イッセーside
俺は目の前でうずくまっている存在にどう声をかけようか悩んでいた。
「え、え~と、トーカ。大丈夫か?」
「……今は話しかけないで」
トーカは近くにあった紙袋をギャスパーよろしく頭にかぶり、さらに深いため息をついた。
まあ、気持ちはわかる。酒に酔ってあんな妙なことしたと知ればこんな反応にもなろう。
酔ってる間に何したのかは全部覚えているようで、とことん沈んでしまってるようだ。
「いっそ殺せ……」
これは重傷だ。このままではトーカまで“段ボール
だが、どうやって慰めたものか……。
「まあ、こういうミスもあるっすよ。気にすることないっすよ」
「……そう?」
「そうっすよ!うちなんか、ここに来たばかりの時、エロゲーの存在を知らずにイッセーに届けに行って大恥かいたことあるんすから!」
「それは……地獄ね……」
うわあ、その話もってくるか……。
あれはまだミッテルトがここに来たばかりのころ、ミッテルトがエロゲーをもって教室に届けに来たことがある。
パッケージを親にばれないように裏返しにしてて、ミッテルトがそれを学校でひっくり返して大恥をかいた話だ。あの時は皆から凝視されて恥ずかしがってたミッテルトに思いきりぶん殴られたっけ。
「こんなのトーカちゃんらしくないっすよ!元気出すっす!」
「……私らしくない、か。確かにそうね。失敗は挽回するものだと、リムル様も言っていたものね」
どうやらなんとか立ち直ったようだ。トーカは紙袋を投げ捨て、立ち上がる。
よかったよかった。
「……で、イッセー。この人は結局どちらさまなの?」
おっとそうだった。そういえば部長たちにまだ紹介していなかったな。
「紹介します。こいつは“トーカ”。俺の友人ですよ」
「はじめまして。トーカと申します。先日はお見苦しいところを見せてしまい、申し訳ございません」
「アーシア・アルジェントといいます。よろしくお願いします」
「リアス・グレモリーよ。まあ、酔っていたのなら仕方ないわ。父や兄も似たようなものだし」
確かに、酔った奴らは普段とは逸脱した行動をすることもあるからな。
まあ、仕方ないと言えば仕方がない。
「それはいいんだけど、トーカさんは何者なの?昨日角が生えているのが見えたし……人間……じゃあないわよね?」
「はい。私は“
「どらごにゅーと?」
「簡単に言うと、人化した
「龍と人間のハーフ!?」
まあ、トーカは“
進化経路が同じなことから察するに、人間の血が色濃く出たのが“竜を祀る民”であり、龍の血が色濃く出たのが“蜥蜴人族”なんだと思う。憶測の域をでないが、あながち間違いでもないと思う。
「イッセーさんの周りにはいろんな人がいるんですね」
「はぐれ堕天使にSS級はぐれ悪魔の次は龍と人間のハーフ……。本当にイッセーの過去が気になってくるわ」
部長が頭を抱え込んでいる。何やら悩んでる様子だ。
まあ、無理もないだろうけど……。
「まあ、その話はおいおい……今は会談のほうですよ」
そう。今日は三大勢力の会談を行う日なのだ。まずは神器が制御できないから危険と判断され、留守番が決定してしまったギャスパーのためにお菓子を買ったりしなきゃならない。
他にもいろいろやることがあり、今日は早めに出ないとな……。
「黒歌は悪いけどセラと一緒に留守番しといてくれ。一応、お前のことは上層部は把握してるっぽいけど、念のためにな」
「了解にゃん」
「セラも留守番しっかりしろよ」
「はいなの!」
ビシッと敬礼するセラに思わずほっこりする。
まあ、会談の場で一応の報告をする予定はあるが、現状見られてもいいことはない。魔王やその眷属ならまだしも、末端の護衛の悪魔にまではさすがに伝わってないだろうし、黒歌は連れてくわけにはいかない。
トーカは……どうしよう。ぶっちゃけこんなところで遭遇するとか思ってなかったから、考えてないんだよな……。
まあ、トーカは普通に自分の家があるだろうし、そのまま帰る選択肢もあるけど……。
『一応、あなた達についていくわ。三大勢力の会談の顛末は知っておいて損ではないもの』
『あー、まあ隠密として情報収集は大事だからな』
『了解っす』
部長たちをまだ警戒してるのか、他のものに聞かれぬよう、俺とミッテルトに思念伝達でトーカは告げる。どうやら俺たちについていくようだ。ただ、普通に行くのも警戒されるだけなので、しばらくしたら俺の影と接続して“影移動”で俺の影に移動するみたい。
さてと、さっそく出発するか。
今日の会談はこの世界の歴史を大きく変えるものとなる。俺には確信に近いものがあった。
会談に思いを馳せつつ、俺たちは勢いよく家を飛び出した。
******************
コンコン、部長が会議室の扉をノックする。
「失礼します」
部長が扉を開けて中に入るとそこには……
特別に用意されたという豪華絢爛なテーブルを囲むように各陣営のトップが真剣な表情で座っている。
悪魔側はサーゼクスさんとセラフォルーさん。それから給仕係のグレイフィアさん。
セラフォルーさんも以前の魔女っ子の姿ではなく、装飾の施された衣装に身を包んでおり、威厳を醸し出している。
天使側はミカエルさんと知らない天使の女の子。メチャクチャ美人だな。
まるで、天使のようだ!あ、天使か。
堕天使側はアザゼルさんと白龍皇ヴァーリ、それにレイナーレ……レイナーレ!?
レイナーレは俺たちのほう……特にアーシアを見ると青ざめたようにお辞儀をする。
ついでにアザゼルさんはいつものラフな格好ではなく、装飾の凝った黒いローブを付けている。
「私の妹と、その眷属及び眷属候補の協力者たちだ。先日のコカビエル襲撃では彼女達が活躍してくれた」
サーゼクスさんが他の陣営のトップに部長を紹介する。それに対し、部長も軽い会釈をする。少し緊張してるみたいだな。
「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」
「悪かったな。俺のとこのコカビエルが迷惑かけた」
ミカエルさんは部長へ厳かな感じでお礼を言う。それに対し、あまり悪びれた様子もなく軽い謝罪で済ますアザゼルさん。
そんな態度に部長は目元を引き攣らせていた。まあ、多分これはこの人の性分みたいなものだから、あまり目くじら立てるのもどうかと思うけどね。
「みんな、そこの席に座りなさい」
サーゼクスさんに促され、俺たちは壁に設置された椅子へと移動する。そこにはソーナ会長が座っていた。
俺たち全員が座るとそれを確認したサーゼクスさんが言う。
「全員がそろったところで、この会談の前提条件だ。この場にいる者達は『神の不在』を認知している」
サーゼクスさんはそう言うと皆を見渡す。
まあ、全員が知ってることだろう。ソーナ会長が知っていたのは少し意外だが、もしかしたらセラフォルーさんに聞いたのかもしれない。
「では、それを認知しているものとして、話を進める」
こうして、サーゼクスさんの宣言のもと、会談がスタートした。
「と言う様に我々天使は……」
「そうだな、その方が良いかもしれない。このままでは確実に三勢力とも滅びの道を……」
「ま、俺らには特に拘る理由もないけどな」
悪魔、天使、堕天使のトップたちが貴重な話をしている。たまにアザゼルさんの発現で空気が凍るが、基本的には順調だ。
各々の現状での戦力、現状の暮らしなどを加味して戦争になればどうなるかというものから最近起こった小競り合いの被害について、様々な内容を話しあっている。
まあ、俺としてはあまり関係ない話だし、知ったからどうこうなるというものでもない。
俺はあくまでただの人間。何の権力もない俺が口出ししても意味はないだろう。
「さてリアス。そろそろ事件についてを」
「はい。ルシファー様」
サーゼクスさんに促され、部長、会長、朱乃さんの三人で事件の顛末についてを話し始めた。
コカビエルのこと、メロウのこと、黒歌のことまで部長は詳しく報告をする。
一応、筋書きは決まっているのだろうが、部長はかなり緊張している。
まあ、お偉いさん相手に注目されるのってなかなか落ち着かないからな。
「────以上が私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件です」
「ご苦労。リアス」
「ありがとう。リアスちゃん☆」
サーゼクスさんとセラフォルーさんの言葉で部長は息を吐きながら着席する。よほど緊張したんだろうな。
「さてアザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
その言葉に皆が注目すると、アザゼルさんは不敵な笑みを浮かべて話始めた。
「先日の事件は我が堕天使中枢組織“
ミカエルさんが嘆息しながら言う。
「説明としては最低の部類ですね。しかし、あなた個人が我々と大きな事を構えたくないという話は知っています。それは本当なのでしょう?」
「ああ、俺は戦争になんて興味ない。お前らも同じだろ?」
アザゼルさんの言葉にサーゼクスさんとミカエルさんが頷く。
まあ、誰だって戦争なんて嫌だろうしな。
「……ですが、あなたは神器の所有者を数十年にわたり、かき集めてるそうじゃないか?てっきり、我々や天界に戦争をけしかけるための戦力増強を図ってるのかと思ってたが……」
「あなたはいつまでたっても戦争を仕掛けてこなかった。“
ああ、なるほど。なんとなく、アザゼルさんが警戒されてる理由が分かった。
確かに、強力な力を持つ存在を外部から大量に招き入れてるとすれば、はたから見れば恐ろしいことだろう。
だが、俺から見たアザゼルさんの印象は、為政者というよりは研究者。迷宮の研究チームと同じ雰囲気を感じてる。だから、この場合の理由は……。
「神器の研究のためさ。何なら、研究データの一部をお前たちに送ろうか?俺は今の世界に満足してるし、戦に興味なんてねえよ。宗教に介入する気もなければ、悪魔業界に影響を及ぼさせるつもりもねえ」
ま、そういうことだろうな。
やっぱりこの人は根っからの研究好きなんだろう。いつか、語り合ってみたいものだぜ。
「……で、メロウなる者の正体は?」
「さあな。俺も知らねえよ。だが、お前らも知っているだろうが、こいつはたびたび色々な勢力で目撃情報があった。三大勢力の戦争時にも見かけたし、ただものじゃないのは確かだろうな」
へえ。メロウの存在自体は案外知れていたんだな。
まあ、仲間を増やすのが目的っぽいし、それを考えると当然と言えるのかもしれないな。
「で、この件について、俺からも聞きたいことがある」
!?来た。
アザゼルさんの視線は俺たち二人に注がれているから予想はしていた。
「兵藤一誠、ミッテルト。おまえらは何者だ?」
「「・・・・・・・・」」
「悪いが、会談にあたり、おまえさんのことは少し調べさせてもらった。だが、調査の結果判明したのは、おまえは普通の高校生だってことだけだ。親も普通の人間。先祖に魔術や超常の存在と接触した者はいない。それなのに、おまえは既に禁手に至っている。そいつは一朝一夕で使えるようになる代物じゃねえぞ?」
やはり調べはついてるか。この世界ではどう頑張ろうが絶対に俺の情報は出てこない。
だからこそ、怪しまれるんだ。
俺たちの力は一般人という枠組みからは大きく外れているからこそ……。
「ミッテルト。お前もだ。この名前を調べると、一つ心当たりが出てくるんだ。とある堕天使夫妻の一人娘がある日突然消えてしまうという事件があった。それから十数年という時が流れ、生存は絶望的と思われていたが……」
アザゼルさんは俺から視線を外し、ミッテルトを見据える。
「こんなところで学生をやって生きていた。しかも、下級堕天使の出のはずなのに、最上級の堕天使であるコカビエルを倒すレベルにまで成長してな……」
アザゼルさんは改めて問う。
「お前達はどうやって、そこまでの力を手にいれた?」
この場の全員の視線が俺たち二人に集中する。
部長たちも、俺たちについて気になっているようだ。だが、俺の答えは決まってる。
「……申し訳ございませんが、言えません!」
俺の言葉に部長たちは驚いたように見つめる。
まあ、この場で断るなんて普通に考えてどうかしてるしな。
「……どうしてもか?」
「はい。とある人と約束してましてね。少なくとも、今は言うわけにはいかないんです」
アザゼルさんの鋭い目線に対し、俺は真摯に答える。
暫くの間睨み合いが続く。が、アザゼルさんはフッと笑うと脱力して椅子に背をもたれさせた。
「ならば仕方ない。無理言って悪かったな」
「え?良いんですか?」
正直驚いたな。もう少し追及してくると思ってたんだが……。
不思議そうに思う俺にアザゼルさんは苦笑しながら答える。
「個人的には興味が尽きないが、言いたくないんだろ?ならば仕方ない。俺としても、あって間もない奴を信用して話せ──なんてできないだろうし、お前が言いたくなったらでいいさ」
「「ありがとうございます!」」
俺とミッテルトはアザゼルさんのことを改めて礼を言う。
本当にいい人だなこの人。言動はあれだがギャスパーや匙にアドバイスを送ったりもしてたし、本質的にはお人好しなんだろう。
人望が厚そうなのもうなずけるし、戦闘狂のコカビエルとウマが合わないというのもわかる。
「……そろそろ話を戻そうか。と言っても俺はこれ以上めんどくさい話し合いをするつもりはない。とっとと和平を結ぼうぜ。おまえらもその腹積もりだったんだろう?」
「「「っ!!」」」
アザゼルさんの言葉に俺とミッテルトなど、一部の存在を除く全員が驚いていた。
ん?もともとこれって和平をするための会談だろ?俺は最初からその認識だったから別段驚くほどの事でもないと思うんだが、部長はともかくトップの人たちまで驚いてるのはどういうワケだ?
『先ほどの話でもそうだったが、基本的に信用されてないんだろうな』
ああ。まあ、この人性根はともかく言動は胡散臭いことこの上ないからな。
そもそも堕天使は欲に負けて堕落した天使の慣れの果て……。種族の成り立ち的にも信用度はあれなのかもしれないな。
ミカエルさんはアザゼルさんの一言に驚いたが、すぐに微笑み、それに続く。
「ええ。私も今回の会談で三勢力の和平を持ちかける予定でした。これ以上三すくみの関係を続けても、今の世界の害となる。戦争の大元である神と魔王はもういないのですから」
神はもういない
この言葉を聞いて、アーシアとゼノヴィアが暗い顔をする。
無理もない。この二人はずっと神のことを信じて生きてきたからな。
分かっているとはいえ、それでも辛いものは辛いんだろう。
俺はそっと、となりにいたアーシアの手をにぎる。ミッテルトもゼノヴィアの手を握ってるようだ。
アーシアは少し驚いた表情となったが、気がまぎれたのか微笑みながら俺にうなずいた。
「我らも同じだ。魔王がいなくとも種を存続するためにも、戦争は我らも望むべきではない。次、戦争すれば、悪魔は確実に滅ぶ」
「ああ。次に戦争すれば、三竦みは今度こそ共倒れだ。そして、そうなれば各神話間のバランスも崩れ、世界は終わる。俺たちはもう戦争を起こせない」
アザゼルさんはふざけた口調をやめ、真剣な面持ちとなる。
「神がいない世界が間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃない。俺もお前たちも元気に生きている。神がいなくても世界は回るのさ」
アザゼルさんの言葉に俺も共感する。
全ての世界を造り上げた、創造神たるヴェルダナーヴァだって滅んでいるんだ。
でも、彼の意思を受け継いだギィさんたち“調停者”や、後に生まれていった種族、魔王がバランスを取っている。
神も一個の生命である以上、神がいようがいなかろうが、関係ない。
滅んだ当初はみんな困惑し、失意の中にいたのかもしれないが、今は元気に生きている。
アザゼルさんの言う通り、神がいなくても世界は回るのだろう。
その後も会談は続くが、緊張はかなりほぐれてるようだ。
和平が確定した以上、懸念する事項もないだろうしな。
「さて、話し合いも言い方向に落ち着いてきましたし、そろそろ赤龍帝殿のお話を聞いてもよろしいかな」
ミカエルさんの言葉に全員が俺に視線を向ける。
「天使の長たるミカエルさんに聞きたい。なんでアーシアを追放したんですか?」
これはずっと聞いておきたかったことだ。アーシアにも事前に確認はしてある。
他の者はなんで今その話を?という感じの顔だ。まあ、無理もないけど……。
「皆さんのお気持ちもわかりますけど、俺にとっては重要なことです。これをきちんと聞いておかないと、俺は天使陣営を信用できない」
「ちょっ、イッセー貴方何を!?」
部長は慌てたように問いただす。確かに、和平の場にて信用できない発言はダメだろうと俺も思う。でも、これだけは譲れない。
その言葉に誰もが驚くなか、ミカエルさんは真摯な態度で答えだした。
「それに関しては申し訳ないとしか言えません。神が消滅した後、加護と慈悲、奇跡を司る“システム”だけが残りました。この“システム”は悪魔祓いや十字架などの聖具に効果を付与し、奇跡を起こす」
なるほど。まあ、確かにおかしいとは思っていた。
たかだか町の教会の十字架にまで聖なる力が多分に含まれてることを……。
それは全てシステムとやらの力というわけか。
「神が死んで、そのシステムに不都合が起きたということですか?」
俺の言葉にミカエルさんは静かに頷く。
「現在は私を中心に
「じゃあ、アーシアを追放したのは、アーシアが悪魔や堕天使すらも治癒する力を持っていたから……ですか?」
「ええ、あなたが察した通りです。アーシア・アルジェントのもつ“聖母の微笑”は悪魔をも癒します。信徒の中に悪魔や堕天使を回復できる者がいると周囲に知られれば、信仰に影響を与えます。信仰は我ら天界に住まう者の源。信仰に悪影響を与える要素は極力排除するしかありませんでした。それと、信仰に影響を及ぼす例は……」
「神の不在を知る者ですか……」
「ええ。
そう言いながら、ミカエルさんはアーシアとゼノヴィアに頭を下げる。
その行動に全員が驚愕していた。天使のトップが下級悪魔に頭を下げているんだから、当然か。
塔の二人も、目を丸くしており、反応に困っているようだ。
しかし、ゼノヴィアは首を横に振って微笑む。
「頭をお上げください、ミカエル様。長年、教会に育てられた身。理不尽も感じましたが、理由を知ってしまえばどうということはありません。多少の後悔もありましたが、教会に使えていたころにはできなかったことが、私の日常を彩ってくれたのです。他の信徒には申し訳ないですが、私は悪魔としての生活に満足しています」
ゼノヴィアはそんなふうに感じてくれたのか。やっぱこの子イイ子だな。
普段は天然というか、世間知らずというか、かなり浮世離れしてるけど、それはこれから覚えていけばいいか。
ゼノヴィアに続き、アーシアも手を組みながら言う。
「私も今、幸せだと感じています。大切な方達とたくさん出会えました。あこがれのミカエル様とこうしてお話しできたこともとても光栄です」
ミカエルさんはアーシアとゼノヴィアの言葉に安堵の表情を見せていた。
「あなた達の寛大な心に感謝します。デュランダルもゼノヴィアにお任せしましょう」
なかなか寛大な対応だな。今や別陣営となったゼノヴィアにデュランダルを預けるだなんて……。
あっちのミカエルとはやっぱり違うんだな。
「さてと、そろそろ俺たち以外の世界に影響を及ぼしうる存在の意見を聞こうか」
ん?三大勢力以外に世界に影響を及ぼしうる存在?何のことだ?
別の神話勢力ってわけでもなさそうだし……。そう思ってると、アザゼルさんは言葉を続けた。
「無敵のドラゴン様……お前達二天龍の意見を聞きたい。まずはヴァーリ、おまえの考えは?」
俺たちかよ!?そこまでの影響力あるの二天龍!?
「俺は強いやつと戦えればそれでいいさ」
アザゼルさんの問いに、ヴァーリはにべも無く答える。
本当にそれ以外には望んでいないといった様子だ。
こういう頭のねじが外れた戦闘狂って厄介だよな。平和になったら問題起こしそうな気がする。
次に俺に視線が移り、問われた。
「兵藤一誠。この質問には答えてもらうぜ。おまえさんは世界をどうしたい?」
「……俺は平和を望みます。ヴァ―リの言う強い人との戦いも……まあ、どちらかと言われれば好きだけど、ヴァ―リみたいに戦えればそれでいいという考えも違う気がしますし、それより俺は友達や仲間と楽しく平和に過ごすことが一番だと思ってますから」
闘い自体は好きだ。実際、迷宮でも研究の息抜きとかで攻略してみたこともあるし、守護王や十傑相手の手合わせなんかも定期的に行っている。
けど、それらは迷宮という、絶対に死なない環境が前提となっている。
本当に死んでまで戦いたいかといわれると、全力で拒否するだろう。無論、メロウの時みたいに仕方ない時は話は別だが、基本的には平和でありたいものだ。
そこにエッチなこともあれば最高だ!ミッテルトとイチャイチャとか、部長のオイル塗とか、そういうイベントが盛りだくさんだとなおいいな!
「また妙なこと考えてるっすね……」
ぐっ、ばれてる。本当勘が鋭いな。
見れば、オカルト研究部のほかの皆も俺が何考えてるのか察したらしく、苦笑いだ。
まあ、仕方ないか……そう思い、俺は言い訳の言葉を発そうとした。
────瞬間、部屋の時が停止した。