帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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共同戦線です

イッセーside

 

 

「なあミッテルト。これどう思う」

 

「いやあ、うちとしてもなんと言ったらよいのやら」

 

あのあと、俺とミッテルトは独自の行動を始めることにした。

木場にはああいったもののエクスカリバーにコカビエルなんてヤバそうなやつも絡んでいる以上、何もしないという手はない。

こういう時眷属候補という立場は優れているよな。あくまで候補で眷属じゃないのだからある程度の自由は保障されているのだ。

部長からは嫌な顔されたけど最悪の場合関係ないと切り捨てることだってできるわけだしな。

そんなこんなでとりあえず、動きを捕捉するために木場、もしくは教会勢を見つけようと行動していたのだが……。

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉぉ!!」

 

なんかいた。全力で見なかったことにしたいけど何かが俺たちの目の前にいるのだ。

路頭で祈りを捧げる白いローブを纏う女の子が二人。いやあ、目立つ目立つ。

通りすぎる人々も奇異の視線を向けている。

関わりたくないのか皆が視線を向けるだけで基本的に無視している。

気持ちはわかる。俺たちだって無視するだろう。知り合いじゃなければ。

 

「なんてことだ。これが超先進国、日本の現実か……。誰も救いの手を差しのべてくれないとは。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでよゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうするしかないんだから。異教徒どもの慈悲がなければ食事も取れないのよ?ああ、パン一つさえ買えない私たち…」

 

「ふん。もとはといえば、おまえが詐欺紛いの変な絵画を購入したのが悪いんだ」

 

そう言ってゼノヴィアが指差したところには変なおっさんが描かれた一枚の絵画があった。

下手くそな絵だな。レインさんを見習え。

 

「何を言うの!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の人もそう言ってたわ!」

 

「じゃあだれかわかるのか?」

 

「多分……ペドロ様?」

 

「ふざけるな。聖ペドロ様がこんななわけないだろう。ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ……。主よ、これも試練なのですか」

 

「頭抱えないでよ。あなたって沈むときはとことん沈むわよね」

 

「うるさい異教徒!それより、今日の食事を何とかしないとエクスカリバー奪還どころじゃない。どうすれば良いんだ……」

 

「「はぁ………」」

 

ぐぅぅぅぅぅぅ………。

 

離れて見ている俺のところまで届く腹の虫。

腹が鳴るなり二人はその場に崩れ落ちる。

……昨日、やり合った娘達と同一人物とは思えないな。

なんというか、ただただ哀れ。

 

「さて、どうする?あれに話しかけるとなると難易度高いぞ」

 

「そうすね。うちもぶっちゃけ関わりたくないすわ」

 

もう少し様子を見よう。そしたら何処かへ移動するかもしれないし。

そんなこと考えているとイリナが何やら呟きだした。

 

「いいこと思いついたんだけどさ、異教徒脅してお金貰うのはどうかしら?主も異教徒相手なら許してくれると思うの」

 

「寺を襲撃するか?それとも賽銭箱とやらを奪うか?」

 

「お前らそれは異教徒云々の前に人として駄目だろ!!!」

 

あ、しまった。つい突っ込んでしまった。

気付いた時にはもう手遅れ。二人とも俺たちのことをじっと見つめていた。

 

 

 

*********

 

 

 

「美味い!日本の食事は美味いぞ!」

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味よ!」

 

「よく食うっすね」

 

ガツガツガツガツと二人はファミレスの料理を胃の中に送り込んでいく。

見事な食べっぷりだよ。

うどんが延期になった今、懐は無事だと思っていたが、そんなことなかったな。

何だろう、泣けてきた。

 

「安心するっすよ。ここはうちと二人で割り勘にしましょう」

 

「マジ!?ありがとう」

 

ミッテルトマジ天使……いや、堕天使か。

数分後、彼女たちは山盛りの料理を丸々間食して見せた。

 

「信仰のためとはいえ………まさか異教徒と堕天使に救ってもらうとは………世も末だ」

 

「私達は堕天使に魂を売ったのよ!」

 

「いや奢ってもらっといてその言い草はひどくないすか?」

 

「ああ、主よ! 心優しいイッセー君にご慈悲を!!」

 

イリナは胸の前で十字架を刻む。どことなく可愛らしさすら感じる。

普通にしてる分には美少女なんだけどな、この二人。

水を飲み、息をついたゼノヴィアは改めて俺たちに聞く。

 

「で、私たちに接触した理由は?」

 

「単刀直入に言わせてもらう。エクスカリバーの破壊に俺も協力させてほしい」 

 

俺の発言に二人は驚愕していた。

まあ無理もない。悪魔は関わるなと言った翌日に協力させてくれ、と言ってきたんだからな。

これでダメでも何度でも頼むまでだ。

ところがゼノヴィアの反応は俺たちの予想とは大きく異なるものだった。

 

「ふむ、そうだな…一本くらいならいいだろう。ただし正体をバレないようにしてくれ」

 

意外にもすんなりと許可が下りた。思わずミッテルトと顔を見合わせてしまう。

ミッテルトは呆気に取られて口をポカンと開けていた。たぶん俺もなんだろうな。

 

「ちょっとゼノヴィア!?いいの?相手は悪魔の協力者よ?手を組むということはすなわち悪魔と手を組むということと同じよ!」

 

思わず立ち上がるイリナ。まあ普通はこういう反応だろうな。

 

「それは分かっている──だが、この任務は私たち二人だけでは正直つらい」

 

「それはわかるわ。けれど!」

 

「最低でも私たちはエクスカリバーを破壊し逃げ帰ればいい。私たちのエクスカリバーも奪われるくらいなら自ら壊せばいい。上からはそう言われてはいるが、仮に奥の手を使ったとしても無事で帰れる確率は……まあ、三割といったところだろう」

 

実際にはそれよりもはるかに低い。

ゼノヴィアには自信の源たる奥の手があるのだろう。

確かにゼノヴィアの内に秘める()()はエネルギーだけならおそらく伝説級(レジェンド)かそれに近い力を秘めている。

だが、彼女ではその真価を引き出すことはできないだろう。真価を引き出したいのなら最低でも仙人級にまで至らないと厳しいと思う。

現時点のゼノヴィアでは出せて10パーセント程度だと思う。

せいぜいエクスカリバーより多少強力な武器として使うのが精いっぱいだろう。

それじゃあ下位の災厄級(カラミティ)級ならば可能性はあっても災禍級(ディザスター)はやれないと思う。

ま、コカビエル自体見たことないから俺の警戒しすぎという可能性もあるがね……。

 

「で、でも……」

 

「イリナ。私は任務を遂行し無事に帰ることが真の信仰だと思う。生きて、これから先も主のために戦うために……。違うか?」

 

「違わないわ……でも……」

 

「ならば、ドラゴンの手を借りていると思えばいい。俺は赤龍帝だからな」

 

「「!?」」

 

二人とも凄く驚いているな。

やっぱ、この世界では赤龍帝の名前って有名なんだな。さすが三大勢力を相手に大暴れしただけのことはあるなドライグよ。

 

『ちゃ、茶化すな相棒』

 

すまんすまん。

 

「まさか、キミが赤龍帝だったとは……」

 

「そういうことだ。それで、どうだ?悪魔の協力者云々はいったん置いといて、俺の申し出を受けてくれるか?」

 

さあどうだ。正直これでダメなら結構困るんだが。

 

「……良いだろう。最悪、上にはドラゴンの助けを借りたと報告すれば良いからな」

 

「よし、交渉成立」

 

そうと決まれば木場に報告しとくか。あいつ今電話でないけど聖剣使いと一緒にいるといえば反応するだろう。

 

「それはそうと一ついいか?」

 

ん?なんだ?

 

「そこにいる堕天使……ミッテルトとか言ったな。彼女はいったいどういう存在なんだ?」

 

あー、言われてみれば。この二人はミッテルトのことをよく知らないし、堕天使である彼女がなぜ協力してくれるのかとかいろいろ気になるんだろう。

 

「彼女は俺の恋人だよ。“神の子を見張る者(グリゴリ)”には所属してない……いうなればはぐれ堕天使といったところかな?」

 

「恋人!!??」

 

「はぐれ堕天使?“神の子を見張る者(グリゴリ)”に所属してない堕天使は珍しい。どういう事情だ?」

 

あ、そこ突っ込むか。いや、当然か。

堕天使はほかの種族と比べて数も少なく、そのほとんどが“神の子を見張る者(グリゴリ)”所属という。むしろあれは突っ込まない部長がおかしいのかもしれない。

少し考え込んだ後、ミッテルトは静かに語り出す。

 

「……うちは幼少期、とある組織にさらわれましてね。そこから十数年、まあ、それはひどい目にあって、んで、イッセーに助けてもらってからはイッセーの家に住んでるんすよ。その間一度も帰ったことはない……というか、正直攫われたのが小さいころすぎて“神の子を見張る者(グリゴリ)”の事とかほとんど覚えてないんすよね。まあこちらとしてはそんな事情っす」

 

向こうのことは一切話してはいないがほとんど事実だな。ファルムスにさらわれ下僕としてこき使われた。

ゼノヴィアもイリナもミッテルトの境遇に同情したのか少し憐みの表情が見え隠れする。

この子たちも本当は心優しい性格なのかもしれないな。狂信者だけど。

 

「そうか、すまない。少し無神経だったな」

 

「いいっすよ。今はこうして幸せなんすし」

 

どうやら二人のミッテルトに対してのわだかまりは消えたようだな。

さてと、そろそろ木場を呼び出すとしますか。

 

 

*********

 

 

 

カランカランと音が鳴り、木場と小猫ちゃん、そして匙がファミレスに入ってきた。

ん?小猫ちゃんと匙?

 

「あれ、小猫ちゃんと匙? なんで二人がここにいるんだよ?」

 

俺が疑問を漏らすと小猫ちゃんと匙は律義に事情を話してくれた。

 

「……私は祐斗先輩を探していました」

 

「俺は小猫ちゃんに事情を聞いて木場を探すのを手伝っていたんだ。そしたら木場がファミレスに向かってるところを見つけてよ……」

 

なるほど、小猫ちゃんも木場のことを心配していたわけだ。

んで、部長たちグレモリー眷属を頼るわけにはいかないのでシトリー眷属である匙を頼ったと。

小猫ちゃん本当にいい子よな。

 

「それで、イッセー先輩たちはその二人を連れて何をしようとしてたんですか?」

 

「ああ、それはこの二人にエクスカリバーを破壊させてもらえないか交渉をしてたんだ。一本くらいならばいいってよ」

 

「「「!?」」」

 

俺の発言に木場と小猫ちゃんは驚いたような表情をする。

 

「ちょっと待てよ!それってこちらは関わらないことになってんだろ!?何考えてんだ!?会長に殺されちまうぞ!?」

 

匙も一応事情は知っていたようだ。俺としては別に匙はいてもいなくてもいいんだけど……。

この際巻き込むか?いや、でもシトリー眷属を勝手に巻き込むのもどうかと思うしな……。

とりあえずこの場にいてもらって最終的な判断は個人に任せよう。

 

「エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは、正直、遺憾だね」

 

「随分な言いようだ。そちらがはぐれなら問答無用で斬り捨てているところだ」

 

おいおい、共同作戦前なんだから、ケンカはやめようぜ。

 

「やはり“聖剣計画”のことで恨みを持っているの?エクスカリバーと教会に」

 

イリナの問いに木場は目を細めながら冷淡に肯定する。

 

「でもね、木場君。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。私やゼノヴィアみたいに聖剣に呼応できる使い手も誕生し「イリナ」!」

 

俺はイリナの言葉をいったん遮る。イリナの言葉で木場の怒りが徐々に増していることを感じ取ったからだ。

 

「確かにその計画で二人みたいな使い手が生まれたのも事実だけど、それとこれとはまるで話が違う。その言い方だと『研究の飛躍のためだから君の仲間を殺したことについても許してね』って言ってるように聞こえるぞ」

 

「うっ……、ごめんなさい」

 

イリナも今の発言は不謹慎だったと感じたのだろう。素直に木場に謝罪をした。

正直に言って木場やその仲間たちに教会が行った仕打ちはあまりにも残酷だと思う。

 

「その事件は私たちの間でも嫌悪されているよ。計画の責任者は異端の烙印を押されて追放、今は堕天使側の存在だしな」

 

「堕天使側に?その男の名は?」

 

「バルパー・ガリレイ。“皆殺しの大司教”と呼ばれた男だ」

 

バルパー。そいつが木場の宿敵ってことか。

 

「バルパー……その男が僕の同志を……」

 

「やったな木場。明確な敵がわかっただけでも一歩前進じゃねえか」

 

木場の瞳にも新たな決意のようなものが見て取れる。自らの刃を向けるべき存在がわかってすっきりした顔だ。

今までは目の前の二人のことも切りかかろうとするぐらいには見境なさそうだったからな。

 

「僕のほうも情報を提供するよ。先日、僕はエクスカリバーを持ったはぐれ神父に襲撃された。相手の名はフリード・セルゼン。聞き覚えは?」

 

あ、フリード。そうだすっかり忘れていた。以前のレイナーレ事件以来音沙汰ないからてっきり駒王から出ていったとばかり思っていたんだけどな。

 

「なるほど、奴か」

 

「あれ?あいつを知ってるのか?」

 

意外に有名なのかあいつ?いや、でもあの性格だしな…。ひょっとしたら教会所属時から問題児だったのかもしれない。

俺がゼノヴィアに尋ねると、ゼノヴィアの代わりにイリナが答えた。

 

「ええ、教会の中でも有名よ。フリード・セルゼン。十三才でエクソシストになった天才。数多くの悪魔や魔獣を滅するという功績を残していったわ」

 

「だが、奴はやり過ぎた。同胞すらも次々に手をかけていったのだからね。フリードには最初から信仰心などかけらもなかった。あるのは異形への対抗心と戦闘執着。最終的に奴は異端として追放された」

 

なるほど。質の悪い戦闘狂ってところか。味方にまで手をかけるだなんてな。

アーシアの時も思ったが本当に胸糞悪い奴なんだな。

……でも、これって偶然か?

堕天使側に逃げ込んだ聖剣の専門家にエクスカリバーを盗んだ堕天使幹部。そして突如現れた聖剣装備のはぐれ神父。

もしもこれらがすべてつながっているとすれば……。

 

「タイミングから考えて、もしかしたら今回の件にバルパーってやつが関係しているかもしれないっすね」

 

「……なるほど、教会から追放された者同士が結託することはそう珍しいことでもない。もしかしたら──」

 

ミッテルトも同じ考えに至ったようだな。ゼノヴィアも可能性を肯定しているし、ほぼ確定といっていいかもしれないな。

 

「じゃあ、話はついたわね」

 

これにて悪魔、堕天使、教会勢によるエクスカリバー破壊共同戦線が結成されたのだった。

イリナはペンを取り出すとメモ用紙にペンを走らせ、連絡先を渡してきた。

 

「ハイ、これ私の連絡先。何かあったらここに連絡してね」

 

「サンキュー。じゃあ、俺のも──」

 

「イッセー君のケータイ番号はおばさまからいただいてるわ」

 

イリナが微笑みながら言う。

 

「マジで!?」

 

母さん、何やってんの!?

いくら幼馴染だろうとプライバシーというものがこの世にはあってだね……。

 

「では、そういうことで。食事の礼はいつか返そう。赤龍帝の兵藤一誠」

 

ゼノヴィアはそう言うと席を返した。

 

「またねイッセー君!たとえ異教徒でもイッセー君なら主も許してくれるだろうしまた奢ってね」

 

いや、それはちょっと……。というかそれでいいのか信仰は?

イリナは手をブンブン振りながらゼノヴィアと共に去っていった。

二人がいなくなってしばらくすると木場がぽつりとつぶやいた。

 

「イッセー君。君はどうしてこんなことを?」

 

いまさらかいな。そんなの理由は一つしかない。

 

「仲間だからに決まってるだろ。お前が復讐したいなら俺は手伝うぞ。仲間がつらい思いしているのは見ててあまり気分のいいものじゃないからな」

 

「うちも同じっす。ま、正直気持ちはわからないでもないすし手伝ってあげようと思っただけすよ」

 

「……祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは寂しいです」

 

寂しげな表情で小猫ちゃんがそう呟く。普段無表情な小猫ちゃんが言うと破壊力が違うな。

木場じゃないのにきゅんとしてしまった。

木場はというと、困惑しながらも苦笑いしている。

まさか、小猫ちゃんがこんな表情を浮かべるとは思わなかったのだろう。

 

「まいったね。小猫ちゃんにそんなことを言われたら、僕も無茶できないよ。本当の敵も分かったことだし、そうだね、皆の好意に甘えさせてもらうことにするよ」

 

どうやら木場もやる気になったようだ。小猫ちゃんも喜んでいる。よし、気合入ってきたぞ。

 

「よし打倒エクスカリバー!木場のためにも、絶対聖剣ぶっ壊すぞ!」

 

「「「おー!」」」

 

話はまとまった。ここにいるみんなの思いは一つだ。

 

「えーと、すまん。俺はこの話に全くついていけてないんだけど……」

 

…………匙を除いて。

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