帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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お見舞いです

イッセーside

 

 

 

 

「……大丈夫か?匙?」

 

「い、いや……全身がだるい……正直こうして話すのも億劫なくらいだ……」

 

「……お疲れ」

 

レーティングゲームから数日後。

俺は今、匙の病室にて見舞いをしていた。

冥界の医療班はとても優秀らしく、木場や部長達は既に完治しつつあるらしい。

だが、匙は自らの生命力を魔力に変換しながら戦うなんて荒業をし続けていた。

しかも、それを会長に送るだなんて無茶苦茶やったツケからか、冥界の医療でも完治に手間取っているらしい。

何しろコイツ、ゲーム終了とほぼ同時に力尽きて倒れちまったぐらいだからな。

仙術を使える小猫ちゃんが近くにいたからよかったものの、下手すればマジで命を落としていたかもしれない。

 

「ホント、すげえなお前」

 

「な、なんだよ急に……」

 

「純粋な賛辞だよ。正直、お前と木場なら木場の方が遥か格上。命を削ってやっと勝負が成立するレベルだ。そんなやつ相手によく戦い抜いたよな……。木場だけじゃない。他の皆もそう……お前、本当にすげえよ……」

 

コイツはコイツで気闘法みたく、魔力を身体能力向上にも使っていた。

文字通り、命を懸けて全ての能力を限界まで引き上げたからこそ、木場とも遣り合えたし部長の魔力や朱乃さんの雷光にも対抗しうることができた。

本当、大した奴だよ……。

 

「なんか、お前に褒められると悪い気しねえな。ありがとよ」

 

コンコン

 

俺達はしばらく談笑していると、誰かが戸を叩き、扉を開けた。

そこにいたのは会長とサーゼクスさんだった。

 

「やあ、匙君。目が覚めたようだね。イッセー君も久しぶりだね」

 

「ま、魔王様!?会長も……」

 

匙が目茶苦茶驚きながら二人を凝視する。

別にそこまで驚くことじゃないだろ……。会長や他の眷属の皆様なんて匙のこと心配して誰かしらは必ず病室にいたくらいなんだから……。

 

「こんにちは兵藤君。兵藤君はお見舞いですか?いつもわざわざありがとうございます」

 

「気にしないでください。部長達のついでみたいな物なんで……」

 

会長とその眷属達とは匙の見舞いついでに最近そこそこ話すようになり、良好な関係を築けているのだ。

会長眷属も美人揃いで目茶苦茶いいんだよな!正直、匙の見舞いはシトリー眷属と仲良くするのも目的のひとつだったりするのだ!

まあ、それは置いといて、サーゼクスさんは何をしに来たんだろう?

見た感じ、匙に用があったらしいけど……。

 

「君には是非とも渡したいものがあるんだ。受けとりなさい」

 

そう言うと、サーゼクスさんは懐から何やら小箱を取り出した。

 

「あ、あの……これは……?」

 

「これはレーティングゲームにおいて、優れた戦いをした眷属悪魔に贈られるものさ。君の活躍、見させてもらったよ」

 

なるほど。確かに、あの戦いで最も活躍した眷属悪魔は誰かと問われると、匙かもしれない。

仙術を駆使した小猫ちゃんに雷光で大活躍を果たした朱乃さんも凄かったが、それ以上に匙の気迫は凄かったのだから……。

 

「お、俺なんかが、そんな大層なものを受けとるわけには……結局、俺は一人も撃破することができなかったわけですし……」

 

「いいえ。サジ、貴方が受け取るべきです。貴方の活躍は間違いなく評価されてしかるべきものでした」

 

そう言うのは会長だ。

それにクスリと笑いながらサーゼクスさんも続ける。

 

「ソーナ君のいう通りだ。自分を卑下してはいけない。君だって、上を目指せる悪魔なんだ。あの北欧のオーディンも君に賛辞を送っていたほどなんだからね。私も君に期待しているよ」

 

そう言いながら、サーゼクスさんは匙の頭を軽く撫でる。

 

「何年、何十年先になってもいい。レーティングゲームの先生を目指しなさい。君なら必ずなれるさ」

 

サーゼクスさんのその一言にサジは感極まったように涙を流した。

その瞳からと目止めなく涙があふれ、顔はくしゃくしゃになっている。

 

「サジ。貴方はたくさんの人に勇姿を見せたのですよ。貴方は立派に戦い抜いたのですから……」

 

ソーナ会長も目から涙を溢れさせている。

当然だ。あれだけの戦いの果てに、会長は自らの夢に近づいたのだ。

会長もうれしかったんだろうな。夢に近づけたこと、何より自分の眷属が大きく評価されたことが。

 

「……はい。ありがとうございます」

 

……これ以上は部外者の俺が効くのは失礼だな。

俺は気配を消し、こっそりと病室を後にする。

あいつはもっと強くなる。

あいつはきっと夢をかなえる。

俺もあいつの行く末が気になる。お前がどんな先生になるのか今から楽しみだぜ。

 

 

 

 

 

****************************

 

 

 

 

 

俺は病室に入る直前の部長を見つける。

部長は匙と違い、もう完治してるので後日退院する予定だ。多分、手続きの帰りなのだろう。

部長は俺に気付くと微笑みを浮かべる。俺はそのまま病室に入り、談笑に浸るのだった。

 

「お疲れ様です、部長。今回は惜しかったですね」

 

「……いいえ、惜しくなんてない。今回は完敗だったわ。勝つ確率が高くても、負けるときは負けてしまう。身をもって痛感できたわ」

 

今回、部長の勝てる確率が圧倒的に高いというのが上級悪魔たちの評価だった。だが、ふたを開けてみればこのありさまだ。

EPだって、数値で強さがわかると聞くと聞こえはいいけど、実際はあてにならないことのほうが多い。

データはあくまで目安に過ぎない。勝負はやってみるまで分からないものだということだな。

……まあ、今回はソーナ会長の成長が一番の要因なんだけど。

まさか会長がユニークスキルを獲得するとはね。世の中何が起きるか本当にわからないものだな。

 

「でもね、イッセー。今回の戦いは私たちも得るものが大きかった。朱乃と小猫、二人が試合で自分の壁を越えてくれたのですもの。こんなに喜ばしいことはないわ」

 

「俺もそう思います。朱乃さんと小猫ちゃんが先に進めて俺も嬉しいです」

 

確かに負けこそしたが、朱乃さんも小猫ちゃんも前へと踏み出すことができた。

特に小猫ちゃんは黒歌との確執も解消できたし、部長の言うとおり、今回のゲームは得るものも大きかったな。

 

「これもイッセーのおかげね。あなたのおかげで、私の眷属は皆、抱えてたものを突破していくわ。私が思い悩んでいたものをイッセーは全部打ち破ってくれた。とても感謝しているのよ」

 

部長の言葉に俺は首を横に振った。

 

「そんな大層なものじゃないですよ。俺はただ、皆で楽しくやっていきたい。それだけを考えているだけですから」

 

実際、俺は大したことなんてしたつもりはない。

俺は皆とただ楽しく過ごしたいだけなんだから。だから、皆が壁を打ち破るとしたら、それは俺じゃなくて他ならぬ自身の力なんだと思う。

そんなふうに考えていると、部長はクスリと笑い出した。

 

「あなたが私の眷属で良かった。……これからもよろしく頼むわね」

 

「もちろんですよ、部長」

 

部長と俺は互いに微笑む。

 

コンコン

 

ふいに病室のドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

「失礼するっす。部長にお客様が来てるっすよ」

 

部長が返事をすると、現れたのはミッテルトだ。

……いや、彼女だけじゃない。彼女とともにいるのは超長い白髭と眼帯が特徴的な老人。

そう。北欧神話の主神“オーディン”さんだった。

 

「オーディン様ですね?初めてお目にかかります。私はリアス・グレモリーですわ。このような姿での挨拶、申し訳ありません」

 

「よいよい。セラフォルーの妹との一騎討ち、見事じゃったぞ。こういうこともある。おぬしも精進じゃな。しかし、ううむ。デカイのぉ。観戦中、こればっかり見とったぞい」

 

じいさんは部長のおっぱいをやらしい目つきで見ている!

なんだよこのじいさん!クソジジイじゃねえか!

初対面でいきなりセクハラにもほどがあるだろ!

 

「いや、イッセーが言えた義理じゃないっすけどね?」

 

ミッテルトが何か言ってるが、俺はあえてスルーする。

取り合えず、猛抗議しようとしたら側にいた鎧を着たキレイなお姉さんがじいさんの頭をハリセンで叩いた。

いいぞもっとやれ。

 

「もう!ですから卑猥な目は禁止だと、あれほど申したではありませんか!これから大切な会議なのですから、北欧の主神としてしっかりしてください!」

 

本当だよ。仮にも神話の頂点がこんなんでいいのか?

 

「……まったく隙のないヴァルキリーじゃて。わーっとるよ。これから三大勢力とギリシャのゼウス、須弥山の帝釈天とテロリスト対策の話し合いじゃったな」

 

じいさんはあたまを擦りながら、半目で呟いた。

……というか、そんなに集まってるのか。神様。

まあ、神祖の情報が秘匿されてる以上、オーフィスを頂点とする“禍の団(カオスブリケード)”のほうがこっちではメロウ以上の脅威と取れられるだろうし、仕方ないか。

 

「まぁよいわ。サーゼクスの妹と赤龍帝。わしはこれにて失礼するぞい。世の中試練だらけだが、楽しいこともたくさんある。また、どこかであることもあるじゃろう。存分に苦しみ、楽しみながら前へ進むんじゃよ。ほっほっほっ」

 

それだけ言い残すと、じいさんと鎧着たお姉さんは病室を後にした。

……というか、何しに来たんだあの人?言いたいことだけ言ってとっとと去ってしまったぞ。

なんていうか、豪快な爺さんだったな。

 

「……ところで、部長はこのあとどうするんですか?」

 

「そうね……。いったん家に戻って待機かしら?アザゼル先生からも、今は休んでろと言われてるし」

 

まあ、同感。あれほどの激闘の後じゃあ部長もまだ完全とは言えないだろうしな。

 

「失礼します」

 

「あらあら、イッセー君もいたのね」

 

すると、部長の病室に木場たちも続々と入ってきた。

皆も完全ではないにしても、傷はいえているようだし、思った以上には元気そうだな。

 

「……皆はどうだった?今回、ゲームをやってみて……」

 

俺の言葉にみんなは悔しそうに唇をかむ。

特に顕著なのが木場だ。木場は今回、匙と会長に翻弄されて何もできなかったことを悔やんでいるのだろう。

 

「今回のゲームでは、僕は何もできなかった。凄く悔しいや……」

 

「ボ、ボクも同じですぅ……。というかボクなんか、開始してすぐにやられちゃいましたし……うぅ……」

 

ギャスパーもかなり落ち込んでいるな。まあ、気持ちはわからんでもない。

この二人だけじゃない。

アーシアは木場に対して申し訳なさそうにうつむいてる。

自分の力が利用され、それが原因で木場を戦闘不能にさせてしまったことを気に病んでるのだろう。

俺はアーシアの肩に手を置き、皆と向かい合う。それに気づいた皆は俺に視線を向けた。

 

「悔しい……って皆思ってるんだと思う。でも、さっき部長が言っていた。今回のゲームは負けたけど、得るものも大きかった。悔しいなら、皆で強くなればいい!もっともっと頑張ろうぜ!」

 

「……そうね。ありがとうイッセー」

 

「……僕ももっと強くなるよ。いつか、君に追い付けるように」

 

「ぼ、ボクも頑張りますぅぅ!!」

 

俺の言葉にみんなが頷いた。気合は十分のようだな。

これから先、部長たちはどんどん強くなっていくだろう。

匙もそうだけど、部長たちの今後も楽しみだな……。

 

「全く、イッセーにほとんど言われちまったな……」

 

「あ、アザゼル先生……黒歌たちも」

 

ガラガラと扉をあけながら、先生は少し苦笑いを浮かべながら病室に入る。その後ろには、黒歌とセラもいる。

……って、おい。黒歌はまだ手配犯だろ。こんなところにいていいの?

 

「ね、姉さま……ここに来てよかったんですか?」

 

「問題ないにゃん。仙術と空間操作で意識をずらしたから、誰にも見られてないしね♪」

 

「センサーを見ても、気付かれた確率は0に近いから安心するの!」

 

そう言いながら、黒歌とセラは胸を張る。

まあ、確かに究極の力を持つ黒歌が本気を出せば、見つかることなく真正面から侵入できるだろう。

というか、センサー?聞いた話によると、セラは今、視線を感じるセンサー機能を搭載しているらしい。これは先日創ったものだそうだ。

 

「作った?」

 

「うん。隠れていくのなら、こういう機能があったほうがいいかなって思ったの」

 

ちょっと確かめてみたけど、かなり正確なセンサーだ。相当の使い手でなければ欺くことは難しいだろう。

……これほどの性能のシステムを即座に構築するとか。

ますますセラに関する謎が深まっていくな。まあ、今はいいか。

アザゼル先生は頭をかきながら気まずそうに告げる。

 

「あ~、わるかったなお前ら。今回は勝たせてやれなくてよ」

 

「いや、あれは会長が上手だったってだけですし、先生が気にする事じゃないと思いますよ」

 

「まあ、そうかもしれねえけど、俺の方針に従って負けたんだ。不満の一つや二つ出るだろうと思ってよ……」

 

アザゼル先生も修行方針を提案した立場、結構後ろめたいのだろう。

だけど、正直気にするほどでもないだろう。

 

「私たちは気にしないわ。あの戦いの中で、私達の成長も実感することができたのだから。アザゼル先生のおかげよ」

 

「……そうか。そう言ってもらえると助かる」

 

部長の言葉に先生は少し安心したように息を吐く。

元々敵陣営だってのに、ここまで気にしてるとか、本当にお人好しだな。

 

「……今回は惜しかったね。どうだった、猫又の力で戦った感想は?」

 

「……正直、よくわかりません。でも、この力がなかったら、あそこまで戦い抜くことはできなかったと思います」

 

確かに、今回小猫ちゃんは大活躍だったな。

仙術の気を利用して、会長の水の魔力の流れを乱したりと、面白い戦いを披露していたな。

身のこなしもかなり向上していたし、今回一番伸びたのは小猫ちゃんだったのかもしれないな。

 

「私も、姉さまの修行のおかげで戦えました。ありがとうございます」

 

「別にこれくらいどうってことないにゃん」

 

ちょっと照れたようにいう黒歌をほほえましく思いながら、俺は二人を見ていた。

やっぱり、姉妹は仲良くしたほうがいいよな。

 

「アーシアお姉ちゃんも元気出すの。お姉ちゃんにとっては初見だし、仕方ないの。ギャスパーお兄ちゃんも……ニンニク克服頑張るの」

 

「ありがとう。セラちゃん」

 

「は、はいぃぃぃぃ。頑張りますぅぅぅ」

 

セラはアーシアを慰めているみたいだ。開始早々やられたギャスパーについてもフォローしてあげている。

優しい子に育ってくれてるようで何よりだな。

 

「おっと、そうだ。忘れるところだった。イッセー、ミッテルト。準備が終わったからいつでも出発できるぞ」

 

「あ、本当っすか?ありがとうございます」

 

思い出したように先生は俺たちに告げる。

レーティングゲームのごたごたで時間を食ってしまったからな……。滞在期間も残りわずかだし、速めに行ったほうがよさそうだ。

……それにしても緊張してきたな。

見るとミッテルトも深呼吸で心を落ち着かせようとしている。

まあ、当然と言えば当然か……。そんな俺たちを部長たちは怪訝そうに見つめている。

 

「準備?あなた達、どこへ行くの?」

 

部長の問いに俺たちは顔を見合わせ、同時に答えた。

 

「「……挨拶(っすよ)です」」

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