アザゼルside
いよいよレーティングゲームが間近に迫ってきた。
遠くではちびドラゴンと化したタンニーンと上役どもがリアスとソーナ・シトリーの戦いを予想していた。
どいつもこいつも緊張感がねえな。
そんな時、部屋の扉が開かれる。そこから現れた人物に誰もが度肝を抜かすのだった。
「ふん。若造どもは老体の出迎えもできんのか」
古ぼけた帽子をかぶった隻眼の爺さん。白く長い髭を生やしており、それは床につきそうなぐらい長い。
服装は質素なローブ。杖をしているが、腰を痛めてるわけでもないだろう。
「────オーディン」
そう、現れたのは北欧の神々の主神、オーディン。
鎧を着た戦乙女のヴァルキリーを引き連れてのご来場だ。
「おーおー、久しぶりじゃねぇか、北の田舎クソジジイ」
俺が悪態をつくと、オーディンは髭をさすった。
「久しいの、悪ガキ堕天使。長年敵対していた者と仲睦まじいようじゃが……また小賢しいことでも考えているのかの?」
「ハッ!しきたりやら何やらで古臭い縛りを重んじる田舎神族と違って、俺ら若輩者は思考が柔軟でね。わずらわしい敵対意識よりも己らの発展向上だ」
「弱者どもらしい負け犬の精神じゃて。所詮は親となる神と魔王を失った小童の集まり」
チッ。口数だけは相変わらず減らねぇクソジジィだな。
「独り立ち、とは言えないものかね、クソジジィ」
「悪ガキどものお遊戯会にしか見えなくての、笑いしか出ぬわ」
……ダメだこりゃ。埒が明かねぇ。
そこへサーゼクスが席を立ち、オーディンに挨拶をする。
「お久しゅうございます、北の主神オーディン殿」
「……サーゼクスか。ゲーム観戦の招待来てやったぞい。しかし、おぬしも難儀よな。本来の血筋であるルシファーが白龍皇とは。しかもテロリストとなっている。悪魔の未来は容易ではないのぉ」
オーディンが皮肉を言うが、サーゼクスは笑みを浮かべたままだ。
ジジイの視線がサーゼクスの隣のセラフォルーに移る。
「時にセラフォルー。その格好はなんじゃな?」
セラフォルーの格好は日本のテレビアニメの魔女っ子だ。こいつもコスプレ好きだね。
まあ、そのおかげで、妹が苦労しているみたいだが……。
「あら、オーディンさま!ご存知ないのですか?これは魔法少女ですわよ☆」
ピースサインを横向きにチェキしやがったよ。相手は北の神だというのに、すげえ度胸だな。
「ふむぅ。最近の若い者にはこういうのが流行っておるのかいの。なかなか、悪くないのぅ。ふむふむ、これはこれは」
スケベジジイめ。
顎に手をやりながらセラフォルーのパンツやら脚やらをマジマジと眺めてやがる。
そこにお付きのヴァルキリーが介入する。
「オーディンさま、卑猥なことはいけません!ヴァルハラの名が泣きます!」
「まったく、おまえは堅いのぉ。そんなんだから
「ど、どうせ、私は彼氏いない歴=年齢の戦乙女ですよ!私だって、か、彼氏ほしいのにぃ!うぅぅ!」
オーディンのその一言にヴァルキリーは泣きだす。おいおい、なんだよ、こいつは。
そんなヴァルキリーを見て、オーディンは嘆息する。
「すまんの。こやつはわしの現お付きじゃ。器量は良いんじゃが、いかんせん堅くての……男の一つもできん」
ジジイの人選が分からん。
それであんたを守れるのかね?まぁ、他の業界へのツッコミはいいか。
「聞いとるぞ。サーゼクス、セラフォルー、おぬしらの身内が戦うそうじゃな?まったく大事な妹たちが親友同士というのにぶつけおってからに。タチが悪いのぉ。さすがは悪魔じゃて」
「これぐらいは突破してもらわねば、悪魔の未来に希望が生まれません」
「うちのソーナちゃんが勝つに決まっているわ☆」
魔王様は互いに自分の妹が勝つと信じているようで。まぁ、この二人はそれぞれが究極のシスコンだしな。
それを見たオーディンは愉快そうに笑いながら空いてる席に座る。
「さてと。“
オーディンのその言葉に場は今度開かれるゲームの話題へと移った。
各勢力の要人をしこたまゲーム観戦に招待したからな。オーディン以外にも色々な神話勢力を招いているからな。
来るかどうかは別にしても……。
それから、俺は休憩といって席を立ち、廊下の長椅子で休んでいた。お偉方でやる会談やら会議は肩が凝るぜ。
そこにサーゼクスがやって来た。なんだ、こいつも抜け出してきたのか?
サーゼクスは俺の隣に座ると尋ねてきた。
「アザゼル、今回のゲームをどう見てる?今回のゲーム、イッセー君は参加できないことにしている。僕は、彼女達の成長を知るいい機会だと考えているんだ」
「そうだな。イッセーはリアス達の精神的支柱だ。本来、主であるリアスですら、イッセーに依存しているところがある。少なくとも、ソーナはそこを狙うだろうな」
俺がそう言うとサーゼクスは頷く。
「まぁ、あいつらもそこらへん自覚してるだろうし、無様なところは見せられないって気合い入れてたからな。イッセーを欠いたあいつらがどこまでやれるか見ものだな」
俺はレーティングゲームの内容に思いをはせながら、凝った肩を回すのだった。
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イッセーside
シトリー眷属とのゲーム決戦前夜。
俺達は先生の部屋に集まり、最後のミーティングをしていた。
「リアス、ソーナ・シトリーはグレモリー眷属のことをある程度は知っているんだろう?」
先生の問いに部長は頷く。
「ええ、おおまかなところは把握されているわね。たとえば、祐斗や朱乃、アーシア、ゼノヴィアの主力武器は認識されているわ。フェニックス家との一戦を録画したものは一部に公開されているもの。更に言うならギャスパーの神器や小猫の素性も知られているわ」
「なるほど。ほぼ知られてるわけか。で、お前の方はどのくらいあちらを把握してる?」
「ソーナのこと、副会長である“女王”のこと、他数名の能力は知っているわ。一部判明していない能力の者もいるけれど」
「不利な面もあると。まあ、その辺はゲームでも実際の戦闘でもよくあることだ。戦闘中に神器が進化、変化する例もある。細心の注意をはらえばいい。相手の数は八名か」
「ええ。
“
アザゼル先生が用意したホワイトボードに書き込んでいく。先生がいると話が速く進むな。
相手は八人。しかも、一人一人がB+ランクから会長を含め、Aランクの奴も何人かいたな。一人一人の質ならば部長たちが勝っているけど、向こうは部長達の情報を正確に把握している。
これは勝負がわからんな。
「レーティングゲームは、プレイヤーに細かなタイプをつけて分けている。パワー、テクニック、ウィザード、サポート。このなかでなら、リアスはウィザードタイプ。いわゆる魔力全般に秀でたタイプだ。朱乃も同様。木場はテクニックタイプ。スピードや技で戦う者。ゼノヴィアはスピード方面に秀でたパワータイプ。一撃必殺を狙うプレイヤーだ。アーシアとギャスパーはサポートタイプ。さらに細かく分けるなら、アーシアはウィザードタイプのほうに近く、ギャスパーはテクニックタイプのほうに近い。小猫はパワータイプだ」
「私は眷属の時はウィザードタイプに分類されてたにゃん」
「へ~面白い分け方っすね。さしずめうちはヴィザード寄りのテクニックタイプってとこすかね?」
ミッテルトの言うとおり、なかなか面白い分け方だよな。この中でいうなら、俺はパワータイプってところかな?
“
その点でいえば、強化もサポートもできる便利なユニークスキルを持つミッテルトも同じかな?
昔はウィザードタイプだったという黒歌も、今は万能だしどのタイプでもいけるのだろう。
木場達がどの位置のタイプなのか、十字線を引いてグラフに名前を書いていく。
こうしてみると、なかなか的を得てるように見えるしとても分かりやすいな。
「パワータイプが一番気をつけなくてはいけないのはカウンターだ。テクニックタイプのなかでも厄介な部類。それがカウンター系能力。神器でもカウンター系があるわけだが、これを身につけている相手と戦う場合、小猫やゼノヴィアのようなパワータイプはカウンター一発で形勢が逆転されることもある。カウンターってのはこちらの力をプラス相手の力で自分に返ってくるからな。自分が強ければ強いだけダメージも尋常ではなくなる」
まあ、受け流しとかはやられると厄介だからな。朧流の剣技も受け流しからのカウンター技とかあるし、ウルティマさんと模擬戦した時なんか、普段自分がやっていた返し技をされて、かなりイラついたし……。
聞いた話によると、“
このように、カウンター技はかなり厄介なんだよな。そういうスキルや神器を持つ相手がいたら面倒なことこの上なしだろう。
「カウンターならば、力で押し切ってみせる」
おいおい、ゼノヴィア。それは根本的な解決にはならないだろ。
確かに、パワーで押し切るという攻略法もあるにはあるけどさ、それは相手と自分によっぽどの力量差がなければ不可能だ。
「それで乗り切ることもできるが……相手がその道の天才なら、おまえは確実にやられる。カウンター使いは術の朱乃や技の木場、もしくはヴァンパイアの特殊能力を有するギャスパーで受けたほうがいい。何事も相性だ。パワータイプは単純に強い。だが、テクニックタイプと戦うにはリスクが大きい」
なんやかんやで戦闘経験豊富なゼノヴィアは思い当たる節があるのか黙ってしまった。
まあ、パワーも大事だけど、この場合は相手を翻弄するテクニックとかを身に着けるほうがよっぽど堅実で現実的だろう。
「世間はお前たちの勝利する確率が高いと見ている……が、何事にも絶対はない。実際のチェス同様、局面によって価値は変動する」
先生の言葉にみんな真剣に聞き入っていた。
「俺は長く生きてきたからわかる。勝てる可能性が一割以下でも勝利してきた連中が大勢いた。1パーセントの可能性を甘く見るな。絶対に勝てるとは思うな。だが、絶対に
それが今回の話し合いでした先生のアドバイスだった。
俺もそう思う。帝国との戦いも天魔大戦も苦しいものだった。でも、勝つために努力し、戦い抜こうとしたからこそ勝利できたのだ。
その後、先生が抜けたメンバーで決戦の日まで戦術を話し合った。
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そしていよいよ決戦の日を迎えた。
グレモリー本邸の地下にゲーム場へ移動する専用の魔法陣が存在する。
俺以外の眷属がその魔法陣の上に集まり、もうすぐ始まるゲーム場への移動に備えていた。
アーシアとゼノヴィア以外は駒王学園の夏の制服姿だ。
アーシアはシスター服、ゼノヴィアは出会った頃に着ていたあのボンテージっぽい戦闘服だ。
二人ともそちらの方が気合いが入るらしい。
ちなみに聞いた話によると、シトリー側も駒王の制服らしい。
ジオティクスさん、ヴェネラナさん、ミリキャス、アザゼル先生が魔法陣の外から声をかける。
「リアス、頑張りなさい」
「次期当主として恥じぬ戦いをしなさい。眷属の皆さんもですよ?」
「がんばって、リアス姉さま!」
「まぁ、俺が教えられることは教えた。あとは気張れや」
この場にいないのはサーゼクスさんとグレイフィアさんのみだ。あの人たちは要人用の会場にいるらしい。
アザゼル先生もこの後そちらの会場に移動するんだと。
他勢力のVIPまで来てるらしいし、この試合の注目度がよくわかる。
魔王の妹同士の戦い。俺もどうなるか滅茶苦茶気になるしな。
しばらくすると、魔法陣が輝きだした。移動する準備が出来たみたいだ。
「皆、頑張れよ!」
「応援してるっすよ」
俺たちは最後にエールを送る。
この場にいない黒歌もセラと一緒にゲームの中継を見ているらしいし、きっと小猫ちゃんのことを応援してるだろう。
部長は緊張がほぐれたかのように微笑むと、光が皆を完全に包み込む。それと同時に皆は転移していった。
……ついにゲームが始まる!!
後は皆の健闘を祈るだけだ。
頑張れよ。皆!
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ソーナside
もうすぐレーティングゲームが始まる。私は確認のため、気合を入れていたサジに話しかける。
「……サジ、首尾はどうですか?」
「いいですよ。この日のために猛特訓しましたからね」
サジの言葉に私は少し申し訳なく思ってしまう。
私があのメロウなる存在に洗脳された際、リアスだけでなく、下僕であるサジをも傷つけてしまった。
それでもサジは私の夢のために頑張ってくれる。それこそ
「……ありがとうサジ。こんなふがいない主についてきてくれて」
ふと漏れ出た言葉にサジは複雑そうな顔をしながらも強い言葉で答えた。
「らしくないですよ会長。会長はふがいなくなんかない。会長ほど素晴らしい王はいないんですから」
サジの言葉に後ろに控えている眷属達もそろって頷いてくれた。
……こんなふがいない私をまだ皆は支えてくれようとしている。
ならば、私も、主として応えなければならない。
「……期待していますよ。皆」
私は……私たちは必ず勝つ。
助けてもらった身ではあるけど、容赦はしませんよ。リアス。
私の夢をかなえるためにも、今なお私を主と仰いでくれる皆のためにも、絶対に負けるわけにはいかない!