イッセーside
「木場っち大丈夫すかね……」
「ハイ、とても心配です……」
球技大会から数日が立ったが未だに木場は心あらずといった様相を引きずっている。
木場と同じクラスの女子から話を聞いたところ、教師にあてられても何も聞いていないみたいにぼーっとしていてクラスのみんなも心配しているということだった。
「こればかりは本人の気の持ちようだしな……とはいえ、何かしら一区切りはつけてやらないとしんどそうだ」
「ま、気長に待つしかないってことすね…………ん?」
「なんだ?」
玄関を開けようとすると何やら妙な気配を感じる。
二人……強さの面で見ても部長達と同等の強さはありそうだな。軽く見積もってもB+からAランクはありそうだ。
しかもこれは人間の気配。こっちの世界でAランク相当の人間を見るなんて珍しいな……。
あ、ミルたんは絶対人間じゃないから除外な。
まあでも殺気や敵意は感じられないしなにより母さんと楽しげに談笑しているところを見ると緊急性はないだろう。
「ただいま。誰かいるの?」
「あらイッセーお帰りなさい。今珍しいお客さんが来てるのよ」
リビングに入ってみるとそこにいたのは栗毛の髪にミリムさんみたいな長いツインテールをたなびかせた少女。しかし、ミリムさんとは違いとんでもなくたわわなおっぱいを持っている。
もう一人は蒼髪に緑色のメッシュを持つ少女。こちらも栗毛少女にだって負けず劣らずのご立派なものを持っている。どちらも聖なるオーラに十字架を携えていることからおそらくエクソシストなのだろう。
「こんばんわ、兵藤一誠君。私のこと覚えてる?」
栗毛の女性が話しかけてきた。
俺のことを知ってる?
えーと、誰だっけ?
こんな美少女と知り合っていたら絶対に忘れないはずだ……。ところが記憶を探っても該当する女性はいない。
マジで誰だ?
「あれ? 覚えてない? 私だよ?」
すると母さんがアルバムを見せてきた。その写真は例の聖剣が映っている写真。
母さんはその写真に写っている……ミッテルト曰く女の子を指さす。
「この子よ。紫藤イリナちゃん。この頃は男の子っぽかったけど、今じゃ立派な女の子になっていたから、私もビックリしたのよ」
・・・・・・・・・?
えええええええええ!?
マジで!?
ミッテルトの言うとおりだったのかよ!?正直半信半疑だったわ!!
「だから言ったじゃないすか……」
「ごめん。まじで疑っていたわ」
「久しぶり、イッセー君。ひょっとして男の子と間違えてた?」
「あ、はい……」
俺の言葉に栗毛の少女……紫藤イリナはおかしそうに笑う。
「仕方ないよね、あの頃はかなりヤンチャだったからね。……お互い、しばらく会わないうちに色々あったみたいだね。本当、再会って何が起こるか分からないものだわ」
そういいながら彼女は悪魔となったアーシアをにらみつける。
おそらく俺が悪魔とかかわりを持っていることに気付いているのだろう。
現に蒼髪の少女のほうなんかアーシアを視認した瞬間、
剣からは聖なる波動が出てるしこれが聖剣なのだろう。
イリナのほうもたぶん同質の短剣か何かを隠していると思う。いや、魔力感知で見るに短剣よりも小さいな……。なんだこれ……。紐……?
「それじゃあね。イッセー君」
そう言って彼女たちは何処かへ行ってしまった。
**********
「三人とも!大丈夫!?」
「はい。ご心配をおかけしました」
「みんなが無事で本当に良かったわ」
「まあ、母さんが普通の人間なんで手が出しずらかったんだと思います」
俺とアーシア、ミッテルトは現在部長に抱き寄せられていた。
あの後、聖剣の気配を感じたかなり急いで帰ってきてくれたのだ。
特に悪魔であるアーシアのことを心配していたらしく、真っ先にアーシアに駆け寄っていた。現在は俺達の無事を確認して安堵しているようだ。
それにしてもこの心配具合。グレモリーは特別情愛に深い一族というドライグの言葉もあながち間違いではないのかもしれないな。
しばらくして落ち着いたらしく、部長は今起きていることをポツリと語ってくれた。
「部活が終わった後、ソーナから聖剣を持ったエクソシストが訪問してきたという報告を受けてね、この街を縄張りとしている私と交渉がしたいらしいのよ」
ほう?それはいささか予想外の展開だな。話に聞く限り、悪魔とキリスト教の溝は相当深いと思っていたんだが……。
「教会関係者が悪魔である部長に交渉を?部長はどうするつもりなんですか?契約ってわけでもなさそうですし……。」
「そこまではわからないわ……。でも、とりあえず受けておくことにしたの。こちらに手を出さないと神に誓っていたしなにより協会勢力がわざわざ交渉してくるなんて、よっぽどのことでしょうから」
まぁ、そうだよな。
下手に断って、好き勝手に動かれるよりは話を聞いた方が良い。どんな要件かはわからないけど敵対してるものが同じ場所で好き勝手動いたらどうなることやら……。木場の件もあるし、下手したら戦争の蒸し返しなんてこともありうるだろうし……。
それにしても、木場があの状態のこのタイミングで聖剣ときたか。
最悪だな。いや、案外いいタイミングなのか?
『そうだな。目的はわからないが、もしかしたらあの小僧の気持ちに区切りをつけるいい機会なのかもしれん』
ドライグのいう通り、向こうの目的次第だが、今回の件で木場の気持ちに区切りをつけさせることもできるかもしれない。
そう考えると案外悪くないのかもしれないな……。
まあ、リスクもかなり高いと思うけど……。
「それで、交渉はいつなんすか?」
「明日の放課後よ」
明日か……えらく急だな。でもそうなってくると一つ懸念が……。
「今の木場が聖剣を前にして冷静にいられますかね?」
「そうね。正直言って、今の祐斗は堪えられないと思うわ」
だろうな、下手したら対峙したその瞬間にイリナ達に剣を向けかねないな。普段ならともかく今の木場はそれくらい危うい。
いざという時は俺とミッテルトが何とかするしかないかもな……。
**********
時は過ぎ去り次の日の放課後となった。
俺たちは今イリナともう一人のエクソシストが来るのをまっている状態にある。
「いいか木場。くれぐれも早まった真似はするなよ……」
「わかっているよ。イッセー君……」
本当にわかっているんだか……。目が血走り、雰囲気も殺気立っているぞ……。
これじゃあ本当にエクソシストが入ってきた瞬間に斬りつけかねん。
ガラガラと音を立てて古い扉が開く。
そこから現れたのは昨日の二人、イリナともう一人のエクソシストだ。
木場は蒼髪の少女の持つ剣を見るや否やさらに剣呑な雰囲気を漂わせる。
それを確認した二人も警戒の色を強める。
おいおい、いきなりかよ……。
「木場……」
「わかってるよ……」
「ごめんなさいね……この子は少しあなたの持つものに思うところがあるようなの」
部長は木場を椅子から少し離れた場所に離し、二人に席に着くように促す。
「この度、会談を了承してもらって感謝する。私はゼノヴィアという者だ」
「紫藤イリナです」
「私はグレモリー家次期当主、リアス・グレモリーよ。それで、悪魔を嫌っている教会側の人達が私達悪魔に何の用かしら?会談を求めてくるぐらいだからそれなりのことがあったのでしょう?」
「先日カトリック教会本部ヴァチカン、プロテスタント、正教会にて管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました。そして、聖剣を盗んだ主犯格がこの街に逃げ込んだようなんです」
イリナの言葉に部長たちは驚く。エクスカリバー……ゲームなんかでもよく出てくる有名な聖剣だ。
でも三か所から盗まれたっていうのはどういうことだ?
エクスカリバーが三本あったってことか?
「聖剣エクスカリバーそのものはもう現存していないの」
俺の心の中の疑問に部長は答えてくれた。現存しないというのはどういうことだ?
話を聞いてみると、どうやらエクスカリバーは大昔の戦争で折れてしまい、現在完全なものは現存しておらず、今は折れた刃の破片を集め、錬金術とやらで七つの新たなるエクスカリバーを作り上げたということらしい。
一本だけが行方不明で残り六本は協会が管理しているとのことだ。
「ちなみにこれが七つに分かれた聖剣の一つ、“
そういいながらゼノヴィアは布にくるまれた剣を掲げる。
やはり
七つに分かれた一本でこれとは……再び一つになれば
対してイリナはなにやら懐から紐をとり出す。するとその紐がうねうねと生き物のように変形し、一本の日本刀へと姿を変えた。
「私が持ってるのはこの“
いや、便利だけどさ……。仮にも敵対している奴らにそこまで教えるなよ……。
形が変わることがあらかじめわかってるかいないかでも随分違うというのに……。
木場はまさかエクスカリバーが出るとは思わなかったらしく、さらに剣呑な空気を強めている。
チラッと見てみたがその形相はまさしく鬼の形相と表現するにふさわしい。まじで今にもとびかかりそうだ……。
本当におさえてくれよ……。ここで手を出したらいろいろまずいんだから……。
「……で、そのエクスカリバーとやらを盗んだ奴は誰なんすか?」
「……君は?見た感じ悪魔ではないようだが……?」
「あ、そういえば自己紹介してなかっいたっすね」
そういうとミッテルトはカラスをほうふつとさせる漆黒の翼をはためかせる。
それを見た二人は何やら驚いたような顔となった。
「ども、うちはイッセーの恋人で堕天使の……」
「……よもやすでに手が回っていたとはな」
「は?」
そう言うとゼノヴィアは聖剣を取り出し、それをミッテルトに向ける……おいおい、いきなりなにやってるんだよ。
「さあ、盗んだエクスカリバーのもとへ案内してもらうぞ」
……どうやら何やら事情があるようだな。
次回は21日に投稿します