自宅で部活します
イッセーside
「ん?」
ちゅんちゅんと鳥の鳴き声が聞こえる中、陽光のまぶしさで目が覚める。
学校に行く準備をしようと思い、立ち上がろうとすると何やら柔らかいものが俺の手のひらにあるのを感じた。
不思議に思った俺は布団の中をのぞくと…。
「うぅん」
「……なんでやねん」
そこには全裸で寝ているリアス部長の姿があった。艶めかしい声を発しながら寝ぼけているのか俺に抱き着こうとしている。
…なぜ気付かなかったんだ。
「どうしよう」
とりあえず今目の前にある光景を脳内ストレージに保存。俺が今もんでいる形になっているおっぱいと足に感じる太ももの感触も忘れないように…って違う!!
ど、どうしよう。もうすぐミッテルトがここに来る時間だ。
この光景をもしもミッテルトに見られてしまったら…。
は、早く部長を起こさないと…。
「ふわあ、イッセーおはようっ………す?」
「あ」
部長を起こそうとした矢先ミッテルトが俺の部屋にやってきた。
眠そうにおくびをしながらもまだ寝てると思っていた俺を起こしに来たのだろう。
そして俺と裸の部長を確認するや否やミッテルトの気だるげな眼は一気に絶対零度の呆れと灼熱の火山のような怒りという相反する二つの感情を織り交ぜたかのような鋭い目つきとなり…。
「なにやってるんすかあああああああ!!!」
大爆発を巻き起こした。
**********
「で、なんで部長はイッセーの部屋で寝ていたんすか?しかも裸で」
「え、え~と…、イッセーと少しでも親睦を深められたらなあと思い…」
「裸の理由になってないっすよそれ」
「わ、私はいつも寝るときは裸なのよ!」
起床後、俺と部長は正座をしながらミッテルトからのありがたい説教を受けていた。
俺、部長と順番に説教を受けている形だ。俺の場合はなぜ気付いた時点で起こさなかったか、というかそもそもなぜ気付かなかったのか等々。
まあごもっとも。普通寝てても気づくだろう。
「うう、少しうらやましいです」
アーシアが何かを羨ましがってる。男である俺ならともかくアーシアがうらやましがる要素とかあるか?
「全く、まあ今回は初犯ということで大目に見るっすけど、次からは気を付けてくださいね。何度注意しても似たようなことやっていた泥棒ネコの例もあるし…」
「?何か言ったかしら?」
「いえ、何でもないっす」
ミッテルトの奴、黒歌のことを言ってやがるな。
確かにあいつもよく似たようなことをしていたからな。しかも何度ミッテルトに注意されようが全く直す気配を見せないのだ。俺にとっては役得だけど…。
「はあ、まあお説教はこれくらいにしてそろそろご飯にしましょうか」
そういってミッテルトは台所へと向かっていく。
部長は慣れない正座で足をしびれさせた様子を見せつつも服を着てリビングへと向かった。
**********
「本当、ミッテルトの料理はおいしいわね」
「こんなにおいしい料理を作れるなんて本当にすごいですね」
「ふふーん。褒めても何にも出ないっすよ」
今日の朝食は白米に味噌汁、焼き魚に卵焼きといったスタンダートな代物だ。だがプロ並みの調理術を持つミッテルトにかかればそれがメチャクチャおいしい料理となる。さすがミッテルトだな。
それだけじゃない。
アーシアと部長も掃除や洗濯などの家事を手伝ってくれており、母さんもとても助かっているようだ。
そうやってみんなで食事をしていると、部長が何かを思い出したように母さんに尋ねてきた。
「あ、そうだ。お母様、今日の放課後部員達をこちらに呼んでも良いでしょうか?」
ん?家に?
「ええ、良いわよ。イッセーも構わないでしょ?」
「別にいいけど、何かあったんですか?」
家にみんなを招くことは別にやぶさかではないけど、初耳だし何かあったのかな?
そんなことを考えていると部長が理由を話してくれた。
「今日は旧校舎が年に一度の大掃除で定例会議が出来ないのよ」
へぇ、そんなのあるんだ。まあ旧校舎って言っても使っている部屋あるし、そもそも誰かが住んでいる気配だってあるしで掃除は必須なんだろう。部長は何も言ってこないけど、感知してみると誰かがいるんだよな。ちょっと聞きづらいから聞けないままでいるけど。
まあそれは置いといて、その大掃除の影響で部室が使えないから俺の家でオカ研と悪魔の会議をしたいわけね。
家でやる部活…なんか新鮮だな。
少し楽しみだな。
**********
というわけで放課後。
部員の皆は俺の部屋に集まりオカルト研究部としての会議を行った。
オカルト研究部として調査したUMAなどの報告などから悪魔としての仕事の報告会など、まあいつも通りの業務をこなしていた…。
ところが途中から妙な方向へと話が飛んで行ってしまった。
というのも途中俺たちにお菓子やジュースを持ってきてくれた母さんがとんでもないものを持ってきたのだ。
「…で、これが小学生のイッセーよ」
「あらあら。可愛らしいですわね」
「や、やめてくれよ母さん」
そう。なぜかこの人俺のアルバムなんか持ってきやがった。
俺は即座に取り返そうとしたがミッテルトに拘束されてしまったのだ。
「何気にうちも見たことないんで気にはなってたんすよね。まあ大人しくするっすよ」
「くっ、裏切り者が…」
正直言って脱出しようと思えばできるんだがその場合家にも多少被害が出るかもしれない。
何せこいつかなり本気の力で俺を拘束してやがる。
どちらかといえばテクニック重視のミッテルトだが旧魔王級の強さを持つためパワーも意外とあるのだ。
実際レーティングゲームでも木刀で巨大大剣粉みじんに粉砕していたし…。
そんなこんなで俺は今なすすべがなくなっていた。
「イッセー先輩の赤裸々な過去」
「やめて小猫ちゃん見ないで」
「小さいイッセー、小さいイッセー。フフフ…」
「私、なんとなくですけど部長さんの気持ちわかります!」
「分かってくれるのね、アーシア!嬉しいわ!」
小猫ちゃんは小さい頃の俺を見てなんか小馬鹿にしたような笑みを浮かべるわ、部長とアーシアは何が面白いのか興奮してるわでカオスじみた光景となっている。
木場もなんだかニコニコ顔で見てるし…。
「木場。おまえは見るな。なんか腹立つ」
「ハハハ。いいじゃないか、イッセー君。僕も楽しませてもらっているよ」
くそ…、ミッテルトの拘束がなければ…。羽交い締めされているからミッテルトがアルバムを見る際は必然的に俺とみる形になる。正直恥ずかしいからやめてほしいわ。
そんななか、木場は写真を見て何かを見つけたようだ。瞬間木場の雰囲気が一変する。その表情からはかなり鬼気迫る感じがする。
ミッテルトもそれに気づいたのか俺への拘束を解除する。
「木場っち。どうかしたっすか…?」
すると木場が見せたのは一枚のアルバム。
俺と隣にいる男の子がかっこよくポーズを決めている写真だ。
この男の子、よく遊んだ記憶がある。よくヒーローごっことかしたっけな。
確か、小学校に上がる前に親の転勤で外国に行っちゃったんだよな。
それっきりで、会うこともなければ連絡もしたことがないけど。
「えーと、確か俺の園児時代の友達の…確か、イリナとか言ったっけ?あんまり覚えてないけど」
「随分やんちゃそうな女の子っすね」
「へ?」
「へ?」
え、女の子?いや、これは男の子じゃあ…。
「いや、女の子っすよこれ。確かにボーイッシュっすけど間違いないっす。気付かなかったんすか?」
「何分園児だったからな…。完全に男だと思ってたわ。まあいいや。それで?」
「これに見覚えは?」
いつもの木場と少し声のトーンがまるで違う。この剣に何かあるのだろうか?写真越しだと判断付かないがかなりの業物に見える。とはいえ見覚えがあるかといわれるとまるで覚えていない。
まあ、何分今の今までこの子のことも覚えてなかったくらいなんだし…。とりあえず、俺は正直に答える。
「いや、全く覚えが無いな。かなり昔のことだし・・・」
「なんなんすか?この剣?」
すると木場は少し驚いたような表情となる。
「ミッテルトさんも知らないの?」
「何分うちは堕天使陣営には本当に幼い時にしか所属してなくて…正直裏の事情には全然詳しくないんすよ…。だから…恥ずかしながら…」
ミッテルトの言葉にある程度納得したのか木場はそうなんだ…と呟き、それ以上の追及をすることなくすぐさま写真へと目を落とした。
「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて・・・・」
そう呟きながら木場は苦笑する。
ただ、その目ははっきりとした憎悪に満ちていた。
「木場、その剣は?」
「これはね…聖剣だよ」
聖剣…なにやら嫌な予感がしてきたぞ。こういう時の俺の勘ってよく当たるんだよ…。また、面倒くさい騒動が起きそうだな。