イッセーside
イリナが転校してきてから数日が経った。
「はいはい! 私、借り物レースに出ます!」
イリナは持ち前の明るさですぐにクラスに溶け込んだ。現在では、男女問わずに大人気だ。
そんなイリナだが、体育祭では借り物レースをやるみたいだな。
まあ、俺は競技は余りものでいいと思ってるからあまり関係ないけど。
……はぁ。
なんか疲れたな……。
イリナも俺の家に住むことになったんだ。
夏休みに地上六階、地下三階という豪邸と化した兵藤家。
元々、オカルト研究部+aの面々が移り住んでいたわけだし、部屋もたくさん余ってるから、一人や二人増えたところで問題はない……そう思ってた時期が、俺にもありました。
両親以外は全員美少女! 男子としてまさに理想的な住まい!
最初はそう思ってたけど、実際は俺の入り込む余地がない状況が多いんだよな……。
例えば、アーシア、ゼノヴィア、イリナの教会三人娘が集まって女子トークをし始めたとしよう。
恐ろしく会話に入りづらい!
ここに小猫ちゃんやミッテルトまで入り込むと俺の接触できるスペースはない!
寂しくなって、お姉様のもとへ行くと、部長と朱乃さんもやっぱり女子トークお姉様バージョンをしているんだ。
そこへ俺が「部長~」「朱乃さ~ん」と甘える感じで入り込んでも空しいだけだ。
黒歌は基本的にセラと一緒だし、いなくなることも多々あるのだ。どうやら、たまに出掛けてはトーカと飲みに行ってるらしい。俺も飲みたいけど、俺はココでは未成年! 飲むことができないんだよな……。
女子が多くなると、風呂とかでばったり出会っちゃって気まずくなることもあるし、なんていうか、俺の甲斐性のなさを改めて実感してしまった。
いつかはハーレムを夢見る俺がここまで苦戦するとは……。
まぁ、だからと言って皆と仲が悪いとかではない。
普段は仲良く過ごしているし、女の子には女の子の生活があるってことで納得はしてる。まあ、深く考えないほうがいいか。
「兵藤」
ふいに桐生に呼ばれた。
奴は現在、黒板の前に立ち、体育祭の競技について書き込んでいるところだ。
「脇のところ、破れてる」
「え? マジか」
と、桐生の言うように自身のワイシャツの脇を見るが、とくに破れてるところは無い。
ここで、俺は現在の状況を思い出した。だが、気付いた時にはもう遅い。俺はわきの確認のため、手を上げている状態になっていたからだ!
「はい! 決まり!」
俺の名前がチョークで黒板に書き込まれていく!
「騙しやがったな、桐生!」
完全にやられた!
考え込んでた製で油断と隙が生じていた! 文句を言っても、奴はいやらしく笑うだけだった!
「あんたは二人三脚よ。相方は────」
桐生がチョークで指をさす。そこには────
「あんたとアーシアには二人三脚で走ってもらうわ」
そう。そこには恥ずかしそうに手を挙げるアーシアの姿があったのだ。
それを見ながら楽しげな桐生。こうして、俺とアーシアは桐生の策略により、二人三脚をすることになったのだった。
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次の日。
今日から学園全体で体育祭の練習が始まっていた。
俺のクラスも体操着に着替えて、男女合同で各自が出場するの競技の練習をしていた。
「勝負よ、ゼノヴィア!」
「望むところだ、イリナ!」
イリナとゼノヴィアはグラウンドで駆けっこをしていた。
クラスメイトも両者に声援を送っている。
あいつら、互いに負けたくない競争心からか、グラウンドを爆走してるよ。
“騎士”のスピードを持つゼノヴィアとそれに追随するイリナ。どちらも一歩も引いておらず、いい勝負している。
流石は悪魔と天使。生徒会を除けば優勝できるかもな。ミッテルトは学年違うし……。
「……しかし、高速で動かれると、おっぱいの動きが把握しづらいな」
「そうだな」
「やはり、運動のときは適度な速さが一番だ」
と、俺と松田、元浜の三人は走る女子のおっぱいの動きを観察していた。
大きいのも、小さいのも、女子が動くたびに揺れるから目が離せないぜ! 体操着最高!
ちなみに俺は動きが把握しづらいと口では言いながらも、俺は思考加速でスローモーションに揺れる乳を堪能している。イリナもゼノヴィアも豊満だし、マジで最高だな!
「お、兵藤」
「おう、匙じゃん」
匙が俺に話しかけてきた。
メジャーやら計測するものを持っている。
「何やってんだ?」
「揺れるおっぱいを観察だ」
「あ、相変わらずだな」
そう言いながら嘆息する匙。匙は俺の横に立ちながら、改めて聞いてくる。
「それで、兵藤は何の競技に出るんだ?」
「俺はアーシアと一緒に二人三脚だ」
「くっ! 相変わらずうらやましい野郎だ! 俺はパン食い競争だよ」
へー、匙はパン食いに出るのか。
それもそれで楽しそうだな。まあ、俺はアーシアちゃんとの二人三脚の方が良いな。
仲良し小良しで走り抜きますよ。
羨ましがる匙のもとへメガネの女子が二人登場。
「サジ、何をしているのです。テント設置箇所のチェックをするのですから、早く来なさい」
「我が生徒会はただでさえ男子が少ないのですから、働いてくださいな」
ソーナ会長と副会長の真羅先輩だ。
二人が匙を呼んでいる。
おおっ、二人ともメガネがキラリと光ってるぜ。
「は、はい! 会長! 副会長!」
匙はあわてて二人のもとへと走っていく。
うーん、生徒会は厳しそうだな。メガネといえば、アガレス家のシーグヴァイラさんもメガネ美女だったな。
クールな印象があったし、眼鏡キャラって冷静で淡々としたイメージがあるよな。
『……ヴリトラか』
ん?
どうしたよ、ドライグ。
『いや、あの小僧から感じられるヴリトラの気配が高まったように思えてな』
ああ。そういえば、あのレーティングゲーム以降、匙の龍の気配が強まったように思える。
曰く、ヴリドラの魂は幾重にも分けられており、それぞれが別々の神器に封じられているらしい。
だから、ドライグのようにヴリドラはしゃべることもできないし、意識もかなり希薄になっているらしい。
”五大龍王“という魔王級以上の存在を宿しておきながら”
『だが、神器は宿主の強い思いによって形を変える。もしかしたら、今後ヴリドラの意識が目覚める……なんてこともあるかもしれないな……』
ほう。それは面白そうだ。
もしそうなれば、匙は超絶なパワーアップを遂げるだろう。
『ティアマットにファーブニルとヴリトラ。そしてタンニーンにも出会った。相棒は向こうだけでなく、この世界の龍王にも縁があるのかもしれんな』
ドライグは笑いながらそう告げた。龍王に縁がある……か。
確かにそうかもしれない。
ティアマットさんにタンニーンのおっさん、神器に封じられているヴリドラにファーブニル。
裏にかかわってから短期間で六大龍王のうち、すでに四柱に出会ってることになる。
これからも、龍王にかかわっていく機会はあるかもしれないな。
「アーシア! 夏休みの間におっぱい成長したぁ?」
「キャッ! 桐生さん! も、もまないでくださいぃ」
……あ!
エロメガネ娘がアーシアにセクハラしてやがる!
目を離すとすぐセクハラだ。あのエロメガネめ。
アーシアがエロくなっちゃう! ただでさえ、最近は部長と朱乃さんの影響で、そういうことに興味持っちゃってるんだから……。
……さて、そろそろ俺達も練習を始めるとするか。
俺はクラスごとに用意された競技用道具から二人三脚用のひもを取り出した。
「アーシア、俺達も練習しようぜ!」
「は、はい!」
じゃれついていた桐生にペコリと頭を下げたアーシアは、俺のもとへと駆け寄ってきた。
すでに、他の奴らは練習始めてるし、俺達もうかうかしてはいられないな。
俺とアーシアはぴったりくっつき、足首にひもを結ぶ。
「よし、さっそく行くぞ、アーシア!」
「は、はい!」
アーシアは恥ずかしそうにしながらも俺の腰に手を回す。
うーん、アーシアの髪からいい匂いがしてくる……。
しかも、ぴったりとくっついているから、アーシアの柔らかい体が……。
おっと、いかんいかん!
雑念を振り払わないと!
相手はアーシア! 穢れを知っちゃダメな子だ! 自制心、自制心!
息を整えて、俺達は互いに頷き合った後、足を一歩前へ踏み出した。
「せーの、いち、に────」
声を出して、動き出すが────
ガクン!
俺達は互いに足を取られて、バランスを崩してしまった!
「きゃっ」
「アーシア! 危ない!」
倒れそうになるアーシアを急いで掴まえて体勢を立て直す。
「……やっぱり、俺がアーシアに合わせるしかないよなぁ」
と、俺が考えていると、アーシアが何やら恥ずかしそうに顔を紅潮させていた。
何かに耐えている様子だ。どうしたんだ、アーシア?
そこで俺は不思議な感触に気づいた。
なんだろう? 右手が何か柔らかいものを…………。
って、俺、アーシアのおっぱい揉んでるぅぅぅぅぅっ!!
そ、そうか! さっき、とっさに掴んだところはおっぱいだったのか!
た、確かに桐生のいう通り、質量が増している…………って、違う!!
いくら極上とはいえ、これ以上この感触を味わっちゃダメだ!!
俺は慌ててアーシアのおっぱいから手を離した!
「ゴ、ゴメン! わざとじゃないんだ!」
「だ、大丈夫です。平気です。で、でも、触るときは一言言ってからにしてください……。私も心の準備が必要ですから……」
一言いえばOKなんですか!?
そんな馬鹿なこと考えながらも俺は取りあえず息を整える。
落ち着け……深呼吸だ……。
「と、とりあえず、再開しよう」
「は、はい。でも、すみません。私、運動はそこまで得意じゃないので」
気落ちするアーシア。
「いいって。要は息を合わせること。コンビネーションだ」
「コンビネーション?」
可愛らしく首をかしげながらアーシアは問う。うん、可愛い。
「そう、コンビネーション。まずはゆっくりでいいから一緒に声を出して、一歩一歩動いてみよう」
「分かりました! よろしくお願いします!」
こうして俺達はまず息を合わせて歩くことから始めたのだった。
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「結構形になってきたな……」
「イッセーは二人三脚っすか。……どさくさに紛れてアーシアちゃんに変なことしないほうがいいっすよ」
「し、しねえよ……」
俺はミッテルトと合流し、部室に顔を出す。
すると、先に来ていた部長を含めた他のメンバーは皆顔をしかめていた。
何かあったのか?
「どうしたんですか?」
俺が尋ねると、部長が言う。
「若手悪魔のレーティングゲーム。私達の次の相手が決まったの」
へぇ。もう決まったのか。
実は現在、グレモリー対シトリーの一戦を皮切りに例の六家でゲームが行われているのだ。
部長達もシトリー以外の家と戦うことになっていた。
眷属候補という微妙な立場の俺は、相手が許可を出せば参加できるんだけど……まあ、流石に難しいか。
それはさておき、相手は誰なんだろう?
「次の対戦相手は────ディオドラ・アスタロトよ」
「────っ!!」
部長の言葉に俺は部員の様子を理解する。
このタイミングであいつが相手か……。
悪い冗談としか思えない対戦相手に俺は思わず言葉を失った。