帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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若手悪魔の会合です

イッセーside

 

 

 

 

「さあ、遠慮なく楽しんでくれたまえ!」

 

夕食の席。俺たちの目の前には絶対に食いきれないであろく豪華な食事が立ち並ぶ。

どれもこれも美味しいんだけど、やっぱり量が多すぎるだろ!?

それだけじゃない。テーブルに椅子、シャンデリアまでもどれもこれもが一級品だ。

案内された部屋も馬鹿みたいにでかかったしな。

魔国の幹部勢の家よりも大きいだろう。

……というか、あの人たちは物欲がないから基本的に必需品以外あまりないし、あまり比較にならんか。

何しろ一部屋だけで、向こうの俺の持ち家と同じくらいあるんだもん。

何しろ広すぎて落ち着かないという理由で、アーシアとゼノヴィアが俺達の部屋に引っ越してきたぐらいだもん。

そんなアーシアとゼノヴィアは食事にかなり苦戦してる様子。

俺は向こうだと会食の機会もわりとあったからテーブルマナーはバッチリだが、特にゼノヴィアは戦いに明け暮れてた影響からかアーシア以上に苦戦してるように見える。

 

「うむ。リアスの眷属諸君、ここを我が家だと思ってくれると良い。もちろん、ミッテルトさんもだ。冥界に来たばかりで勝手が分からないだろう。欲しいものがあったら、遠慮なく言ってくれたまえ」

 

朗らかに言うジオティクスさん。これ以上欲しいものなんてないかな。

いや、待てよ……頼んだらメイドのお姉さんもくれるのかな!?

……なんてな。それは流石にダメだ。彼女持ちとして一番やってはいけないことだしな。

 

「ところで兵藤一誠君」

 

ジオティクスさんが俺に顔を向ける。

 

「あ、はい」

 

「ご両親はお変わりないかな?」

 

「いやー、二人とも元気ですよ。冥界に行くって言ったら、二人とも行きたがっていましたからね。残念ながら仕事の都合で来ることは出来ませんでしたけど……。その代わり、お土産を期待するなんて言ってましたね。リフォームしてもらったうえそれって少し図々しい気もしますけど……」

 

笑いながら冗談交じりで言うと、何やらジオティクスさんは考え込んでしまった。

しばらくして手元の鈴を鳴らすとすぐに執事のおじいさんがやってきた。

 

「旦那さま。御用でしょうか?」

 

「うむ。兵藤一誠君のご両親宛てに城を用意しろ」

 

ぶっ!?びっくりした!城!?雰囲気からして冗談じゃねえぞこれ!?

 

「ちょっと待ってくださいよ!さすがに城はいいですよ!普通にココの特産品とかでも……」

 

「そんなものでいいのかい?」

 

「はい!そもそも、城をもらっても置き場所ありませんし、父さん母さんもそっちのほうが喜ぶかと!」

 

なるほどと納得したのかジオティクスさんは深くうなずいた。

流石に城なんてもらったらニュースになりかねん!この人、かなり天然……というか、人間の常識に疎いのかもしれないな。

これは慎重に言葉を選ばなくては……。

 

「兵藤一誠くん」

 

「はい?」

 

ジオティクスさんはまじめな表情になって、俺のほうを見つめる。

 

「君は、今もリアスの眷属になるつもりはあるかい?」

 

誤魔化しは許さないといった雰囲気だな。じゃあ、俺も真摯に答えるか。

 

「はい。正直に言いますと、まだまだ部長が俺を眷属にするだけの力がないので今は眷属候補という形です。でも、仮にずっとそのような形であったとしても、俺は部長を支えていくつもりです」

 

「……君の力はすでに魔王をも上回るほどに強大だ。正直な話、私はリアスが君を正式な眷属悪魔にするほどの力を得る前に、君自身が寿命で死ぬ可能性もあると思ってる。そうなったとしても、支えてくれるかい?」

 

「もちろんです。部長は俺の大切な仲間で、友達ですから」

 

これは嘘偽りない本音だ。

まあ、“聖人”ならば寿命で死ぬこともないしな。

その言葉を聞いて、ジオティクスさんは笑みを浮かべた。

 

「君の気持ちはよくわかった。これからも、娘をよろしく頼む」

 

「はい」

 

正直な話、俺はさっきジオティクスさんが言ってたように、部長の強さが俺を上回るほどの力を得るにはかなり時間がかかると思う。

でも、聖人となり、寿命のない俺ならば十分待てる年月だろう。

 

「ところで一誠君。今日から私のこと、お義父さんと呼んでも構わないよ」

 

「へ?」

 

急に雰囲気変わったな!しかもお父さん?どういうことだ?

 

「あなた。性急ですわ。物事には順序があります。一誠さんはしばらく冥界に滞在するのでしょう?」

 

「はい。ただ、どうしても行きたい場所があるので一度だけ堕天使領へ行く予定です」

 

「……なるほど。あなたの正室はそこの堕天使のお嬢ちゃんでしたわね。いえ、リアスが頑張ればこれから変わることも十分あり得るのかしら?

 

「「正室?」」

 

「失礼。なんでもありませんわ。しかし、いい機会です。幸い、貴方はマナーはばっちりの様ですし、それ以外の……この世界の情勢などについても勉強してもらいます」

 

え?俺は別に構わないけど、なんで俺だけ?

すると、バンとテーブルをたたく音がした。見ると部長が立ち上がっている。

 

「お父様!お母さま!先ほどから黙って聞いてれば、私を置いて話を進めるとはどういうことですか!?」

 

「お黙りなさい。貴女は一度、ライザーとの婚約を解消してるのよ?それを私たちが許し、なおかつ()()()()()()()()()という貴女のお願いをも許しました。これは普通ならばあり得ないほどの破格の待遇なのだということが、わからないわけではないでしょう?」

 

迎え入れたい?なんのこっちゃ?見るとミッテルトは何かを察した様子で頭を抱えてる。

はて?何の話なんだ?

 

「三大勢力の和平により、貴女の立場は他勢力の下々にも知られたでしょう。もはや、勝手な振る舞いはできない立ち位置にたってるのです。二度目のわがままはありません。甘えた考えも大概にしなさい」

 

納得はできてないようだが、理屈は分かってるのだろう。

悔しそうにしながらも、ヴェネラナさんの言葉に部長は椅子に腰を下ろした。

 

「お見苦しいところをお見せしてしまいました。話を戻しますが、一誠さんはここで少しお勉強をしてもらいます。上級悪魔、貴族の世界に触れて貰わないと行けませんからね」

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

「つまり、上級悪魔にとって社交界とは──―」

 

次の日。俺は朝から悪魔社会、貴族が何たるかについて勉強させられていた。

部長のご両親が用意してくれた俺専用の教育係主導のもと、学んでいるんだが……何で俺だけ?

まぁ、冥界について知らないことだらけだし、いい機会なんだけどね。

前々からそういうのも学ばないとと思ってたわけだし、教え方も上手いから結構ためになる。

教育係の人も人間だからと差別せず、俺の質問に快く答えてくれるし。

隣の席にはミリキャス君もいて、一緒に勉強している。小さいのに真面目に授業を受けてるな。勤勉だね。

俺の受け持ってたクラスの奴らとは大違いだ。あいつら言えばちゃんと勉強するけど、基本的には課外授業や迷宮攻略のほうがやる気だしてたしな。

ちなみに他のメンバーはグレモリー領の観光に行ってる。

くそ!俺だって行きたかったよ!

 

「若様、悪魔の文字はご存じでしょうか?」

 

「まぁ、少しなら。リアス様が教えてくれたので」

 

「なるほど。では、現状を確認しながら学んでいきましょう」

 

こんな風に丁寧に教えてくれるのはありがたい。けど、一つ気になることがある。思いきって聞いてみるか。

 

「……あの、その前に一つ質問が」

 

「なんでしょう?」

 

「その『若様』ってのはいったい・・・・・?」

 

昨夜からグレモリーのメイドさんや執事さん、それにこの教育係の人まで俺のことを『若様』って呼ぶんだ。

一体どういうことなんだ?

 

「……さあ、さっそく書き取りの練習をしてみましょう」

 

あ、はぐらかされた。気になるな。

そもそも教育を受けるのが俺だけというのもかなり謎だ。

木場たちはともかく、悪魔社会の勉強なら同じ新人悪魔のアーシアとゼノヴィアも受ける必要があるんじゃないのか……?

ダメだ!わからん!

 

ガチャ。

 

ドアが開き、入ってきたのはヴェネラナさんだった。やっぱ綺麗だな。

 

「おばあさま!」

 

あー、そっか。ミリキャス君にとってはヴェネラナさんは祖母に当たるのか。

外見的には姉弟に見えるから少し困惑するけど……。

エルメシアさんとシルビアさんもだけど、長命種ってこういうところが面白いよな。

 

「二人ともお勉強ははかどっているかしら?」

 

やさしい笑みを浮かべながらそう聞いてくる。

そして、ノートに書かれた俺の拙い悪魔文字を見、微笑んだ。

 

「サーゼクス達の報告通りね。何事も一生懸命だわ。確かに文字は上手とは言えませんが、懸命に覚えようとする姿勢が見てとれます」

 

そう言うと、ヴェネラナさんはメイドさんを招き、お茶を入れてくれた。

 

「もうすぐリアス様が帰ってきます。今日は若手悪魔の交流会の日ですから」

 

そういえば、今日だったな。

部長と同世代の若手悪魔が一堂に会するらしい。

皆正式なレーティングゲームデビュー前の悪魔たち。

名門、旧家といった由緒ある貴族の跡取りがお偉いさんのもとに集まって挨拶をすると聞いている。

グレモリーの部長やシトリーの会長だけでなく、眷属の俺達も参加しなければならないのだそうだ。

冥界に来てから色々忙しいな……。でも、堕天使領に行く時間は確保できたし、スケジュール通りなんだから問題はないか。

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

部長達が観光ツアーから帰ってきてから直ぐに俺達は列車で魔王領へと移動した。

何度か転移魔方陣を通過し、列車に揺られること三時間。

到着したのは近代的な都市部だった。

自販機もあるし、人間界のものとは多少デザインが違うけど、建物も最先端の様相を見せていた。

グレモリー領を見ると、中世的なイメージが強かったけど、こういう場所もあるんだな。

 

「ここは魔王領の都市ルシファード。旧魔王ルシファー様がおられたと言われる冥界の旧首都なんだ」

 

と、木場が説明してくれる。

旧魔王ルシファーってことはヴァーリの家族がここにいたってことか……。どんな人だったんだろうな……。

 

「このまま地下鉄に乗り換えるよ。表から行くと騒ぎになるからね」

 

木場がそう言う。へぇ、地下鉄もあるのか。何て言うか、人間界と変わらないんだな。

まあ、人間と悪魔は密接な関係にあるというし、お互いに向こうの文化を取り入れた結果なのかもしれないな。

 

「きゃ────!!リアス姫様ぁぁぁぁ!!!」

 

突然の黄色い歓声が聞こえてきた。

歓声が聞こえた方を見るとホームにはたくさんの悪魔の人達。

全員が俺達……いや、部長を憧れの眼差しで見ている。

なんかアイドルがファンに浴びせられる声援みたいだな。

やっぱりお姫様だけあって部長は人気者なんだな。

 

「リアスは魔王の妹。しかも美しいものですから、下級、中級悪魔から憧れの的なのです」

 

朱乃さんが説明してくれた。

人間界でもお嬢様として人気だったし、やっぱり、部長はどこでも人気者なんだな。

 

「ヒィィィィ。悪魔がいっぱい……」

 

ギャスパーは俺の背に隠れてる。引きこもりには厳しいかな?

 

「困ったわね。急いで地下に行きましょう。専用の電車も用意してあるのよね?」

 

「はい、ついて来てください」

 

部長は付き添いの黒服男性に訪ねる。

この人達はどうやら俺達のボディーガードらしい。

流石お姫様。見たところ、それなりの実力はあるみたいだな……。

一人一人がB+ランクはあるな……。

こうして、俺達はボディーガードさんの後に続いて、地下鉄の列車へと移動した。

 

「リアスさまぁぁぁ!!」

 

本当に人気だな。部長は苦笑しながらもファンの皆に手を振っていた。

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

地下鉄に乗り換えてからさらに揺れること数分後。俺達は都市で一番大きい建物の地下にあるホールに到着した。

ボディーガードの人達はエレベーター前までしか随行できないらしく、ここで別れることになった。

 

「うちもここまでっすね。うちは候補でも何でもない一堕天使っすから」

 

「え!?マジで!?」

 

「後のパーティーとかには参加できるし、取りあえずは町の観光でもしてるっすよ」

 

それでもわりと残念だな。まあ、後で会えるし別にいいか。

 

「皆、何が起こっても平常心を保ってちょうだい。これから会うのは将来の私達のライバルよ。無様な姿は見せられないわ」

 

部長はいつも以上に気合いが入ってるな。声音も臨戦態勢の時のそれだ。

隣を見るとアーシアが生唾を飲んで落ち着こうとしていた。

緊張しているのかな?

 

「リラックスっすよ!アーシアちゃん」

 

「はい!ありがとうございます」

 

「こんなのお祭りみたいなもんなんすから、気楽にしたほうがいいっすよ」

 

ミッテルトの言葉で少しは緊張が和らいだかな?

そんなことを考えながら、俺たちはミッテルトと別れつつエレベーターに乗り込む。

暫くすると、エレベーターが停まり、扉が開く。

外に出ると、そこは広いホールだった。

エレベーターの前には使用人らしき人がいて、俺達に会釈してきた。

 

「ようこそ、グレモリー様。こちらへどうぞ」

 

使用人の後に続く俺達。すると、通路の先の一角に複数の人影が見える。

 

「サイラオーグ!」

 

部長がその内の一人に声をかけた。あちらも部長を確認すると近づいてくる。

俺達と歳もそう変わらないか。黒髪の短髪で野性的なイケメンだ。瞳は紫色。

だが、何より眼を引くのは鍛え上げられた肉体だ。その体はプロレスラーのような良い体格をしている。

しかも、この人の魔力は今まで見てきたこの世界の強者と比べると低い。大体小猫ちゃんと同じくらいかな?

それにもかかわらず、この人のEPは30万を超えている。

ここで注視すべき点はEPは魔力、身体能力の統合値であると言う点だ。つまり、ほぼ身体能力だけでこれだけの数値を記録しているってことか。

凄いな!

 

「久しぶりだな、リアス」

 

男性は部長とにこやかに握手を交わす。

 

「ええ、懐かしいわ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟よ」

 

へぇ、従兄弟なのか。

そういえば、何処となくサーゼクスさんに似ているような気がしなくもない。

 

「サイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

バアルってことは魔王の次に偉い『大王』だ。

ということはヴェネラナさんはバアル家の出身だったのか。

グレモリーは大王と魔王。なかなか凄い家系なんだな。

すると、サイラオーグさんの視線が俺に移ったので自己紹介をする。

 

「はじめまして。リアス様の眷属候補の兵藤一誠です」

 

「なるほど、貴殿が歴代最強の赤龍帝か。話には聞いている。よろしく頼むよ」

 

「ええ、こちらこそ」

 

俺とサイラオーグさんはガッチリと握手をした。それだけでどれだけ鍛え上げられてるのかがわかる。

恐らく身体能力だけならばヴァーリをも上回ってるな。部長と同世代にこんな人がいるとは少し驚いたね。

すると、部長がサイラオーグさんに尋ねた。

 

「それで、貴方ははこんな通路で何をしていたの?」

 

「ああ、くだらんから出てきただけだ」

 

「……くだらない? 他のメンバーも来ているの?」

 

「アガレスとアスタロトもすでに来ている。あげく、ゼファードルだ。着いて早々やり合い初めてな」

 

なるほど。なんとなく理解した。部屋から感じられる気配を察するに……。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

通路の奥から巨大な破砕音が聞こえてきた。

やっぱり若手同士の喧嘩が勃発したってことか。

サイラオーグさんは嘆息しながら破眷属とともに砕音が聞こえた部屋に入り、俺達もそれに続く。

部屋の中は破壊し尽くされており、テーブルも椅子も全てが原型を留めてない。

部屋の中央には会場をそうしたと思われる人物が二人。

それに二人の後ろにはそれぞれの陣営に別れた悪魔達が強いオーラを発しながらにらみ合いをしていた。

一方はいかにもな雰囲気の邪悪そうな魔物と悪魔の集団。もう一方は部長や会長に近い、普通そうな悪魔たちだ。

武器も取り出していて、一触即発の様相だ。

 

「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても仕方なくては?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら?」

 

片方は眼鏡美女の悪魔。肌の露出が少ないのが残念だ。

 

「ハッ!言ってろよ、クソアマッ!俺がせっかくそっちの個室で女にしてやろうって言うのによ!アガレスのお姉さんはガードが堅くて嫌だね!そんなんだから未だに処女やってんだろう!?だからこそ俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」

 

顔に魔術的なタトゥーを入れたヤンキーみたいな男性が言い争っている。

悪魔でヤンキーってのはヴェノムを思い出す。まあ、あいつは同じヤンキーでもあんなこと言わないか……。

うん。比べるのも失礼だな。ヴェノムが可哀想になる。

取りあえず、悪いのはアッチってことは理解したわ。

 

「…………」

 

だが、俺はぶっちゃけアッチのほうが気になるな。

部屋の端には優雅にお茶をしている少年悪魔とその後ろには眷属悪魔がいる。

一見優しそうな雰囲気だけど……なんだろう?嫌な感じがする。

しかも、さっきから値踏みでもするような粘着く視線でアーシアを見てるし……。不気味なやつだな。

ああいうタイプは何か企んでる。何かまではわからないけど警戒はしといたほうがよさそうだ。

 

「ここは時間が来るまで待機する場。もっというなら、若手悪魔が軽く挨拶をする場だったんだが、血気盛んな連中を一緒にしたとたんこの様だ。それをよしとする旧家や上級の古き悪魔たちはどうしようもない」

 

サイラオーグさんが俺の隣に立ち、説明してくれた。

こんなのが日常的に起きたらガチで死者が出るぞ?古い悪魔とやらは何を考えているんだろう?

さすがに“七曜の老師”みたいな自分本位の人たちではないと思うけど、長命種だと思考ががちがちに固まるから言い切れないんだよな。

まあ、とりあえずはあの二人のケンカは止めることが先決だな。

ここは俺がいくか。

俺が仲裁に入ろうとすると、それを察したのかサイラオーグさんに肩を掴まれた。

 

「ここは俺がいこう」

 

首をコキコキ鳴らしながら、サイラオーグさんは喧嘩する二チームに歩み寄る。そこから発せられる覇気は尋常じゃない。

 

「アガレス家の姫シーグヴァイラ、グラシャラボラス家の凶児ゼファードル。これ以上やるなら、俺が相手をする。これは最後通告だ。次の言動次第で俺は拳を放つ」

 

その一言に、プライドを傷つけられたのか、ヤンキー悪魔は怒りの声を出す。

 

「しゃしゃりでるな!バアル家の無能が!」

 

そう言いながらヤンキーはサイラオーグさんに攻撃しようとする。

 

ドゴンッ!

 

激しい打撃音と共にヤンキーは広間の壁に叩きつけられた。

まぁ、当然の結果か……。あのヤンキー、せいぜいがギリAランクってとこだし……。

というか、彼我の差すら把握できないようじゃ話にならない。あのヤンキー、本当にサイラオーグさんの強さに気付かなかったのか?だとしたら、相当あほだぞ。

 

「言ったはずだ。最後通告だと」

 

「おのれ!」

 

「バアル家め!」

 

迫力のあるサイラオーグさんの言葉にヤンキーの眷属悪魔が飛び出しそうになる。

 

「これから大事な行事が始まるんだ。まずは主を回復させろ」

 

『────ッ!』

 

その一言にヤンキーの眷属たちは動きを止めて、倒れる主の元へと駆け寄っていった。

次にサイラオーグさんはメガネ美女のほうに視線を送る。

 

「まだ時間はある。化粧し直してこい」

 

「わ、わかっています」

 

メガネの姉ちゃんもサイラオーグさんの覇気にあてられたのか、慌てて踵を返し、この場を後にした。

 

「あれが、若手悪魔のナンバー1“サイラオーグ・バアル”よ」

 

ぶっちゃけ驚いた。今まで若手だと、何となく部長が一番なのかな程度に思っていたが、こんな悪魔がいたのか。

あれはゼギオンさんなんかと同じ、己の肉体を極限まで鍛えたタイプ。技量(レベル)もヴァ―リと同等かそれ以上と見た。とんでもない人と同世代なんだな。

 

「あ、兵藤……って、何だこりゃ!?」

 

「あ、匙に会長」

 

「ごきげんよう、リアス、兵藤君」

 

匙とソーナ会長たちも到着したっぽいな。

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

 

現在、ヤンキーを抜いた若手悪魔が修復された広間で顔合わせをしている。わずか数分で戻るあたり、悪魔の技術もなかなかすごいよな。

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公アガレス家の次期当主です。先程はお見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

 

先程のメガネのお姉さん、シーグヴァイラさんがあいさつをくれた。

アガレス家となると、大公の家系だったな。この人が大公の次期当主なのか。

俺は大公と聞くとモスが真っ先に思い浮かぶけど、この世界の大公は魔王の代わりに俺達に命を下すのが仕事らしい。

 

「ごきげんよう。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

 

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ」

 

主達があいさつをし、席に着く。俺達、眷属悪魔は主の後ろで待機している感じだ。どこも同じ。

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

 

アスタロト。確か、現魔王の一人を輩出した名家。でもなんだろう?少し胡散臭い感じがする。

さっきの粘着く視線も気になるし、警戒しといたほうがよさそうだ。

ちなみにさっきのヤンキーは現魔王の一人を輩出したグラシャラボラス家の次期当主らしい。

あんなのが次期当主で良いのか?言っちゃあ悪いが、あれ程わかりやすい覇気を感じ取れない時点でダメだと思うんだけど……。

 

「グラシャラボラス家は先日、お家騒動があってな。次期当主とされていた者が不慮の事故で亡くなったそうだ。先程のゼファードルは新たな次期当主候補となる」

 

サイラオーグさんが説明してくれた。

マジか。グラシャラボラス家は今、大変なことになっているんだな。

それでもあんなのを次期当主候補に選ぶほどなのか?あの家は真面目な方が多いと聞いたことがあるし、他にもよさげな候補がいると思うんだが……。

まあ、考えても仕方がないか。

それにしても、すごい面子が揃ったな。

グレモリーがルシファー、シトリーがレヴィアタン、アスタロトがベルゼブブ、グラシャラボラスがアスモデウス、そして大王と大公。

なるほど。悪魔の将来を背負うにふさわしい家柄がそろってると言えよう。

 

「兵藤。おまえ、緊張してないのか?」

 

匙が聞いてきた。

 

「いや、全く。そういうお前は緊張しすぎじゃね?」

 

「そ、そんなわけねえだろ」

 

見た感じは平静を装ってるが、よくよく見ると少し震えてる。これは相当緊張してるな。

まあ、仕方ない。なにせ、目の前にいるのは王族貴族ばかりだ。こういう場にある程度慣れてなければ緊張するだろう。

 

「さすがは先輩自慢の赤龍帝だな。……俺も会長の自慢になってみたいさ」

 

ん?どうした匙の奴?ここで扉が開かれ、使用人が入ってきた。

 

「皆様、大変長らくお待ちいただきました。皆様がお待ちです」

 

どうやら行事の準備が整ったようだ。

ついに、行事は始まりだな。俺は先を歩く部長に続き、扉をくぐるのだった。




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