猫の和解と夏休みの始まりです
イッセーside
俺は今、小猫ちゃんと一緒にとある喫茶店に向かっていた。
チラッと小猫ちゃんのほうを見ると、少し震えているのが見て取れた。
「小猫ちゃん、大丈夫か?」
「はい。問題ありません」
そう言いながらもやはり緊張してる様子だ。まあ、無理もない。
そうこうしている間に俺たちは目的の店にたどり着いた。かなり繁盛してるようだな。
俺たちは目的の人物を見つけるや否や、彼女の座っている席に移動をした。
「来たね。白音」
「はい。姉さま」
そう。今日は小猫ちゃんとの約束の日。
黒歌と話す、姉妹にとって何よりも重要な日だった。
*********************
現在、黒歌と小猫ちゃんが向かい合って座っていた。
今までは三大勢力の会談など、いろいろごちゃごちゃしていたため後回しとなっていたが、とうとう黒歌から話を聞く時が来たのだ。
この場は黒歌によって、“空間断裂”が施されてるため、周りに聞かれることはない。詳しい話を誰にも聞かれずに行うことができるわけだ。
小猫ちゃんも緊張してるのだろう。隣に座る俺の手をぎゅっと握っている。俺は彼女を安心させるため、その手を優しく握り返した。
「姉さま。私は覚悟を決めてきました。お願いです。あの日、姉さまに何があったのか、教えてください」
「……うん。話すよ。全部」
そういいながら、黒歌は飲んでいた抹茶ラテをテーブルに置き、一息ついてから、黒歌ぽつりと話し始めた。
「私は母親が死んでから、白音を連れて、いろいろな場所を放浪した。当時は力もなく、食べるものすら困るような状況だったにゃん」
「はい。覚えています」
俺は初耳だったけど、よほど切羽詰まっていたんだな。黒歌も小猫ちゃんも早くに親を亡くし、頼れる人もおらず、自分たちだけで生きていくしかなかった。
俺はその表情から、二人がどれだけつらい思いをしたのか何となく察した。
「そんな時にゃん。ナベリウス家の上級悪魔の眷属になったのは。なんでも、早くに死んだ父親がそこの関係者だったみたいで、私には断る選択肢がなかったにゃん。……でも、最初は私も喜んだ。上級悪魔の庇護下には入ればひもじい思いもしなくて済む。これで白音にも美味しいものを食べさせられるって……」
そこで黒歌は言葉を区切る。その目には、強い怒りが浮かんでいる。
「でも、私の元バカ主ね。猫魈の……私達の力に興味を持ちすぎたのよ。眷属になった私だけならともかく、白音にまでその力を使わせようとしたの」
黒歌の言葉に、小猫ちゃんは目を見開く。どうやらこのことは小猫ちゃんも知らなかったようだ。
「眷属じゃないのにか?」
「そ。あいつは眷属の能力を上げるために無理矢理なことをしまくってたわ。眷属ならまだしも、その身内にまで無茶な強化を強要するのは当たり前。当時の白音じゃ、命令されるまま力を使用して暴走しちゃってたかもしれないの」
「……それで、主を殺して逃亡したのか」
黒歌が指名手配のはぐれ悪魔になったのは主を殺したから。しかし、その理由は小猫ちゃんを守っるためのものだったわけだ。
本当に不器用なんだから。でも、そこがコイツのいいところでもあるんだよな。
「うん。でも、その現場を白音に見られちゃってね。私を怖がるその目を見て、私も怖くなっちゃって、私は白音を置いて逃げた。あとは、イッセーの知っての通りにゃん」
なるほど。それでルミナスさんに拾われて今に至るってわけか。
こいつも波乱万丈の人生を送ってきたんだな。
「白音、本当に、本当にごめんね。私がもっとしっかりしていれば、白音に辛い思いをさせてしまうなんてことなかったにゃ……」
黒歌は小猫ちゃんに向かって頭を下げた。それからしばらく、沈黙の時間が続く。
「……姉さま、顔をあげてください」
黒歌に頭を上げるよう、小猫ちゃんは促す。
「……姉さま。私は黒歌姉さまのことを嫌っていました。姉様は仙術の力に飲まれて暴走して、勝手に置いていったのだとずっと思っていました」
「白音……」
「あれから私はずっとつらい目にあいました。何度姉さまを憎んだかわかりません」
その言葉を聞いた黒歌は思わず目を背ける。だが、小猫ちゃんは言葉をつづけた。
「でも、今は後悔しています。なんであの時、姉さまを信じなかったのかと……」
黒歌は小猫ちゃんの言葉に目を見開き、顔を上げる。
小猫ちゃんの顔を見た黒歌は驚愕する。小猫ちゃんの瞳には、一筋の涙が浮かんでいたのだ。
「……謝るのはこちらのほうです。私、今までずっと姉さまを憎むだけで、何故あんなことをしたのかなんて、考えもしてませんでした」
小猫ちゃんは涙をぬぐうと改めて黒歌と顔を合わせた。
「……正直、まだ少し混乱してます。でも、イッセー先輩も姉様を信じているようですので、私は姉様のことを信じたいと思います」
その言葉に今度は黒歌のほうが涙を流した。
「ありがとう……白音」
こうして、猫姉妹は無事和解したのだった。
その姿はとても仲がよさそうに見える。多分、これが本来の二人の在り方なんだろうな。俺はそう思いながら、頼んだお茶を啜るのだった。
*********************
そんな猫姉妹の和解から数日が経ち、俺たちは夏休みに突入していた。
そんな夏休みの記念すべき初日の朝。俺は起床して早々困惑していた。
なぜなら、今俺の両隣にアーシアと部長が寝息を立てながらすやすやと寝ていたからだ。
……ミッテルトに見つかったら殺されるな。そう思いながらも、俺はもぞもぞとうごめくタオルケットに注視していた。
タオルケットの中で動く何かは、俺に独特の弾力と極上の柔らかさを与えてきた。いや、何かが何なのかは理解してるんだけどさ、いくら何でも突拍子もなさすぎるんだよ。
メチャクチャうれしいしんだけど、どちらかというと困惑のほうが勝ってる感じ?
タオルケットの中で動く何かは徐々に胸のところまで上がって来て……
「とーちゃく♪」
俺にぴったりと抱き着きながら、顔を出してきた。
「い、いや、なにやってるんですか朱乃さん!?」
「うふふ。ちょっとした悪戯ですわ。迷惑でしたか?」
ちょっと瞳をウルウルさせながら朱乃さんは俺につぶやく。
迷惑なんてとんでもない。むしろ最高です!朱乃さんの黒髪からメチャクチャいい匂いがして俺の花を刺激してくる!
ちゅっ。
!?不意打ちに朱乃さんは俺の首元にキスをしてきた!あまりの衝撃に眠気が吹っ飛び、脳みそがはじけ飛びそうになったんですけど!
「イッセー君の体って、やっぱりたくましいわ。それに男性の肌って思っていたより気持ちが良いのね。イッセー君だからかしら? イッセー君、私の体はどうかしら?」
「は、はい!最高です!」
というか、それ以外に言葉が出てこない!絡みついてくるスベスベな脚!柔らかすぎて癖になりそうなおっぱい!そのすべてが最高です!
「うふふ、うれしい。私の体、もっと楽しんでくれても良いのですよ?私もイッセー君の体、もっと深く知りたいわ。隣に人がいるけど、気づかれないようにこっそりするのもいいのかしらね」
ブッ!思わず鼻血が出てきた。
朱乃さんのSの面が前面に出てきてる!朱乃さん、エロ過ぎる!
この人、エロ魔人とまで謳われている俺よりもエロいんじゃないのかと時折思えてくるよ!
朱乃さんが少しだけ身を起こして俺に覆い被さると、まっすぐ俺を見下ろしてきた。そして、そのまま俺の顔に朱乃さんの顔がどんどん近づいていく。こ、これって……
「このまま時間が止まってしまえばいいのに……なんて、ロマンチックなのもいいけれど、やっぱり……」
俺の唇と朱乃さんの唇が重なりそうになる。ど、どうしよう!ミッテルトに見られたらなんて言い訳すれば……。
「いや、この時点で言い訳もくそもないっしょ」
「朱乃。いつこの部屋に入ってきたの?」
声が聞こえ、恐る恐る視線を扉に向けてみる。
そこにいたのは、寝間着を着ながら呆れの視線を俺に向けるミッテルトだ。
次に俺は油が切れた人形のようにゆっくりと隣に視線を移す。そこには怒りのオーラを纏った部長がいた。
こ、怖い!リアスお姉さま、怖いっす!
ミッテルトも何かいってくれよ!無言……というか、ただただ呆れただけって感じの視線が一番つらいんだよ!
そんな部長とミッテルトを見て、朱乃さんが部長に見せつけるように俺に抱きついてくる。
「スキンシップですわ。私のかわいいイッセー君と素敵な朝を始めるつもりですの」
朱乃さんの一言に部長の機嫌が一気に悪くなる。これにはさすがのミッテルトも眉を顰めた。
全身を震わせながら部長は言う。
「『私』の?あなた、いつの間にイッセーの主になったのかしら?」
「主でなくても先輩ですわ。後輩を可愛がるのも先輩のつとめですわ」
「先輩……そう、そうくるわけね。……ここは私にとって聖域なの。ミッテルトやアーシアならともかく、他の者まで入れるわけにはいかないわ!ここは私とイッセーの部屋よ」
「いや、いつからこの部屋部長のになったんすか?部長の部屋、別にあるっすよね?」
ミッテルトが困惑の表情で尋ねる。俺の部屋、いつの間に部長と兼用になったんですか!?俺も初耳だよ!
「あらあら。リアスお嬢様は独占欲が強いですわね。……私に取られるのが怖いのかしら?」
「……あなたとは話し合う必要があるようね」
「いや、イッセーって一応うちの彼氏っすよ?なんでうちそっちのけで話し進めてるんすか?」
部長のオーラが膨れ上がる。朱乃さんも雷のオーラを纏い始めた。
二人のオーラが火花となってぶつかりあい、バチバチと音をたてる。
……っていやいや、朝から何してるんですかお二方!?
原因は俺ですか!?俺にあるんですか!?
うれしい反面、シンプルに怖い!普段優しげだからこそ、ギャップがあって縮こまっちまう!
つーか、アーシア起きようよ!よくこの状況で眠れるな!起こすか!?
「うにゅぅ。むにゃむにゃ……もう朝ですかぁ?」
「いや、何でもないよ。アーシアはまだ眠ってていいからな」
駄目だ可愛い!可愛すぎて起こせねぇ!まじで癒しだぜ!
ぼふっ! ぼふっ!
音がする方へ振り向けば、二人のお姉さまが枕投げて合戦が始まっている!
いや、本当に朝から何してるんですか!?見ると二人とも少し涙目だし。
「だいたい、朱乃は私の大事なものに触れようとするから嫌なのよ!」
「いや、だから、イッセーはどちらかというとうちのなんすよ?」
「ちょっとぐらい良いじゃない!リアスは本当にケチだわ!」
「聞いてるっすか?お二方?」
「この家だって、改築したばかりなのに、朱乃の好き勝手にはさせないんだから!」
「サーゼクス様だって仲良く暮らしなさいとおっしゃってたじゃない!」
「お兄様も朱乃も私の邪魔ばかりするんだもの!もういや!」
「サーゼクス様のご意向を無視する気なの!?魔王様よりイッセー君なのね!私にもイッセー君を貸しなさいよ!」
「いや、だから何度も言ってるっすけど、イッセーはうちの……」
「絶対に嫌よ!」
「・・・・・・・・」
ミッテルトも呆れたのか、何も言わずに枕投げ合戦を眺めている。二人ともいつものお姉さま口調が無くなって、年頃の女の子みたいなケンカになってますよ!?
うーん。
こうしてみると、二人とも普段はお姉さまとして高貴な雰囲気を出してるけど、素は年頃の女の子なんだな。高貴な二人もいいけれど、普通の女の子って感じの二人も可愛くていいな。
「……ん?」
ちょっと待て。俺は部長達の口ゲンカの内容を思い出し、一つの疑問を感じた。
家を改築したばかり……?
そういえば、ベッドがやたらと大きい……。ベッドの上で普通に枕投げが行われてるくらいだしな。
今、俺を含めて5人がいるけど、まだまだ余裕がある。上を見上げると……天蓋まで着いてる!?
あれれ?部屋もかなり広くなってるぞ!?
以前の何倍だこれ!?テレビも最新の薄型に変わってるし、ゲーム機も最新のものに!?
「お、おい……これって?」
「あれ?イッセー気付いてなかったんすか?」
ミッテルトの言葉に俺は急いで部屋を出た!そして絶句してしまった!
家の中が昨日とは別物だ!廊下も倍くらいの幅になってる!
ここどこ!?
階段を駆け下りながら、俺は昨日のことを思い出す。
えーと、昨日は小猫ちゃんや朱乃さんといったオカ研女子部員が正式に引っ越してきたんだ。
それで、やっぱり家が狭いから改築するとか言ってたのを覚えている。
……まさか、俺が寝てる間に?
え?この俺が気づけなかったなんてことある?
玄関を飛び出て、外から家の全容を見た。
「こ、これは……!」
俺の家は倍以上敷地に加えて、六階建てになっていた。
「なんじゃこりゃぁああああああああっ!?」
匠もびっくりのリフォームぶりに俺は驚きを隠せず、絶叫してしまった。
*********************
「いやー、悪魔の力って凄いんだな。寝てる間にリフォームされるとは」
「本当ね。私も気づかなくてびっくりしちゃった」
朝食の席。以前の五倍は広くなった食卓で、父さんが満面の笑みを浮かべながらそう言う。
食卓の席には俺、俺の両親、ミッテルト、黒歌、セラ、部長、アーシア、朱乃さん、ゼノヴィア、小猫ちゃん、と新しい家族たちが全員集合していた。
俺も父さんに同意するよ。悪魔の力って凄いんだな……。
「というか、マジで気付いてなかったんすか?」
「お恥ずかしながら……」
どうもミッテルトは気付いてたみたいだな。
俺がぐっすり寝てる間に悪魔の業者が来たのを察知して、ミッテルトは出迎えと監視をしていたのだそうだ。
それなのに全く気付かずに寝てるとか……俺ってかなり疲れてるのかもしれない。そう言えば、最近イベントが目白押しだったからなあ……。
「というか、ただのゲームのやりすぎっすよね。それもエ……」
「そう言えば!お隣さんたちは?家がなくなってたけど?」
「露骨に話題反らしたっすね。まあ、いいっすけど……。お隣さんたちは引っ越したみたいっすよ。部長たちが好条件の土地を用意したみたいっす」
「平和的解決だったわ。みんな、幸せになれたのよ」
まあ、部長がそう言うのならそうなんだろう。それにしても、俺が寝てる間にここまで進んでいたとは、グレモリー家恐るべし!
一息つくと、部長は改めて父さんに頭を下げる。
「お父様、お母様。改築の受け入れだけでなく、部員の皆を受け入れて下さり、本当にありがとうございます」
その言葉に父さんも母さんもうれしそうに笑う。
「いいのよ、リアスちゃん。私達も家庭が賑やかになって嬉しいもの。部員の皆さんも私達のことを本当の家族だと思って接してくださいね?」
母さんの言葉に部員全員が頷いた。
本当におおらかというか、器のでかい人たちだよな。なんだか少し誇らしい感じがするな。
食事が終わると母さんはどこからともなく何かの図面を持ってくる。それは部屋の割り振りらしきものだった。
「一階は客間とリビング、キッチン、和室。二階はイッセーにミッテルトちゃん、リアスちゃんとアーシアちゃんの部屋よ。ミッテルトちゃんの希望で二人は相部屋。お隣同士で部屋内の行き来もできるのよ」
母さんの言葉に俺は思わずミッテルトのほうへと視線を向ける。
すると、ミッテルトは少し照れ臭そうにそっぽを向いた。
「き、聞いてないわよミッテルト。貴女、だからさっき何処か余裕ぶってたのね?」
「いや、そういうわけじゃないんすけど……これくらいいいじゃないすか。うちはイッセーの彼女なんだし……」
赤くなりながらそう言うミッテルトに思わず萌えてしまった!
こういういじらしいところがマジで可愛いんだよなコイツ!
「三階は私と父さんの部屋。後、書斎に物置ね」
「クローゼットとか、前の家の家具はそこにおいてあるっすよ」
「やけにクローゼットにこだわるわね。そんなに気に入ってるの?」
よかった!部長は怪訝そうな顔してるけど、あれがないと今後がマジでやばいからな!
神祖は当然として、“始原”級の龍であるオーフィスが率いているという禍の団だって、十分脅威に思える存在だ。
孤立無援の中、神祖や禍の団と俺たちだけで戦えとか、流石にムリゲー過ぎるにもほどがあるからな。
その後も部屋割りの説明が続いた。
朱乃さん、ゼノヴィア、小猫ちゃんが四階。黒歌とセラ相部屋で五階。これは万が一、セラが暴走した時のことを考慮してのことだ。
「大丈夫?黒歌お姉ちゃん?白音お姉ちゃんと一緒のほうが……」
「大丈夫にゃん。どっちみち同じ家だし、セラだって私にとっても大事な存在なんだから」
そういいながら、黒歌はセラの頭をなでる。
基本的に二人はずっと家にいることが多いし、一緒にゲームをやる姿なんかもよく見かける。多分、黒歌にとっても妹分みたいな存在になってるのかもな。
それを見て少しだけむくれている小猫ちゃんが何ともかわいい。
「屋上には空中庭園もあるんだって。父さんも野菜作ってみようかな?」
「地下一階は広いスペースのお部屋。トレーニングルームとしても活用できる、映画鑑賞会もできます。地下二階は丸々室内プールです地下三階は書庫と倉庫よ」
マジで豪邸だな。なんやかんやで魔国幹部勢よりも豪華かもしれない。まあ、あの人たちは物欲がないから、必要最低限なものしか置いてなかったからな……。
こうして、俺の夏休み一日目はわが家の豪邸化から始まったのだった。
*********************
「冥界に帰る?」
朝食を終えて部屋でまったりしていた俺に部長はうなずいた。
ちなみに今までの数倍にまで大きくなった俺の部屋には木場やギャスパーも来ているので、オカ研のメンバー全員が集まっている状況だ。
同居メンバーは皆ラフな格好をしており、木場、ギャスパーも私服姿だ。まあ、ギャスパーはいつも通り、女装に紙袋というちょっとアレな姿だけど。
「ええ、そうなの。毎年、夏には冥界に帰っているのよ」
なるほど。帰省か。
部長がいないとなると、オカルト研究部の活動も休止だろうな。
今年の夏休みはどうしようか。今のところ何の予定も入ってないんだよな……。
あ、そういえば……。
「なあ、ミッテルト。松田と元浜に海に誘われてるんだけどさ、お前も一緒に行く?」
「海すか。いいっすね」
というか、二人に念押しで連れて来いって言われてるんだよな。
「悪いけど、イッセーにはついてきてもらうわ。冥界に帰るときは眷属の皆にはついてきてもらうことになっているのよ。人間とはいえ、眷属候補であるイッセーにもいく権利はあるの」
「あれ?どれくらいの期間なんですか?」
「八月の二十までよ」
あ、マジですか……。
と、なるとあいつらと遊ぶのはかなりギリギリになるか。とりあえず、海行きの誘いは断らないといけないな……。
後でメールでも送っとくか。
もっとも、あいつらと海行くよりもオカルト研究部の美女美少女たちに囲まれながらの冥界旅行のほうが俺的には嬉しいし、まあいいか。
それに、冥界に行くのならば、ミッテルトとともに行くべきところがある。絶対に行かなければならない場所が……。
そう考えると、少しドキドキしてきたな。
ミッテルトも正確な場所を覚えてるかどうかわからないし、とりあえず聞いておくか。
「アザゼル先生。あとで教えてほしいところがあるんですけどいいですか?」
「ああ、別にいいぜ」
「「「えっ?」」」
俺の一言に全員が振り向く。
ん?何驚いてるんだ?
……ああ、気配を断ちながら入ってきたからみんな気付いていなかったのか。
「ど、どこから、入ってきたの?」
部長が目をパチクリさせながらアザゼル先生に訊く
「うん? 普通に玄関からだが?」
「……気配すら感じませんでした」
木場がそう言葉を漏らす。
まぁでも、アザゼル先生が気配を消したら、今の木場達じゃあ気配を捉えるのは難しいか。
「そりゃ修行不足だ。俺は普通に来ただけだからな」
ここでインターホンが鳴り響く。どうやらもう一人の来訪者が来たようだな。
「失礼します……もう来てたのですね。アザゼル様」
「遅いぞレイナーレ」
「……ここでは夕麻とお呼びください」
やってきたのはレイナーレ改め夕麻ちゃんだった。
彼女は現在、アザゼルさんの補佐役として駒王学園に通っている。
中級堕天使の彼女がなぜそんな大役を任されてるかというと、アザゼルさん曰く、贖罪としてこの街に来たいという願いを補佐役という役割を与えることでかなえてやったらしい。
動機もそうだが、操られていたころに比べてかなり固い。本当はまじめな性格なんだろうな。
「何かお飲み物をお持ちしましょうか?」
「いやさ、ちょっと固すぎない?使用人じゃないんだし、もう少し柔軟になったほうがいいぜ。操られてたのは仕方ないんだしさ……」
「ですが……私にはこれくらいしか償いが……」
「俺もアーシアも気にしてないって言っただろう。俺はお前に、もう少し素を出してほしいんだよ」
「うちもっすよ。というか、謝るといえばうちも同じなんすから。あの時、あんなこと言ってマジでごめんっす」
どうやらミッテルトは初対面に暴言はいたことを気にしてるようだ。それを察したのか、夕麻ちゃんはクスリと笑った。
「わかったわ。改めてよろしくね」
「うん。やっぱりそのほうがいいよ」
「……話は終わったようだな。じゃあ、本題に入ろう。冥界に帰るんだってな。なら俺も行くぜ。なにせ、俺はお前らの“先生”だからな」
アザゼル先生はそう言うと、懐から手帳を取り出してパラパラとページを捲っていく。
「冥界でのスケジュールは……リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。例の若手悪魔達の会合、それとあっちでお前らの修業だ。俺は主に修業に付き合う訳だがな。お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクス達と会合か。ったく、面倒くさいもんだ」
そう言いながら嘆息する先生を見るに、本気で面倒くさそうだな。
まあ、お堅い会議とかって疲れるし、無理もないか。
「ではアザゼル……先生はあちらまで同行するのね?行きの予約をこちらでしておいていいのかしら?」
「ああ、よろしく頼む。悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。楽しみだぜ。いつもは堕天使側のルートだからな」
冥界かー。使い魔の森に入ったことあるけど、町とかに入ったことないんだよな。
悪魔の領土と堕天使の領土で別れてると聞くけど、今は和解して交流も始まっている。
特に堕天使領には前々から行かないといけないと考えてたし、それも踏まえて楽しみだな。
そう考えながら、俺は元浜と松田にメールを打つのだった。
お待たせしました。
ぼちぼち再開したいと思います。
あと、実は当作品に関しましてちょっとしたアイデア募集をしています。
詳しくは活動報告に詳細がありますので、よろしければ是非アイデアお願いします。