??? side
「うむ、あの吸血鬼の坊主、なかなかいい根性しとるのう……妾の部下にも見習わせたいものじゃ」
特別に用意されたVIPルームにて、美しい銀髪と“
実力で大きく劣ろうとも、勝利のためにその身を捧げる姿には好感が持てたのだろう。
「うむ、イッセーの後輩というだけのことはあるのだ……」
「ああ。最初は男の癖に女の格好する軟弱やろうだと思っていたが、なかなかどうして根性あるじゃねえか……」
桜金色の少女と、その後ろに控える大男が言う。それを聞いたシオンがギロリと大男を睨む。
どうやら、よく女装をしている(させられてる)主人を悪く言われたと思ったらしい。
もっとも、それを口に出さない辺り成長したなとリムルは思った。
大男はそれに気づき、あわてて話題をそらそうとする。
「ま、まあ、それはさておきだ。他の奴らもなかなかやるじゃねえか。特にあの剣士の女はなかなかのパワーだったな」
「そうだね。まだまだ粗は目立つけど、何やらシンパシーを感じるよ」
カレラはそう言いながら頷く。カレラもゼノヴィアもパワー重視の剣士なだけあり、近しいものを感じている様子だ。
「ただ、私としては一番気になるのはあのバアルという男なんだよね。どうやら、“黄”の因子を持ってるようだし……」
「ああ……そういえば、この世界の悪魔はおぬしら“
カレラの言葉に銀髪の少女は呟きながら、グレモリーとバアル。二つの眷属たちに目を向ける。
「あのグレモリーとか言う娘の眷属も、バアルとやらの眷属もなかなか面白いものじゃ。イッセーが気をかけるだけのことはある……」
「うむ、ワクワクする試合ばかりなのだ!」
桜金色の少女が目を輝かせる様を微笑ましそうに見つめるリムルは飲み物を口につけ、会場に視線を戻した。
「さてと、ここから先の戦いはどうなるのかな……」
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イッセーside
第四試合を終えて、それぞれの陣営の数が減ってきている。
俺達グレモリー眷属はリアスに朱乃、木場、ゼノヴィア、アーシア、ロスヴァイセさん、そして俺の七名。
対してバアル眷属は王のサイラオーグさんに女王、それから例の仮面の兵士の三名のみ。
『さあ、戦いも中盤を超えようとしているのかもしれません! サイラオーグ・バアル選手のチームは残り三名! 対するリアス・グレモリー選手のチームは残り七名と現在はグレモリーチームが優勢であります! 有利なのはグレモリードームですが、バアルチームの残りのメンバーが強力です! 巻き返しとなるか必見です!』
実況が会場を盛り上げる。
数は俺達が圧倒的に有利。だが、油断はできない。他の連中もグラシャラボラス戦とは比べものにならないほど強くなっているんだ。サイラオーグさんは勿論のこと、あの女王……そして、獅子の子である兵士も油断ならないだろう。
サイラオーグさんは明らかに別格。俺が対処するしかない。
問題は────
「相手の兵士は駒消費7だったよな?」
俺の問いに木場が頷く。
「うん。不気味だね。少なくとも今まで出てきたバアル眷属よりも強敵なのは間違いないと思うよ」
相手チームは駒価値的に単独でしか出場できないが、駒価値が大きいと言うことはそれだけの力量があること。
存在値換算でも一人だけ五十万を超えているし、
どこで投入されるかはわからないが、今後の出し方次第では追い込まれることもありうるだろう。
そうこうしているうちに第五試合の出場選手を決めるためのダイスシュートが行われる。
サイラオーグさんの手元には小さな数字の眷属がいないから、振り直しが何度か行われた。
何投かすると、互いの眷属が出られる数字となった。リアスが4、サイラオーグさんが5の合計9か。
ちょうど女王が出られる数字だな。
「あちらが出せるのは女王か兵士のみ。となると女王が出てくると思うわ。少なくとも、兵士はまだ出さないと思う」
「根拠は?」
「サイラオーグはあの兵士を出来るだけ使いたくないと思っているように感じるのよ。まるで出てくる気配を感じない。いくらなんでも温存しすぎていると思わないよ。出られる試合も何度かあったと言うのに……」
言われてみればそうか。
出そうと思えば、第一試合以降は全試合出れた筈。
合計数字が10以上の時が2回もあったんだし、僧侶か騎士と組んで出せていればどうなっていたかわからない。
そう考えるとリアスの考えもあながち的外れではないように思える。
何より、リアスはサイラオーグさんと従姉妹関係。相手のことをよく知ってるリアスがそう言うのなら、間違いないのかもしれん。
「となると、次の相手は女王ですね」
「ええ、祐斗。サイラオーグの女王、クイーシャ・アバドン。“
“
レーティングゲームの現役トップランカー三位と同じ家柄の悪魔。
家自体は現政府と距離を取っていて冥界の隅でひっそりと住んでいるらしいが、三位の試合映像とそれから観る能力を考えると相当強力な家柄だろう。
「私が行きますわ」
朱乃がそう言って前に出る。
「……わかったわ。朱乃、気をつけて」
「ええ、リアス。勝ちましょう、皆で」
それだけ言い残し、朱乃は転送の魔法陣の向こうへと消えた。
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映像に映し出された場所は無数の巨大な石造りの塔が並ぶフィールド。朱乃はその中の塔のてっぺんにいた。
その向かいの塔には金髪ポニーテールのお姉さん。
サイラオーグ・バアルの“女王”クイーシャ・アバドン。
くしくも黒髪ポニーテールVS金髪ポニーテールの頭になってるな。
『……やはり、貴女が来ましたか。雷光の巫女』
『ええ、不束者ですが、よろしくお願いいたしますわ』
アバドンの言葉に不敵に返す朱乃。
審判が出現し、両者を見据える。
『第五試合、開始してください!』
開始の合図が出される!
それと同時に朱乃とアバドンは悪魔の翼を羽ばたかせて空中へと飛び出していった!
『はあっ!』
ドガガガガアガガッ!
朱乃は速攻で高威力の雷光を相手に放つ! 一気に勝負を決めるつもりだ!
大質量の雷光が周囲一帯を襲う! 周りの塔も次々と崩れ去り、避ける場所がないほどの雷光の乱舞がクイーシャを襲う!
しかし、クイーシャは冷静に空間に“穴”を開けてそれを防ぐ!
あれがアバドン家の固有スキル“
円形の穴を空間に開け、その先は異界に繋がっているとされる厄介な代物だ。
『流石に初手では倒せんわね。なら、これでどうですか!』
朱乃は雷を弓矢のように振り絞ることで、凄まじい威力を連発している!
あれは……朱乃さんのお母さんの動き! 朱乃さんのお母さんの使っていたあの技自体は身体に染み付いていた本物! それを会得したというのか!
『凄まじい速度……“穴”を出す余裕もありませんね』
そう言いながら、クイーシャは障壁を展開し、矢を弾く!
だが、その隙を逃さずに高速接近する朱乃! その手には“雷の大幣”が握られている!
『はあっ!』
『くっ!?』
ドゴォォォォンッ!
雷を帯びた大幣の一撃はクイーシャの障壁を破壊し、クイーシャの頭に手痛い一撃を加える!
血を滴らせながらもクイーシャは“穴”を開き、そこから聖なる光を放った!
『私の“穴”は広げる事も複数に出現させることもできます。更には吸い込んだ攻撃を分解して、放つことも出来るのです。────雷光から雷だけ抜いて、そちらにお返ししましょう!』
ビィィィィィィッ!
無数の“穴”から襲いかかる光の帯! 回避は不可能と悟った朱乃は“雷の大幣”に貯蔵された魔力を駆使し、障壁を展開! 純粋な雷の障壁は聖なる光を見事に防いでみせた! だが────
『これを防がれるとは……ですが、隙ありです!』
クイーシャは穴を開き、そこに朱乃の左腕を重ね合わせる!
グシャッ!
『ぐああっ!?』
朱乃は肘から先を穴に持っていかれる! とっさに防御した影響でねじ切れこそしなかったが、腕は見るも無残なまでにぐしゃぐしゃになっている!
穴が異空間に繋がっていることを利用して朱乃の腕を千切ろうとするとはな……エグい事考えやがる……っ!
『くっ……私の光を囮にして本命は“穴”による捩じ切りですか……』
『ええ……でも、想像以上に魔力の防御が上手いのですね……』
クイーシャは血塗れの頭を押さえながら言う。朱乃の魔力の防御もそうだが、一番は頭を打ったことで精密な操作に支障が生じたことだろう。そうでなければ、一気にねじ切ってたはずだ。
だが、朱乃は慌てることなく右腕で大幣を構え、雷を放つ! 今度は雷光ではなく、純粋な雷だ! それを見たクイーシャは多種多様な属性の魔力で相殺する!
空中で繰り広げられるのは壮絶な魔力合戦! クイーシャは氷や風を解き放ち、朱乃は雷で対抗する!
『『はっ!』』
ドゴォォォォォォォン!!!
二人の魔力が衝突し、空中で大爆発を起こす!
魔力量も技術もほぼ互角! 時折放つ雷光は“穴”によって跳ね返され、朱乃はそれを上手くいなしながら雷の矢を放つ! それが幾度も幾度も繰り返される!
『このままでは埒が明きませんわね……こうなれば、奥の手を使わせてもらいます』
そう言いながら、クイーシャは巨大な“穴”を生成する、
クイーシャは“穴”に数多の属性の魔力を放出し、それを吸い込ませた!
ロスヴァイセさんのフルバーストを彷彿とさせる全属性の魔力は“穴”の中で圧縮され、凄まじい圧力を生んでいる!
『私の魔力を全て圧縮させて放つ全属性の一撃────サイラオーグ様をして当たれば無事では済まないと言わしめた一撃を貴女はどうするのかしら?』
巨大な“穴”がどんどん縮んでいき、掌サイズにまで圧縮されると同時に空間がミシミシと音を立ててやがる! あの一撃はロスヴァイセさんのフルバーストなんて目じゃない! 直撃すれば転送される間もなく即死するレベルだ!
恐らく、準魔王種程度なら殺せるレベルの力を持ってやがる!
朱乃もそれを感じているのだろう……一筋の汗が顔を伝っている。
『……この一撃、喰らえばただでは済みそうもないですわね。だけど、奥の手を用意していたのは貴女だけじゃない! 既に連鎖のラインは整っていますわ!』
そう言いながら、朱乃は魔力を最大にまで溜め込んだ雷光の矢を帯電している雷の跡にぶつける! すると、雷光の矢はフィールドを一周しながら次々と帯電した場所へと連鎖的に繋がっていき、朱乃の手に戻ってくる!
コォォォォォォォッ!
戻ってきた雷光の矢は一見元と変わらないが、込められている魔力が当初と別次元だ!
朱乃のユニークスキル“
俺の持っていた魔物と人間が王様の座をかけて戦う漫画を参考に編み出した技だが、決め台詞まで真似てるな!
ちなみにこの“連鎖帯電”は強力だが、対象を選ぶことができないという弱点がある。
漫画だと、最後の着弾点を指定することができたが、此方は帯電している方向に出鱈目に移動していく。そのため、流石に漫画みたいに指定した対象まで連鎖するという真似はできなかった。
だが、大元は朱乃の雷であるため、手元に戻すことは可能だった! 連鎖させ、強化した雷の矢を手元に戻し、相手を狙い撃つ! それこそが朱乃の奥の手!
俺自身、広大なフィールドを一周するレベルの電力を溜めたこの技は見たことがない。
そして、蓄積された雷は“穴”の魔力と比べても大差ないように見える!
あまりの魔力に矢を構える朱乃の腕が火傷を負っているほどだ!
ぐしゃぐしゃになった腕を無理やり動かし、火傷を負いながらも矢を構えるその姿は痛々しくも様になっていた!
『行きますわよ! “真雷の矢!』
『来なさい! “
ドゴォォォォンッ!!!
朱乃の矢とクイーシャの圧縮された“穴”の一撃がぶつかり合う!
その衝撃はゲームフィールドの空間に亀裂を開けるほどだ! どちらも下手な魔王種に匹敵するほどの強烈な一撃!
その凄まじい余波はカメラの映像すらも途切れるほど!
ザアァァァァァッ!
映像が砂嵐となり、向こうの状況がまるでわからん!
『凄まじい一撃でしたね。あの威力は最上級悪魔の一撃にも匹敵しているかもしれません……』
『ああ。当たれば俺とてただじゃすまんかもしれん……恐ろしい技だな』
アザゼル先生とディハウザーは互い今の一撃の恐ろしさを語る。その言葉にどよめく観衆たち。
暫くするとカメラが復旧し、映像が映し出される。そこには、全身が血まみれになりながらも翼を羽ばたかせて、宙に浮く二人の姿があった!
『…………』
二人は無言のまま睨み合い、なけなしの魔力を振り絞りそれを掌に溜める。恐らく、解き放つ余力すらないのだろう。
二人は最後の力を振り絞り、翼を羽ばたかせて接近した! 拳を握りしめ、最後の魔力を込めた拳をお互いの顔めがけて振るう!
ドゴッ!
クロスカウンターの形で最後の一撃を食らう朱乃とクイーシャ。二人はそのまま意識を手放し、リタイアの光りに包まれた。
『サイラオーグ・バアル選手の女王一名、リアス・グレモリー選手の女王一名リタイヤです』
こうして、女王対決は両者相打ちの形で幕を閉じた。
クイーシャ・アバドン
EP 32万9503
種族 悪魔
加護 バアルの加護
称号 バアル眷属“
魔力
エクストラスキル 空間操作、魔力感知、魔力操作
バアル眷属の女王。穴の力をエクストラスキル空間操作、魔法の力をエクストラスキル魔力操作で強化している。また、練度は低いが魔力感知も習得しており、バアル眷属の兵士と戦っても食い下がるレベルに達している。