イッセーside
「会談まであとニ週間か……」
「部長たちも大変っすよね……」
三大勢力の会談まであと一週間を切った。
俺とミッテルトは正直できることがないので現在は暇してる。
授業参観ももうすぐだし、色々準備が大変なんだろう。
そこで、今はミッテルトと共に釣りをすることにした。
「よし、釣れたっす!」
「ぐぬぬ……」
ブランクがあるからか、なかなか釣れない。
対してミッテルトはハクロウさんの釣りに付き合うこともあり、ポンポン釣っている。
「ほれ、また釣れた!」
そう言ってミッテルトが釣り上げたのは……でっかいマグロだった。
そう。マグロ。
一応場所も言っておこう。ここは堤防で、間違ってもマグロが釣れるような場所ではない。
「……いや、なんで浅瀬でマグロが釣れるんだよ!?」
「ま、うちの釣りテクがすごいってことっすね」
すごいとかそういう次元じゃないだろ……。
基軸世界ならまだ納得できるけど、ここは地球なんだぞ?
「ほれ、イッセーもなんか釣り上げるっすよ~」
「見てろよ……」
そう言って俺は再び釣りざおを振るう。
集中……集中しろ……。
しばらくすると、浮きが反応する。よし、なにか釣れたようだな!
「お、これは大物だぞ……。俺もマグロか?」
「いや、うちの場合、マグロは流石に奇跡っすし、ないんじゃないっすか?」
うるせえ!一度あることは二度あるかもしれないだろ!
それに、反応からしてかなり重い。手応えからして数十キロはあるだろう。
これは相当な大物だぞ……。
「おりゃあ!どうだ!」
「おお…………って、ん!?」
「え!?」
気合いをいれ、俺は釣りざおを思いきり引き上げる。
釣り針が刺さっていたのは……裸の幼女だった。
刺さっているというよりは、釣糸が髪の毛にからまっているようだ。
「って、危ねえ!?」
俺は釣り上げた幼女を大急ぎで空中キャッチする。
幼女はケホっと水を吐き出しながら、衰弱した様子を見せていた。
「ちょ、ちょっと、大丈夫っすか!?」
「あ、ああ。どうやら無事っぽい」
裸の幼女が流されてきた。しかもよく見ると、体中傷だらけだ。
どう考えても普通じゃない状況のなか、俺は取り敢えず、彼女を家に釣れていくことにした。
*********************
「……で、連れてきたのがこの子って訳ね」
「はい」
部長に事情を話し、俺は少女をベッドに寝かしこむ。
服は部長の古着だ。ブカブカだが、ないよりはましだろう。
「この子、一体どこの子なんでしょうか?」
アーシアは神器により、彼女の治療にいそしみながらつぶやく。それに対し、部長は何やら手帳を見ながら答える。
「少なくとも、駒王の人間ではないわ。調べてみたけど、この子の情報はどこにもなかった」
駒王の人間じゃないか……。いや、そもそもこの子、種族も人間じゃなさそうだ。
「ちょっと失礼……」
俺は幼女の身体に触ってみる。
すると、肌っぽい触感と同時に、なにやら金属みたいな触感もしている。
「この子……機械なのか?」
「え?」
「き、機械!?」
傷を負ってる部分をよく見ると、血ではないなにか別の液体が漏れ出てる。そのうえ、傷口から覗いてみえるのは肉ではなく、まるでSFにでもでてきそうな機械質の装置だ。
「でも、この子息もしてるし生命力すら感じ取れるっすよ」
「そう。ソコが俺も気になってるんだ」
確かに身体は機械みたいだが、生命力を感じるし、魔力も自分で産み出している。
生き物と機械の性質を持つ存在……機械生命体とでも言うべきか……。
オーラの質も人間とは異なっている。
そのうえ、EP値がまるで安定していない。減ったり、増えたりしてる。
部長とアーシアは気付いてないみたいだが、俺の目から見ると異常さがわかる。最低値ならば、数百程度だが、一瞬とはいえ、100万を超える瞬間もあった。
そもそもEPは誤魔化せるものじゃない。俺の“身魂計測”は対峙すれば正確な数字を計ることができるのだ。
それを誤魔化すには、神話級の武器を隠すとか、予め力をどこかに封じ込めるかをしなければ不可能。
単純な隠蔽で誤魔化したいのならば、リムルやギィさん級の隠蔽力がないと誤魔化せないのだ。
現に、力を隠蔽したサーゼクスさんやミッドレイさんの本来の存在値なんかもすぐにわかるわけだしな。
(ドライグ、一応聞くが、心当たりは?)
『ない!もしかしたら、神祖の手下かもしれんぞ……』
だよな。
その可能性も心に留めとかないと。
「あ、目が覚めたっすよ」
そうこうしてるうちに、少女は目を覚ます。
どうやら混乱してるようで、辺りを見渡している。
「大丈夫っすか?どこか悪いところはないっすか?」
「……ここは?」
少女はどうやらここがどこだかわからず混乱しているようだ。
「君、海で溺れてたんすよ!覚えてないっすか?」
「う……み……?なに……それ?」
海を知らない!?そんなことあるの!?
いや、もしかしてこの子……。
「うちはミッテルト。……君、名前は?どこからきたの……?」
ミッテルトは少女に名前を訪ねる。すると少女は少し考え出す。
しばらくすると、彼女はミッテルトの質問に対し、返答をする。
「ま……かみ……セラ……多分だけど……」
「真神……セラちゃんか……。よろしくね」
「どこからきたかは……わかんない……」
「そっか。わかんないなら、仕方ないっすね」
少女……セラちゃんは申し訳なさそうにうつむく。
やっぱりそうだ。恐らく、この子は……。
「ひょっとして、記憶がないのか?」
俺の言葉にセラちゃんはコクりと頷く。これは結構面倒かもしれないぞ……。
記憶喪失の機械幼女か……。
「なにか、覚えてることとかないっすか?」
ミッテルトが訪ねてみるが、セラちゃんは首を横にふるのみだ。
傷だらけなのを察するに、なにかに襲われて、そのショックで記憶を失ったのかもしれないな。
「助けてくれてありがとう」
「まあ、驚きはしたけど、無事でよかったよ」
話してみた感じ、悪い子じゃないのかもしれない。
少し、邪悪な気配を醸し出したりもしてるが、まあ、それくらいなら魔国の人たちの方がよっぽどだしな。
カサ……
ん?
なんだ?今の?
俺は不意に妙な気配を感じとる。
どうやら皆も感じ取ったようだ。部長やアーシアたちも含め、全員が気配のした方向へと視線を向ける。
……うげえ!?
「きゃ!」
「うわぁ、いる……」
「きちんと掃除してるのに……」
そこにいたのは人類共通の天敵にして悪魔を超越した忌むべき黒い悪魔。
名をゴキブリという。ゴキブリはその複眼でじっとこちらを見ている。
うわあ……面倒臭いな……。殺虫剤あったっけ……。
「ん?どうしたっすか、セラちゃん?」
ミッテルトの言葉に振り替えると、セラちゃんか涙目になって身体を押さえてる。
セラちゃんはゴキブリを恐怖の目で見つめ、歯をカチカチと鳴らし、魔力を高ぶらせる。
「いや、いやあああああああああ!!」
「なっ!?」
瞬間、暴力的な魔力の奔流が巻き起こる。
俺は慌てて魔力を抑え込もうとするが、それでも漏れ出る魔力で窓ガラスが割れ。ベッドが軋んでいる。
もし、俺が抑え込まなければ、それだけで家が倒壊していたかもしれない。
「な、なに、なんなの?」
部長もどうやら事態を飲み込めたようだ。
アーシアは魔力に一瞬充てられたのか、冷や汗をかいて、涙を流しながらへたれてしまった。
「大丈夫か!?アーシア?」
「は、はい。ありがとうございます。イッセーさん」
俺は急いでアーシアに駆け寄る。俺が肩を抑えると、アーシアは落ち着いたのか、震えを止める。
だが、気になるのセラちゃんの反応だ。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
セラちゃんは何かに謝りながら涙を流している。
なんだ?何が起きてるんだ?
「……どうしたんすか?セラちゃん?」
「……わからない。だけど、虫が怖いの」
そういいながら、セラちゃんは魔力の奔流に巻き込まれ、躯と化したゴキブリを見つめる。
そんな彼女の目からは、恐怖と罪悪感、そしてわずかな怒り。様々な感情が入り混じったかのような、複雑な思いが見て取れた。
「もしかしたら、記憶を失う前に蟲に対して何かあったのかもしれないわね」
「そうっすね……」
ひとまず、彼女のメンタルが安定するまで、虫は見せないほうがいいな。
「ところで、これからセラちゃんはどうする予定なんですか?」
俺は部長に気になったことを聞く。すると、部長は難しそうな顔で頭を抱える。
「そうね……。最初は孤児院にでも入れてあげようかと思ったけど、これじゃあね……」
部長は荒れ果ててしまった部屋を見渡しながらつぶやく。割れた窓ガラス、倒れた本棚、ひび割れた木製の机。
そうだよな……。少しゴキブリを見ただけでここまでの被害を出すんだ。
今回は俺が抑え込んだからこの程度で済んでるけど、もしこれが強者のいない普通の孤児院とかだったら……ちょっとシャレにならないかもしれない。
「じゃあ、いっそのこと、この家に住むのはどうにゃん?」
「「はあ!?」」
そう言ったのは先ほどから隣の部屋でゲームをしていた黒歌だ。
何を隠そう、彼女の仙術もセラちゃんを回復させるのに一役買っており、彼女の言からセラちゃんが機械生命体であることに気付いたのだ。
約束があったらしく、今は部屋でオンライン通信をしていたのだが、どうやら話を聞いていたようだな。
俺は黒歌を部屋の外につれ、部長に聞えないよう小声で話す。
「いや、いくらなんでも駄目だろ。低いとは思うけど、神祖の回し者という可能性もあるんだから」
「それは私も考えたけど、記憶喪失はマジっぽいし、少なくとも監視の目は必要でしょ?この家に置いとけば、イッセーや私がいるし、少なくとも安易に外部に任せるよりかはいいと思うにゃん」
むむ、確かにそこは黒歌の言うとおりだな。
俺はセラちゃんみたいな存在を軽々しく預けられるような場所なんて知らないし、俺と黒歌ならば抑えられる……とは思う。
そう考えるとうちで引き取るほうが安全なのか?
「もし異常があれば、応援もすぐに呼ぶことができるし、そのほうがいいと思うにゃん」
『確かに……“門”のあるここならば、他の奴らの救援も期待できそうだ』
そうだな。まあ、父さん母さん次第ではあるけど、それが現状最善策か。
「どうしたの?イッセー?」
「あ、はい。ちょっと黒歌と方針決めたんですけど、セラちゃんはしばらくの間家で預かったほうがいいんじゃないかなって……」
部長はそれを聞くと、再びセラちゃんのほうを見る。
そこにはミッテルトと話してる姿が映った。アーシアも、積極的に話してるっぽいな。
ついさっき、あんなことがあったのに、すごいガッツだな。
「……わかったわ。ただし、この件はお兄様に報告させてもらうわよ」
まあ、それは当然だろう。
「どうなったんすか?イッセー」
「ああ、とりあえずしばらくはうちにいさせたほうがいいって話でまとまりそう」
「了解っす。まあ、そのほうがいいでしょうね。個人的に、あのケガの理由とかも知りたいし……」
そうだな。
ま、まずは自己紹介から行くか。
「俺は兵藤一誠。よろしくな!」
「私はリアス・グレモリー、よろしくお願いするわ」
「私は黒歌。仲良くするにゃん」
アーシアとミッテルトは自己紹介したっぽいので、各々が自己紹介をする。
セラちゃんはしばらく考え込むと……。
「……イッセーお兄ちゃん?」
「ぐはっ!?」
「?どうしたの?イッセー?」
「い、いえ、なんでも……」
びっくりした!?ノトスと同じ呼び名で読んでくるとは……。
ノトスの時もそうだったけど、幼女姿のお兄ちゃん呼びは破壊力がエゴすぎる。
「リアスお姉ちゃんに、黒歌お姉ちゃん?」
「ぐふっ!?」
「おお、子どもの頃の白音を思い出すにゃん」
お、どうやら部長にも刺さったようだな。
黒歌は何やら懐かしそうにしている。というか、小猫ちゃんも昔はお姉ちゃん呼びだったんか。
小猫ちゃんがお兄ちゃん呼びしたら・・・・・・普段のギャップと相まって軽く死ねるかもしれん。
「まずは、部屋の確保とかからっすかね?」
「そうだな」
釣りをしていただけだというのに、どうやら会談前に思いもがけない仕事ができたようだな。
そう思いながら、俺はアーシアとともに本を読むセラちゃんを眺めてるのだった。
真神セラ
EP ???(不安定なため、解析不可)
種族 最高位
称号 ???
魔法 ???
スキル なし
一誠が釣り上げた記憶喪失の謎の機械生命体。高い解析能力を誇る一誠の究極能力でもそのすべてをはかることができず、EPも安定していない。
最低値は数百程度だが、現状感情が高ぶると百万を軽く超すほどのエネルギーを発揮する。
虫が苦手であり、虫を見るとたちまち発狂。特に、複眼に嫌な感じがするのだという。
真神セラというのも、彼女の記憶から断片的に思い出せたワードを並べたもののため、おそらく本名ではなく、正式な名前は不明。随時調査中である。