帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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後輩、何とかします

イッセーside

 

 

 

 

 

「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理して小猫に連れて行かせた私が悪かったわ」

 

次の日、ギャスパーの部屋の前にて俺たちは謝る部長を見つめていた。

ギャスパーはまた引きこもってしまったらしいのだ。

なんでも、小猫ちゃんとお得意様の所に一緒に行ったのだが、そこでとても恐ろしい体験をし、神器を無意識に使ってしまったらしい。

その際に心に傷を負ってしまったとのこと。

一体何があったんだろう……?

 

「眷属の誰かと一緒に行けば、もしかしたらあなたの為になると思って……」

 

『ふぇええええええぇぇぇぇぇえええんっっ!』

 

部長が謝るけど、一向に泣き止む気配がない。

人嫌いなこと、自分が神器を使いこなせずに迷惑をかけていること、ギャスパーが抱える問題は中々にややこしい。

聞いた話によると、ギャスパーは名門の吸血鬼を父親に持つが、人間の妾との間に生まれたハーフ。

この世界の吸血鬼は悪魔以上に純血か、そうでないかを意識するらしく、少し信じられないが、実の親兄弟ですら扱いは差別的だと聞く。情に熱い基軸世界の吸血鬼とは大違いだ。

ギャスパー自身、腹違いの兄弟たちに子供のころからいじめられ、人間界でも化け物扱いで居場所がなかったというのだ。

更には、類稀なる吸血鬼の才能を持ちながら特殊な神器を宿してしまっていたため望まなくとも力は大きくなり、友達もできなかったらしい

仲良くしようとしても、ちょっとした拍子に神器が発動し、相手を停めてしまうのだそうだ。

 

「ねえ、イッセー。貴方、もし時を止められたらどんな気分?」

 

「……怖いですね」

 

時を止める。ダグリュールさんがそれを目の前でしたときは……ゾッとしたものだ。

あの時はレオンさんの居城の模擬戦でドライグと意気投合したあの人の戯れにより、実現してしまった“進化した覇龍”になった経験からか、停止世界でも意識だけははっきりと存在していた。あの時はまだ“進化した覇龍”を使えば停止世界でも動けるということを知らなかったから、どうすればいいのかもわからずに死を覚悟したものだ。

混乱しつつも停止世界を初めて見た身としては恐怖以外の何物でもなかった。文字通り、生殺与奪の権が相手に握られている感覚。それが時を止められているという感覚だ。

ギャスパーに止められた者も感覚的にはそう思うだろう。

神器というのは強力な武器だ。

でも、それは両刃の剣。誤った使い方をすれば持ち主を不幸にしてしまう。

しかも、人間の血をひくものにランダムというのが質悪い。

例えば、一般家庭の人間が突如として神器に目覚め、家族を傷つける。なんて不幸はたぶん珍しくもないのだろう。

力も強力だが、所有者を不幸にする力も強力。それが神器という代物なのだろう。

 

『まあ、間違ってはいないな。実際、俺の歴代の宿主たちも、お世辞にも良い人生を送ったというやつは少なかった……』

 

そうか。まあ、俺はドライグと出会えて幸せだと思ってるけどな。

お前には何度も助けられたわけだし……。

 

『……そうか』

 

まあ、それはともかくとして、問題はギャスパーだな。

 

『ぼ、僕はこんな神器いらないっ!だ、だってみんな停まっちゃうんだもん!怖がる!嫌がる!僕だって、大切な人の停まった顔を見るのは……もう嫌だ……』

 

部屋の中で啜り泣くギャスパー。

ギャスパーはヴァンパイアハンターに殺され、そこを部長に拾われて悪魔に転生したらしい。

“悪魔の駒”は死後間もない時間……魂が残留してる間ならば死んだ存在をも転生させることができるらしい。

そうやって命は助かったわけだが強力な力を使いこなせるようになったわけではなかった。

そして封印。解禁されて今に至ると……。

 

「困ったわ。この子をまた引きこもらせてしまうだなんて、“王”失格ね……」

 

部長も落ち込んでるし……。

 

「部長はこれからサーゼクスさんとの打ち合わせでしたっけ?」

 

「ええ、でももう少しだけ延ばしてもらうわ。先にギャスパー……」

 

「ここは俺に任せてください。せっかくできた男の後輩ですし、俺が何とかしますよ」

 

三大勢力の会談のセッティングは大切だ。

何せ、三つの組織のボス達が一堂に会するわけだし、不都合があったら大変だろう。

部長にはそっちを優先してもらった方がいい。

 

「……わかったわ。お願いね」

 

「ハイ!」

 

部長を見送ったあと、俺は扉の前に座り込む。

 

「お前が出てくるまで、俺は一歩も動かないからな」

 

まずは相手の警戒心をなくすのが一番だろう。

まずは扉越しでもいいから腹を割って話すのがいいと想う。

 

「怖いか?神器や……俺たちが……」

 

『…………』

 

「俺は“赤龍帝の籠手”を持ってる。目覚めたのは中二くらいの時だけど、元々は普通の人間だ。ヴァンパイアでもなければ悪魔でもない。力に目覚める前まで俺はどこにでもいる普通の中学生だったんだぜ。だから俺も、最初はこの力が怖かった……」

 

普通の中学生だった俺が、わけもわからず異世界に迷い込み、わけもわからず逃げ惑い、ドラゴンの力なんてよくわからないものに目覚めて当時は本当に混乱と恐怖しかなかった。

正直、昔はドライグのことも恐れていた部分がある。

今でこそ親友と呼べるほどの関係になることはできたが昔は白との決着とやらにこだわっており、ことあるごとに脅してきたものだ。

 

「使い始めのころはさ、本当に怖かった。当時はドラゴンのこともよくわかってなかったし、力を使うたび、その強大さを恐れたよ。でも、それでも俺は前に進めた」

 

『……どうしてですか?もしかしたら、大切な何かを失うかもしれないのに、なんでそこまでまっすぐ生きていられるんですか?』

 

「仲間がいたからだよ。みんながいたから、俺は前に進むことができたんだ」

 

もしもリムルがいなかったら俺は死んでいたかもしれない。ゴブタがいなかったら馬鹿な話して笑いあう機会はなかったかもしれない。ベニマルさんたちがいなければ強くなれなかったかもしれない。師匠やラミリスさんがいなければ研究とかに興味を持つこともなかったかもしれない。

ミッテルトがいなければ、俺は誰かを守ろうとする気持ちを知ることはなかったかもしれない。

皆がいたから俺は恐れず力に向き合えた。前を向いて進むことができた。

 

「お前も同じだ。昔はどうか知らないけど、今のお前にはお前の力を受け入れてくれる仲間がいるだろ?それともお前は、皆のことが信じられないのか?」

 

「い、いえ。そんなことはないです。みんな優しい……。でも、僕じゃ迷惑かけるだけです。引きこもり出し、人見知り激しいし、神器もまともに使えないし……」

 

「かければいいんだよ!多少の迷惑が何だ。そんなもので見捨てるような奴が部長の眷属にいるとは思えない。俺の友達にもそんな奴はいない。そもそも、最初から何事もこなせる奴なんかいねーんだよ。これからゆっくり神器の扱いを覚えていけばいいじゃねえか。不安だってのなら、俺が先輩としてずっと面倒見てやるよ」

 

ギイ……と鈍い音を立てながら扉が開く。

扉の奥から現れたギャスパーは不安そうにしながらも目をぱちくりさせている。

 

「ぼ、僕にも出来るでしょうか………この力を使いこなすことが」

 

「できるに決まってる。俺だって使いこなせたんだ。ギャスパーだって頑張れば絶対できる」

 

実際、才能なんてない俺でも努力と根性でここまでやれるようになったんだ。

才能の塊のようなギャスパーならばきっと強くなれるだろう。

 

「あ、そうだ。何なら俺の血飲む?アザゼルさんも言ってたし、もしかしたら進展するかも」

 

龍の血は強力だと聞くし、血を与えるだけで即コントロール……とはいかないだろうけど、それでも何かしらの切っ掛けになれるならば安いものだ。

ところがギャスパーは首を横に降った。

 

「……怖いんです。生きたものから直接血を吸うのが。ただでさえ、自分の力が怖いのに、これ以上何かが高まりでもしたら……」

 

なるほど。

それがギャスパーが吸血鬼でありながら血を苦手とする理由か。

吸血鬼は新鮮な血を吸うと力が高まるらしいし、輸血パックならまだしも直接吸うと自分の力がどこまで高まるかわからないのが怖いのかもな。

 

「自分の力に翻弄されるのが嫌か……。時を停める能力。俺からしたら羨ましい限りなんだけどなぁ」

 

「────っ」

 

俺の一言に心底驚いた表情をギャスパーは浮かべる。

あれ?

俺、なんか変なこと言ったか?

 

「だって時間を止められるって最高じゃん。戦闘で使えるって点もそうだし、何より時を止めることができれば学園中の女子たちにいかがわしいことやりたい放題じゃないか!廊下を匍匐前進しながらスカートの中を覗き見し放題だろうし……。いや、それよりも部長や朱乃さんのおっぱいを揉むのも最高だな!パンツを除いたっていいし、妄想が止まらん!」

 

俺はギャスパーの神器を使う自分の姿を想像し、よだれを垂らしながら言う。

断言する。俺なら戦闘よりもこういう使い方を重視する。

……と、ここで俺は我に返った。

やってしまった。これはさすがにギャスパーも呆れただろう。

そう思っていたが、ギャスパーは嬉しそうに微笑んでいた。

 

「イッセー先輩は優しいですね。そんなふうに言われたの初めてです。しかも、具体的な例まで……。イッセー先輩は楽しい方ですね」

 

そりゃそうだ。こんな話する奴部長眷属にはいないんだから。

それにしても、やはりこいつも男だからこういう話に食いつくのか?

よし、ココはとっておきの計画を教えてやるか……。

 

「いいか、よく聞けギャスパー。俺は赤龍帝の力をみんなのおっぱいに譲渡するという計画を持っているんだ」

 

『イッセー……お前、諦めてなかったのか?』

 

それを聞いたギャスパーは驚くような表情をしながら目をじんわりにじませている。

 

「す、すごいです、イッセー先輩!神器の能力をそこまで卑猥な方向に考えることができるなんて、僕では到底及ばない思考回路ですが、なぜだか少しだけ夢と希望を感じました。イッセー先輩の煩悩って勇気にあふれてますね!」

 

「そうだ!神器みたいな強大な力も使いよう次第なんだ!例えばだ、俺が赤龍帝の力をギャスパーに譲渡する。そして、ギャスパーが周囲の時を停める。その間、俺は停止した女子を触り放題だ」

 

「!?そ、そんな発想が……」

 

「いっただろ!結局は使い方次第だとな。俺たちが組めば無敵になれるぜ!」

 

「その話、詳しく聞きたいっすね……」

 

突如として聞き覚えのある声が非常に圧のある声音で俺に語り掛けてきた。

恐る恐る振り返るとそこにはミッテルトと小猫ちゃん、木場の三人が佇んでいた。

 

「……ギャー君に変なこと教えないでください」

 

「イッセー、後でこっちくるっす」

 

「あ、はい」

 

「ドライグも大変だね……」

 

『木場はいい奴だな……グスン』

 

何泣いてるんだよドライグは!?二天龍の二つ名が泣くぞ!?

 

「まあでも、イッセーの言うとおり、ギャスパー君の力だって使い方次第なんすよ。その使い方がわからないっていうんなら、これからうちらと一緒に模索しましょう。イッセーの言ったとおり、うちらは君を見捨てたりしないっすから」

 

そう言いながら、ミッテルトはギャスパーと目線を合わせる。

これは暗に自分たちはギャスパーの目を恐れてないという証明になる。

ギャスパーもそれを察したのかうれしそうな表情になったがすぐに影が差してしまった。やっぱりまだ怖いか。まあ、これは仕方ない。少しずつ、慣らしていくしかないな。

ギャスパーは段ボールの中に入りながら、

 

「すみません、人と話すとき、段ボールの中にいると落ち着くんです。それでもいいですか?」

 

「全然かまわないっすよ」

 

と、ギャスパーは申し訳なさそうに言う。

まぁ、始まりは仕方ない。無理強いするのもなんだし、そこが落ち着くなら、別に良いだろう。

徐々に段ボールから外に出していこう。

 

「あー、やっぱり段ボールの中は落ち着きますぅ。ここだけが僕の心のオアシスですぅ」

 

そこまでか!?

段ボールの中が癒しの空間って………。

それにしても、何故か段ボールが似合うギャスパー。入り慣れてるというか、段ボール吸血鬼か……新しいな。

吸血鬼の友達は結構いるけど、今までにないタイプの吸血鬼だぞ。

 

「そんなに人と目線を合わすのが嫌なら、こんなのどうだ?」

 

そう言って俺がギャスパーに渡したのは穴の二つ空いた紙袋だ。

これなら目線を合わせずとも面を合わせて向かい合うことができる。

そう考え渡したのだが……。

 

「どうですか?似合いますか?」

 

「い、イッセー。これはいくらなんでも……」

 

ミッテルトがひそひそした声で俺に話しかける。

完成したのは薄暗い部屋に紙袋をかぶった女装男子という、どう見ても変態としか思えないいで立ちのギャスパーだった。穴の開いた部分から赤い眼光がギラリとしてて、目が見えないため、ゾンビみたいにのろのろ歩いてきて軽いホラーに見える。

見ると木場や小猫ちゃんも若干引いている。

 

「……あ、これ良いかも」

 

マジで?どういうこと?

ぎゃ、ギャスパーのセンスがようわからん。

 

「僕、これ気に入りましたぁ。ありがとうございますぅ」

 

「ギャスパー、俺は初めておまえを凄いと思ったよ」

 

「本当ですかぁ?これをかぶれば僕も吸血鬼としてハクがつくかも」

 

それはどうだろう。

吸血鬼というよりは新手の変態。もしくは怪談の類だが……。

まあ、こいつがいいならそれでいいか。

こうしてギャスパーは俺たちに心を開いてくれたのだった。

 

「あ、イッセー。家帰ったら覚悟するっすよ……」

 

そういいながら木刀を構えるミッテルト。

どうやら俺の受難は避けられないようだ……。

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