帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

41 / 111
授業参観と魔王の襲来です

イッセーside

 

 

 

「はあ……」

 

「どうしたの?リアスお姉ちゃん?」

 

「なんでもないわ、セラちゃん。ちょっと憂鬱なだけ……」

 

「?」

 

セラが家に来てから一週間がたち、彼女もすっかりこの家になじんでしまった。

父さん母さんに彼女のことをを説明すると、二人ともいつもの軽いノリでOKサインを出してくれた。

軽すぎだろ……とも思うんだが、その軽さ故ミッテルトたちのことも受け入れてくれたわけだし、本当、父さん母さんには頭が下がる思いだ。

ちなみにオカルト研究部の皆にも当然合わせており、皆と可なり仲良くなっているようだ。

 

「うう、私も白音を見に……」

 

「我慢しろ。一応、お前の指名手配は解除されてないんだから」

 

「黒歌お姉ちゃんも変な感じなの?今日、学校ってところに何かあるの?」

 

首をかしげるセラの頭をなでながら、俺は答える。

 

「今日は授業参観があるんだ」

 

 

 

 

 

******************

 

 

 

 

 

今日は授業参観当日だ。

朝から部長は憂鬱そうにしていたが、今回両親はアーシアとミッテルトを中心に撮影するらしいので俺のほうは割と気分が軽い。

父さんもこの日のために有給とったらしいし、張り切ってるよな。

俺とアーシアは教室に入り、席に着く。すると松田と元浜の二人が近づいてきた。

 

「おはよう。イッセーんところは両親くるの?」

 

「ああ、二人そろってアーシア見に行くんだと」

 

「私、こういうの初めてなので楽しみです」

 

アーシアは心底楽しそうだ。

アーシアは家族が自分を見に来てくれるというのがうれしいらしく、今日という日をずっと心待ちにしてたからな……。

 

「イッセー」

 

突如としてゼノヴィアが俺に話しかけてきた。

なんだろう。猛烈に嫌な予感がする。こういう時の俺の勘は当たるんだよな。

 

「先日はすまなかったね。少し突っ走りすぎたようだ。まずはこれを用いて練習しよう」

 

そう言ってポケットから出したのは小さい袋。どう見ても避妊具の類である。

 

「お、お前はあほかああああああああああああああ!!」

 

なんでよりによってみんなの前で出してるの?馬鹿じゃないの?ああ、皆が塵を見るかのような目でひそひそしているし……。

その背後には猛烈な殺気を叩きこむ元浜と松田。それが何なのかを面白がって教える桐生とそれを聞いて顔を赤くするアーシアと完全にカオスな状態となっている。

 

「どうしたのだ?さあ早く……」

 

駄目だこの子。早く何とかしないと……。

 

「ゼノヴィアよ。まずはお前は常識を学べ」

 

「?」

 

こうして俺のクラスのホームルーム前の時間は混沌を極めるのだった。

 

 

 

 

 

******************

 

 

 

 

「では授業を始めましょう!」

 

 

何とか授業が始まり、開け放たれた扉から親御さんたちが入ってくる。

一時間目は英語。筆記はともかくリスニングは得意なんだよな。

魔法であらゆる言語を話せる俺にとっては楽な授業といえよう。

そんなことを考えていると、先生は紙袋の中から何かを取り出し、生徒に教材として何かを配り始めた。

これは……粘土?

今の授業は英語のはずだけど……。

 

「いいですか。今日は紙粘土で好きなものを作ってみましょう。そういう英会話もあるのです」

 

「はあ!?」

 

なに言ってるんだこの人!?

思わず大きい声出しちまったじゃねえか!

そんな英会話ねーよ!!まるで意味が分からんぞ!?

なに考えてんだ、この人!?ここは英語なんだからさ、普通に英語やりましょうよ……。

 

「さあ、レッツトライ」

 

レッツトライじゃねえよ!英語と粘土にどんな関係があるというんですか!

 

「ム、難しいです」

 

アーシアはすでに製作中……ああ、もうめちゃくちゃだよ。

よく見ると、皆黙々と取り組んでいるし、俺か?俺がおかしいのかコレ?

こうしてカオスな授業参観が始まった。しょうがない……やるか。

こうして俺も粘土細工に取り組むことにしたわけだが……好きなものか。

何を作るかな?

うーん、悩むところだ。

 

 

…………よし、決めた。

 

 

 

俺の脳内保存データを駆使すればできないことはないだろう。俺は思考加速を駆使しながら早速作成に取り掛かる。

まず作るのはミッテルト。目元からゴスロリまで完璧に再現してみる。

……なんか足りないな。

目の前にあるのは再現度の高い刀を構えたミッテルトだ。だがこれだけでは何か足りない……あ、そうか。これはエスプリと斬り合ってる映像だからエスプリも作ってみるか。

いや待てよ。確かこの時、カレラさんと師匠、ラミリスさんもいたな。

早速製作してみるか……。

 

 

 

それから数分後。

 

 

 

 

 

「「「おおっ!」」」

 

 

 

 

 

クラス中からいきなり歓声が上がる。

見ると俺の机には多種多様、様々な小型フィギュアが出来上がっていた。

ミッテルトと斬り合うエスプリにそれを応援する師匠、カレラさん、ラミリスさん。

それだけじゃなく、リムルを筆頭に魔国の女子勢やオカルト研究部の皆まで作っていたのだ。

どれもこれも我ながら中々の出来だと自負している。

自慢じゃないが、俺はフィギュアつくりや絵を描くことがかなり得意だ。

一時期かなり凝ってしまい、わざわざレインさんに弟子入り(月謝金貨5枚)してまで作っていたからな。

さすがに絵画や具象画なんかはレインさんに劣るがフィギュア作成に関していえばレインさんと同等以上という自負がある。

フィギュアづくりだけならば俺は免許皆伝の腕前なのだ。

そんな俺にかかれば紙粘土からでも高い完成度を誇るフィギュアを作成できるのだよ。

 

「す、すげえゴスロリに刀持ってるミッテルトちゃんとか美しすぎるだろ!」

 

「もう一人のパーカー着てるの誰だ?」

 

「なにこの軍服着てる三人、めっちゃ可愛いんですけど」

 

「なんかお姫様みたいな鬼娘がいる!」

 

「こっちのスーツ着た鬼の美女めっちゃ綺麗!」

 

「あ、これオカルト研究部のお姉さま方だ!」

 

「木場きゅんもいる~。かっこいい~」

 

「これって妖精?兵藤って意外とメルヘンチックなの?」

 

「この蒼髪の娘だれ!?めっちゃ可愛いんですけど!?」

 

どうやら皆にも好評のようだ。しかし、これは捨てるのが惜しいな。

 

「兵藤君!君にはこんな才能があったのか!また一人、生徒の隠された能力を引き出してしまったか……」

 

別に隠してるわけでもないんだがな……。

 

「イッセー、五千円で買おう!売ってくれ!」

 

そう言ったのは元浜だ。手には財布を握っている。

それを皮切りにクラス中から声が上がる。

 

「私は七千円だすわ!グレモリー先輩のお身体を堪能するの!」

 

「なにを!なら俺は八千円だ!」

 

「木場きゅんフィギュアを一万で買うわ!」

 

次々と手を挙げていくクラスメイト達。

おいおい、マジかよ!

いつの間にか英語の授業?が一転して俺の作ったフィギュアのオークションが始まったのだった。

 

 

 

 

******************

 

 

 

 

 

 

授業は終わり、昼休み。

 

「へぇ、良くできてるじゃない」

 

「本当、イッセー君って何でもできますのね」

 

「……すごい」

 

「本当、そっくりだね」

 

「イッセーが作ったフィギュア久々に見たっすけど、相変わらずすごいできっすね」

 

オカルト研究部の皆が紙粘土の像を見ながら談笑していた。

今回はさすがにクラスメートに売ったりはしなかった。万が一、リムルたちの姿とか流出したら手が付けられないし、そもそもミッテルトや部長たちのフィギュアを簡単に売り飛ばせるかって話だ。

俺はフィギュアの売買にはすっかり懲りているんだ。

リムル相手にヒナタさんのフィギュアを売買したとバレたあの日、俺がどんな目にあったことか……。

 

「それにしても精巧に作られていますわね。部長にそっくりですわ」

 

「そうね。朱乃の方も本当に良くできてるわ」

 

「僕まである。ありがとう。大事にするね」

 

皆のお褒めの言葉で俺も鼻が高い。

皆の情景は俺の脳内に常にインプットしてあるからな。これくらいは余裕だぜ!

あと木場、そんな頬を赤らめるな。普通にキモい。

 

「ところで私たちはわかるのだけど、他の人たちは一体誰なの?」

 

「あ、それは、え~と……」

 

「ま、まあ、今は置いときましょ!それよか、これどこに飾るか考えとくっすよ!」

 

危ねえ……。

魔国関連についてはまだ皆に話してないし、ひとまず誤魔化した方が無難だろう。

皆は腑に落ちないながらもひとまず納得してくれたようだ。

 

「おお、これは我のフィギュアだな!なかなかの出来ではないか!」

 

「相変わらずこういうの作るのうまいよな、お前……」

 

「まあな。何しろ俺からしても自信……作……だから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ今の声?聞き間違いか?何やら猛烈に聞いたことのある声がしたぞ……?

俺はネジの切れた人形のように恐る恐る後ろを向く。そこにいたのは…………。

 

「よっ、久しぶりだな!イッセー!ミッテルト!」

 

「クァーハッハッハ!息災そうで何よりだな!」

 

「「ブッ────!!!???」」

 

俺とミッテルトは青い長髪を束ね、スーツ姿でビッシリ決めてる中性的な美青年と同じくスーツを決めている金髪に褐色肌の男性を確認した瞬間、勢いよく口に含んでいたジュースを吹き出してしまった。

そう、そこにいたのは“八星魔王(オクタグラム)”の一柱にして、“聖魔混成皇(カオスクリエイト)”の称号を持つ最強のスライム“リムル・テンペスト”と全世界に五種しか存在しない、あらゆる世界における最強のドラゴンの一角、“暴風竜ヴェルドラ・テンペスト”その人であった。

なんで二人がここにいるんだよ!?

 

「り、リムルに師匠──!?」

 

「な、なんでお二方がここにいるんすか!?」

 

ビックリした!?なんで二人がいるの!?

驚きのあまりあたふたしている俺たちを部長は訝しげに眺めている。

 

「……イッセー、知り合いなの?」

 

「お、イッセーの友達かな?初めまして。俺はリムル・テンペスト。イッセーの遠い親戚みたいなものかな?まあ、よろしくな」

 

「クァーハッハッハ!我が名はヴェルドラ・テンペスト!暴風……」

 

バシン!っと鋭い音が鳴り響く。

リムルがいつの間にもっていたハリセンで師匠を叩いたようだ。

 

「痛いではないか!?何をするんだリムル!?」

 

「俺たちの世界の話は出さない約束忘れたのか?暴風竜とか言っちゃダメだろう……」

 

憤慨する師匠にリムルが小声で宥めている。

部長達はますます困惑しながらそれを眺めていた。

 

「あ~、改めて、コイツはヴェルドラ。俺の従兄弟でイッセーの師匠なんだ」

 

「イッセーの!?」

 

「貴方が“ヴェルドラ流闘殺法”の開祖……!?」

 

「ムム、そこの白髪の娘は我が流派を知っておるのか?」

 

「はい。イッセー先輩に教わっています……」

 

「ほう、やるではないか!イッセーよ!この調子で我が流派をどんどん布教していくとよいぞ!!」

 

バシバシと背中を叩く師匠。

正直目茶苦茶痛い……。魔素量(エネルギー)は完全にコントロールしてるため、完全に人間にしか見えないのだが、それでも化け物染みた身体能力を持つ師匠だ。

恐らく俺たちに会う前の部長とか弾き飛ばされてると思う。

 

「それでさ、君たちには悪いんだけど、ちょっとこの二人借りてもいい?」

 

 

 

 

 

 

*********************

 

 

 

「……で、なんでリムルと師匠がここにいるんだ?」

 

そもそもなんでこいつら授業参観について知ってるんだ?

 

「ああ、実は家で待っていようとも思ってたんだけど、たまたまイッセーの両親と鉢合わせてな、折角だから一緒に行こうってことになったんだ」

 

「はあ!?それって最初からいたってこと!?」

 

「まあな」

 

マジかよ……と俺は天を仰ぐ。

ミッテルトも頭を抱えて冗談でしょ?とでも言いたそうな顔をしている。

二人して完全に気配を絶っていたのだろう。俺やミッテルトの感知能力もこの二人ならば普通に掻い潜れるだろう。

 

「あのカオス英会話も最初から見てたわけか……」

 

「まあな。言っとくけどさ、粘土細工作るにしても、わざわざ俺たちを作るんじゃねえよ……。基軸世界については、一応は秘密って方針なんだからさ……」

 

グウの音も出ない。たかたがフィギュアなんかで基軸世界のことが知られる可能性は限りなく低いんだろうが、それでも可能性は潰しとかないと行けないからな……。

 

「まあ、それ言うんならなんでわざわざ授業参観なんかに来たんだって話なんだが?」

 

「ああ、それは……」

 

「クァーハッハッハ!我が授業参観なる面白そうなイベントを逃すはずあるまいて!何しろ授業参観は学園物の聖典(マンガ)にも出ることがある重大イベントなのだからな!」

 

そういいながら高笑いする師匠にめまいがしてきた……。

あんたか!あんたが元凶か!

 

「……というわけで、俺はヴェルドラの監視役として同行することにしたってわけ。安心しろよ。見学するのは午前中だけで、用件をすましたらもう帰るからさ……」

 

「……で、その用件ってのは?」

 

「まあ、本来は一つだったんだけどさ、ついさっきもう一つできた。お前、あの子なんだ?」

 

「ん?ああ、セラちゃんのこと?この間釣りあげたんだ」

 

「釣り上げた?まあ、いいけど、あれとんでもない存在だぞ。多分、お前が思ってる以上に……」

 

冷や汗を流しながら、リムルは父さん母さんと一緒にいるセラちゃんを遠目から眺める。

コイツの鑑定は俺をはるかに上回るし、俺が見通せなかった情報を見れても不思議ではない。こいつがそう言うからには、実際、セラちゃんはとんでもない存在なんだろう。

……でも。

 

「それでも、あの子はいい子だよ。時折、邪悪な波動が出ることもあるけど、どうにもそれを抑えてる感じがするんだ」

 

もしかしたら、記憶を失う前の彼女は極悪人だったのかもしれない。実際、彼女からは極めて邪悪なオーラが感じとれるからだ。

だが、昔はどうあれ、今の彼女はたぶん善良だ。ほんの一週間程度の付き合いだけど、俺はあの子を信用してもいいと思ってる。

 

「ま、お前の人を見る目は確かだ。お前がそう言うのなら、俺は何も言わないよ。じゃあ、本題に入ろう……」

 

リムルが真面目な雰囲気になったのを悟り、俺も思考を切り替える。

今回二人が授業参観に来ることになったのは完全なる偶然。つまり、本来の目的があるということだ。

しかも、リムル本人が直々に来るほどの重大な何かが……。

 

「……“異世界の門(ディファレントゲート)”はお前も知ってるだろ?」

 

「馬鹿にしてるのかよ?この地球と基軸世界を繋ぐための門だろ?」

 

異世界の門(ディファレントゲート)はマイの作った理論により完成した異世界間を繋ぐ門だ。

この世界の場合、俺の家と迷宮内の一室が繋がっている。

 

「お前も知ってるとは思うけど、あの“異世界の門(ディファレントゲート)”は特別製でな、13年の時間のズレをワザワザ繋げているんだ」

 

それも知ってる。

俺の事情も配慮してくれて、特別にそういう処置をしてくれたんだったな。

 

「ところがだ、どうやらその“異世界の門(ディファレントゲート)”に関して面倒なことになってしまったらしくてな……」

 

「……どういうことだ?」

 

まさか、あれが今後使用できなくなるとかそんな感じか?

そんな不安を見抜いたようにリムルは手を振り否定する。

 

「そうじゃない……というか、それだけだったらどんなによかったことか……」

 

リムルは息を吐き、再び俺たちを見据える。

 

「結論から言おう。今後、使用することができる“異世界の門(ディファレントゲート)”はお前の家にある門ただひとつとなった。それを死守してほしい」

 

いや、え?

 

「「はあ!!??」」

 

リムルの爆弾発言に俺たちは絶叫する他なかったのだった。




オマケ

「黒歌はいかないの?」

「行きたいにゃ!けど、仲直りしてない以上白音も迷惑だろうし……他の悪魔に見つかってもめんどくさいし……」

黒歌はそうぶつくさ言いながら考え込むとハッとしたようにリムルに駆け寄りカメラを渡す。

「リムル様。頼みがあるんですけど、私の代わりに白音の授業風景撮ってもらってもいいかにゃ?」

「まあいいけどさ……」

こうして黒歌は小猫の授業動画を入手したとさ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。