帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

152 / 155
バアル眷属と最後の戦いです

 イッセーside

 

 

 

 

 

 切断された右腕をくっつけ、涙を使用することで治癒するサイラオーグさんを見て、リアスは笑みを浮かべている。

 相手の手札を減らせたことを喜んでる様子だ。

 必死に戦った仲間の姿を見たからこそ、悲しむことを侮辱と捉えているのかもしれない。

 リアスも成長したものだ。多分、以前のリアスなら泣き崩れてたんじゃなかろうか? 

 冷徹になったと思われるかもしれんが、俺は強くなったのだと思う。皆の覚悟をしかと理解し、それを背負えるほどに……。

 

『さあ、終盤も終盤! 残るバアル眷属は『王』と『兵士』のみ! しかし、グレモリー眷属も『王』『兵士』『僧侶』と少なくなってきた! バアル眷属はこれで兵士を出すしかなくなったが、どうなるというのか!?』

 

 実況の言う通り、サイラオーグさんには出せる駒がない。

 こちらも非戦闘員のアーシアを出すわけには行かないから、内訳で言えば同じだけど、向こうの兵士も相当な戦力だろう。ここで俺が出れば兵士は倒せるだろうが、次がリアスとサイラオーグさんのタイマンになる。まず勝てないだろう。

 かと言ってここでリアスが出て兵士に負けるなんてことがあれば、そのままゲームが終わってしまう。

 これはどうするのが正解なのか……。

 そうこうしていると、サイラオーグさんが一歩前に立つ。

 

『────委員会に問いたい。俺は次の試合……此方の全部とあちらの全部での団体戦を希望する……ッ!』

 

 ────ッ! 団体戦だと!? 

 サイラオーグさんの提案に会場がどよめき、実況も叫ぶ。

 

『おおっと! ここでサイラオーグ選手からまさかの提案が出たしまいましたーッ!』

 

『確かに……この後の流れは簡単に読めてしまう。連続して試合に出ることができない以上、バアルの『兵士』とグレモリーの『王』『僧侶』のどちらかが出ることになるでしょう。ですが、少なくとも『僧侶』では彼の『兵士』には勝てない。かと言って、『王』自ら出陣するのもリスクを伴う。展開次第では、彼と赤龍帝の戦いは見れなくなってしまうでしょうからね。そうなっては少し勿体ないという点はありますね』

 

『それならば、次を団体戦にして決着をつける……。分かりやすいし、クールタイムを挟まない分サイラオーグも今の昂ぶったテンションを継続することができる。さて、委員会の上役は読める流のルールを取るか、この状態を維持したまま団体戦を選ぶか』

 

 困惑する俺達にサイラオーグさんはカメラ目線で訴える。

 

『ここまで来たんだ。俺は歴代最強の赤龍帝────兵藤一誠と拳を交えたい。だが、このままでは俺の勝利は揺るがんだろう。彼我の差くらいわかる。リアスと我が『兵士』が戦えば、苦戦こそすれど『兵士』が勝つ。一方で兵藤一誠が俺の『兵士』を破ったところで、リアスでは俺に勝てん。勝負は見えている』

 

 傲慢────とは言えないか。実際、俺達にはあの『兵士』の情報がほとんどない。その上、存在値は今までの眷属のなかでもダントツときている。

 勿論リアスが勝つ確率だって大いにあるが、勝率は低いものとなるだろう。だからといって、流石にアーシアを単体で出すのは駄目だ。アーシアは防御力こそ眷属内最高クラスだが、戦闘はギャスパー以上に不得手だ。ただ嬲られるだけの試合になるだろうし、俺もリアスもそんな光景は見たくない。駒価値から考えても、『10』と『3』だから最大値がでたとしても一緒に出ることはできない。故に、次に出るのは確実にリアス単体になるだろう。

 サイラオーグさんもそれがわかってる。あの人からすれば、俺と戦う機会を得るためにも是が非でも団体戦にして決着をつけたいのだろう。

 

『もう、いいだろう? この男をルールで戦わせなくするのはあまりに愚だ! 俺は真正面からこの男と戦いたいのだっ!』

 

 サイラオーグさんの堂々とした宣言! それに対し、リアスもマイクを手に取り、応える。

 

「私もそれでいいなら、かまわないわ」

 

 リアスも賛成のようだな。これで残るはレーティングゲームの運営次第。確か、レーティングゲームの運営は悪魔の上層部ともまた違う体系を持ってるんだったか。

 仮に、これが悪魔の上役たちならば提案は通らないだろう。だが、このゲームを盛り上げることに尽力している運営ならば────

 

『今、委員会から報告を受けました! 認めるそうです! 次の試合は事実上決定戦となる団体戦です! 両陣営の残りメンバーの総力戦となります!』

 

 その報告に会場が一気に沸き立つ! 

 次が最後の戦いとなるのだから、当然の反応だろう。

 サイラオーグさんは決定を聞くと、満足そうに笑みを浮かべる。その笑みからは凄まじいまでの気迫と敵意が込められている。

 サイラオーグさんは不敵な笑みを浮かべたまま、俺たちに告げる。

 

『────だそうだ。胸を借りるつもりとは言わん。先程のリアスの眷属同様、勝つつもり────いや、殺すつもりで行かせてもらう!』

 

『ええ、いいですよ。こちらも殺す気で行きますから、くれぐれも覚悟してくださいよ』

 

 これは試合。それはわかっているが、それでも大切な仲間をボコボコにされて何も思わないほど俺も部長も薄情ではない。

 ただ、怒りを腹にためているだけなのだ。

 俺は殺意を乗せたオーラをサイラオーグさん達にぶつける。それを感じ取ったサイラオーグさんは口の端を吊り上げる。

 

『たまらないな……ッ!』

 

 俺の闘気を受けても笑みを浮かべる。本当に凄いな、この人は。

 

「……あの兵士は私とアーシアで抑えるわ。イッセー、お願いね」

 

「わ、私も全力で力添えします!」

 

 リアスがオーラを強め、アーシアも札を取り出して臨戦態勢に入る。

 楽しみだ。この人と戦うのが。俺とリアス、アーシアは覚悟を決め、魔法陣へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 俺とリアスとアーシアが降り立ったのは、広大な大地。

 実況がマイクを震わせる。

 

『さあ、バアル対グレモリーの若手頂上決戦もついにクライマックス! サイラオーグ選手によりもたらされた提案により、団体戦となった最終試合! バアルは「王」サイラオーグ選手と謎多き画面の「兵士」レグルス選手! 対するグレモリー側はスイッチ姫こと「王」リアス選手に「僧侶」アーシア選手! そして皆の味方おっぱいドラゴンこと兵藤一誠選手だぁ!』

 

 アーシア以外ひでえ紹介だな。部長も頬を赤く染めてるし……。

 

『ずむずむいやーん!』

 

『おっぱい!』

 

 観客席の子供達はおっぱいドラゴン的な応援をくれた。嬉しいけど、なんか複雑な気分。

 

『さて、最終試合を始めようと思います』

 

 審判が両チームの間に入り、俺達の準備が出来ていることを確認する。

 

『……では、最終試合! 開始してください!』

 

 ついに最後の試合が始まる。

 相手の兵士────レグルスは速攻で“女王”にプロモーションを遂げる。ただでさえ、協力な力が底上げされてやがるな。

 だが、それでも真に警戒すべきはサイラオーグさんなのだろう。

 俺達の視線が交錯する。すると、サイラオーグさんがフッと小さく笑んだ。

 

「リアス、先に言っておくことがある。お前の眷属は素晴らしい。妬ましくなるほど、お前を想っている。それ故に強敵ばかりだった」

 

 この人がそう言ってくれるならリタイヤしていった木場達も戦ったかいがあったというもの。後は俺がこの人に勝つだけだ。

 

「────終局に近いな」

 

 サイラオーグさんが俺の前に立った。

 

「兵藤一誠。ついに……だな」

 

「ええ。以前、グレモリー城の地下でやり合って以来ですね」

 

 あの時は終始俺が圧倒していたが、サイラオーグさんはあの時と比べても見違えるほど強くなっている。

 だが、それでも負けるつもりは一切ない。

 

「恨みはありませんし、妬みもありません。ですが、仲間の仇は取らせてもらいますよ」

 

 俺が指を突きつけ、そう言うとサイラオーグさんは笑みを深める。

 緊張感が高まり、静寂が流れる。

 

 ドオォォォンッ! 

 

 俺とサイラオーグさんは闘気を最大まで高めながら、同時に地面を蹴って飛び込んだ! 

 拳と拳がぶつかり合う! ビリビリと大気が震え、俺とサイラオーグさんは同時に後方へと吹き飛んだ! 

 俺は中空一回転し、そのまま静かに着地をする。サイラオーグさんも顔を歪めつつもしっかりと足を踏ん張り、地面に降り立つ。

 俺は自分の腕に視線を向ける。ビリビリとした衝撃が骨にまで届いてやがる。やはり強い。ヴァーリとの戦いでもここまでの手応えはなかったぞ。

 超級覚醒者にすら匹敵するほどの拳。ここまで練り上げるのにどれほどの鍛錬をしたというのか……。

 

「……流石は兵藤一誠。鎧を纏っていないのにこの力! この気迫! 人の身でありながら、その領域に至るまで、どれほど自分をいじめ抜いた!? 少なくとも、俺には想像もつかない程の鍛錬をしたのだろう……素晴らしいぞ! 兵藤一誠っ!」

 

「こちらのセリフですよ。以前戦った時とは比べものにならない。この短期間で……本当にすごいですよ!」

 

 俺は“赤龍帝の籠手”を呼び出し、遠距離からの拳を放つ! 

 

 ドォンッ! 

 

 拳の風圧はそのままサイラオーグさんの顔面に届く! 

 だが、その程度で止まるサイラオーグさんでもない。サイラオーグさんは口から血を出しながらも前進し、俺に蹴りを打ち込もうとする! 俺はそれを片手で止め、カウンターで顎を蹴り上げようとするが、サイラオーグさんはそれをギリギリで回避する! 

 だが俺は慌てることなく蹴り上げた足を振り下ろし、踵落としを放つが、それをサイラオーグさんはペッドバットで迎え撃つ! 

 

 ドゴォォォォンッ! 

 

 ビリビリと芯まで響く! 

 だいぶ石頭だな、サイラオーグさん! サイラオーグさんも頭から血を流すが、ダメージは少なそうだ。この程度なら、“自己再生”の回復の範囲内だろう。

 楽しい戦いになりそうだ。俺達は笑みを浮かべ、クロスカウンターの要領で互いの顔面に拳を激突させた! 

 

 

 

 

 ****************************

 

 リアスside

 

 

 

 

「滅びよ!」

 

 私はサイラオーグの兵士────レグルスに向かって滅びの魔力を放つ! 

 レグルスはそれを回避し、鋭い蹴りを放ってくる! 私は足払いをして軌道をずらし、近距離からの魔力波を放つが、レグルスの仮面を剥ぎ取るだけで、ダメージは与えられていない。

 仮面の下の素顔は私達とそう年齢が変わらない少年。だけど、それはすぐに変貌する。

 

 ボコッ! メキッ! 

 

 体中から快音を起こして、少年の身体が盛り上がっていく! 

 その身体が徐々に膨れ上がり、全く違う姿に変化した! 

 そこに姿を現したのは、巨大な一匹のライオン。五〜六メートルはあろう巨大。額にある宝玉のようなものが特徴的ね。

 見た目以上に肌で感じる凄まじい威圧感……ゴズールさん達と比べても遜色ない────どころか上回っている。

 ライオンは鬣を靡かせ、私とアーシアの前に立つ。

 

『おおっと! バアルチームの謎の“兵士”、その正体は巨大な獅子だった────ッ!』

 

『まさか、ネメアの獅子か!? おや、あの宝玉は……まさか……!?』

 

 解説の先生が何かに得心して、驚きの声音を出している。それを見た実況が訊ねる。 

 

『アザゼル総督、あれはいったい?』

 

『……元々はギリシャ神話に登場する元祖ヘラクレスの十二の試練の相手なんだが……。聖書の神があの獅子の一匹を神器に封じ込めた。それは十三ある神滅具として名を連ねるほどのものとなり、極めれば大地を割るほどの威力を持ち、巨大な獅子の姿にもなれる。────神滅具“獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)”! しかし、所有者がここ数年、行方不明になっていたんだが……まさか、バアル眷属の兵士になっていたとは……』

 

 道理で凄まじい威圧感を放っているわけね。イッセーと同じ“神滅具”! まさか、サイラオーグの眷属になっていただなんて……っ! 

 驚きの中、サイラオーグが口を開く。

 

「いや、残念ながら本来の所有者は既に死んでいる。俺が“獅子王の戦斧”の本来の所有者を見つけた時は、既に怪しげな連中に殺された後だ。神器となる斧だけが無事だった。所有者が死ねば神器はいずれ消滅する。その戦斧もそうなるであろうと思っていたんだが……、あろうことか意志を持ったかのように獅子に化けて、所有者を殺した集団を根こそぎ全滅させたのだ」

 

 所有者が死んだのに、神器単体で動き出したというの!? しかも、それを悪魔に転生させた!? 

 ……いえ、ドライグのように意志を持つ神器もあるのだから、そういう事もあり得るのかもしれない。

 現にイッセーはリムル様の作った魔道具で自身とドライグを分離できると言ってた。考えられない話じゃない。

 

「俺が眷属にしたのはその時だ。獅子を司る母の血筋が呼んだ縁だと思ってな」

 

 そうね。ミスラさんは獅子を司るウァプラ家の人。そう考えると、確かに運命的な出会いね。

 

『単独で意思を持って動く神器…………神滅具だと!? 更には悪魔に転生できたのか! それを可能にしたのは獅子の力か悪魔の駒の性能か……。どちらにしろ興味深い! 実に興味深いぞ! そりゃ、所有者を断定できないわけだ! レアだ! レアすぎるぜ! サイラオーグ! 今度、その獅子を俺の研究所に連れてこい! スゲー調べたい!』

 

 あの先生の喜びよう……相当珍しい現象なのね。まあ、私も英雄派対策のために神器について勉強してるけど、聞いたことないのだから無理もない。

 

「所有者無しの状態のせいか、力がとても不安定でな。敵味方見境無しの暴走状態になって、勝負どころではなくなるから単独で出せるものではなかった。出せるのは今回、俺と組めるこのような最終試合だけだ。いざというとき、こいつを止められるのは俺だけだからな」

 

 だから今まで試合に出ることがなかったのね。サイラオーグと組んででしか出すことが出来ない。

 

「どちらにしても、私の相手はその神滅具の獅子ってことね」

 

 相手にとって不足はない。むしろ、修行の成果を見せるこれ以上ない機会だ。私は籠手を携えて再び獅子と向かい合った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。