小猫side
イッセー先輩は学校では悪い意味で有名だ。
変態三人組といわれ、学校内での覗き行為や猥談など、スケベなことばかりやっている。
にもかかわらず、ミッテルトという彼女がいることでも知られており、脅迫されているのではとのうわさもよく聞いたりする。
私自身いい印象を抱いていないのだが、部活内で関わるようになり、意外と思える一面を見つけることとなる。
赤龍帝という強大な神器を持ち、人間でありながら悪魔をはるかに上回る力を持つ。
どうしてこれほどの力を持っているか疑問は尽きないし、知れば知るほど興味深い人間ですね。
まあ、好きにはなれないですけど……。
「今日は小猫ちゃんには俺の流派ヴェルドラ流闘殺法を教えようと思うんだけど、どうかな?」
「ヴェルドラ流闘殺法……ですか?」
修行開始から二日目。部長や副部長に近接戦闘を教えつつ、イッセー先輩がわたしに提案をしてきた。
イッセー先輩の動きは正しく達人と呼ぶにふさわしいほど洗練されていて、その動きだけでもとても参考になる。
そんな中提案された誘いは興味があるが、少し戸惑ってしまう。
私も武術の本を読むことがあるけど、そんな流派は聞いたことがない。
「ヴェルドラ流闘殺法は俺の師匠が開発した、漫画やアニメの技を取り入れた拳法さ」
「ま、漫画?アニメ?」
よ、予想外の言葉が出て少し困惑しました。
「……そんな拳法本当に役に立つんですか?」
「まあ、気持ちはわかるけど、俺これで強くなったしな……」
そう言いながら構えをとるイッセー先輩。その姿からはみじんも隙が感じられない。
少し納得いきませんが……。
「まずはその中でも基礎の技である気闘法を習得してもらう」
「気闘法……ですか?」
「そう。元々はミッテルトの朧流の技なんだけど、師匠が取り入れたんだ。まずはこれを習得しないとほかの技も習得できないからな……」
そういうとイッセー先輩は突如として消えてしまった。
「え?」
あたりを見回してみるが、先輩は影も形も見つからない。
一体どこに……。
「こっちだよ」
「っ……!?」
後ろから肩を叩かれたことで私は初めて先輩の姿を認識した。
気配もまるで感じられなかった……。これはいったい……。
「これが気闘法。体内の魔素……魔力といったエネルギーを使って身体の強化などを行う
「あーつ?」
「そう。瞬間的に移動する“瞬動法”。相手の認識を遮る“隠形法”。武器や拳に魔力を流して強化する“気操法”など様々な種類があるんだ」
ちなみに今の技は瞬動法と隠形法の合わせ技で私の知覚を遮りつつ、高速で接近し後ろをとったらしい。
裕斗先輩のスピードに慣れている私がまるで見えないほどのスピード。
嗅覚に自信のある私がまったく察知できないほどの気配遮断。
これらは気闘法と呼ばれる技術から来てたということですか……。
「じゃあまずは拳に魔力を集中させてみて」
「はい……」
早速私は魔力を拳に流してみる……。
……魔力を体に流すのは意外に難しく、拳に流すだけでも時間がかかる。
それでも何とか私は拳に魔力を流すことに成功した。
「おお、筋がいいな。じゃあ、その状態で俺を殴ってみな」
言われた通り、私はイッセー先輩めがけて拳を放つ。
「えい」
ドン!
すさまじい轟音があたりに鳴り響く。
結果だけ見れば私の拳はいともたやすく止められた。
それでも、今までとはまるで違う威力に言葉が出なかった。
「これは……」
「どう?今までとまるで違うでしょ?」
「……はい」
「それが気闘法の技の一つ“気操法”だ。なれればもっとスムーズに魔力を流せるようになるぜ」
確かに……、これを使いこなせればさらに強くなれるかもしれない……。
ライザーとの戦いに備えるためにも頑張らないと……。
**********
木場side
「はあ、はあ……」
「もうギブっすか?」
「まだまだ……。はあ!」
ひび割れるほどの勢いで地面を踏みこみ、ミッテルトさんに剣を振り込む。
しかし、ミッテルトさんはただの木刀で僕の魔剣を容易く受け止める。
すかさずもう一撃を叩きこむが読まれていたらしく軽くかわされる。
「
そういいながら、彼女は僕を魔剣ごと弾き飛ばした。
なんてすさまじい威力なんだ……。これが気闘法……、朧流の剣術の力なのか?
「木場っちの魔剣には最初から魔力がこもっているっすけど、だからといって気操法で強化できないなんてことはないっす。魔剣の魔力に木場っちの魔力が上乗せされれば破壊力はさらに増すはずっすよ」
「わかった。やってみるよ」
こうして対峙してみるとわかる。
ミッテルトさんの剣がいかにすさまじいものなのかを……。
朧流……と彼女は言っていた。
なんでも古い剣の達人が開いた流派であり、あらゆる魑魅魍魎を斬ることができる秘剣であると。
基礎の技であるという気闘法一つとっても恐ろしい技術だ。
魔力を流すだけでただの木刀が魔剣にも勝る武器となるなんて……。
(この力を魔剣に加えれば、聖剣にも勝るかもしれない……)
とはいえ、魔力を体に流すだけでもかなり難しく、ましてや武器に流そうとするとそれだけでかなりの負担がかかる。
本当にこの技術を完璧に使えるようになるのか少し不安になってくる。
「大丈夫っすよ。地道な努力に勝るものなし。コツコツ行きましょう」
「ミッテルトさん……。うん、そうだね」
焦らず、ゆっくり。
僕は再び剣に魔力を流し、ミッテルトさんと向かい合った。
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リアスside
「滅びよ!」
「はあ!」
私と朱乃は今日から五大竜王の一角であるティアマットさんと修行をしている。
「もう少し魔力を込めなさい。この程度の滅びの魔力じゃあ私の薄皮一枚貫けないわよ」
滅びの魔力は本来あらゆるものを消滅させる力を持つ。にもかかわらず、この竜は結界一枚を隔てて完璧に私の魔力を打ち消しているのだ。
「ふん」
すかさず接近してきたティアマットさんの攻撃に対し、私も対応する。
イッセーに少しだけ習った柔術の要領で受け流そうとした。だけど、それで受け流せるほどやわな威力ではなかったらしく、私は吹き飛ばされてしまう。
「課題であった接近戦を克服しようとするのは悪くないわ。でもまだまだ甘いわね」
顔を上げると私と同じく朱乃が一撃で吹き飛ばされているのが見えた。
これが最強の竜王……。
私たちが手も足も出ないなんて。
「あなたたちの攻撃は少し素直すぎね……。正直言って見切るの容易いわ」
「……なら、どうすればいいのですか?」
「例えば時間差で魔力を放ったり、接近戦の動き方を学んでいるのなら、至近距離から魔力を放ったりとやりかたはいくらでもあるわ」
なるほど、シンプルながらもいい手かもしれない。
よけられないほどの至近距離から魔力を放てば当たる確率はぐんと上がるでしょうし……。
「正直言ってリアスちゃんは魔力を操作する技術面にはあまり才能がないわ。でも、威力を磨けば将来的にはサーゼクスと同等になる可能性を秘めている。だから下手なコントロールなんて考えず放ちなさい。あとはそれをどうやって充てるかを工夫することね」
威力を高めることとそれをどう充てるかを考えること。
今までは自由自在に魔力を操るお兄様を指標に強力な滅びの力をどうコントロールするかしか考えていなかったけど、ティアマットさんはそれ以外の戦い方もあるということを教えてくれた。
そこで私はいかにして相手に魔力を当てるかを考え始める。
するとそれを見て微笑みながらティアマットさんはさらに威圧感を高める。
「さあ、修行は始まったばかりよ。どんどん来なさい」
彼女の放つ威圧感に思わず後ずさりする。
考えてみれば、伝説の竜王に直接教えを受けるなんてめったにできることじゃないわね。
これを機に私もレベルアップして見せるわ。
私と朱乃はうなずき合い、再びティアマットさんに向かって飛び込んでいった。
**********
イッセーside
「よし、今日の修行はここまでにしましょう」
もうすぐ日が暮れそうになってきたので修行の終了を宣言。すると部長達はみんなその場で座り込んだ。見ればみんながみんな息が絶え絶えとなっている。
まあ、あんまり修行とかしてこなかったんだろし、いきなりだとこんなものか。
悪魔は夜に力が増すらしいのであえて夜を休ませることで急速な体力の回復を見込める。
魔力も限界まで消費させているのでそこから回復すれば魔力量も上昇するだろう。
それにしても、皆なかなかに筋がいいな。
木場にはミッテルトが、小猫ちゃんには俺が気闘法を教えてみたけど完全とまではいかなくても、もう少しで習得できそうな感じにはなっている。
部長と朱乃さんもひたすら組み手をさせることで接近戦の技術が向上してきた。
さらにティアマットさんが参戦してくれたことにより、魔法技術も向上することができただろう。
傷が絶えないこの環境下でアーシアもフル稼働したことで回復するスピードが上がったように感じられる。教えてあげた簡単な防御結界も張り続けているようだし、狙われてもある程度の奴ら相手なら簡単にはやられはしないだろう。
この調子ならば全員がかなりの戦力アップが期待できるんじゃないかな?
というか、明らかに俺よりも習得スピード早いし、今から将来が楽しみである。
「お待たせしたっす!うち特製のハンバーグ定食っすよ!たんと食べて明日に備えてくださいね」
というわけで俺たちはミッテルトの作った料理を食べる。
ミッテルトはプロ並みに料理がうまい。シュナさんやゴブイチさんに弟子入りし、料理の修行をしていたらしいが、納得のいくおいしさである。
「昨日も思ったけど……、ミッテルトは料理が上手いのね」
「レーティングゲームが終わったら部長達にも教えてあげるっすよ」
「あらあら、それは楽しみですわね」
こうして夜は更けていった。
**********
「いてて……」
『自業自得だな……』
そういうなよドライグ……。
先ほど俺はお風呂の時間に部長たちの裸を観賞するため、覗きを決行したのだがミッテルトに容易く気づかれ勢いの乗った回し蹴りを食らったのだ。
どうも覗こうとしたポイントを先回りされていたようである。
だが、まだだ……。まだ何日かはあるし、必ずやチャンスはある。
そう、俺はこんなところで終わる男ではないのだ!
『……』
なんかドライグが言いたそうにしているがここはスルーしたほうがよさそうだな……。
ん?あれは……。
「部長?何やってるんです?」
「あら、イッセーじゃない。どうしたのこんな時間に?」
リビングにて明日の方針でも決めようと思っていたらそこには部長がいた。
リビングのソファーに座った部長の手元には一冊の本。
ふと見ると部長は珍しく眼鏡をかけていた。
「珍しいですね、部長が眼鏡なんて……。実は目が悪かったとか?」
その場合はフライングで魔力感知を教えたほうがよさそうだな……。
でも、修行時はそんなそぶりは見せなかったし……。
すると部長は眼鏡を外して説明してくれた。
「何かに集中したい時にこれを掛けると集中できるのよ。眼鏡をかけていると何となく頭が回る気がして。……私がかけると変かしら?」
「いえいえ! 知的な美女って感じで俺はありだと思いますよ!」
いつもの部長と雰囲気が違うけど、これはこれで全然ありだと思う。
メガネ美女っていうのもまたいいものだ。
「それで、部長はここでレーティングゲームの勉強ですか?」
部長が読んでいるのは戦術の本だった。フォーメーションとかそういうのが書いてある。
おそらくは次のレーティングゲームに向けて戦術を練っていたのだろう。
部長は自嘲しながら呟く。
「正直、気休めにしかならないのだけどね」
「どうしてそう思うんですか?」
少し意外だな。部長ならばもう少し前向きな考えを持つていると思っていたけど……。
「……相手がライザー……フェニックスだからよ……」
「フェニックス……不死身だからってことですか?」
「察しがいいわね。その通りよ。攻撃してもすぐ再生し、業火の一撃は骨すら残さない……。ほとんど無敵の存在なのよ」
つまりは生まれついての超速再生持ちの種族ってことか……。
まあ、魂ごと滅するとかちりも残さず全身粉々に消し飛ばせばさすがに殺せるらしいけど、ゲームでそんなことする奴いるはずがない。
なるほど、実戦ならともかくゲームという場でなら敵なしかもしれない。
道理で俺のオーラにあてられたにもかかわらず俺の参加を認めたわけだ。
レーティングゲームという自分に有利な舞台なら負けることはないとでも考えたのだろう。
「なるほど……。ところで部長。気になっていたことがあるんすけど……」
「あら、なにかしら?」
「部長はどうして今回の縁談を拒否したんですか?ライザーを嫌ってるのはわかるけど、それだけが理由じゃないような気がして……」
これは俺がずっと気になっていたことだ。
そもそも悪魔にとって大切なお家騒動である縁談を責任感の強い部長なら簡単に無下にはしないだろう。
となるとほかに理由があるのでは?そう考えての質問に対し、部長は紅茶を口づけながら答える。
「私は『グレモリー』なのよ」
「ええ。そうですけど?」
「どこまでいってもこの名前がつきまとうの」
あ、そういうことか……。この言葉で何となくだけど察したわ。
「つまり、『グレモリー』という家柄でなく、部長個人としてみてもらいたいってことですか?」
「ええ、その通りよ。別に『グレモリー』の家柄が嫌なんじゃない……。むしろこの名を誇りに思っているわ。だけど、誰しもが私のことをグレモリーのリアスとしか見てくれない」
部長は遠くを見ながらそう言う。
「私はグレモリー家とかは抜きにして、リアスとして愛してくれる人と一緒になりたい。それが私の小さな夢。ライザーは『グレモリー』のリアスとしては私を愛してくれるでしょうけど、私は私自身を愛してくれる人と添い遂げたいの」
それが部長の夢なのか。
悪魔とか、貴族とかそんなものは関係なく、自分のことを見てくれる人と、自分が好きになった人と一緒になりたい。
これは普通の女の子が持つ、当たり前の心だ。
「俺は部長のことはちゃんと部長として好きですよ」
「え?」
突然の言葉に部長は驚いたような表情になる。
聞き返す部長に俺は自分の気持ちを伝える。
「俺は悪魔の家柄とかわからないけど、それ抜きにしたとしても部長個人のことをちゃんと好きだと思ってますよ。優しくて仲間思いで王にふさわしい人だとも思ってます。そんな部長ならきっとそういう人も見つかりますよ」
俺の言葉を聞くと部長は呆れたような目で俺を見つめてくる。
「あなたね……、それじゃあまるで口説き文句みたいよ」
部長の突っ込みに思わずハッとした。
確かにこれじゃあ口説いてるみたいじゃん!
「アハハ……」
ミッテルトに聞かれたらまずかったかもな……。
いや、案外空気読むかな?
どちらにしろ、ミッテルトいないときでよかった……。