帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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和平と今後です

イッセーside

 

 

 

 

ヴァーリたちが撤退してからしばらくした後、到着した三大勢力の軍勢が戦闘の後始末を行っていた。

倒した魔法使いの死体を運んだり、建物の修復作業をしたりと忙しそうだ。

しかも、俺とヴァーリ、アザゼルさんとカテレアの戦いは余波もすごかったため、修復するのがかなり大変そうだ。

校庭の中央ではサーゼクスさん、セラフォルーさん、ミカエルさん、アザゼルさんが部下の人に指示を出しながら話し合っていた。

アザゼルさんとか、片腕を失ったばかりだというのによくやるな。堕天使に再生能力はないのに涼しい顔して復興を手伝うアザゼルさん見てると、見てるだけの俺が何だか申し訳ない気持ちになる。

 

「彼女、カテレアの件は我々、悪魔側にあった。本当にすまない。その傷に関しては……」

 

サーゼクスさんがそう言うとアザゼルさんは手を振る。

 

「俺もヴァーリが迷惑をかけた。元々力にのみ、興味を注いでいた奴だ。結果だけ見るとあいつらしいと納得できる。未然に防げなかったのは俺の過失だ」

 

 

そう言うアザゼルさんの瞳はどこか寂しげだ。

ヴァーリとの間に何かあるのだろうか?コカビエルとの戦いでもあいつを派遣するくらいだし、もしかすると、この人は相当ヴァーリを信頼してたのかもしれないな。

そんな中、ミカエルさんがサーゼクスさんとアザゼルさんの間に入る。

 

「さて、私は一度天界に戻り、和平の件を伝えてきます。“禍の団”についての対策も講じなければなりませんしね」

 

「すまないなミカエル殿。今回のようなことが起きて、会談をセッティングした我々としては、ふがいなさを感じている」

 

「サーゼクス、気になさらないで下さい。私としては三大勢力の和平が結ばれることに満足しているのですよ」

 

「ま、納得出来ない奴も出てくるだろうがな」

 

と、アザゼルさんが皮肉を言う。

だが、真理でもある。それこそ、万年単位で憎み合い、いがみ合っていた奴らとこれから仲良くしましょう、なんていっても納得できない奴はさぞ多かろう。

現に、あのカテレアがそうだったんだから。

 

「長年憎みあってきたのですから、仕方がありません。しかし、これからは少しずつ互いを認め合えば良いでしょう。……問題はそれを否定する“禍の団”ですが」

 

「それについては今後連携をとって話し合うことにしよう」

 

サーゼクスさんの言葉に二人とも頷く。

そうだよな。ベニマルさんたちだって、オークたちを受け入れた。

これから長い時間をかけていけば、この世界だって、向こうと同じくらい良くなるはずだ。

 

「では、私は一度天界に戻ります。すぐに戻ってきますので、その時に正式な和平協定を結びましょう」

 

と、ミカエルさんがこの場をあとにしようとする。

……って、危ない!この人には頼みたいことがあるんだった!

 

「ちょ、ちょっと、待って下さいミカエルさん!」

 

俺は魔法陣を展開しようとするミカエルさんを制止する。

 

「なんでしょうか?兵藤一誠君」

 

「ひとつだけお願いが」

 

ミカエルさんは少し考えるそぶりを見せるが、すぐに微笑み、指を立てる。

 

「いいでしょう。今回の戦い、君がいなければどうなっていたかわかりませんからね。ただ、時間もないのでひとつだけですよ」

 

ああ、よかった。一つで十分だ。

 

「アーシアとゼノヴィアが祈りを捧げてもダメージを受けないようにしてもらえませんか?」

 

これが俺の願い。

アーシアとゼノヴィアは悪魔になっても、神がいないと知っても毎日祈りを捧げていた。

もちろん悪魔だからダメージを受ける。

そんな二人を見ていていつも不憫に思っていたんだ。

この世界の祈りは、聖書の神のシステムが悪魔を嫌っているがゆえ、祈りを許さない。でも、向こうの悪魔たちはリムルという神を信仰し、いつも祈りをささげている。

ルミナス教徒を見ても思うんだけど、信仰は自由が一番だと思うんだ。

 

「──っ」

 

俺の願いを聞き、ミカエルさんが驚きの表情を見せる。

俺の傍にいたアーシアとゼノヴィアも驚いている。

しかし、ミカエルさんは小さく笑うと俺の願いにうなずいてくれた。

 

「わかりました。二人分ならなんとかできるかもしれません。二人は既に悪魔ですから教会に近付くのも苦労するでしょうが。二人に問います。今の神は不在ですがそれでも祈りを捧げますか?」

 

その問いにアーシアとゼノヴィアはかしこまって姿勢を正す。

 

「はい。主がいなくてもお祈りは捧げたいです」

 

「同じく、主への感謝とミカエルさまへの感謝を込めて」

 

二人の言葉にミカエルさんは微笑んだ。

 

「わかりました。本部に帰ったらさっそく調整しましょう。神を信仰する悪魔が二人くらいいても面白いですしね」

 

ミカエルさんがニッコリしながらそう言ってくれた。

やった!言ってみるもんだな!

 

「ありがとうございます、ミカエルさん」

 

「あなたは此度の功労者です。これくらいのお願いでよければ喜んで引き受けますよ」

 

功労者ってほど働いたつもりもないけど、何はともあれこれで二人の問題も解決だぜ!

 

「良かったな、アーシア、ゼノヴィア。これからは遠慮することなく祈れるぞ」

 

アーシアはうるうると目元を潤ませ、俺に抱きついてくる。

 

「ありがとうございます、イッセーさん!」

 

よしよし。俺はアーシアの頭を撫でながら、彼女を抱き返す。

 

「イッセー、ありがとう」

 

ゼノヴィアもお礼を言ってきた。

ほんのり頬が赤いのは照れてるのか?ゼノヴィアが照れるなんて新鮮だな!いつもよりもかわいく見えるぜ!

 

「ミカエルさま。例の件、よろしくお願いします」

 

木場が何やらミカエルさんにお願いしていた。

 

「ええ。あなたからいただいた聖魔剣に誓って、聖剣研究で今後犠牲者が出ないようにします。大切な信徒をこれ以上無下には出来ませんからね」

 

おお!この人そっちもやってくれるのか!

マジであっちのミカエルとは大違いだ!

 

「やったな!木場!」

 

「ありがとう、イッセー君」

 

俺たちのやり取りを見ていたミカエルさんに対し、アザゼルさんが近づく。

 

「ミカエル。ヴァルハラ連中への説明はお前がしとけ。下手にオーディンに動かれても困るからな。あと、須弥山にも今回のこと伝えといてくれ」

 

「ええ。私が伝えておきましょう。『神』への報告は慣れてますから」

 

それだけ言うと、ミカエルさんは部下を引き連れ転移していった。

確かに、今回の“禍の団”は三大勢力に留まらず、他の神話にも手を伸ばすだろうし、予め注意喚起しといたほうがいいだろう。

それを見送ると、次にアザゼルさんは堕天使軍勢の前に立った。

 

「俺は和平を選ぶ。堕天使は今後、天使と悪魔と争わない。不服なものは去れ!付いてきたい者だけついてこい!」

 

『我らの命、滅ぶときまで総督のために!!』

 

怒号と共に鳴り響く歓声。アザゼルさんはやはり、スゴいカリスマだな。

根はお人好しだし、リムルと似てる部分があるのかもしれないな。

その後、堕天使達もどんどん転移していき、残ったのはアザゼルさんだけとなった。

 

「さて、そろそろ俺も帰るわ。疲れた」

 

そう言って帰ろうとするアザゼルさん。

すると、一度だけ立ち止まり、俺の方を見た。

 

「あー、そうそう。俺は当分この町に滞在するつもりだから」

 

「え?」

 

「本当ですか?」

 

「ああ。制御できてない神器見ると、ムカつくし、あの吸血鬼君の世話もしてやるよ。じゃあな!」

 

アザゼルさんの神器の知識はマジでスゴいからな。

これはギャスパーが神器を完璧にコントロールできる日も遠くないかもしれない。

すると、今度はレイナーレが近づいてきた。

 

「兵藤一誠さん、アーシア・アルジェントさん。先日は本当に申し訳ありませんでした。改めて、謝罪をしたいと思います。どのようにお詫びをすればいいか……」

 

「いや、別にいいって。俺たちが保護して無事なわけだからさ」

 

「そうですよ!あの時も言いましたが、レイナーレ様のおかげで私は皆さんに……大切な人たちに会うことができたんですから」

 

「……ありがとうございます」

 

「おい、レイナーレ。終わったんなら早く来い!」

 

「はっ」

 

レイナーレは立ち上がり、アザゼルさんの後についていく。操られていたとはいえ、ずっと気にしてたんだろうな。

聞いた話だと、彼女の部下たちもメロウの力が弱まった影響で無事目を覚ますことができたと聞く。あの時、俺の“呪詛崩壊(カースブレイク)”である程度解呪できていたのも大きいらしい。よかったよかった。

そう思いながら、俺はこれからに想いを馳せるのだった。

 

 

『これは我々とは別の裏組織より買い取った結晶。これを壊すことで、私はさらなる力を得るのよ!』

 

 

────ある程度の懸念も残して……

 

 

 

 

*********************

 

???side

 

 

 

 

「蛇と結晶、重ね合わせるとあの程度の存在でもそこそこの力を手にできるんだな……。まあ、使いこせなければ、宝の持ち腐れだけどな」

 

神祖の高弟第5位、カグチは映像を見て大笑いしていた。

彼からすれば、自分の力を使いこなせず敗北するなど愚かこの上ない。

 

「“禍の団”。力を求めるテロリスト集団か……。確かに、我らの実験の材料にするのにこれ以上ない存在だが、ずいぶん勝手な真似をしたなカグチ!」

 

「おいおい、別にいいだろ?俺たちは基軸世界に戦争を仕掛けるには力不足だ。仮に、同盟を結んでる()()()()と共に戦っても、勝率は三割にも満たない。ならば、どんな手段を使っても、力ある者を増やし、仲間にするのが合理的だろう?」

 

カグチの言葉にメロウも口を紡ぐ。カグチの言う通り、基軸世界と自分達の陣営では戦力に大きな隔たりがある。

何しろ基軸世界には、ギィ・クリムゾンとリムル・テンペストを筆頭とする“八星魔王(オクタグラム)”がいるのだ。

メロウ自身、黒歌とイッセーの強さは身をもって知っている。

特に黒歌は二人がかりとはいえ、相性的には自分が遥かに優位だったにも関わらず、仕留めきれなかったのだ。

メロウの究極能力(アルティメットスキル)麗歌之王(セイレーン)”は音の振動であらゆる結界を()()()()()()()()“音響操作”という権能を持っている。

これに耐えうる結界など、ヴェルザードの持つ忍耐之王(ガブリエル)の“雪結晶盾(スノークリスタル)”、あるいは正義之王(ミカエル)の誇る最強の絶対防御“王宮城塞(キャッスルガード)”くらいなのだ。

空間歪曲防御領域(ディストーションフィールド)すら突破するその権能を最大限に高めた彼女の究極の奥義こそ、“破滅と破壊の葬送曲(デストラクションレクイエム)”だった。

しかし、絶対の自信を持って放たれたその奥義は黒歌の結界に阻まれた。これはメロウにとっても想定外すぎる出来事だった。

その黒歌ですら、“ハ星魔王(オクタグラム)”の幹部でしかない。自信過剰の気のあるメロウをしても、現状こちらと基軸世界の戦力には差があると認めざるを得ないのだ。

 

「だが、それでもあの程度ではないか!力が膨れ上がっただけで、ユニークスキルすら習得できてない!あんな雑魚何人いようが、真の強者には敵わんぞ!」

 

「メロウの言い分もごもっとも。だが、“魂の結晶(ソウル・ジェム)”を使ったコカビエルがユニークスキルを手に入れたように、強い意志を持つものが使えば話しは変わってくる。あの女がユニークすら手に入れられなかったのは、『魔王の血を引く自分達が世界を支配する』という周囲に作られた空っぽの夢だけで、自分というものをまるで持ってなかったからだ」

 

カグチの言葉にメロウはなるほどと考える。

確かに、カテレアの言い分はぶっちゃけてしまえばただの思い込みだ。他の旧魔王の連中も見てきたが、あいつらは祖先の偉業を自分達のものだと勘違いしてる愚物。自分の確固たる意思など持っていないであろう。

対して、コカビエルには戦争の決着をつけたいという純粋な思いと、基軸世界に挑戦したいという向上心があった。

だからこそ、鍛練を欠かさなかったし、疑似覚醒した時にユニークスキルを手に入れて見せたのだ。

 

「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。俺は野心を持つものにコイツを売り付け、覚醒者を増やすつもりだ」

 

「それで足が付いたらどうするつもりだ?」

 

「俺がそんなヘマするとでも?」

 

歯軋りしながらも、カグチの言葉にメロウはなにも言うことができない。

なにしろ、カグチは戦闘と諜報、両方に長けている存在だ。

制約こそあるものの、基軸世界にて、天魔大戦の情報を誰にも気付かれずに収集できたのも彼の権能あってのものだ。

そんな彼が誰かに気付かれるなどというミスを犯す等考えられないことだった。

 

「それに、見つかるならそれはそれで面白いんだ。どっちにしろ兵藤一誠と黒歌は消した方がいいしな。今回は見物だけにしたが、次は俺も戦ってみたいもんだぜ」

 

そう言いながらカグチは笑う。実は彼も重度の戦闘狂なのだ。

かつて自分の国を納めていた時期は領土が隣接していた“黄の王”と自国の被害などお構いなしに幾度となく殺し合いをしたものだ。

余談だが、それが当然だと思い込んでいた“黄の王”は彼の領土跡地に国を作ったとある魔王に、かつてと同じノリで戦争をしかけ、頭を悩ませる原因となっているのだが、それはカグチの知ったことではない。

 

「神祖様の許可が降りると思ってるのか?」

 

「あのな、神祖様もそんなケチな人じゃないんだから、それくらい許してくれるだろ?俺が負けたらそれまでだったってだけだし……」

 

自分の死すらまるで厭わないカグチの発言に薄ら寒いものを感じるが、それがカグチの本音と理解してるがゆえ、メロウはなにも言わなかった。

それに、カグチの言い分はメロウにとっても重要なものだ。

 

「……許可が下りたのならば私も連れてけ。あの忌々しい赤龍帝と黒猫は私の手で始末する」

 

彼女にとって、もっとも憎むべき存在であるルミナスの配下たる黒歌は当然として、自らの邪魔をした一誠も今やメロウにとっての粛清対象となっていた。

ゆえに、二人は自分の手で始末したいと常々考えていたのだ。

それを察してか、カグチも笑みを浮かべながら頷いた。

 

「兵藤一誠、黒歌。テメーらと合間見える日が楽しみだな……」

 

究極の権能を持つ者との戦いなど、ここ数千年は行っていない。

天魔大戦という激闘を見ていた身としては、ずっとこの時を待っていたのだ。

神祖の命令だからこそ、彼は監視に徹していたが、本当ならば彼もあの戦いを体験してみたかった。

その悲願が叶いそうだ。

カグチは想いを馳せながら眼を閉じた。

 

 

 

 

*********************

 

イッセーside

 

 

 

 

 

「てなわけで、今日からこのオカルト研究部の顧問になることになった。アザゼル先生と呼べ」

 

「私もこの学園に入学することになりました。ここでは“天野夕麻”とお呼びください」

 

あの会談から数日。扉を開けると、着崩したスーツ姿のアザゼルさんと制服姿のレイナーレがオカ研の部室にいた。

 

「……どうして、あなた達がここに?」

 

額に手を当て、困惑している部長。どうやら、先日のアザゼルさんの発言を冗談だと思っていたようだ。

 

「なに、セラフォルーの妹に頼んだらこの役職になったのさ。まあ、俺は知的で超イケメンだからな。女生徒を食いまくってやるさ!」

 

「それはだめよ……って、なんでソーナがそんなことを?」

 

部員全員の視線が会長に集まる。

 

「ち、知識は確かですし、顧問にうってつけとサーゼクス様が……」

 

そう言いながらも会長の目はメチャクチャ泳いでいる。冷や汗もだらだら出し、何か隠してるなこの人。

部長はごまかしは許さないとばかりにじーっとソーナ会長を見つめる。そんな部長にとうとう観念したのか、ソーナ会長は語り始める。

 

「……拒めば、姉を代わりに連れてくると脅され……いえ、せがまれまして……」

 

今、脅されたって言ったか?そんなに嫌か!セラフォルーさんが来るの!

俺的には愉快で好感度高い人なんでけど、確かに、ソーナ会長がらみだと暴走しそうだし、まじめな会長はそもそも姉の妙な格好を見るのが嫌なのだろう。

 

「私たちオカ研を売ったわけね」

 

部長が苦笑いしながら言う。

 

「私は総督のサポートとしてやってきました。至らないところもあると思いますが、よろしくお願いします」

 

「よろしくっす!」

 

レイナーレはそういいながら会釈をする。これからはアザゼルさん……いや、先生のサポートとして生徒側から補佐する予定のようだ。

ふと俺は斬り落とされたはずの左腕がなぜか生えていることに気付いた。

完全回復薬(フルポーション)”か?……いや、よく見るとこれ、精巧に作られた機械仕掛けの義手か?

 

「アザゼルさん、その左腕は?義手ですか?」

 

「お?よくわかったな。これは神器研究のついでに作った万能アームさ。ビームやら小型ミサイルやら、いろいろ搭載してるぜ」

 

「うお!すげえ!ロマンがあふれてますね!」

 

「お?わかるか?」

 

アザゼルさんが袖を捲ると左腕が飛び出してきた。まじでいろいろな機能が搭載されてるっぽいな!魔素由来じゃないから等級は測れないが、最低でも“特質級(ユニーク)” はありそうだな!

 

「まぁ、そう言うことだ。こいつ共々よろしく頼むわ。リアス・グレモリー」

 

部長は胡散臭そうな目でアザゼル先生をにらむ。まあ、つい先日まで敵対してた人が自分の上司になったんだし、仕方ないと言えばそうなのかもしれないな。

 

「で、では、生徒会の業務もあるので、私は失礼します」

 

会長はそういいながらそそくさとその場を後した。完全に丸投げしたな。そんなに嫌か。

まあ、まじめな生徒会長と不真面目な教師じゃあ確かに相性は悪いわな。

 

「そう嫌そうにするなよ、リアス・グレモリー。この俺がおまえらを鍛えてやろうってんだからさ」

 

アザゼル先生の言葉にみんなが驚く。そんな皆をよそに、アザゼル先生は話を続けた。

 

「お前らも知っての通り、“禍の団”というテロ集団には白龍皇がいる。ヴァーリはすでに組織内で自分のチームを持ってるって話だ。仮に“白龍皇眷属”とでも呼んどくか。今のところ、ヴァーリと孫悟空以外にも、“聖王剣”に選ばれた担い手や“黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)”に所属してた凄腕の魔術師が確認されている。そいつらへの抑止力として、赤龍帝が身内にいるお前らが挙げられたってわけだ」

 

なるほど。確かに、ヴァーリはまた俺たちと相まみえることもあるだろう。その抑止力として、ヴァーリに勝っている俺が挙げられるのは理解できる。

だが、ほかの皆は魔王種級と戦うには力不足。それをアザゼル先生が底上げしようって話か。

 

「……イッセーとミッテルトの二人で十分よ」

 

「いや、俺はアザゼルさんの教えも受けたほうがいいと思いますよ」

 

俺の言葉にオカルト御研究部の視線が俺に向く。部長は余計なことを言うなといった感じの表情だが、この人の指導はこれから先絶対必要になるだろう。

 

「どういうことかしら?」

 

「簡単ですよ。俺は神器についての知識がないに等しい。この場には神器の制御が難しいギャスパーもいるし、専門家の意見は聞くべきだと思います」

 

「兵藤一誠の言うとおり、俺の知識は必須だと思うぜ。サーゼクスにも、未成熟の神器使いを成長させろと言われてるし、お前らには俺の研究成果を叩き込んでやるよ。そうしたら、おまえ達はもっと強くなれるぜ」

 

現状、俺やミッテルトができるのは身体的、技術的な修行のアドバイスくらいだ。

だが、技術も身体能力も劇的に上がるものじゃない。長い反復練習が必要だし、迷宮みたいに死んでも生き返る環境なんてないから加減も必要だ。

それにアザゼル先生の言うとおり、俺は神器について知らないことのほうが多い。木場の聖魔剣やギャスパーの邪眼、アーシアの癒しの力に関しては俺ではこれ以上どうにもならないのだ。

だからみんなが強くなるためにも、神器についての知識があるアザゼルさんが指導してくれるのはありがたい。

そんな中、誰かがオカルト研究部の扉をノックした。

 

「お邪魔するにゃん♪……アレ?知らない人がいる」

 

「おじさん誰?」

 

「お?もしかして、お前が噂の機械っ子か!?」

 

やってきたのはセラと黒歌だった。

アザゼルさんはセラを見た瞬間、目の色を変えて、飛びついてきた。セラは最近、たまにオカルト研究部に姿を現すようになっている。

その時は念のためということで、黒歌もついてきてるようだ。

 

「堕天使総督のアザゼル。話には聞いてるにゃん」

 

「SS級はぐれ悪魔黒歌か。手配犯がうろちょろしてていいのかよ?」

 

どちらも微妙に警戒してるな。まあ、初対面だし、当然と言えば当然だけど。

ところが意外なことに、時間経過とともに、二人の会話はどんどん弾んでいった。

 

「あー、あの局面そうすりゃクリアできるのか!」

 

「なるほど、このアイテムが必要だったんだ。教えてくれてありがとにゃん」

 

互いに敵意がないということを悟ったようで、しばらくすると、ゲーマーらしく、ゲーム談話を二人でし始めた。

まあ、楽しそうで何よりだよ。そんなアザゼルさんたちをあきれながら見ていると、部長が何やら思い出したかのようにつぶやく。

 

「そうそうイッセー。貴方に伝えたいことがあるのよ」

 

「俺に?何ですか?」

 

俺の言葉に部長は少し、言いづらそうな雰囲気を出す。

 

「じ、実は、私の眷属の女性が全員、イッセーの家にて同居することになったの。お兄様の提案でね」

 

・・・・・・え?

 

「「ええええええええええええええええええ!?」」

 

思わず俺もミッテルトも叫んでしまった。

いやいや、なんで!?

いや、うれしいんだけどさ、いくらなんでも唐突すぎるだろ!?

 

「ま、まあ、うちは構わないっすけど、なんでまた急に?」

 

「以前、貴方の家に泊まった時に眷属のスキンシップの重要性を感じたらしくて……。一応止めたのだけど……」

 

いやいや、それでも色々おかしいような……。

 

「あらあら、よろしくお願いしますわ、イッセー君♪」

 

困惑している俺に朱乃さんが抱き着いてきた。

お、おっぱいが!おっぱいが当たってるよ!素晴らしい!最高の感触だ!

うれしい!……けど、そんな俺を白けた目でミッテルトが見つめている。その視線が少し辛い。

 

「でも、もう家にそんなスペースないっすよ?どうするんすか?」

 

ミッテルトの言葉は正論だ。俺の家も一軒家だし、広い部類ではある。

だが、ここ数ヶ月で部長、アーシア、黒歌、セラと四人も居候が増えている。

いくらなんでももう家にそんなスペースは無いぞ。

 

「問題ないわよ。夏休み中に家を改築することになっているから。イッセーのご両親にも許可はもらってるし……」

 

はい?改築?

気になったので詳しく聞いてみると、かなり大掛かりなものらしい。

個別の部屋に、地下にはプールもできるのだとか……。

さ、さすがにまずいぞそれは!?もし、その過程で俺の部屋のクローゼットがどうこうなってしまったら……。

下手して捨てられでもしたら、冗談抜きでやばい!一応釘さしとくか。

 

「あの、できれば、俺の部屋の家具は捨てないでもらえますかね?特にクローゼットは師匠にもらった思い出の品なんで……」

 

「そ、そうなんすよ。うちのお気にの家具とかもあるし、ある程度は残してほしいっすね」

 

「?そうなの?なら、お兄様にも言っておくわね」

 

俺とミッテルトは部長の言葉に安どのため息を付ける。ほっ、よかった。割とマジで。

見ると黒歌も冷や汗をかいてるし、心配してたようだ。

基軸世界の扉がなくなる危険性がないのなら、家のリフォームとやらは俺も面白いと思う。

ミッテルトも同じ考えのようだ。皆と賑やかに暮らせるなら、それも悪くないしな。

俺はそう思いながら、楽しそうに談笑する皆に目を向けた。

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