帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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黒歌きます

イッセーside

 

 

 

 

た、助かった……けど、どういうことだ?

俺が思わずそう思うのも無理はないだろう。

なぜならそこに本来はいないはずの存在が、部長達を守るように立ちふさがっていたからだ。

 

「く、黒歌!?」

 

メロウの放った一撃は黒歌の結界に遮られ、見事に霧消した。

その事実に対し、メロウは思わず狼狽している。

皆大丈夫そうだな……。どうやら黒歌の魔王覇気でカグチの覇気を相殺してるらしく、皆も力場から解放されたようだ。

 

「貴様は確かはSSランクのはぐれ悪魔黒歌。なぜ貴様がここに?」

 

バルパーは思わずそう呟く……って

 

「はぐれ悪魔!?黒歌っちが!?」

 

ミッテルトの叫ぶ声がこだまする。俺もビックリだよ。黒歌がはぐれ悪魔!?初耳なんだけど!?

バルパーの言葉を受けて黒歌は不敵な笑みを浮かべる。

黒歌はバルパーの質問を無視し、ローブの二人と向かい合う。

 

「私の攻撃を……こいつ、何者だ」

 

「こいつは黒歌。ルミナス配下、三公の一人にして、ルミナスから“悪夢の黒猫(ナイトメアキャット)”の称号を与えられている女だ。三公の中でも最強の戦闘力を誇っている」

 

二年間こちらに住んでいた俺たちならばともかく、黒歌についての情報も当然のように把握している。

確定だな。

こいつら向こうの世界での俺たちのことを調べているんだ。

 

「ルミナス……貴殿が言っていた吸血鬼か。一度手合わせ願いたいものだな」

 

コカビエルがなにか馬鹿なこと言ってるけど気にしない方が良さそうだ。

そんなことよりも問題はこの二人。

メロウとか言う女の方はルミナスさんの名前を聞いた瞬間ピクリとも動かなくなった。

どうしたんだ?

 

「そうか……貴様あの糞女の配下か……」

 

メロウはフードを取り、素顔となったメロウは狂気的な笑みを浮かべている。青髪の短髪に耳からは魚のようなヒレが覗いている。魚人族(マーマン)かなにかか?

そして、一気に黒歌との距離を積め、黒歌に攻撃を仕掛けた。

 

「いいでしょう……。あの糞女は配下を大切にしていたからな……。貴様をグチャグチャにしてルミナスのもとに送りつけてやろう!!

安心するといいわ……その後は飼い主も仲良くあの世に送ってあげるからねぇ!!」

 

「なるほど……ルミナス様の言う通りの奴だにゃん」

 

一撃一撃が衝撃波だけでアスファルトの地面を粉々にする威力。しかし、黒歌はメロウの攻撃の全てを“闇爪”で受け止めている。

“闇爪”は黒歌の誇る神話級(ゴッズ)の鉤爪型武器で無類の切れ味と堅さを誇っているのだ。

それにしても、気になるのはあの女だ。メロウとやらの話を聞く限り、こいつはどうやらルミナスさんに恨みを持っているみたいだな。黒歌の口ぶりからしてもルミナスさんと知り合いっぽいし……。

 

「ククク、凄まじいな……これが向こうの世界の実力か」

 

「こいつらだってほんの一部にすぎねえよ」

 

カグチはコカビエルの言葉に呆れを混ぜながらそう言う。

黒歌は本来魔法使い型(ウィザードタイプ)だが、迷宮での修行により肉弾戦の技量(レベル)も極めて高い。迷宮守護竜王と比べても上回っているほどだ。

 

「その程度?これじゃあルミナス様を殺すなんて夢のまた夢にゃん」

 

「チッ……たかだが薄汚い野良猫風情が……図に乗るなよ!!」

 

もっともそれはメロウとやらも同じ。言動はなんかあれだが力は本物だ。指揮棒をフェンシングのように操り、華麗な動きを見せている。口ではああは言いつつも黒歌もそこまで余裕があるわけでもなさそうだ。

二撃三撃と何度か打ち合い、二人は距離を取る。

 

「メロウ撤退しろ」

 

「!?ふざけるな!!私はまだ……」

 

「あのお方の命令を忘れたか?ルミナスへの復讐なんざ後でもいいだろ」

 

「…………チィ。ならば今回の実験の観察は私がやろう。それでどうだ?」

 

「……まあ、それなら問題ないか。ぶっちゃけ誰が観察しても問題ないだろうしな」

 

カグチの言葉により、メロウは矛を納める。

どうやら頭に血がのぼっていてもクールダウンできるようだな……。

 

「さてと、じゃあおまえ達に一つ宣言させてもらうとしよう」

 

カグチは何が楽しいのやら嬉々として己の目的を告げようとする。

 

「これからここにいる堕天使幹部のコカビエルさんがおまえたち悪魔の根城である駒王学園を中心にこの街を破滅させる。三大勢力の戦争を引き起こすためにな……」

 

な!?正気かこいつら!?

 

「そ、そんなことして何になると言うの!?」

 

部長の言い分ももっともだ。こいつの言ってることは正直言ってワケわからん。

 

「安心しろ。あくまでそれは俺の目的にすぎん」

 

「まあ、俺個人としては戦争そのものに興味がないが……コカビエルさんは戦争で三大勢力の戦いに決着をつけたいそうだ……」

 

なるほど、戦争はあくまでコカビエルの目的と言うことか。

でもそうなるとこいつらの目的がよくわからん。

 

「俺たちの目的は便乗だな。それに乗じて見所ありそうな奴をスカウトしようってことだ。おまえたちもどうだ?八星なんか裏切って俺たちと好き勝手しないか?」

 

強い奴を勧誘したい……そのために戦争を起こそうってのか?

なんていうか、皇帝ルドラのやり口そのものって感じだな。趣味が悪い……。

 

「ふざけんな!するわけねえだろそんなこと!」

 

「そうっす!うちらがあの方を裏切るなんてこと絶対ないっすよ!」

 

「同感にゃん。ルミナス様を裏切るようなことをするつもりはないにゃん」

 

当然全員が拒否する。

まあ、奴もそれはわかってたらしく、おとなしく引き下がる。

 

「そうかい……ま、気が変わったらいつでも言ってくれ」

 

そう言うとカグチの姿は揺らめき、やがて完全に消失した。

 

『今回俺たちはコカビエルとの交渉のため来たにすぎない。それも終わったし、メロウが残りの仕事を俺の代わりにやってくれるって言うし、そろそろ帰らせてもらう。まあ、縁があったら殺り合おうや……』

 

そう言い残し、カグチは何処かへ消えていった。

残る驚異はメロウとコカビエルの二人。

そしてその二人も空間転移を使用し、恐らくは駒王学園へと姿を消した。

 

「貴様たちと戦う時を楽しみにしているぞ」

 

そう言い残して……。

 

 

 

 

***********

 

 

 

 

「ふぅ~助かったっすよ。でも、なんで貴女がここにいるんすか?黒歌っち?」

 

敵の気配が消え、一息ついたところでミッテルトが黒歌に訪ねる。

それに対し、黒歌は少し慌てながら目そらしする。

 

「え、え~と、仕事と言うかなんと言うか~。ほ、本当は来るつもりなかったんにゃけど……」

 

そして黒歌は部長……いや、小猫ちゃんに視線を向ける。

対して小猫ちゃんは座り込んだまま視線を落とし、妙な雰囲気を醸し出している。

どうしたんだ?てか知り合い?

そんなこと考えてると二人はとんでもない発言をぶちかましてきた。

 

「えとひ、久しぶり……だにゃん。げ、元気にしてた?白音?」

 

「…………なんで姉様がこんなところにいるんですか?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

ねえさま?だれが?黒歌が?

 

俺たちの混乱をよそに二人は会話を進める。

 

「し……」

 

「貴女は私を捨てたんじゃなかったんですか!?」

 

小猫ちゃんの怒鳴り声とかはじめて聞いたわ。見ると小猫ちゃんの眼には涙が浮かんでいる。

 

「私を捨てた貴女が、今さらなんで私の前の現れたんですか!?なんで私たちをかばったんですか!?あの時、あなたが去って私がどれだけ酷いことを言われたか……」

 

今まで止めてた感情が爆発したかのように小猫ちゃんは怒鳴る。次第に涙も溢れてきた……。

 

「私は、姉様を信用できません……」

 

「…………そう」

 

「ちょ、ちょっと待つっす!!どういうことすか!?白音って誰すか!?姉さまって……え!?」

 

二人の会話にいたたまれなくなったミッテルトが待ったをかける。

まあ当然だよな。俺も何が何やらさっぱりわからん。ただでさえさっきから怒涛の展開すぎて処理が追い付いてないっていうのに……。

でもわかったこともある。

 

「ひょっとして、黒歌と小猫ちゃんって……姉妹なの?」

 

「うん、そうだよ」

 

「「マジで?」」

 

「マジにゃん」

 

道理で小猫ちゃんが誰かに似てると思ったわけだ。こうしてみると一目瞭然だ。

性格も体格も何もかも違うけど、妖気(オーラ)の質が非常に似通っているのだ。

 

「じゃあ、はぐれ悪魔ってのは?何気に初耳なんだけど」

 

「それも本当にゃん。幻滅した?」

 

「いや、それはねえけど……長い付き合いだし……」

 

なんやかんやで十年以上親交が続いているわけだし、黒歌のことはよくわかってるつもりだ。何したのかは知らねえが理由もなく他者を傷つけるような奴じゃない。

 

「ちょっといいかしら?」

 

そこに部長が入ってきた。まあ今までずっと蚊帳の外だったしな。

 

「あなたがはぐれ悪魔の黒歌ね。助けてくれたことには礼を言うけど、この子には近寄らないでもらえるかしら?」

 

「……了解にゃん」

 

そう言うと素直に黒歌は小猫ちゃんから距離を置き、踵を返す。

どうやら本当に深い事情がありそうだな。

すると部長が今度は俺たちのほうに向き合ってきた。

 

「イッセー、ミッテルト。説明してもらえるかしら?あなた達はそこのはぐれ悪魔とどういう関係なの?」

 

誤魔化しは許さないといった風に部長は俺たちに問いただす。

まあ無理もない。はぐれ悪魔……それもSSランクとか言ってたし悪魔界隈じゃ相当のお尋ね者なんだろう。それと親しい様子を見せれば当たり前のことか。

 

「説明難しいですけど、黒歌は今とある吸血鬼の部下として働いているんです」

 

「吸血鬼?」

 

「ええ、といっても吸血鬼領とはまた異なる陣営なんですけど……。で、黒歌の主と俺の師匠が古い友人らしくて、その伝手で知り合って……友達になって一緒に修行したり遊んだり……まあ、そんな感じの関係です」

 

さきほどカグチが言っていた部分も統合するとこれが納得しやすいと思う。異世界云々抜きにしても事実しか言ってないわけだしな。

 

「なるほど。嘘は言ってないようね」

 

部長は一応納得したのか引き下がる。

今度はこっちが気になることがあるんだが……。

 

「ところで黒歌っちって何したんすか?うちら結構付き合い長いすけどはぐれ悪魔云々は今初めて知ったんす。できれば教えてほしいす」

 

「それは……」

 

「そこにいる黒歌はかつてナベリウス家分家の上級悪魔の眷属だったの。でも力におぼれ、主を殺し逃亡。残された小猫はその責任を追及され、深い傷を負ったの」

 

なるほど主殺しか……。確かにそれは悪魔の中でも最も大きい罪といえるかもしれない。

それではぐれ……しかもSSなんてすごそうなランクで指名手配されたわけか。

 

「……で、黒歌はなんでそんなことしたんだ?」

 

「え?そ、それは今そこにいる白音の主が言った通り……」

 

「嘘つけ。断言するがお前は絶対理由もなくそんなことはしない。長い付き合いだしそれくらいわかるさ」

 

そう言うと黒歌は少しうれしそうな顔をしたがすぐに俯いてしまった。やれやれ、ようやくわかった。元々この世界出身である黒歌が一度も帰ろうとしなかった理由が。

おそらく黒歌は恐れていたんだろう。小猫ちゃんに拒絶されること、そして俺たちに己の過去が露見することを。

変なところで臆病なんだからコイツ。

俺は小猫ちゃんのほうへと視線を向ける。

 

「なあ、小猫ちゃん」

 

「……なんですか?」

 

「一度黒歌と話さないか?」

 

「……っ!?」

 

「な、イッセーあなた話を聞いてたの?」

 

「聞いてましたよ。でも、俺は黒歌がむやみやたらに力を振るうやつじゃないと信じてます。黒歌は絶対部長が……小猫ちゃんが思ってるような奴じゃない」

 

俺の言葉で部長も何も言えなくなったようだ。何しろ部長自身、たった今助けてもらったばかりなんだしな。

俺の言葉に思うところもあるんだろう。

 

「……少し、考える時間をください」

 

「おう。まあ、コカビエルの件もある。速く学校に向かわないといけないし最悪ここで答えは出さなくていいよ」

 

二人の件についても心配だがコカビエルだって忘れてはいけない……というか最優先はこちらだ。

このままでは学園、しいてが街が未曽有の被害を被ってしまう。

しかも今、学園にはソーナ会長もいたはず。急がないと危ないかもしれない。

 

「そうだすっかり忘れてた!今学園には会長がいるんだ!早く助けに行かねえと……」

 

「いえ、ココはうちら三人で行くっす」

 

ミッテルトの発言にみんなが驚く。とはいえ俺もミッテルトの意見に賛成だ。

聖剣を破壊させてやるために個人的には木場も行かせたいがもうそういう次元の話じゃない。

 

「どういうこと?」

 

「正直、コカビエルだけだったら皆の同行もまだ許可できた。でも、あのメロウとかいう女。あれは危険です。みんなも奴の力を肌で感じたはずですよ」

 

そう言うと皆メロウの覇気を思い出したのか顔を青ざめ身震いさせる。

メロウはカグチとほぼ同等の覇気を醸し出していた。

402万という数値の上で言えばこの場の誰よりも高い数値に加え、神話級(ゴッズ)の武器まで携えている。

しかも明らかな究極能力(アルティメットスキル)持ちときた。そんな化け物と戦う可能性がある以上、部長達では危険すぎる。

たぶん、真正面からアレに対抗できるのは俺と黒歌の二人だけ。ミッテルトも足手まといにはならないだろう。

 

「と、いうことで部長たちは待機してもらいます」

 

「……イッセーの考えはよくわかったわ。でも、私にだってこの街を管理してる誇りがあるの。引き下がってばかりじゃいられないわ」

 

まあ確かに、部長はこの街を管理する責任者なわけだしこれは正論ではある。

 

「ボクも行くよ。聖剣があちらの手にある以上それを破壊するのが僕の役目だ」

 

「私も任務を放棄するわけにはいかん。もとより死は覚悟しているわけだしな」

 

「お、おう。会長が危ないっていうのに黙ってられるか!」

 

「私も、リアスの眷属として覚悟はできてますわ」

 

これはさすがに驚いたな。あれだけ死を間近に感じたというのにまだ折れないとは。

まだ少し混乱状態にある小猫ちゃんとアーシア以外が全員ついていくつもりなようだ。どうしよう。これだと説得も難しそうだな。

 

「お願いイッセー。足手まといになるだけかもしれないけど、何もしないよりかはマシよ!」

 

部長は一歩前に出て頭を下げてまで頼み込んできた。

一応仮とはいえ上司にこんなことされちゃあさすがに断れないか……。

 

「……わかりました。でも、危険と思ったらすぐに逃げてくださいよ」

 

「ええ、ありがとう」

 

ひとまず大怪我を負ったイリナはアーシアに任せて俺たちは駒王学園に向かうことにした。黙ってはいるがどうやら小猫ちゃんもついてくるようだ。

でも、その前に……。

 

「さて、黒歌。お前、あのメロウとやらの情報何か持ってるんだろ?」

 

「え?あ、うん」

 

やっぱりか。どうもあいつルミナスさんの知り合いっぽいし黒歌もおそらくルミナスさんから何かしらの情報を得ているのだろう。走りながらこの場にいる全員が黒歌のほうへと視線を向ける。

 

「私はもともと、今の主であるルミナス様の命令で駒王町の調査に来たんだにゃ」

 

「まあ、そうだろうな。ぶっちゃけお前が動く理由なんてそれくらいしかないだろうし。でも、どうしてルミナスさんはこちらの調査なんかを?」

 

「……話は少し前にさかのぼるんだけど、実はルミナス様。一度日本に遊びに来てるんだにゃん。私とヒナタの生まれた国を見たいって言ってね……」

 

「「え?」」

 

まじかいつの間に!?いや、心当たりはある。

少し前ってことはひょっとして俺たちが報告に魔国に行った時か?

そういえばあの時、ルミナスさんがリムルに頼み事しに来たって言っていたな。ついぞ姿を見なかったけどもしかして行き違いになっていたとか?

 

「その時、ルミナス様はこの街で妙な視線と気配を感じたらしいんだにゃ。そして何より、ルミナス様はその気配に覚えがあったそうだニャ」

 

妙な気配か。俺は一度もそんな気配感じたことねえけどタイミングからしてルミナスさんを狙っていたってことか?

 

「それで、その調査のためにこの国出身である私に白羽の矢が立ったわけにゃ。ヒナタは忙しくて長期の調査は難しかったというのもあるしね」

 

なるほど。確かに聖騎士長であるヒナタさんはこの時期になると新兵の訓練なんかで忙しくなるもんな。魔物から人々を守るという通常業務もあるし、確かにこちら側の世界の調査なんかはあまり向かないのだろう。

 

「……で、あいつの正体結局何なんだ?」

 

俺の言葉に黒歌はとんでもない爆弾を落としてきた。それと同時に奴らの強さにも納得もしたのだ。

 

「奴らの正体は……」

 

 

 

 

*********

 

リムルside

 

 

 

今日は魔国連邦と帝国の両学園の合同演習の確認をするため、マサユキを招いて軽い会議をしようと考えていた。

まあ、会議といっても建前で、日頃の大変さを愚痴るだけなんだけど……。

その愚痴る会の直前にルミナスがやってきたのである。

ヒナタを連れて来たルミナスは俺とラミリス、ディーノにも用があるといい、ついでということでマサユキ……って言うよりはヴェルグリンドにも来て貰っている。

そして、ある程度ルミナスの話が終わると皆が真剣な表情となっている。

 

「……で、本当なのルミナス?あいつが生きてるかもって……」

 

「まだ確定したわけではないが、十中八九間違いないと思っておる。あの時の気配は間違いなくあの外道のものじゃった……」

 

「でもさ、それってお前の失態じゃね?あいつを殺したのお前なんだからさ……。俺たち関係ねえじゃん」

 

そう言いながらディーノは紅茶とお菓子を頬張る。

自分には関係ありませんという体を装い面倒事から逃げるつもりのようだ。

それに気付いてはいるが事実だからこそルミナスは悔しそうにディーノを睨む。

 

「フンわかっておるわ!じゃが、奴が生きているとなれば、お主たちにとっても脅威となるであろう……」

 

「まあ、そうかもな……」

 

話に聞く限りでは相当厄介な奴らしい。

かつてルミナスは不意打ちに近い形で霊子崩壊(ディスインテグレーション)を叩き込むことで倒したそうだが真っ正面からの戦闘だと勝てなかっただろうという。

 

「そうね……。奴は当時私たち竜種と比べても遜色のない力を秘めていたわ。今の私ならともかく、かつての私じゃ勝てなかった可能性もあるわね……」

 

なんとビックリ。以前のヴェルグリンドでは勝てないかもしれないという発言は予想外だ。今はわからないらしいがそれでも苦戦するだろうというのがヴェルグリンドの正直な感想らしい。

できればルミナスの勘違いであることを祈りたいな……。

ちなみにマサユキは見事なまでに他人事だ。ヴェルグリンドが勝てない発言には驚いていたが、基本的には関係ないといわんばかりにボケッとしている。

まあ、気持ちはわかるし俺もできればそうしたいな……。

 

「それに、イッセーとミッテルトが故郷の町で歌を操る謎の女にあったと聞いておるぞ」

 

「?ひょっとして何か知ってるのか?」

 

「うむ。歌を操る究極保有者……。妾には心当たりがあるのじゃ……」

 

心当たりだって!?

一体どういうことなんだ!?

 

『マスター、天魔大戦でのシルビアの話を覚えていますか?』

 

え?

シエルの言葉に俺は以前のシルビアさんの話を思い出そうとする。

確か、シルビアさんの話によると目の前にいるルミナスが高弟第2位でシルビアさんが第3位……。

……っ!?

もしも、その女とやらがルミナスやシルビアさんと同じでそいつの高弟だったとすれば……。

その仮定を肯定するかのように、ルミナスは告げる。

 

「其奴の名はメロウ……。かつて神祖の高弟第6位だった水精人(セイレーン)の女じゃ……」

 

「あ、そいつ覚えてるのだわさ!確か、神祖に心酔していた狂信者でしょ?」

 

「あ~いたな~。正直苦手だったわあいつ」

 

ラミリスとディーノ曰く、メロウは音楽を操るスキルを使い、人の心を操り神祖の操り人を増やしていたのだという。

なによりも神祖に心酔していたというメロウはルミナス曰く、ルミナスが神祖を殺した辺りから姿を消したのだという。

それだけではない、神祖が死んでほぼ同時期に他にも数人いた高弟たちも一斉に姿を消し始めたのだという。

それが何故か地球、向こうの世界に現れたと……。

 

「……道理で今まで姿を完全に消してたわけじゃ、何しろ奴らはこの基軸世界から抜け出しておったんじゃからな」

 

ルミナスの言ってることが正しいとすると、不味いかもしれない……。

もしかしたら……。

 

『恐らくその考えは正しいかと』

 

シエルの言葉に憂鬱な気分になる。だってそれはつまり……。

 

「恐らく、奴らも……。神祖“トワイライト・バレンタイン”もお主と同じで異世界間の渡航する方法をもっているやもしれぬぞ」

 

どうやらまた、厄介な面倒ごとが起こりそうだな……。

 

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