帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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今回は少し短めです


堕天使総督の神器説明です

イッセーside

 

 

 

「ほら、走れ!デイヴォーカーならば日中でも走れるはずだ!逃げなければデュランダルの餌食になるぞ!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇ!!」

 

 

夕方に差しかかった時間帯、旧校舎の前でギャスパーがデュランダルを振り回すゼノヴィアに追い回されていた。

はた目から見るとただのいじめだ。なんていうか、ゴブタを思い出す。

あいつもハクロウさんやリグルさんから逃げ出してはああやって追いかけられてたもんだ。

ギャスパーも追いつかれたら死にかねんから必至だ。何しろゼノヴィアが持つのは聖剣デュランダル。その聖なる力は災害級(ハザード)級の魔物をも屠る威力だ。

いかに才能が有れど、今のギャスパーが一撃でも受けたら即座に塵と化するだろう。

 

「……ギャーくん、ニンニク食べれば健康になれる」

 

ギャスパーが逃げようとしたその先で小猫ちゃんがニンニクを携えながら歩いてきた。

 

「いやああああ!小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅぅ!」

 

前門のニンニク、後門のデュランダル。

正直ニンニクの格落ち感半端ないがギャスパーにとってはどちらも脅威なのだろう……たぶん。

 

「正直、“超克者(デイヴォーカー)”なら我慢しろって話っすけどね……」

 

それは言えてる。

現に俺の同僚の皆なんかラーメンににんにくゴリゴリ入れて普通に食べてるぞ。

今では病みつきなんだといっていたっけ……。

……と、ここへ一人の気配が近づいてきた。

 

「おー、やってるやってる」

 

「おっ、匙じゃん」

 

現れたのは生徒会メンバーの匙だ。

 

「よー、兵藤。解禁された引きこもりの眷属がいるってんでを見に来たぜ」

 

「ずいぶん耳が早いな」

 

「会長から聞いたんだよ。それで、その眷属は?」

 

「あぁ、それなら今、ゼノヴィアと小猫ちゃんに追い回されてるぜ」

 

指さすとじりじりと壁際に追い詰められているギャスパーとそれを狙う二人の姿があった。

 

「おいおい、デュランダルってあんな風に振り回していいのか?……ってか、金髪美少女じゃん!」

 

まあ、そう思うのも無理はない。俺も感知してなきゃ気付かなかっただろう。

だが、現実は残酷なのだ。

 

「いっとくけど、あそこにいるギャスパー君は男の子なんすよ」

 

「……は?」

 

「要は女装野郎ってことだ」

 

「はああ!?詐欺じゃねえか!?つーか、引きこもりが女装って、誰に見せるんだよ!」

 

気持ちはわかるぞ匙よ。俺も意味がわからん。

リムルは主にシュナさんシオンさん(あの二人)の手で強制的に着せ替え人形にされてるからまあわかるが、あいつの場合はマジで意味の分からん女装癖だ。

 

「俺もそう思う。しかも似合ってるのが何とも言えん。まあ、格好については匙も何とも言えんけど……」

 

そんな匙の恰好はジャージに軍手、シャベルを肩に担いでいる。土木作業でもしてるのか?

 

「ああ、俺は花壇の手入れをしてるんだよ。会長の命令で会談前に少しでも学園をきれいに見てもらおうってな……」

 

それは体のいい雑用では?まあ、本人が胸張ってるっし、放っておくか……。

 

「それはそうと、堕天使の総督さんは何しにきたんですか?」

 

「「「えっ!?」」」

 

俺の言葉に全員が驚き、動きを止め、俺の見ていた方向を見つめる。

そこには浴衣姿のアザゼルさんが気配を消して佇んでいた。

 

「流石は赤龍帝ってところか。よく気づいたな」

 

「俺の察知能力舐めないほうがいいですよ。アザゼルさん」

 

俺の“ 国津之王(オオクニヌシ)”は解析特化の権能だ。同じ究極保有者でもない限り、たいていのことは察知できる。

アザゼルさんの姿を確認するや否や、ゼノヴィアは剣を構える。小猫ちゃんも魔力を身体に張り巡らせ、アーシアは俺の後ろに下がった。

匙も驚愕しながら神器を展開している。

皆警戒しすぎだろ……。 

 

「ひょ、兵藤、アザゼルってまさか!」

 

「あぁ、堕天使の総督のアザゼルさんだよ」

 

「なんでここに……って、なんでお前ら構えないんだよ!?」

 

匙はどうやら俺とミッテルトが臨戦態勢に入らないことに不信がってる様子。

いや、なんでって言われても……。

 

「あのな、ここで会談する以上、下見ぐらい普通にするだろ。殺気も全く感じないし、魔力も凪いでいる。この人に戦闘の意志があったなら、いくらでもチャンスがあっただろ」

 

「現にうちら以外は誰も気付いてなかったみたいっすしね……。不意打ちするつもりならばいつでもできたでしょ」

 

アザゼルさんも匙達の反応を見て苦笑いしてる。どう見ても戦う気配ではない。

 

「赤龍帝の言う通りだ。やる気はねえよ。ほら、構えを解けって。赤龍帝とそこの嬢ちゃんを除いて俺に勝てる奴がいないのは何となくでもわかるだろう?俺も下級悪魔いじめるつもりはないしな。まぁ、ちょっと散歩がてらに聖魔剣使いを見に来ただけだから、警戒すんな」

 

「木場っちならいないっすよ。今、サーゼクスさんに呼ばれちゃったんで」

 

「なんだいねえのかよ。つまらねえな」

 

頭をポリポリ書きながら残念そうにするアザゼルさん。

どうやら、木場の聖魔剣が見たかったようだ。 

確かに神器コレクターとまで称されるこの人ならば、未知の神器に心躍らせるだろう。

ふと、アザゼルさんは小猫ちゃんの後ろに隠れていたギャスパーに指さす。

 

「そこの吸血鬼、“停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)”の持ち主か。そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足している要素を補えばいいと思うが……そういや、悪魔は神器の研究が進んでいなかったな。五感から発動する神器は、持ち主のキャパシティが足りないと自然に動きだして危険極まりない」

 

「ひい!?」

 

「……いつの間に!?」

 

ギャスパーの両眼を覗き込みながら説明しているアザゼルさん。小猫ちゃんはアザゼルさんのスピードに気付けなかったのか、動揺している。

見た目的には不審者にしか見えないが、俺としては気になる単語が出てきたぞ。

 

「神器の補助具なんてあるんですか?」

 

「おん?まあな。俺たちの陣営は神器の研究が進んでるんだよ」

 

へえ、面白いな。

実際の会談でどう転ぶかはわからないが、もしも()()()()()()()()()()()()()()()になったら見る機会もあるのかな?

研究職としてはかなり楽しみだ。

 

「そっちのお前は“黒い龍脈(アプソープション・ライン)”の所有者か?」

 

次にアザゼルさんが目を付けたのは匙だ。指をさされた匙は神器を呼び出し、身構える。

だが、体が震えている。実力差はわかってるようだな。

もしアザゼルさんがその気なら、俺とミッテルト以外の奴らなら10秒あれば片が付くだろう。

だが、この人も戦う気ないって言ってるのにいくらなんでも警戒しすぎじゃねえか皆?

まあ、悪魔の敵対組織の長が目の前にいるってみんなからしたら恐怖でしかないし、その辺りはしょうがないのかな?

 

「そのヴァンパイアの神器を練習させるならおまえさんの神器を使ってみろ。このヴァンパイアにラインを接続し、神器の余分なパワーを吸い取りつつ発動させれば、暴走も少なく済むだろうさ」

 

・・・・・・・っ!?

それは盲点だった!

匙の“黒い龍脈”はラインを刺した相手の力を吸い取ることができる。それを応用すれば……確かに、不可能ではないかもしれない。

 

「お、俺の神器ってそんなこともできるのか?」

 

匙はそんな使い方できるのかと半信半疑みたいだ。それを見てアザゼルさんも呆れてるようだ。

 

「ったく、これだから最近の神器所有者は自分の力をろくに知ろうとしない。そいつは短時間ならどんな物体にもラインを接続してその力を散らせるんだよ。成長すればラインの本数も増えるそうすれば出力も倍々だ」

 

「おお、さすがにティアマットさんと同じ“五大龍王”の力宿してるだけあって、匙の神器もすごいんだな」

 

実際、アザゼルさんの話が確かならば色々と汎用性が高い。

多数の存在から魔力を同時に吸収したり、物体の持つエネルギーそのものを奪ったりと幅広く応用できそうな感じだ。

 

「すごいっすね匙君」

 

「お、俺の神器にそんな力が……」

 

匙はそれだけ言うと何やら考え込むようにだんまりしてしまった。

何か考えてるなコイツ。

 

「神器上達の一番手っ取り早いのは赤龍帝を宿した者の血を飲む事だ。ヴァンパイアなんだし、血を飲ませれば力もつくさ。一度やってみるといい」

 

おおなるほど、面白い発想だ。

さすがは神器コレクター。神器への理解度が半端ではない。

勉強になるな。

アザゼルさんはそれだけ言うとこの場を後にしようとする。そこで何かを思い出したように立ち止まり、俺のほうへ目を向けた。

 

「そうだ赤龍帝。うちの白龍皇が勝手に接触して悪かったな。どうやら、おまえさんに興味を持ったらしくてな」

 

「ああ、全然いいですよ。まあ、がっかりはしましたが……」

 

「ん?がっかり?」

 

怪訝そうに俺を見つめるアザゼルさん。無理もないだろうが、あいつは俺の夢を一つ奪ったんだ。それは……。

 

「白龍皇は女性がよかった!ドライグから宿命のライバルという話を聞いた時、俺はライバルからやがて……的なムフフ展開をずっと妄想してたんですよ!過去には女性の赤龍帝とかもいたみたいだから、もしかしたら白龍皇もって少し期待してたのに!それなのに、それなのに男だなんて……って、痛!?」

 

「イッセー。あんまりふざけたこと抜かすと海に沈めるっすよ」

 

「最低です」

 

「お、お前、そんなこと考えてたの?」

 

見ると皆ドン引きしてる。

でもさ、そういうお約束展開的なのあこがれるだろ!?

見るとアザゼルさんはツボに入ってしまったのかめちゃくちゃ笑いをこらえている。

 

「こ、今代の赤龍帝は予想以上に面白い奴だな。お、お前、相当女好きだろ?」

 

「はい!大好きです」

 

「ぶはっ!即答かよ。赤は女を、白は力を。どちらも驚くほど純粋で単純なものだな」

 

「まあ、言えてるっすね。見た感じ、白龍皇は戦闘狂の気がありそうっすし、この馬鹿もハーレムを夢見てる大バカ者っすし」

 

「最低です」

 

辛らつだな小猫ちゃん。別にいいだろ夢見るくらい!現実では無理なんだろうからさ……。

 

「そうとも言い切れないと思うっすけどね」

 

「ん?それどういうこと?」

 

ミッテルトの言葉が引っ掛かったがそれ以上言う気はないようだ。

ある程度愉快そうに笑って満足したのか、アザゼルさんは今度こそ帰ろうとする。

 

「じゃ、俺は帰るわ。あまり長居するのもなんだしな」

 

「わかりました。じゃあ、次に会うのは会談の時ですかね」

 

「そういうこった。じゃあな、赤龍帝」

 

そう言うとアザゼルさんはこの場を去っていった。

 

「とりあえず、アザゼルさんが言ってた通りにやるぞ。多分それが制御までの一番の近道だと思う。頼むぞ匙」

 

「わかった。その代わり、お前らも俺の花壇手伝えよ」

 

 

 

******************

 

 

 

 

「そう、そんなことが……知識を他者に助言するほど余裕があるということかしら?」

 

その後、帰ってきた部長にアザゼルさんの件を伝えたら、何やら考え込んでしまった。

多分、牽制とかそういうことは考えていないと思うんだがな。

会談が俺の想像通りの展開になるのならば、おそらく今後もちょくちょくくらいは関わるだろうし、あの人も同じ考えなんじゃないかな?

恐らく今後の関係も考えたうえでの行動なのだろう。

 

「じゃあ、リアス先輩も帰ってきたし、俺も作業に戻らせてもらうわ」

 

「匙君、私の下僕にわざわざ付き合ってくれてありがとう。お礼を言うわ」

 

「い、いいんですよ。俺としても収穫ありってことで……」

 

匙はそいう言ってこの場を後にした。

あいつ、やっぱいい奴ではあるよな。

 

「さて、ギャスパー。まだまだいけるわね。残りの時間、私も練習に付き合うわ」

 

「が、がんばりますぅぅぅぅ」

 

泣きながらもギャスパーは部長相手にやる気を表明した。

ギャスパーも情けないように見えつつ、一度やり始めるとなかなか根性を発揮するな。涙目ながらも匙と共に頑張ってたわけだし、このままいけば化けるかもしれない。

ギャスパーの今後が楽しみになってきたぞ。

こうして今日は夜になるまで訓練が続いた。

 

 

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