イッセーside
俺たちが案内されたところは異様な雰囲気の会場だった。
俺たちが立っている場所よりもさらに高いところに席がいくつも並んでおり、そこには上級悪魔と思われる初老の男性が座っており、その上にもさらに偉そうな老人が座っている。
もう一つ上の段にある一番上の席にはサーゼクスさん、セラフォルーさんがいる。セラフォルーさんは今日は魔王少女姿じゃないようだな。
そして、目を引くのはその隣に座る二人の魔王。特に、サーゼクスさんの隣に座る魔王はすさまじい強さだ。
存在値にして約300万前後といったところか。サーゼクスさんと比べても甲乙つけがたい。
恐らく、あの人がサーゼクスさんに並び、超越者とされている“アジュカ・ベルゼブブ”なのだろう。
……と、なるとあのアクビしてる人がアスモデウスさんか。
そうして観察していると、お偉いさんと目が合う。すると、舌打ちをされた。
気付いてはいたけど、俺は歓迎されてないっぽいな。まあ、人間だし仕方ないか。
うん。仕方がないから他の眷属の女性を観察していよう。獣人娘に可愛い女の子もたくさんいる。後で仲良くなれないかな?
すると、部長たち若手六人が一歩前へ出る。あのヤンキーも復活してるのか。
それを見たお偉いさんの一人が威圧的な声音で話し始めた。
「よくぞ集まってくれた、次世代を若き悪魔たちよ。この場を設けたのは一度、この顔合わせで互いの存在の確認、更には将来を競う者の存在を認知するためだ」
「まぁ、早速やってくれたようだがな」
老人風の悪魔がそう言った後、その隣の年老いた悪魔が皮肉を言う。
まぁ、これは言われても仕方がないね。
顔合わせした直後に広間を破壊とか、流石にどうかしてるし……。
少し重たい空気がはびこる中、サーゼクスさんが口を開く。
「君たち六名は家柄も実力も共に申し分ない次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前に互いに競い合い、力を高めてもらいたいと考えている」
要するに、ここにいる悪魔でレーティングゲームでもやれってことかな?アザゼル先生も合宿中にレーティングゲームをセッティングするとか言ってたし、たぶんそういうことなのだろう。
するとその時、サイラオーグさんが挙手をした。
「我々、若手悪魔もいずれは『
これまた直球な質問だな。すごいことを聞くもんだ。
「それはまだわからない。私達としては、できるだけ君たちを戦に巻き込みたくはないと思っているしね」
サーゼクスさんはそう答える。
だけど、サイラオーグさんはその答えに納得できないのか顔をしかめる。
「なぜです?若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担うもの。この年になるまで先人からご厚意を受けたからこそ、冥界のため、尽力を尽くしたいと────」
「サイラオーグ。君のその勇気は認めよう。しかし、無謀だ。なにより、君達ほどの有望な若手を失うのは冥界にとって大きな損失となるだろう。理解してほしい。君達は君達が思う以上に我々にとって宝なのだ。だからこそ、じっくりと段階を踏んで成長してほしいと思っている」
不満はありそうだが、この言葉にサイラオーグさんは「分かりました」と渋々ながら一応の納得はしたようだ。
実際に戦になればどうなるかはわからない。けど、子どもを投入したくない気持ちは俺もわかる。天魔大戦でも剣也たちが密かに戦おうとしてたけど、俺からすれば戦ってほしくない気持ちが大きかったしな。
と、ここで一人の悪魔老人が俺に侮蔑の視線をぶつけながら話し出す。
「まあ、幸いにもかの伝説の赤龍帝が我らに与するというのだ。禍の団が攻め入っても問題はないだろう」
うわあ……。まじかよ……。流石にイラっと来た。
純血悪魔を失うのは痛いからしたくない。だから人間である俺を利用しようって魂胆かよ。
サーゼクスさんたちも目を見開いてかなり怒ってる様子。
「それは禍の団との戦いでイッセーを戦わせるという意味ですか?」
「いや、そうはいっておらんよ。ただ、赤き龍が貴殿に入れ込んだことが悪魔の世界において幸運であると思っただけじゃよ」
なんて白々しい。だが、この程度ならばまだ我慢の許容範囲内だ。
貴族連中が面倒くさいなんて、ミョルマイルさんとリグルドさん見てたらいやというほどわかってる。
俺にはユウキやテスタロッサさんみたいにこういう人たちを丸め込む話術なんてないが、我慢くらいはできる。
「そこまでだよ。誤解を招くような発言はやめてもらおうか」
サーゼクスさんが怒気をはらんだ視線で先ほどの議員をいさめる。
それを察したのか、議員も面白くなさそうに黙り込む。
「すまないね一誠君」
「全然大丈夫ですよ。気にしてませんから」
「そう言ってもらえるとありがたい。眷属候補である君も、冥界にとって有望な存在だからね」
この人は俺のことも守るべき対象として見てるのだろう。本当にいい人だな。
その後、お偉いさん達の難しい話や魔王様からの今後のゲームについての話が続いた。
正直、悪魔関連について勉強途中の俺にとってはちんぷんかんぷんな話ばかりだった。レーティングゲーム関連も本当に基礎的なことしか知らねえからな。
特にお偉いさんの話はよく分からないことばかりだ。早く終わらないかな。まあ、終わったら終わったで勉強会があるんだけど。
「さて、長話に付き合わせてしまって申し訳なかった。なに、それだけ若い君達に夢を見ているのだよ。君たちは冥界の宝だからね」
サーゼクスさんの言葉にみんな聞き入っていた。それが本心なのだと感じ取れる。
流石は部長のお兄さん。魔王なだけあって、基本は優しいんだな。
「最後に君たちの目標を聞かせてくれないだろうか?」
サーゼクスさんの問いかけに最初に答えたのはサイラオーグさん。
「俺は魔王になることが夢です」
いきなり、言い切ったな!やっぱり凄いよ、この人!こんなに堂々と言い切るなんて!
でも、この人ならばなったとしても不思議ではない。それだけの資質とカリスマを併せ持っている。
お偉いさん達も今の目標に感嘆の声を漏らしている。
「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」
お偉いさんの一人がそう言う。
「俺が魔王になるに相応しいと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」
また言い切ったな!凄い自信だ!それがどれ程困難な道のりかわかってるだろうに、それでも言いきるあたり、尊敬できるな!
次に部長が答える。
「私はグレモリーの次期当主として生き、レーティングゲームの覇者となる。それが現在の、近い未来の目標ですわ」
部長の悪魔としての夢。初めて耳にしたけど、部長らしい答えだ。
一筋縄ではいかないだろうけど、眷属候補として、出きる限りは支えられるように頑張りたいな。
その後もアガレス、アスタロト、グラシャラボラスと若手の人が次々と目標を口にし、最後にソーナ会長の番が回ってきた。
「私の目標は冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」
へぇ、ソーナ会長は学校を建てたいのか。いい夢じゃないか。
と、俺は感心していたのだが、お偉いさんたちは眉をひそめていた。
「レーティングゲームを学ぶ学校ならば、すでにあるはずだが?」
「それは上級悪魔や特例の悪魔のための学校です。私が建てたいのは平民、下級悪魔、転生悪魔、全ての悪魔が平等に学ぶことのできる学校です」
おお!流石は会長だ!
差別のない学校。実現は難しいだろうが、もしも実現すれば、これからの冥界にとっていい場所になるだろう。
匙も誇らしげに会長の夢を聞き入っている。
しかし────
『ハハハハハハハハハハッ!!』
お偉いさん達はまるで可笑しなものを聞いたかのように笑う。
やっぱりか。まあ、予想はしてた反応だ。頭の固い老人どもめ……。
「それは無理だ!」
「傑作だ!」
「なるほど!夢見る乙女と言うわけですな!」
「若いというのは実に良い! しかし、シトリー家の次期当主よ、ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったというものだ」
匙は訳のわからなそうに狼狽えている。まあ、気持ちはわかる。
「ど、どういうことだよ……?」
「匙君。いまの冥界が変革の時であっても、上級や下級といった差別は存在する。それが当たり前だと思っている者も多いんだ」
狼狽える匙に対し、こちら側にいた木場が答える。
流石にないかなとも期待してたが、やはりこの人たちは“七曜の老師”と同じなんだ。
自分の地位を守ることに固執し、保身に走ってる。
故に、会長の夢は許容できないということだ。
「私は本気です」
会長が正面からそう言う。セラフォルーさんも誇らしげに頷いている。
だが、お偉いさんは冷徹な言葉を口にする。
「ソーナ・シトリー殿。そのような施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰すことになりますぞ?
いくら悪魔の世界が変革期に入っているとは言え、変えていいものと悪いものがある。たかだか下級悪魔に教えるなどと……」
その一言に黙っていられなくなったのは匙は叫び出す。
「なんで……なんで会長の……ソーナ様の夢をバカにするんですか!?こんなのおかしいっすよ!叶えられないなんて決まった訳じゃないじゃないですか!」
「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ・シトリー殿、躾がなっておりませんぞ」
夢を語れといったのはそっちだろう。オカシイのはあんたらの方だ。
「……申し訳ございません。後で言い聞かせます」
会長は表情を一切変えずに言うが、匙は納得出来ていない。
「会長!どうしてですか!?この人達は会長の、俺たちの夢をバカにしたんすよ!どうして黙ってるんですか!?」
「サジ、お黙りなさい。この場はそういう態度をとる場ではないのです」
匙のその叫びを聞いてお偉いさんはフンと鼻を鳴らす。
「全く、主も主なら下僕も下僕か……。聞けば、ソーナ殿は一度敵対勢力に洗脳されてたというじゃないか?本当に似た者主従ですな」
その言葉を聞いてもソーナ会長は黙っている。だが、内心穏やかではないだろう。
俺は見た。唇を僅かに、だが悔しそうに噛み締めている会長を。
これが悪魔の上層部。なるほど、とことん腐ってる連中だな……。
「匙。ここは抑えろよ」
「兵藤……でも!!」
「あの人たちは怖がりの臆病者なんだよ。そんな連中の言うことなんか、真に受けないほうがいいぜ」
その言葉にシンとあたりが静まる。
悪魔の上層部の老人たちは、俺を気に入らなさそうに睨んでいる。
「我らが臆病者だと?どういうことだ?」
「違うんですか?だって、会長の夢を否定してるのって、ようするに平民が知恵や力を持つのが怖いからでしょう?自分達の権威が奪われるのではないかを懸念してるからこそ、芽が出ないうちに摘んでおこうって魂胆。何か違いますか?」
“七曜の老師”も同じだ。あの人たちはルミナスさんがお気に入りを作ることをよしとせず、アダルマンさんたちを殺し、ヒナタさんをも暗殺しようとした。
この人たちに己の地位を奪われることを恐れて……。
この人たちの場合、そもそもそんな機会すら与えたくないのだ。
だから、平民が学べる学校を否定する。これが怖がりでなくてなんだというのか……。
「人間ごときが……立場をわきまえろ!我らに逆らうとどうなるのかわかってるのか!?」
そう言いながら、悪魔の老人たちはオーラを解放する。
なんだ。この程度かよ?
「そちらこそ、その程度でどうこうできるとでも?」
俺は英雄覇気を解放する。その圧力で、場が一気に支配された。
「なっ!?」
悪魔の老人たちは俺のオーラを感じ取り、激しく狼狽える。
それだけじゃない。シーグヴァイラさんにグラシャラボラスのヤンキー、アスタロトなども予想以上のオーラに冷や汗を流してる。
唯一、サイラオーグさんは少し眼を見開いただけでそこまで動揺してる感じはないな。
「そうよそうよ!赤龍帝君の言う通りよ!おじ様たちはよってたかってソーナちゃんを苛めるんだもの!!私だって我慢の限界があるのよ!これ以上言うなら、私も赤龍帝君と一緒に
セラフォルーさんが涙目で俺に続く。
しかも、その身からは凄まじい魔王覇気を発している。
お偉いさん方は魔王であるセラフォルーさんが物申すとは思ってなかったらしく、顔を青ざめている。
ソーナ会長を溺愛してるセラフォルーさんからしてみれば、最愛の妹を馬鹿にされたわけだしブチ切れるのは当然か。
ソーナ会長は恥ずかしそうに顔を覆っている。
あとはセラフォルーさんに任せれば問題なさそうかな?
そこで、セラフォルーさんは何かを思い付いたようだな。
「そうだ!ソーナちゃんがレーティングゲームに勝てばいいのよ!ゲームで好成績を残せば叶えられることも多いんだから!!」
「それはいい考えだ」
セラフォルーさんの提案にサーゼクスさんは感心したような表情を浮かべる。
確かに、レーティングゲームは地位に直結する。そこで、成果を残した下級、中級悪魔が昇給することもあるらしいし、上級悪魔ならば特権も多そうだ。
「では、ゲームをしよう。若手同士で……」
そう言いながら、サーゼクスさんは部長と会長に視線を向ける。
「リアス、ソーナ。二人でゲームをしてみないか?」
そうきたか!レーティングゲームに関しては予想してたけど、これは予想外だ!
部長も会長も顔を見合せ、目をパチクリさせている。
「もともと、近日中に君達、若手悪魔のゲームをする予定だったのだよ。アザゼルが各勢力のレーティングゲームのファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったからね。丁度いい。リアスとソーナで1ゲーム執り行おうではないか」
相手は会長と生徒会!マジか!
いきなり駒王学園に通う悪魔同士の対決じゃねえか!
事態を飲み込んだ部長は挑戦的な笑みを浮かべ、会長も冷笑を浮かべる。
やる気全快だな!
「公式ではないとはいえ、はじめてのレーティングゲームがあなただなんて運命を感じますね、リアス」
「そうね。私もあれで貴女に勝ったなんて思ってない。絶対に負けないわよ、ソーナ」
さっそく火花を散らせてるよ!二人ともやる気満々だな!
「リアスちゃんとソーナちゃんの試合!うーん☆燃えてきた!」
セラフォルーさんも楽しそうだ。俺も少し楽しみだな。
ここで、サーゼクスさんがニコニコしながら俺に告げる。
「あ、そうそう。いい忘れてたが、イッセー君。この場にそぐわない言動を行った君には立場上罰を与えねばならない」
「なっ!?お兄様、それは!?」
「それはいい!我らをなめ腐った罰!存分に受けるがよい!」
サーゼクスさんの言葉に勢いづいたように叫ぶ老人たち。
だが、サーゼクスさんの雰囲気は軽いものだ。なんだろう?
「兵藤一誠君。君に今試合に出場することを禁ずる、悪いが君は観戦に務めてもらおう」
『なっ!?』
「お兄様!それは……」
老人たちの驚きの声が響く。
まあ、当然かも……。言っちゃあなんだが、俺かなり強いからな……。
俺が出たら、普通に無双する可能性が高い。実際、ライザー戦がそんな感じだったんだから。
「リアス。君の今までの功績は赤龍帝がいたからこそ……という意見もある。そうではないことを証明してみせなさい」
サーゼクスさんの強い言葉に部長は押し黙る。
だが、暫くすると、覚悟を決めたかのように頷いた。
「わかりました。イッセーに頼らずとも私達は強いということ、証明して見せますわ」
それを聞いたサーゼクスさんは満足げに頷いた。
「対戦の日取りは人間界の時間で八月二十日。それまでは各自好きなように過ごしてくれてかまわない。詳しいことは後日送信しよう」
サーゼクスさんの決定により、ここに部長と会長のレーティングゲームの開催が決まった!