帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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白龍皇と出会います

イッセーside

 

 

 

「はあ、はあ……」

 

「グ……おのれ……」

 

洋服崩壊(ドレスブレイク)”の力を付与した“赤覇竜滅爆炎掌(ドラゴニックブレイク)”を受けたメロウは動くことができない。すべての防御力を無にしたうえで放ったこの一撃により、メロウは完全に倒れ伏したようだ。仮に動けたとしてもろくに闘うこともできないだろう。

現に悔しそうな顔をしてにらんでいるが立ち上がることができないでいる。ここは俺たちの勝ちでいいだろう。

コイツの敗因は俺たちを嘗めすぎたことだ。黒歌の背後にいるルミナスさんを意識するあまり、俺たちのことを警戒はしていても取るに足らない存在だと慢心していたのだろう。

そうじゃなければ、ああも堂々と能力の説明するとかバカげたことしないだろうし……。

 

「イッセー!」

 

「イッセー先輩!」

 

「イッセー君!」

 

後ろを振り返ると部長たちが心配して駆け寄ってきてくれたようだ。

皆ダメージは受けているようだが大丈夫そうでよかった。

 

「ごめんなさいイッセー。結局私たちじゃ何もできなかったわ」

 

「そんなことないですよ。部長たちがいなかったらコカビエルだって参戦してたでしょうし……」

 

実際、コカビエルも覚醒したことによりかなりの強者になっていたからな。

超級覚醒者(ミリオンクラス)にこそ至っていなかったものの、ミッテルトだけでは勝てたかどうかわからなかったと思う。

部長たちが時間稼ぎをしてくれたからこそミッテルトは奥義を使うことができたわけだしな……。

 

「全く、ミッテルトも早く覚醒したほうがいいにゃん」

 

「いや、覚醒ってそう簡単にできるものじゃないだろ……」

 

リムルいわく、ミッテルトは魔物のような魂による覚醒もできるらしいけど、こちらの世界出身であるミッテルトは時間をかければ人間のように自力での覚醒も可能であるとのことだ。ミッテルトは後者を選んだわけだが未だ兆しがない。

後は心の問題らしいけどどうすればいいのか現状ではわかってないのだ。

まあ、俺はミッテルトならば必ず覚醒すると信じているから今は何も言うまい。

 

「さてと、じゃあ後はメロウとコカビエルをどうするか……だな……」

 

俺はメロウと体育館で木場が見張りをしているコカビエルを見つめる。四肢を失っているから大丈夫だとは思うが念のためだろう。

メロウは黒歌に託そうと思うがコカビエルはこちらの存在だ。勝手にどうこうしてしまえば後々面倒になるかもしれない。

 

「コカビエルの処遇は俺に任せてもらおう」

 

ん?誰だ?

上空を見上げると空から白い鎧を纏った何者かが現れた。

その鎧は俺の“赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)”とよく似た波動を感じる。

ひょっとしてこいつが……。

 

「お前が以前ドライグの言っていた白龍皇か?」

 

「その通り。我が名はアルビオン。二天龍の一角、白龍皇だ」

 

白龍皇アルビオン。

かつてのドライグのライバルだという“白き龍(バニシングドラゴン)”。

その魂を封じ込めた神滅具(ロンギヌス)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”の担い手。

なるほど、強いな。少なくとも覚醒する前のコカビエルを上回っている。

素の力でEP換算で50万を超えている。そこにさらに“白龍皇(ディバイン・ディバイディング)の鎧(・スケイルメイル)”の力を上乗せすることで超級覚醒者(ミリオンクラス)にまで至っている。ジウといい勝負するかもな……。

人間の波動に交じって悪魔の妖気も感じるし、もしかしたら転生悪魔。それか悪魔と人間のハーフってところなのかもしれないな。

しかし、どうやって黒歌の結界を……ああ、戦いが終わったと同時に解除していたのね。

ふと鎧越しに白龍皇と目が合った。その目からは歓喜の表情が満ち満ちていた。

 

「────これが今代の赤龍帝か。面白い」

 

その一言で察したわ。こいつも戦闘狂(バトルマニア)なんだ。

強い奴との戦いが何よりも大好きとかそんな感じの。こういうタイプって質悪いんだよな。このタイプはたいてい数多の戦闘経験とそれに準じた技術(レベル)を持っているうえ、どれだけ大怪我追っていても平気で向かってくるんだもん。

 

「それで? 白龍皇が何の用だ?まさか、この場で二天龍の決着をつけに来たなんて言うんじゃないんだろうな?」

 

消耗した今の俺の魔素量は全快時の三分の一ってところかな?

やれないこともないとは思うけどぶっちゃけめんどくさい。今の状況だと負ける可能性すらあるしできれば帰ってほしいんだけど……。

 

「俺としては今すぐ君と戦いたいところなんだが、俺も色々と忙しくてね。今回はアザゼルに頼まれてコカビエルを回収しに来ただけさ。あと、そこのはぐれ神父と……」

 

白龍皇はそう言いながら倒れ伏したメロウに視線を移す。

 

「あの女にも事情を聴いたほうがよさそうだ。コカビエルの異常なパワーアップにも興味があるしな」

 

白龍皇はどうやらメロウもつれて帰るつもりのようだ。アザゼルって言ってたし、もしかしたらコイツ“神の子を見張る者(グリゴリ)”の手のものなのかもな。

でも、連れて行くって……実際どうなんだ?

 

『“神の子を見張る者(グリゴリ)”の堕天使がコイツを拘束できるとは思えん』

 

だよな。今のままならばともかく、回復すれば恐らく“神の子を見張る者(グリゴリ)”の幹部連中くらいならば皆殺しにしてしまうかもしれない。

そうなれば三大勢力のバランスも崩れて戦争のきっかけになりかねない。

だが止める理由がない。三大勢力ともめたくもないしどうすれば……。

 

 

 

ゾクッ!

 

 

 

瞬間、何者かの殺気が俺たちを襲った。

カグチとも違う気配だが感じられるそれは、メロウやカグチに勝るとも劣らない力だ。

ふとメロウのほうを見るといつの間にやら現れたのか、褐色肌をした初老の男性がメロウの肩をつかんでいた。その外見はどことなくガゼル王に似ているかもしれない。

 

「貴様……何しに来た……」

 

「師に命じられ、貴様の回収に来たのだよ。派手にやられたなメロウ」

 

メロウは男の言葉に悔しそうに歯ぎしりをする。口調からして同格のようだ。おそらくこいつも神祖とやらの高弟の一人ということなのだろう……。見た感じドワーフの祖ってところか?

 

「ふむ、強き者に見どころのありそうなやつも多数いるな。面白い。縁があればまた会えるだろう」

 

「……今回は負けを認めよう。だが、次に会った時が貴様たちの最後だ」

 

そう言いながら二人は地面に沈んでいく。そして二人の気配はやがて完全に消失した。

 

「フフ、あの女もそうだが、これほどの使い手が今までどこに潜んでいたのやら」

 

それは同感だな。基軸世界からこっちに移っていたとはいえ、今までこそこそとしていたわけだしな。数万年もの間何を企んでいたのやら……。

 

「まあいい。だがコカビエルはこちらで回収させてもらうぞ」

 

「ふん、好きにしろ」

 

コカビエルも四肢がもがれたこの状況では何もできない。素直に白龍皇に連れていかれるようだ。

白龍皇もそれを聞いてコカビエルとフリードを担ぎ、踵を返す。

 

『無視か、白いの』

 

瞬間、籠手からドライグの声が発せられる。どうやら久々に会ったライバルと少し話したいようだな。

 

『やはり、起きていたか、赤いの』

 

『まぁな。そちらの所有者はかなりのもののようだな』

 

『それはお互い様だろう? だが、赤いの。以前のような敵意が感じられないが?』

 

『それこそお互い様だ。俺もおまえも、今は戦い以外の興味対象があると言う事だ』

 

『そう言うことだ。こちらはしばらく独自に楽しませて貰うよ。偶には悪くないだろう? また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

こうして二体の龍はそれを最後に会話を終了させたようだ。ドライグも久々に白龍皇と話せて少しうれしそうだ。

 

「では、また会おう。我がライバルよ。それ以外にも、戦ってみたい奴がたくさんいるしな」

 

白龍皇は俺と黒歌、ミッテルトを一瞥すると、そのまま飛び去って行った。

あれはまだまだ強くなるな……。現に先ほどの殺気を浴びても、怯むどころかむしろワクワクしていた。

ああいう頭のねじがいかれた奴ほど強くなるのは、向こうの世界ではよくあることだ。オレも負けてられないな。

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

「ファイトっすよイッセー」

 

とりあえず、サーゼクスさんが来る前に少しでも片づけをしたほうがいいと思い、俺は皆で瓦礫の撤去をしていた。ミッテルトも手伝おうとはしていたが、ふらついてたし片腕ないしで、さすがに安静にしたほうがいいと判断して寝かせている。

 

「よっと」

 

黒歌も途中までは手伝うようだ。するとそこに小猫ちゃんが近づいていき、黒歌の手伝いをしだした。

 

「……ありがと白音」

 

「……いえ、仕事ですから」

 

小猫ちゃんもまだ黒歌について納得してないところが多そうだ。それでも姉妹なんだしできれば寄り添ってほしいよな。

ふと、俺の視界に一人で聖魔剣を見つめる木場の姿が映った。

 

「やったな木場。決着つけれて」

 

「うん。イッセー君の、皆のおかげでとりあえずの決着を着けることが出来たよ。ありがとう」

 

そう言う木場の顔は憑き物が取れたように晴れやかなものだった。

小猫ちゃんも心配していたし、アーシアも木場が辞めるかもしれないとかなり不安がっていたからな。

木場の存在はオカルト研究部にとって大きい者なんだ。やめられたら困る。

 

「祐斗」

 

部長が木場の名前を呼ぶ。

木場は部長の方へと振り返ると部長は笑顔で木場を迎え入れた。

 

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手(バランスブレイカー)だなんて、主として誇らしいわ」

 

木場はその場に跪く。

その姿はまさに騎士といった感じでとても様になっている。

 

「部長。僕は部員の皆を、何より命を救っていただいたあなたを裏切ってしまいました。お詫びする言葉が見つかりません……」

 

木場の言葉を聞いて部長は木場の頬を優しく撫でる。

 

「でも、あなたは帰ってきてくれた。それだけで十分よ。皆の想いを無駄にしてはダメよ」

 

「部長……。僕はここに改めて誓います。僕はリアス・グレモリーの騎士として、あなたと仲間たちを終生お守りします」

 

木場がそう言うと、部長は木場を抱き締めた。

 

「ありがとう、祐斗」

 

……すごい感動的な場面だな。

こんなときに思うのもなんだけど……。部長に抱きしめられてる木場が羨ましすぎる!

木場の奴は感動して何とも思ってないようだけど、部長のたわわなおっぱいが思い切り顔に当たってるんだよ!うらやましすぎる!

ちくしょう、イケメン王子め!俺と変われ!いや、変わってくださいお願いします!

 

「じゃあイッセーには私が抱きしめてあげるにゃん」

 

「うお!?」

 

すると後ろから迫ってきた黒歌が俺を抱きしめてきた。しかもおっぱいが顔に埋めるような形で。

お、おっぱいが柔らかいうえ汗と石鹸のいいにおいがする……。

やばい頭がくらくらしてきた。幸せすぎる。もう死んでもいいかも……。

 

「ちょっと黒歌っち!何してるんすか!?」

 

「姉さま、イッセー先輩が苦しそうですよ」

 

ミッテルトはそれを見て飛び上がり、小猫ちゃんもまた黒歌に対して軽蔑の目で注意している。

……いや、あれは俺も含まれてるな。俺が今どんな気持ちなのか正確に理解してるんだろう。

相変わらず勘の鋭い子だぜ。

 

「さてと」

 

ん?ふと部長が木場から離れて手に妖気を集中させる。

木場も怪訝そうな顔してるし、何をする気だ?

 

「あなたが帰ってきたことは嬉しいけどそれはそれ。これはこれ。皆に心配をかけた罰はきっちり受けてもらうわ」

 

「そ、それって……」

 

「そう。お尻叩き千回よ」

 

部長はいい笑顔で木場にそう告げた。木場は思わず逃げ出そうとするが、朱乃さんがそれを許さない。

 

「ふ、副部長……」

 

「ウフフ。しっかり罰は受けましょうね」

 

朱乃さんのドSが発動してやがる。それは獲物を見る捕食者の目だ。

観念したのか木場は抵抗をやめる。尻叩きとか二重の意味できついだろ……。

 

「き、木場……。大丈夫か……?」

 

思わず木場を心配してしまうが木場は答える余裕すらないようだ。気操法での強化もきっちりされてるしあれは痛いぞ……。

うん……とりあえず、頑張れ木場。

 

「うちもイッセーが馬鹿な事したら尻叩きしたほうがいいっすかね?」

 

「やめてミッテルト」

 

こうして懸念こそ残ったものの、一枚の写真から始まった聖剣をめぐる戦いは幕を下ろしたのだった。

 

 

 

*********

 

 

 

 

コカビエル襲撃事件から数日後。

 

「やあ、赤龍帝」

 

青い髪に緑のメッシュを入れた少女。ゼノヴィアが駒王学園の制服を着て堂々と部室にいた。

魔力感知で分かってはいたが、動揺を隠せない。なんでこいつが?

 

「な、なんでここに?」

 

俺が尋ねた瞬間、ゼノヴィアの背中から黒い翼が生えた。

気配で分かってたけど俺は驚きを隠せないでいた。

だってさあ、こいつ、この間まで悪魔を敵視してたじゃん。そのゼノヴィアが悪魔になったなんてぶっちゃけ信じられねぇ。

 

「ぶ、部長、これはどういう………」

 

「ゼノヴィアはね、私の騎士として悪魔になったの。これからよろしく頼むわね」

 

よろしく頼むと言われても……。

俺はまだ状況を理解できてないんですけど……。

すると、ゼノヴィアが暗い表情で笑いながら答えた。

 

「神がいないと知ってしまったのでね。破れかぶれで頼み込んだんだ。デュランダルがすごいというだけで私個人はそこまですごくなかったようだから、駒も一つで済んだしな」

 

おいおい、破れかぶれすぎるだろ!

信仰ってそれで良いのか!?

一見アダルマンさんと同じに見えるけど全然違う。あの人自分の術に失敗してアンデッドになったらしいからな。

 

「デュランダル使いが眷属に加わったのは頼もしいわ。これで祐斗とともに剣士の両翼が誕生したわね」

 

部長は楽しげだ。

細かいところにこだわらないのが部長らしいというか何というか。

まぁ、聖剣使いのゼノヴィアが眷属入りしてくれたのは頼もしいとは思う。使いこなせば伝説級(レジェンド)の武器はかなり強力になるだろうからな。

レーティングゲームの時なんか、相手は悪魔だから大活躍しそうだ。

 

「今日からこの学年の二年に編入させてもらった。よろしくね、イッセーくん♪」

 

「真顔で可愛い声を出すな」

 

「むぅ、イリナの真似をしたのだが、上手くいかないものだ」

 

はぁ、なんか出会ったときのイメージがかけ離れていくような……。いや、駅前の物乞いの時点で今更か……。

 

「でもよ、本当にいいのか? 悪魔になってしまって」

 

「そう、私は悪魔だ。もう後戻りはできない。……だが、敵だった悪魔に下るのはどうなのだろうか?神がいないと知った以上、私の人生は破綻したに等しいからな。いくら魔王の妹で邪悪ではないとはいえ……私の判断に間違いはなかったのか?ああ、お教え下さい、主よ!痛っ!」

 

何やらぶつぶつと自問自答した上、祈りを捧げて頭痛をくらってるよ。何してんだか。

こいつも結構、変なヤツだな。

アレ?待てよ?

 

「そういえばイリナは?」

 

ゼノヴィアがいるのにイリナがいないのはなぜだ?

俺の質問にゼノヴィアは嘆息しながら答える。

 

「イリナならエクスカリバーのかけらとバルパーの遺体をもって本部に帰ったよ。……私は神の不在を知ったことで異分子とされたがイリナはそれを知らない。イリナは私より信仰が深いからな、神の不在を伝えたら、心の均衡はどうなるか……」

 

イリナのことを思って伝えなかったのか。

だけど、これはゼノヴィアとイリナは味方から敵になったということだ。

ゼノヴィアはそれが分かっているのか、何処か覚悟を決めているようだ。

ゼノヴィアは続ける。

 

「私は最も知ってはならないことを知って異端の徒になってしまった。……私はキミに謝らなければならない、アーシア・アルジェント」

 

「え?」

 

急に話を振られ、アーシアは戸惑う。ちなみに神の不在についてはアーシアには伝えてある。

後から知ってショックを受けるよりも、早めに知ったほうがダメージが少ないと考えたからだ。

ショックを受け、一時は泣き通しだったが俺とミッテルト、部長が何とかケアしたことで今は吹っ切れたようだ。

 

「主がいないのならば、救いも愛も無かったわけだからね。本当にすまなかった。キミの気が済むのなら殴ってくれてもかまわない」

 

ゼノヴィアは深く頭を下げる。

突然の謝罪にアーシアは慌てるが、宥めるように言った。

 

「ゼノヴィアさん。私はこの生活に満足しています。今は悪魔ですけど、大切な方々に出会えました。私は本当に幸せなんです」

 

アーシアは聖母のような微笑みでゼノヴィアを許した。

やっぱりアーシアはいい子だよなぁ。

 

「そうか、ありがとう。……そうだ、一つお願いを聞いてもらえるかい?」

 

「お願い、ですか?」

 

首をかしげて聞き返すアーシアにゼノヴィアは笑顔で言う。

 

「今度、この学園を案内してくれないか?」

 

「はい!」

 

アーシアも笑顔で答えた。

初めの出会いは最悪なものだったけど、こうして仲良くしてくれるのは良いことだ。

ゼノヴィアも変人ではあるが悪いヤツじゃないしな。

 

「我が聖剣デュランダルの名に懸けて、そちらの聖魔剣使いと再度手合わせしたいものだね」

 

「いいよ、今度は負けないよ」

 

ゼノヴィアは木場にそう言うと今度は俺に向かい合う。その瞳からは熱いものが感じられる。

 

「君やあのミッテルトともな……。いずれ手合わせしてほしい」

 

「ああ、いつでも相手になるぜ」

 

俺と木場はゼノヴィアの挑戦に笑顔で返した。療養中で黒歌とともに家で休んでいるミッテルトも同じ反応をするだろう。

ここで部長がポンと手を鳴らす。

 

「さぁ、新入部員も入ったことだし、オカルト研究部も再開よ!」

 

「「「はい、部長!」」」

 

全員が元気良く返事をする。

この日、オカ研に久しぶりに笑顔が帰ってきた。

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

???side

 

 

 

『よく生きていた。無事で何よりだ。君がいなくなったら実験に遅れが出て大変だからね。今後ともよろしく頼むよメロウ』

 

「ハイ。身に余る光栄です」

 

メロウは恍惚とした表情で目の前の()()に跪いていた。その表情から感じ取れるのは歓喜。メロウは今、歓喜の絶頂にいたのだ。

 

「……それで、例の実験はどうなった?」

 

土精人(ハイドワーフ)にして高弟7位に位置するドォルグの発言にメロウは一気に不機嫌となった。だが信奉する主の手前、怒りを押し殺し、その質問に答える。

 

「……因子とともに結晶化した魂を使用しての疑似覚醒実験は成功よ。これで少ない魂でも安易に覚醒魔王を量産できるわ。もちろん、因子を利用すれば意志を持った武器に認められやすくなるのはわかっているし、魔素量が少ない奴でも神話級(ゴッズ)の武器を自在に扱えるようになるでしょう」

 

ドォルグはメロウの言葉を確認すると高弟5位のカグチに目を向ける。順位こそつけられているが、彼らは同格のため自由に発言できるのだ。

 

「カグチ。お前のほうは……?」

 

「ああ。()()()()相手に交渉を行ってきた。まあ、たびたび顔を合わせていた連中だからスムーズにいったぜ。実験に使う兵を何体か貸してくれるそうだ。うまく改造してくれとよ……」

 

その言葉にドォルグは大きくうなずき思案する。

 

「強き兵を量産すれば後は身体。師の力に耐えられる強い依り代か」

 

ドォルグが玉座に目を向けると、そこには一体の人形が鎮座していた。

その人形からは竜種に匹敵するほどのすさまじい波動が流れている。

 

『そうだね。こんな人形じゃあ余をとどめるのがやっとだ。余の力に耐え、強い意思を持たない身体。なかなか見つからないものだ。あの時は世界を見渡せばすぐに見つかるかもと思って、わざわざ酷使した古い肉体を捨てたというのに……』

 

「ですが、それが見つかれば行動に移せるというわけですね」

 

メロウの言葉に人形は笑う。やがて人形の身体は力に耐えきれないかのように崩壊していき、残骸から人形の魂のような光が漏れ出してきた。

 

「ああ。ヴェルダナーヴァ様亡き今、余を縛るものはない。基軸世界も、この世界も、総ての世界を余の実験場にする」

 

光は笑う。楽しそうに。

 

「数多の欠陥種族を滅ぼし、今度こそ完璧な生命を生み出そう。それがあのヴェルダナーヴァ様の望みなのだから」

 

光は笑う。嬉しそうに。

神祖は笑う。自らの欲を満たすため。

完璧な種族を作りたいという強い探求欲を満たすための実験場(遊び場)を求めて……。

彼らの野望はひそかに、だが確かに進んでいたのだ。




カグチたちの順位を変更しました。
番外編で新たな神祖の弟子が出るとはな……
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