップを済ませて、後は試合開始までゆっくりするつもりだったので。それで、俺に見せたいものというのは?」

 

「うむ、君の熱烈なファンがいいものを送ってくれてね。それを是非とも、君に見てもらおうと思ってね」

 

 サーゼクスさんはそう言いながら、テーブルに置いてある円盤を手に取り、俺に見せる。

 

「それはディスク? ビデオか何かですか?」

 

 サーゼクスさんは頷き、円盤をテレビ備え付けの再生機器に入れる。

 そして、テレビのモニターに映像が映し出される。モニターにいたのは俺の禁手状態を模した人形を手にした男の子の映像だ。ホームビデオのようだな。

 カメラに向かって男の子は勇気を持って口を開く。

 

『おっぱいドラゴン、こんにちは。ぼくはおっぱいドラゴンがだいすきです。うたもうたえます。こんどのゲーム、ぼくはみにいけないけど、おうちでおうえんしてます。だから、ゲームでかってね』

 

 ────っ! 

 これって……応援のビデオレターか!? 

 映像が切り替わり、今度は家の中で踊る幼い兄妹が映し出された。

 

『おっぱいドラゴン! だいすき! ずむずむいやーん!』

 

『ずむずむいやーん!』

 

 次の映像は両親と共に映る子供。俺とフォールンレディ、スイッチ姫の人形を持っている! 

 

『おっぱいドラゴン、おうえんしてます。そっちにいけないけど、ぼくはずっとおうえんしてます』

 

 子供達からの応援のビデオレター……。

 映像は何度も切り替わり、たくさんの子供達が俺に応援のメッセージを送ってくれていた。

 すげえ込み上げてくるものがある! 俺のこと、こんなにも思ってくれる子供たちがいるだなんて……! 

 

「今日のゲームは冥界全土に生中継されている。会場に来ている者だけではない。テレビの前で多くの子供達が君を見ているんだ」

 

 サーゼクスさんは部屋の奥から段ボール箱を持ってきて、机の上に置く。

 蓋を開けて中を見るとたくさんの手紙が丁寧に入っていた! 

 どれもこれもが心のこもった、世界に一つしかないファンレターだ! 

 ファンレターを持つ俺の手が嬉しさで震える中、サーゼクスさんはいう。 

 

「この子達は冥界の宝だ。今日の試合、大人の政治が絡む部分もあるが、君達がそれを気にする必要は一切ない。だからイッセー君、君にお願いがある。今日のゲーム、この子達のためにも戦ってくれないだろうか? 勝っての願いだとも思ってる鎌、それでも君に、この子達の夢を守ってほしいのだよ」

 

 ────この子たちの夢を守るため。

 そうだな。これだけの夢が俺の背にあるってんなら、それを守るのも“おっぱいドラゴン”の使命だからな! 

 

 

「……負けられない理由が増えました。子供達の夢、絶対に守り抜きます!」

 

 俺は全力を以て全ての想いに応えてみせる! 

 リアスのため、仲間のため、そして子供達のため……! 行こうぜドライグ! 

 

『ああ、相棒!』

 

 背負うものが多いほど、男は強くなると相場が決まっている! ゲームを制して、すべての思いに応えてやる! 

 俺は気合を入れなおし、拳を掌で叩いた! 

 

 

 

 

 

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