帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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ギャスパーの意地です

 イッセーside

 

 

 

 

『第二試合を終えて、バアル側は眷属が三名、グレモリーは一名リタイヤ。グレモリー優勢ですが、まだ分かりません! ゲームは始まったばかりだからです!』

 

 実況がそう煽る。

 ここで小猫ちゃんがリタイアするとはな……。正直、今の小猫ちゃんならサイラオーグさんとも殴り合えると思っていたが、想像以上にバアルの眷属達が強くなっている。

 勿論、サイラオーグさんもその例に漏れることなく、強くなってるに違いないだろう。

 

「冷静だね。小猫ちゃんがやられても感情を表に出さなかった」

 

 木場がそう言う。

 ああ、コイツラーヌと戦った時みたいに冷静さを欠くことを心配してくれてるのか。

 あの時は思い切り冷静さを欠いて滅茶苦茶ピンチになってたからな……うん、もしも基軸世界からの援軍が来てなければ確実に俺は誘拐されて小猫ちゃん達は死んでいただろう。本当に感謝しないとな……。

 

「まあ、悔しくないと言えば嘘になるけど……それ以上に小猫ちゃんに頑張ったと労いたい気分だな。仲間がやられて冷静さを欠いて負ける悪循環は避けたいし、こういうのは後で爆発させたほうがいい」

 

「なるほど。確かに、僕もその意見に賛成だ」

 

 そんな会話をしていると二人の王がダイスを振った。

 出た目は────リアスが6でサイラオーグさんが5。合計数字は11。

 またもやでかい数字だ。

 

「11か……よし、私が出よう」

 

「僕も出るよ」

 

 ゼノヴィアが一歩前に出る。それに続くように木場も前に踏み出した。

 

「ええ、わかったわ。ゼノヴィアと祐斗に任せようかしら」

 

 部長もそれに応じる。数字が後5も残っているが、ロスヴァイセさんは続けて出ることはできないし、小猫ちゃんはもういない。

 対して相手はまだ僧侶二人に戦車一人と最大で三人出せる布陣ではある。万全を期すならこちらも三人出したいところだな……。

 

「……ぼ、僕も行きます。そろそろ中盤ですし、何が起きるか分かりませんから……三人いたほうが有利かなって……」

 

 ギャスパーは恐る恐る挙手しながら言う。

 その意見に目をパチクリさせる。正直、ギャスパー自ら参加しようとするとは思わなかった。

 だが、弱々しい口調とは裏腹にギャスパーの瞳は決意に満ちている。

 これは戦う男の目だ。

 俺はリアスに目配せすると、リアスはフッと笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、ギャスパー。二人をサポートしてくれるかしら? 貴方の邪眼や吸血鬼の力で」

 

「は、はい。……ぼ、僕、男の子だし、小猫ちゃんの仇を討たなきゃ!」

 

 リアスの言葉にギャスパーは言う。全身を震わせながらも凄い気迫だ。いい試合だぜ、ギャスパー! 

 

「頼りにしているぞ、ギャスパー」

 

「僕も男の子だし、お互い頑張ろう」

 

「は、はい! ゼノヴィア先輩! 祐斗先輩!」

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 魔法陣で転移した三人が到着したバトルフィールドは岩がゴツゴツした荒れ地だった。

 足場が悪いな……まあ、今の木場に足場は関係ないのだが。

 身構える三人の眼前に敵が現れる。

 ヴェーブのかかったロング金髪のお姉さんにひょろ長い体格の男と、不気味なデザインの杖を携えた小柄な美少女……のような美少年。

 確か、ひょろいのが“戦車”で美少年とお姉さんが“僧侶”だったか。 

 

『グレモリーチームは伝説の聖剣デュランダルを持つ騎士ゼノヴィア選手、先ほどの試合でも華麗な勝利を収めた木場選手! そして、一部で人気の僧侶な男の娘、ギャスパー選手です!』

 

「「「「きゃ────っ! 木場きゅぅぅぅぅんっ!」」」」

 

「「「「うおおおおっ! ギャーくぅぅぅぅんっ!」」」」

 

 木場は相変わらずとして、それに負けないくらいギャスパーに声援を送る男性ファンが一部いやがる! 

 一部のみで木場ファンに引けを取らん存在感を放つとは……恐るべしギャスパーファン! 

 スゴい人気だな……ギャー助も侮れん奴だな。

 ちなみにゼノヴィアは男性よりも女性からの声援が多いな。

 騎士の女性というのもそうだし、ボーイッシュで豪快なところとかも受けているのかもしれないな。

 

『対するバアルチームは、僧侶のコリアナ・アンドレアルフス選手! そして、断絶した御家の末裔! 戦車のラードラ・ブネ選手と僧侶のミスティータ・サブノック選手! それぞれ断絶した元七十二柱のブネ家とサブノック家の末裔です! アザゼル総督、バアルチームには複数の断絶した家の末裔が所属しておりますが……』

 

『能力さえあれば、どんな身分の者でも引き入れる。それがサイラオーグ・バアルの考えです。それに呼応して断絶した家の末裔が彼の元に集ったのでしょう。断絶した家の末裔は現悪魔政府から保護の対象にされていると同時に、一部の上役から厄介払いと蔑まれているのが実情です。他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の悪魔は上に行けば大勢いますからな』

 

『ハハハハ、全くその通りです』

 

 先生の皮肉げなコメントに皇帝べリアルが笑って返す。

 その解説を聞き、バアル側の戦車ラードラと僧侶ミスティータが言う。

 

『その通り。我が主サイラオーグ様は人間と交じってまで生き長らえた我らの一族を迎え入れてくれたのだ』

 

『サイラオーグ様の夢は僕達の夢でもある』

 

『私も負けるつもりはないわよ』

 

 バアル眷属の両者の目は使命感で燃えている。お姉さんの方も闘志を燃やしてしっかりと三人を見据えている。

 

『第四試合、開始してください!』

 

 審判が開始を告げると同時に両チームは素早く構え、攻撃を開始する! 

 ギャスパーは即座に身体を無数のコウモリに変化させ、フィールドに散らばり、ゼノヴィアがデュランダルの波動を相手にぶつけんと初手でぶっ放す! 

 それを見たお姉さんは幾重もの魔力障壁を展開! デュランダルを防ぐ威力はないが、軌道をそらすには十分だったらしく、聖なるオーラは三人を避けるように霧散する! 

 その隙に死角から木場が聖魔剣でお姉さんを切り裂かんとする! しかし、それを鱗を顕現させたラードラが防ぐ! すかさずに美少年のミスティータが炎を放つが、その炎はギャスパーの邪眼で停止している! 

 ラードラの鱗と木場の聖魔剣がしばし拮抗するが、やがて木場が弾き飛ばされ、後退する! 

 それを見た観客たちは魅入るように静寂に包まれるが、やがて爆発したかのような大歓声に変わる! 

 

『……ラードラ、ミスティータ。サイラオーグ様から指示が届いたわ。まずはデュランダル使いから封じる!』

 

『『了解!』』

 

 そう言うと、ミスティータは全身から禍々しいオーラを立ち込めさせる! 

 それを見た木場は嫌な予感がしたらしく、即座にミスティータに向かうが、その前にラードラが立ちはだかる! 

 ラードラは尻尾と翼を出現させ、自らを巨大化させた! 

 

 ギャオオオオオオオオオンッ! 

 

 咆哮を上げるドラゴンとなったラードラ。やっぱりさっきの鱗は龍鱗だったか。

 

「ブネは悪魔でありながらドラゴンを司る一族……。けれど、変化出来るのは家の血を引く者でも限られた者のみ。今までの眷属の成長具合といい、ベリアル眷属とも戦えるレベルまで強くなったというのは伊達じゃないようね」

 

 リアスが苦虫を噛み潰したような表情をする。

 

『ドラゴン変化は情報にも無かった! 今までの眷属達といい、サイラオーグめ……どんだけの修行を課してきたのやら……」

 

 先生もそうコメントしていた。

 実際、今までのバアル眷属達はグラシャラボラス戦とは別人と思えるほどに成長を遂げている。そこまでの道のりは苦難の連続だっただろうな。

 ドラゴン化したラードラとゼノヴィア&木場の攻防が始まった! 

 

『聖魔剣っ!』

 

『デュランダルッ!』

 

 ゼノヴィアはデュランダルの波動帯びた一撃攻撃を繰り出すが、ダメージを与えられていない様子。木場もそのスピードで翻弄して何度も斬りつけているが、逆に聖魔剣のほうが刃毀れしてやがる……。

 アレは“地竜”の力で龍鱗を限界まで硬化させているのか。聖なるオーラも肉まで届かなければ意味がない。対聖剣使いに特化させた戦法と言えるだろう。

 

『私を忘れていないかしら』

 

 お姉さんはそう言いながら、ゼノヴィアの背後に周り魔力弾を放つ! しかし、その魔力弾はゼノヴィアに届く前に停止する! 

 

『邪眼! 何処から!?』

 

 お姉さんは周囲を見回すが、ギャスパーはどこにも居ない。

 やがて、お姉さんもガッチリと停止したようで動けなくなってった! 

 ギャー助の奴、()()()()()()むとはな……吸血鬼としての力を伸ばした結果か。

 

『恩に着るぞ、ギャスパー! そのままソイツを停めてくれ!』

 

 ゼノヴィア抜刀術の要領で回転し、デュランダルのオーラをそのままお姉さんの方に向ける! 

 ガッチリと停止しているお姉さんにその攻撃を防ぐすべはなく、デュランダルの直撃を食らう! 

 

『がはっ……』

 

 お姉さんはリタイアの光を放ちながら倒れ伏す。だが、その瞳はまだあきらめた様子がない。

 

『このまま役立たずのままじゃ終わらないわよ……』

 

 そう言うと、お姉さんは魔法陣を展開! その一つはゼノヴィアの影に向かい、ゼノヴィアの足と影をガッチリと固定! 

 一つはラードラに向かい、魔力的防御を高める“付与(エンチャント)”を、一つはミスティータに向かい、魔力障壁を展開している! 

 

『なっ!?』

 

 ゼノヴィアは足が動かないことよりも、影が動かないことに焦燥する! 

 そして、それを見たミスティータは叫ぶ! 

 

『よくやった、コリアナ! その力を封じろ!』

 

『させないっ!』

 

 嫌な予感を感じた木場がミスティータを聖魔剣で切り裂かんとするが、コリアナの障壁がそれを許さない! 

 あの結界、相当な強度だ……少なくとも、木場のパワーでは壊すのは難しいだろう。ミスティータもコリアナの結界を信頼してるらしく、木場を見ていない! その瞳はゼノヴィアに集中している! 

 ミスティータの杖は怪しく光り、ゼノヴィアの全身を捉える! 

 すると、不気味な光に包まれるゼノヴィアの体に気味悪い紋様が浮かび上がる! 

 

『あああああああっ!?』

 

『ギャスパーッ!?』

 

 ゼノヴィアの影からギャスパーが飛び出す! よほどのダメージを受けたのか、全身に火傷痕のような傷が浮かんでやがる! 

 それを見たゼノヴィア歯ぎしりするが、手元が震え、デュランダルを下に下ろしてしまう。

 

『これでデュランダル使いは封じた……後は任せたわよ……』

 

『サイラオーグ・バアル選手の僧侶一名、リタイアです』

 

 審判の宣言。しかし、反応はせずにゼノヴィアはデュランダルを見つめている。

 

『これは……デュランダルが反応しない……!』

 

 デュランダルが反応しなくなっている……まさか、彼奴の聖剣使いの因子を封じたのか? 

 

『僕は人間の血も引いていてね。神器、“異能の棺(トリック・バニッシュ)”。最近になってようやく使えるようになった能力だよ』

 

 神器! しかも最近開花させたばかりと来たか! 

 流石に俺の解析でも映像越しでは神器の有無は分からんからな。使えないのなら尚更だし。

 

『異能の棺か。自分の体力、精神力などを極限まで費やす事で、特定の相手の能力を一定時間完全に封じる神器。バアルの僧侶は自分の力と引き替えにゼノヴィア選手の聖剣を使う力を封じたようだ。しかも、ミスティータは消耗が軽微に見える……もしかしたら、他の者達の力も封じれるよう力を残してるのかもしれん』

 

 先生がそう解説する。

 聖剣を扱う力そのものを封じる。厄介だな。力に差があれば抵抗(レジスト)できるかもしれんが、ゼノヴィア本人にそこまでの力はない。

 相応のエネルギーを消費してるようだが、まだ余裕はありそうだ。木場やギャスパーも危ないかもしれん。

 

『本当なら聖剣を封じた余波で、彼女自身にも聖剣のダメージを与えさせようと思ったんだけどね……聖剣使いとしての才能は想像以上に濃かったようだ……。だが、邪眼使いの方はそうでもなかったようだね。吸血鬼だから当然だけど……』

 

 ミスティータは苦笑する。

 ゼノヴィアは聖剣を使えなくなったが、自身が聖なる力でダメージを受けるほどの封印はされなかったのか。

 だが、それは聖剣使いの因子を持つゼノヴィアだからこそ。逆に、ゼノヴィアの影に潜んでいたギャスパーには大ダメージだろう。

 そうこうしているうちにラードラは今のうちに無力なゼノヴィアを仕留めようと歩を進めていた。

 

『くっ、“聖覇の龍騎士団”っ!』

 

 木場は禁手を発動! 騎士団をラードラに向かわせる! 

 だが、長くは稼げそうにない。騎士団はスピードでラードラを翻弄こそしているが、騎士団の攻撃ではラードラの鎧は貫けない上、ラードラの一撃で鎧騎士は粉々となる。

 そして、木場は聖剣で何度も障壁を切り裂き、ミスティータを仕留めようとしていが、コリアナの結界はびくともしない。

 コリアナは落ち着いて詠唱を進めている。次は木場を狙うつもりか! 

 しかし、無数のコウモリが木場とゼノヴィア包み込み、同時にラードラとミスティータの視界を奪った。

 コウモリが居なくなると、そこにいたはずのゼノヴィアと木場は岩影に移動していた。

 ギャスパーが二人を避難させたんだな! ナイスフォローだ、ギャスパー! 

 

『ありがとう、助かったよ』

 

『すまない、助かったよギャスパー。だが、どうやら私は役立たずになりそうだ』

 

『そ、そんな事ないです! ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!』

 

 ギャスパーはゼノヴィアを励まし、腰に着けていたポシェットから小瓶、チョーク等の道具を取り出した。

 

『ぼ、僕、この手の呪いを解く方法をいくつか知ってます!』

 

 ギャスパーは手元に小さな魔方陣を展開させ、ゼノヴィアの体に当てる。

 どうやらゼノヴィアにかかった神器の呪いを調べている様子。

 

『逃がさん! 何処だ!』

 

 ラードラが地響きを立てながらゼノヴィアとギャスパーを捜し回る。

 魔力感知は覚えてないようだが、あの調子だと見つかるのは時間の問題だな。

 

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

 

『はい、手持ちの道具で何とかなりそうです』

 

 ギャスパーはそう言うと、ゼノヴィアを中心にチョークで魔法陣を描く。見慣れない紋様を描き、最後に俺の血が入った小瓶を持った。

 ギャスパーの力を底上げするために持たせておいたやつだな。

 

『今描いた魔法陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませる事で、呪いは解けると思います。ただ、解呪出来るまで少し時間が掛かりそうですけど……』

 

『待て、ギャスパー。その血を使えばおまえは────』

 

 困惑するゼノヴィアにギャスパーは満面の笑みを見せた。

 

『ゆ、祐斗先輩はここでゼノヴィア先輩を守ってください……い、今出たら、多分あの僧侶に力を封印されちゃいます……』

 

『……わかったよ、ギャスパー君』

 

 木場はギャスパーの覚悟を感じ取ったのか、神妙な顔立ちで頷く。それを見たギャスパーは暴れまわるラードラへと目線を向ける。

 

『ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました。今の僕にしか出来ないことを』

 

『ギャスパー……?』

 

 訝しげに感じているゼノヴィア。

 ギャスパーは魔法陣を完成させたのを確認すると笑みを浮かべる。

 そして、ギャスパーは立ち上がり────岩影から飛び出していった! 

 

『ぼ、僕が時間を稼ぎます! 呪いが解けたら、そのままデュランダルをチャージしてください!』

 

 アイツ、血も飲まずに単身で挑むつもりか! 

 

「無謀よ! ギャスパー! 隠れなさい!」

 

 リアスが叫ぶが、ギャスパーは走り出す。その表情は決意に満ちたものだった。

 ダメだな……あんな表情を見せられちゃあ、俺からはもう何も言えない。

 アイツも男なんだからな……。 

 

『ダメですぅっ! ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですぅっ! 部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!』

 

「いいから、早く逃げてッ!」

 

 リアスが再び叫ぶ! 

 だが、ギャスパーは覚悟を決めた瞳で二人を見据えている。

 眼前には既にラードラとミスティータが迫っていた。

 

『見つけたぞ、ヴァンパイアめ。あの剣士は隠したか。だが、貴様がここにいるということは近くにいるのだろう? 火炎を撒き散らせば出てくるだろうか』

 

 ドラゴンと化したラードラの巨躯に迫られ、全身を震わせているギャスパー。

 しかし、逃げる素振りを見せず、手を前に出して魔力を撃つ格好となった! 

 

『あ、暴れさせるわけにはいきませんっ!』

 

 やはり単独で行くつもりか。ゼノヴィアを守るために! 

 

『単独で臨むか。その勇気、敬意を払うべきもの。例え震えていようと勇気が無ければドラゴンの前に立つことすらできないからな』

 

 ラードラはギャスパーに敬意を払い、口元から火炎を勢いよく吐き出した! 

 

 ゴバアァァァァンッ! 

 

 ギャスパーは防御魔法陣で防ぎ、蝙蝠となってラードラを撹乱せんとする! 

 ────だが

 

『いくら小さい蝙蝠に化けようと、この弾幕は躱せまい!』

 

 ミスティータが魔力の弾幕をギャスパーに向けて放つ! 一発一発はそこまでの威力はないが、今の小さいギャスパーが食らえば大怪我する! 当然、威力は低いから範囲内にいるラードラの龍鱗には弾かれるだけ! 

 

『ううぅ……っ!』

 

 ギャスパーは防御魔法陣を展開し、身を守るがそれが決定的な隙となってしまう! 

 

『追い討ちのようで悪いが、確実に仕留めさせてもらうぞ!』

 

 ゴバアァァァァンッ! 

 

『うわああああぁぁぁっ!!』

 

 ギャスパーの背後から再び火炎を放つラードラ! 火炎はお姉さんの張った障壁に散らされてるため、ミスティータには効果がないがギャスパーは別! 

 防御魔法陣が破れ、ギャスパーは火炎に吹き飛ばされていく。

 火炎の一撃で大火傷を負うが、ギャスパーはよろよろと立ち上がる。

 

『……まだ、大丈夫です……』

 

 ギャスパーはまだ闘志を燃やしている! 

 それを見たゼノヴィアは咄嗟に叫ぼうとするが木場がそれを手で押さえる! 

 ゼノヴィアは非難するような目で木場を見つめるが、やがて悲痛な面立ちに変わる。

 木場が唇を噛みながら耐えているのを見たからだろう。木場だって飛び出したいだろうが、まだゼノヴィアが復活してない上、今出たところで力が封印され足手まといになる可能性が高い。

 苦渋の決断なのだろう……。

 

『あああああああっ!!』

 

 ギャスパーは悪魔の羽を展開し、ラードラの腕に食らいつく! 

 勿論、龍鱗を噛み砕けるわけもない! ギャスパーの口からは大量に血が流れ出ている! それでもギャスパーは噛み付くのをやめない! 

 

『離せっ! いつでも倒せる貴様とは違って、聖魔剣使いとデュランダル使いは早急に倒さねばならぬ! 特にデュランダル使いは今のうちだ! あの呪いの効果は有限だからな!』

 

 ラードラが空いている手でギャスパーを掴み────その手に力を込めてギュウッと激しくギャスパーを握り潰す! 

 メキメキと骨の軋む嫌な音が響き渡る! 

 

『うわあぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 ギャスパーがあまりの激痛に絶叫する。

 

「もうやめて!」

 

 アーシアも顔を手で覆い、絶叫した。

 ラードラは握りつぶしたギャスパーを地面に捨てる。

 ギャスパーはもういつリタイアしてもおかしくないレベルのダメージを負っている。激痛が全身を覆い、息もできない状態だ。

 血塗れでボロボロ。それでも、ギャスパーは這ってラードラに食い下がった。

 

『い、痛い……痛いけど……ぼ、僕は男の子だから……ゼノヴィア先輩を……待っててください……』

 

 その言葉を聞いたゼノヴィアは涙を浮かべ、口元を抑えていた木場の手をどける。

 その目には涙がこみ上げていた。

 

『邪魔だ!』

 

 ラードラに蹴られて地面を何回もバウンドするギャスパー。それでもあいつは這っていく。

 

『ぐ……グレモリー眷属男子……訓戒……其の一……男は女を守るべし……っ!』

 

 大量の血を吐き出しながらも、ギャスパーは立ち上がった。あの言葉は俺が部室で教えてやった言葉だ。

 

『……グレモリー眷属男子……訓戒其の二……男はどんなときでも立ち上がること……っ!』

 

 立っているのも難しい状態だというのに、ギャスパーは手元に魔法陣を展開させようとする────

 

 バキッ! 

 

 瞬間、ミスティータが歩み寄り、ギャスパーを杖で横殴りにした。

 非力だが、今のギャスパーにとっては必殺に近いダメージだろう。

 

『諦めろ。君では我々には勝てない』

 

 無情な一声。

 それでも、ギャスパーは岩を支えに立ち上がり、ラードラとミスティータを見据えた。

 

『……グレモリー眷属男子……訓戒……其の参……何が起きても決して諦めるな……っ!』

 

 ズンッ! 

 

 ラードラがギャスパーを容赦なく踏みつけた。

 足をのけると、ギャスパーはぐしゃぐしゃのボロボロになっていた。手足はあらぬ方向に曲がり、翼は原形すらとどめていない。

 もはや、まともに戦える状態じゃない。

 

『……ぼ、僕は……まだ……諦め……ない……ぼくは……部長を……勝つ……勝たなきゃ……』

 

 瀕死の状態でもギャスパーはまだ立ち上がろうとする。這うように体を動かし、少しずつラードラとミスティータに向かっていく。

 

 ────先輩。僕も皆さんのお役に立てるでしょうか? 

 

 ああ。今のお前は誰が見ても役立たずなんて言われねえ。今のお前は立派な男だよ。

 

「…………」

 

 リアスはあまりの光景を背ける。そんなリアスに俺は言った。

 

「リアス、目を背けるな。彼奴は貴方のために死ぬ覚悟で頑張っているんだ。貴女も彼奴の仕える『王』だというのなら、配下の覚悟を逃げずにしっかりと見てやってくれ」

 

 俺の言葉にリアスは涙を溢れさせるが────それを我慢して映像に視線を戻した。

 

「わかったわ。ごめんなさい、イッセー、ギャスパー」

 

 気丈に振る舞う部長。アーシアと朱乃が嗚咽を漏らし、ロスヴァイセさんは目に涙を浮かべていた。

 

『まだ動くか。その執念、恐れ入る。敬意を評し、一気に楽にしてやる』

 

 ラードラが口から火炎を吐き出そうとする。その時だった────―

 

『そうはさせない!』

 

 木場が火炎よりも速いスピードでギャスパーを抱きかかえ、退避する。

 その先にいるのはゼノヴィア。デュランダルから迸る聖なるオーラと、木場が作った禍々しい魔剣から生み出される邪悪なオーラが凄まじい質量を持っている。

 どうやら解呪は成功したようだな。ゼノヴィアはギャスパーに近寄り、目線を合わせる。

 

『すまなかった。私が不甲斐無いばかりに、おまえは……』

 

 ゼノヴィアは涙を流して、ギャスパーに謝る。

 そして、静かに立ち上がるとボソリとつぶやく。

 

『……足りなかった』

 

 ゼノヴィアはエクス・デュランダルと魔剣を掲げ、聖魔の力を融合させる。

 

『私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あんなものに捕らわれた。仲間のために命を懸ける覚悟がギャスパーよりも足りなかった。自分があまりに情けない……! 私は自分が許せなくて仕方がないんだ……っ!」

 

 聖なるオーラと魔のオーラがゼノヴィアの体を包み込み、より一層強く輝いていく! 

 画面越しからでも伝わる圧力! 凄まじい力がビリビリと伝わってきやがる! 

 

『どうすればいい? どうすればコイツの思いに応えられる? ああ、そうだなそれしかない! お前のために、コイツラ完全に吹き飛ばしてやる!」

 

 エクス・デュランダルから天高く立ち上る聖魔混合光の柱! あれほどの力をゼノヴィアだけではコントロールできない! だけど! 

 

『僕も同じ気持ちだよ、ゼノヴィア。ギャスパー君に応えるためにも、僕は力の限りをひねり出そう!』

 

 木場が魔の力のコントロールにリソースを費やしてやがる! 

 

 

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! 

 

 安定し、綺麗に混合した光を見て危機感を募らせるミスティータとラードラ! 二人は即座に神器と火炎を放とうとする────が

 

『なっ!?』

 

『停止の邪眼っ!? 馬鹿な!?』

 

 二人の動きがピタリと止まる! ギャスパーはリタイアの光りに包まれながらもしっかりと二人を眼に捉えていたのだ! 

 そして、ゼノヴィアは必殺の一撃を振り下ろした! 

 

『お前達はギャスパーに負けたんだっ! “光闇無影斬”ッ!!』

 

 ザバアァァァァァァアアアァァァンッ!!! 

 

 大質量のオーラの波動がラードラとミスティータを飲み込んだ! 

 ミスティータの障壁は儚く砕け散り、ラードラの鱗も粉砕されていく! 

 二人はリタイヤの光となって消えていった! 

 

『サイラオーグ・バアル選手の戦車一名、僧侶一名、リアス・グレモリー選手の僧侶一名リタイヤです』

 

 第四試合の終了を告げるアナウンスが流れると、ギャスパーはその場に倒れた。

 第四試合も勝利を得たが俺達は後輩二人を失った。

 本来なら俺達先輩が守るべきだった後輩が誰よりも奮闘した。

 小猫ちゃん、ギャスパー。

 二人の覚悟はしっかりと受け取った! この借りは必ず相手に返す! だからしっかり休んでてくれ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コリアナ・アンドレアルフス
EP 14万6633
種族 悪魔
加護 バアルの加護
称号 バアル眷属“僧侶(ビショップ)
エクストラスキル 賢者
バアル眷属の僧侶。神器や固有魔力などの特殊な力はないが、エクストラスキル“賢者”を習得しており、思考加速と演算強化の力で眷属内では最も魔法を構築する速度が速い。


ミスティータ・サブノック
EP 17万3080
種族 悪魔
加護 バアルの加護
称号 バアル眷属“僧侶(ビショップ)
神器 異能の棺(トリック・バニッシュ)
バアル眷属の僧侶。相手の力を封じる封印系の神器を宿している。原作では一人にかけるだけで激しい消耗をしていたが、今作では修行の結果二人(調子の良い時で三人)まで封印が可能となった。禁手はまだ、習得してない分強化の余地はあるとのこと。


ラードラ・ブネ
EP 26万6950
種族 悪魔
加護 バアルの加護
称号 バアル眷属“戦車(ルーク)
エクストラスキル 竜変化、
バアル眷属の戦車。エクストラスキル“竜変化”は竜に変化するというブネの特性をさらに引き上げるもので、地竜、火竜、水竜と属性を変更することができる。
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