イッセーside
ライザーとのレーティングゲームを行うことが決まった次の日。
俺たちは修行のため、部長の所有する別荘で泊まり込むことが決まった。
山頂近くにあるというため、山道を歩いている。
これがなかなかいい景色だ。風も気持ちいいし、花のいい香りもする。
父さん母さんにも見せるため写真でも撮ろうかな?
「よ、余裕だねイッセーくん」
「ん?」
まあ確かに余裕ではあるが、そこまで驚くことでもないだろう。
俺もアーシアとミッテルトの分の荷物も持っているとはいえ、大きさは小猫ちゃんのとそこまで変わんないはずだ。
木場の荷物よりは重いと思うけど、そこまで驚くことでは……。
「私は戦車だから持てるのであって、普通の人間には無理だと思います」
あきれたようにつぶやく小猫ちゃんを見て俺もハッとする。
小猫ちゃんは自分の体の倍近いリュックを背負っている。重量からして60~80キロはくだらない。オレも似たようなもので確かに普通の人間にはこれ持ちながら登山とか無理か……。
「まあ、鍛えてるってことで納得しとけ」
そう言いながら俺は山頂を目指して再び歩きだすのだった。
*******
「おお、此処が部長の別荘ですか!?」
「かなりの豪邸っすね!」
ミッテルトの言うとおり、部長の別荘というのは世間一般でいえば豪邸といって差し支えのないものだった。
さすがは魔王様の妹といったところか……。まあ、あんなに強い人をメイドにしているくらいだしな。
「じゃあさっそくジャージに着替えて修行しましょう。私たちは二階を使うからイッセーたちは一階の部屋を使って頂戴」
「分かりました」
どうやら遊びは入れずさっそく修行に入るつもりのようだ。
まあ、部長からすれば人生……いや、悪魔生がかかっているわけだし、当然のことか……。
……いや、待てよ……。これってのぞき見するチャンスなんじゃないか?
魔力感知……は駄目だな。ミッテルトがしっかり対策取っているだろう。
隠形法で気配と魔力を隠せばワンチャン行けるか?
「無駄っすよイッセー。うちの目をごまかせるとは思わないことっすね」
そんなこと考えてると耳元でミッテルトがささやいてきた。
チクショウ!見透かされてやがる……。
ま、まあいい……。合宿期間は長いんだ。いかにミッテルトといえど集中を持続することは困難なはず。
覗くチャンスはいくらでもあるんだ。
「じゃあ、僕も着替えてくるよ」
「おう」
そういいながら木場はジャージをもって浴室へと向かう。
すると何をとち狂ったのか振り向いてわけのわからんことをぬかし出した。
「覗かないでね」
「誰が野郎の着替えなんて覗くか! マジで殴るぞ、この野郎!」
「ははは、冗談だよ」
冗談に聞こえねえんだよ……。ただでさえ最近「木場×イッセー」がどうとか訳のわからん事噂されているしよ……。
修行の時覚えてろよ……。そう思いながら俺も着替えるのだった。
**********
着替えの終わった部長たちは俺、ミッテルトと向かい合うように整列していた。
今回の修業での俺たちの主な役割は皆を鍛えることだ。
理由は言わずもがな、俺たちのほうが部長たちよりも強いからだ。
魔力や身体能力のどれをとってもここにいるみんなでは俺はおろかミッテルトの足元にも至っていない。
俺たちが指南役になるのは自然なことだろう。
これは部長の頼みでもある。
「では、これより修業を始めるけど、その前にやっておきたいことがある」
「やっておきたいこと?」
俺の言葉を聞き、少し不思議そうな表情をして部長が訪ねる。
「今から部長たち眷属全員、俺と戦ってもらいます」
「え、どういうこと?」
いきなり俺と戦ってもらうといわれ、皆困惑しているようだがこれにはちゃんと訳がある。
俺たちはまだ部長の能力のすべてを知っているわけではない。
俺たちがみんなの戦闘をちゃんと見たのはバイサーとの戦いのときだけだ。
アーシア救出の時はまじまじと見る暇なんてなかったしな。
……というわけでみんなの正確な実力や
そのことを話すと皆顔を引き締める。
「じゃあ、どういう順番で……」
「あ、順番とか関係なく一斉にかかって大丈夫ですよ。滅びの魔力や神器を使っても構いませんから」
その言葉にみんなピクリと眉を動かす。そこにはかなりの怒気が感じられる。
俺のほうが強いというのはさすがにみんな分かっているけどそこまでなめた態度は許容できないってところかな?
「なめられたものね……。いいわ。私たちも全力でやってあげる。後悔しても知らないわよ!」
そういって部長を含めたグレモリー眷属全員が臨戦態勢に入る。
最初に飛び出したのは木場だ。炎の出る剣を携え、俺に突進してくる。
「行くよイッセー君!」
木場は“
なんていうか、男心をくすぐるかっこいい神器だな。
創ることができる魔剣も
木場が今創った剣には炎が付与されており、あたると並みの奴ならやけどじゃ済まなさそうだ。
すると木場の姿が一瞬ぶれる。
木場の駒は『騎士』、その特性はスピードだ。
そのスピードを活かし、一気に攻め落とす。
それが木場の戦いなのだろう。
だが、俺には通用しない。
剣筋はなかなかのものだがいささか素直すぎだ。
俺は木場の剣を見切り、炎の魔剣をへし折った。
「なっ!?」
すぐさま新しい魔剣を作り出そうとするが、木場が剣を作るのにかかる時間はおよそ2~3秒。
100万倍の思考加速を持つ俺にとっては遅すぎる。俺は木場の腹に掌底を食らわせ、木場を吹っ飛ばした。
「裕斗!?」
「私が……」
俺が木場を吹き飛ばしたと同時に小猫ちゃんが駆け出す。
すると小猫ちゃんは俺に向かってパンチの連打を放ってきた。
俺はそれを楽々かわすがなかなかのパワーを感じられる。小さいのに大したものだ。
「今、小さいって言いましたね?」
……だからさあ、なんでみんなナチュラルに俺の心を読むかなあ。ミッテルトといい絶対おかしいって……。
小猫ちゃんの怒りのパワーで先ほどよりも攻撃が鋭くなってきてる。
どうやら小さいことを気にしていたようだな……。
ここは先輩として慰めたほうがいいのかな?
「べ、別に小猫ちゃんは今のままでも十分可愛いと思うよ。ほら、なんていうか、ロリっ娘って感じが最高だしさ」
「殺す」
俺の言葉にぶちぎれたらしく、小猫ちゃんはさらに連打の回転数をあげてきた。
一発一発が中心線を的確に狙ってきてる。
腰も入っているし、かなり重たい一撃になりそうだな。
しかしそれゆえに狙いがわかりやすい。
俺は小猫ちゃんが放った拳を片手で受け止める。さすがに予想外だったらしく、小猫ちゃんはギョっと驚いた表情を見せる。
しかし、すぐに冷静さを取り戻し、小猫ちゃんはすかさず回し蹴りを放つ。
俺はそれを片手で受け止め、勢いに沿って小猫ちゃんをぶん投げた。
「くっ……。今です!」
おっと?ここまで計算通りだったのかな?
小猫ちゃんが俺から離れた瞬間、突如として雷が俺に落ちてきた。
いわずもがな、朱乃さんの雷だ。
「うふふ、油断大敵ですわ」
「こっちのセリフですよ」
「!?」
今の不意打ちをよけられたとは考えていなかったみたいで朱乃さんは驚いたようにこちらを見る。
俺からすれば、魔力感知で常に周囲の状況を把握できるわけだから、そもそも不意打ちが成立していないんだよな……。
動揺する朱乃さんに対し、俺は即座に近づき、朱乃さんを片手で投げ飛ばした。
「がは……」
『女王』は『戦車』の特性も持っているらしいけど朱乃さんは典型的な
「朱乃!くっ、滅びよ!」
焦った部長は俺に対して滅びの魔力を放ってくる。
俺はそれを片手でいなし、はるか上空に打ち上げた。気操法で腕を魔力でガードしているため、ダメージはまったくの皆無だ。
「嘘……。滅びの魔力を素手で……?」
信じられないといった風に呆然とする部長。だが、それは完全に悪手だ。
戦闘中に棒立ちなんて自殺行為以外の何物でもない。
「気持ちはわかりますが、戦闘中に思考を止めるのはよくないですよ」
「え?……ってキャア!」
最後に俺が部長に背負い投げ。とっさのことでこちらも受け身をとることすらなく倒れ伏せる。こうしてこの模擬戦は幕を閉じた。
**********
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとうアーシアちゃん」
「いたた……」
「全く手も足も出なかった……」
「……くやしいです」
アーシアの回復の元復活した部長たちを尻目に俺は今後の方針を考える。
……よし。
「だいたいわかったんで、方針を決めますね」
俺の言葉に一斉にみんなが俺のほうを向く。
少し気恥しいが進めるか。
「まず、部長と朱乃さん。あなたたち二人はもう少し接近戦の動き方を学んだほうがいいと思います」
「……それはどうしてかしら?」
「お二人は魔法の威力はすごいんですよ。でも、それに頼ってばかりだから近づかれると途端に脆くなる。だから、せめて近づかれても簡単にはやられないようにもう少し接近戦の動き方を覚えたほうがいいと思います」
正直言って魔法使いというのは総じて近づかれたら脆くなるものだ。だからこそ、それを克服するための手段を模索しなければならないと俺は考えている。
実際、ファルメナスの魔人ラーゼンも武闘を嗜んでおり、接近戦でもかなりの強さを誇っている。ウェンティさんと融合したアダルマンさんに至っては、そっちが本職なのでは?と思うような拳捌きを披露してくれたしな……。
あの人たちも近づかれたら脆いという魔法使いの弱点を克服した存在である。
他にもミュウランさんのように小技を駆使して戦うという方法もあるが、俺は魔法は専門じゃないためさすがに教えることはできないからな……。
「まあ、しばらくしたらティアマットさんも来てくれるらしいですし、魔法関連は彼女に教えてもらいましょう。それまでは俺と格闘の訓練をしてもらいます」
「わかったわ」
うん。いい返事だ。お次は……。
「次は木場だ」
「う、うん」
「木場の剣術の技量はなかなか高いけどお手本通りって感じがするんだよな……」
「お手本通り?」
「木場の剣は剣術のお手本ともいうべき動きだけどそれゆえに読みやすいんだよ。今までは作れる魔剣の自由度が高いのと、スピードのおかげで気にならなかったんだろうけど……」
お手本通りの剣ではいざという時の対応力に欠ける。
例を挙げれば朧流の達人であるハクロウさんは実戦では流派を踏襲しつつも臨機応変に変幻自在の剣撃を繰り出してくる。
だから型がわかっていても防ぎにくいんだよな。
他にも剣也はよくわからん構えから鋭い一撃を放ってくる。
剣筋の読めなさでいえば剣也が一番かもしれない。
木場は“
なんていうか……、神器とスピードに頼りすぎている印象が強い。
「まあ、俺も剣の腕はそこそこしかないからなんともいえないけどな。だから……」
「木場っちはうちが見てあげるっすよ」
「ミッテルトさん……」
木場に関してはそれが一番だと思う。
謙遜はしているがミッテルトの腕前は魔国連邦でもトップ20くらいには入るほどの剣技を持っている。
俺がとやかく言えることでもないし木場のことはミッテルトに任せよう。
「んで、小猫ちゃんだね」
「はい」
「小猫ちゃんは連打の際も的確に中心線を狙ってきた。でも、それにこだわりすぎって感じかな?木場ほどのスピードもない分動きが木場以上に読みやすいんだ。攻撃が単調すぎる。君ももう少し小技学んだほうがいいかな?」
「……そうですか」
あまり自覚がなかったのだろう。少しショックを受けている。
というか、攻撃が単調というのはグレモリー眷属全員に当てはまることだ。
部長もまっすぐにしか滅びの魔力を飛ばさなかったし……。
なんていうか、戦いの駆け引きを知らなさすぎる。そのことから察するに……。
「たぶんだけど、部長たちは今まで自分よりも強い奴と命がけで戦ったことがなかったんじゃないですか?」
その言葉にみんなは思案顔になる。
「……そうね。確かに私たちは苦戦なんて一度もしたことがなかったわ」
「そう。今まで貴方たちは弱い相手としか当たらなかったからゴリ押しでも勝つことができた。でも、それで実戦経験を得たと考えるのは勘違いですよ。正直言って……、今のままでは部長たちだけでライザーたちには勝てないと思います」
その言葉にみんなが驚いたような顔になる。修行やる分実力差や危機感は持っているのだろうけど、それが弱い気がする。
「上級悪魔だから強くて当然。今まではぐれ悪魔たちを倒せたのも自分が強かったから……。そう考えていたかもしれませんけど、生来の強さに頼ってばかりじゃ、真に強くなることはできません。重要なのは
俺も最初は弱かった。普通の人間だったから当然ですけど、それでも修行して戦って強くなったんです。部長たちもそのことを肝に銘じてください」
「「「「はい!」」」」
よし。気合十分だな。
この調子ならみんな強くなれそうだ。
「あの、イッセーさん。私はどうすれば……」
「アーシアは皆の回復と結界などの防御魔法を覚えることに徹してくれ。アーシアは完全に後方支援型。正直言って戦えるタイプじゃないからな」
「そうですか……」
俺の言葉に少しアーシアは落ち込んでしまった。少し落ち込んでいるが、別に役立たずと切って捨ててるわけじゃない。
「いいかアーシア。別に戦えないことは悪くない。むしろ戦いなんてないほうがいいんだからな。
それにアーシアの神器は本当にすごい力だと思っている。だってアーシアが傷を治してくれると考えればそれだけで安心感が生まれるからな。だからこそ、アーシアには回復の力の強化と自分が死なないように防御の方法を学んでほしいんだ。決して役立たずなんかじゃないから安心しろよな」
「イッセーさん……。ありがとうございます」
その言葉を聞いてアーシアは安心したようだ。アーシアの性格からあまり攻撃に徹することはできなさそうだし、今はこの方針で問題ないと思う。
回復係が戦場にいるいないでは安心感が桁違いだからな。
本当は神聖魔法とか教えたいけど悪魔になったばかりのアーシアでは難しいと思う。
そもそもこの世界の神が祈る対象としてちゃんと適用されるのかわからないしな……。
ヒナタさんやシュナさん、アダルマンさんはともかく、ミッテルトは今も自力での霊子運用は難しいらしい。
ミッテルトはリムルという存在を信仰の対象にしてるからその力を借り受ければ
この世界の神が“信仰と恩寵の秘奥”を使うことができるかわからない現状では神聖魔法を教えることはできないな。
**********
現在夜の12時過ぎ。
詰め込みすぎもよくないので修行を切り上げ、夜中のうちにたっぷり休息をとるよう皆に言っている。
今部屋で起きているのは俺とミッテルトの二人だけだ。
「書いといたぞ。みんなの今の存在値」
「イッセーの権能ってこういうところほんと便利っすよね。存在値丸裸にするってラミリス様の迷宮くらいでしかできないのに……」
まあ、存在値まで測れるのは我ながら本当にすごいと思うけど……、俺の
今では純粋に存在値のみを測れるようになっているからいいけど、昔は男のスリーサイズとか知りたくないものまで知ってしまったりとわりかし苦労したな……。
そんなどうでもいいこと考えながらみんなの現時点での存在値を紙に書きだした。
リアス・グレモリー
EP 10023
姫島朱乃
EP 9124
木場裕斗
EP 8953
塔城小猫
EP 8025
アーシア・アルジェント
EP 3079
現在の皆の存在値はこんな感じ。
唯一部長がAランクで朱乃さんがA-ランク。木場と小猫ちゃんがBランク上位クラスの力があって、アーシアが魔力量のみでギリCランクといったところだ。
ちなみに、存在値は身体能力と魔力のみで技量までは測れないけどそれ込みだと一番強いのは木場だろう。木場の剣術は実戦さえ積めばいい線いってると思うしな。
対してライザー眷属はほとんどがC+~Bランクであり、Aランクの手練れも何人か混じっていた。
ライザー本人に至ってはEP7万を超えており、Aランクオーバーの上位魔人級はあるのだ。
まあ、俺とミッテルトがいるからライザーはどうとでもなる。
でも、頼りすぎてもだめだと思う。
もし俺たちがライザー眷属相手に無双すればたぶん5秒かからず片付けられるけど、それでは部長が評価されることはない。
あくまで部長たちの戦いなのだから俺たちはほどほどで済ませたほうがよさそうだな。
部長たちが本当にピンチになったらさすがに別だけど。
……とはいえ。
「迷宮でもない場所での訓練じゃあ、やることは限られるな……」
「そこまで劇的に強くするのもうちらじゃあ難しいっすからね……」
前途は多難だな……。
そう考えながら、俺たちは今後の方針について話し合うのだった。
EP知らない人のために念のため
EP=魔素量や身体能力などを数値化したもの。目に見えない
現に数倍以上のEPの差があったとしても技量が高ければ圧倒できることもある。
EP1000未満=Eランク
EP1000~3000=Dランク
EP3000~6000=Cランク
EP6000~8000=Bランク
EP8000~9000=B+ランク
EP9000~10000=A-ランク
EP10000~100000=Aランク(
EP100000~400000=特Aランク(
EP400000~800000=Sランク(
EP800000~1000000=特Sランク
EP1000000~=