イッセーside
アーシアを助けると約束した次の日、俺は普段通りオカルト研究部の活動をしていた。
「部長……」
「……」
途中、朱乃さんに呼ばれ部長が先にどこかへ行ってしまったものの、それ以外は平常運転だ。
「……失礼します」
「じゃあね。イッセーくん、ミッテルトさん」
「おう、またな」
二人は悪魔の契約のため、部屋を出ていく。
…………よし、今なら誰の気配もしない。
皆が帰ったことを見計らって俺とミッテルトは部長の机の上に用意していた退部届けをおき、退出をする。
これは俺の独自の判断だ。迷惑はかけられない。
というわけで、悪魔であるリアス部長と自分は無関係だと言うことを示すため、オカルト研究部をやめることにしたのである。
「これでよし」
「それじゃあ、早速行くすかね……」
ミッテルトが退部届けを出したことを確認して俺はアーシアのいると思われる廃教会へと向かおうとする。
レイナーレは傲慢な感じがしたしフリードは間違いなく異常者だ。
あんなところにいてはアーシアがどうなるかわかったもんじゃねえ。
急がないと……。
そう考えながら俺たちは曲がり角を曲がり……。
「そっちは帰り道じゃないよ。二人とも」
「……」
ってうお!?
木場に小猫ちゃん!?
廃教会への道のりで俺たちに立ちふさがったのは契約をとりにいったはずの小猫ちゃんと木場だった。
「短い付き合いだけど、イッセーくんたちの考えは読める。あのシスターを助けに行くつもりなんでしょ?」
しまった。二人の気配が旧校舎を離れたことで安心していた。
まさか待ち伏せを食らっていたとは……。
「……引き留めるつもりか?」
「悪いっすけど、邪魔するなら少しだけ眠ってもらうっすよ」
できれば戦いたくはないが、最悪の場合は眠ってもらうしかない……。
ところが木場の反応は俺が思っていたものとは違っていた。
「いや、僕たちも手伝おうと思ってね」
「「え!?」」
予想外の木場の一言で俺たちは言葉を失う。
「僕はあのアーシアさんをよく知らない。でも、君は僕の仲間だ。堕天使は嫌いだけどミッテルトさんのことも仲間だと思っている。
そんな二人が危険な場所に行くって言うなら、僕も一緒に行くよ。それに、個人的に神父は好きじゃなくてね」
木場、お前……。
「“
小猫ちゃん……。
いや~、小猫ちゃんに心配してもらえると俺としては嬉しいかな~。こんな可愛い子に心配してもらえるとは俺も捨てたもんじゃないな~。
「木場っちと小猫ちゃんでテンションの上がり具合が全然違うっすね」
…………だからなんでミッテルトは俺の考えが読めるの?
思考読破でも使ってるの?
*******
俺たち四人は教会の見える位置で様子を伺う。
魔力感知を使ってみると複数の気配がする。
「……たぶん、フリードと同じ悪魔祓いが30人ほどいる。油断するなよ皆」
その言葉を聞いて木場と小猫ちゃんは驚いたような顔をする。
?なんか変なこと言ったか?
「……どうしてそう思うんだい?」
あ、そうか。
二人は魔力感知を使えない。
いや、使えはするんだろうけどそこまで正確に計れないのか……。
「気配っすよ。お二人も堕天使の気配は感じるでしょ?」
「うん」
「はい」
「イッセーは気配察知能力が二人よりも凄いってことっすよ」
小猫ちゃんは少し信じられないと言った目で俺を見る。
まあ、普段はそんなことしないからな……。
「で、どうするんすか?イッセー?」
ミッテルトが訪ねてくる。こういうときは裏からチマチマ入るよりも……。
「正面突破だ!」
俺は勢いよく扉をぶん殴り、聖堂の中に踏み込む。
ふむ、見た感じは普通の聖堂だな。
……いや、普通じゃないところもある。聖人の彫刻の頭部が破壊されてて、不気味さを演出している。
「やあやあ、感動的な再開だねえ!」
フリード。あいつ昨日の今日でもう復活したのか?
ふざけた笑みを浮かべながら奴は俺たちに近づいてきた。
「いやぁ、イッセー君って言ったっけ?蹴られたところが大変でさぁ~。ぶっちゃけ今も痛いんだわ~。蹴られるなんて初めて。イッセーくんに初めてもらっちゃったな~」
相変わらず飄々としている。
ふざけた野郎だ。
「まあ、そんなわけで、イッセー君は俺の頭のなかでぶち殺したいランキングトップに入っちゃったんだコレガ!というわけで死にさらせや」
フリードの言葉と同時に今まで隠れていたはぐれ悪魔祓いがワラワラと出てくる。
全員が気色の悪い笑みを浮かべている。
「ふむ……。貴様か?堕天使でありながら悪魔とつるむ愚か者は……」
さらに現れたのは男堕天使。
紺色のスーツに身を包み、俺たちを空から見下ろしている。
「我が名はドーナシーク。レイナーレ様の部下にして貴様に滅びを与えるものだ」
やっぱ、レイナーレが黒幕なのか……。
まあ、確かに目の前の堕天使よりもあいつのほうが強そうだしな……。
「この数の悪魔祓いに堕天使……。少し不味いかもね……」
「……」
木場は少し不安そうにしながらも剣を構え、小猫ちゃんもまた拳を構える。
「……悪魔にとって堕天使の光は相性が悪い。あの堕天使はうちがやるっす」
そこでミッテルトは木刀をドーナシークに向け、高らかに宣言する。
「!?一人では危険だ」
「私も……」
「いや、木場っちと小猫ちゃんは悪魔祓いを頼むっす。あれを片付けたら手伝うっすから」
「嘗められたものだな。もう勝った気でいるのか?」
「当然。だってあんた弱いっしょ?」
ミッテルトの言葉に青筋をたてるドーナシーク。まあでも確かにドーナシークの存在値はどう控えめに見てもBランクそこそこ。
今の木場より少し弱いくらい。
もっとも戦闘になれば相性で木場と互角程度には戦えるだろうが……。
それじゃあミッテルトは殺れない。
「あ、そうだ。戦う前に聞いときたいんすけど……」
「……なんだ?」
「あんたらはアーシアちゃんをどうして仲間に引き入れたんすか?あそこのイカれ神父にも殺さないように言ってたらしいっすけどなんか目的でもあるんすか?」
それは気になっていた。
フリードにも殺しはしないよう厳命してたっぽいし、なにか目的があるのかもしれない。
「フッ、簡単だ。あの小娘の
……何が言いたいんだこいつ?
「だからこそ、あの
そんなことできるのか!?
『不味いぞ!相棒!ミッテルト!』
『?なんすかドライグ?』
そこでドライグが俺とミッテルトに語りかけてきた。
ドライグは向こうに長くいた影響か思念伝達ができるようになっており、ミッテルトにも直接繋げることができるのだ。
『いいか、
!?
マジか、ならば急がねえと……。
「もう手遅れだ。儀式はすでに始まっているのだからな。間に合わん。仮に間に合うとしても……。私がさせんよ!!」
そう言いながらドーナシークは槍を携えミッテルト目掛けて急降下する。
「まずは貴様からだ!堕天使の恥さら……」
「うるさいっすよ!!」「しぃ!?」
激怒したミッテルトの無造作な一撃でドーナシークは教会を突き抜け何処かへ吹き飛んだ。
その光景を見て悪魔祓い達は唖然としている。
よく見たら木場と小猫ちゃんもか……。信じられないといった目でミッテルトを見ている。
「イッセー!多分アーシアちゃん地下にいるっす!今のうちに扉を探して……」
「いや、こっちの方が速い……」
俺は“
『Boost!』
俺の力がドライグの力により倍加する。
「おらぁ!!」
そして俺は思い切り床をぶん殴った。その結果床は崩壊し、地下にあった部屋に意図も容易くたどり着くことができた。
*******
アーシアside
「悪魔に見つかってしまった以上、あまり時間はかけられない……。
すぐに儀式に取りかかりましょうか……」
イッセーさんやミッテルトちゃんと別れた後、私は十字架に磔にされてしまいました。
なんでも私の中の
そして、たった今準備が終わり、私から
どうしてこんなことになってしまったんでしょう……。
思い出すのは教会にいたころ……。
この世に生を受けた私は直に実の両親から捨てられてしまいました。
捨てられた私は教会兼孤児院を運営していたシスターに拾われて育ててもらいました。貧しくも私を愛し育ててくれたシスターに出会わせてくれた主に感謝しながら幸せに生きていました。
でも私が8歳の時運命は大きく変わりました。
ある日町で事故にあって腕に大きな怪我をした子供を見かけた私は癒しの力でその子の怪我を治しました。人々は神の奇跡と驚き私を称えました。そして噂を聞いたカトリック教会の本部に連れて行かれ私は『聖女』と呼ばれるようになりました。
最初は驚きましたが私の力で誰かの助けになれることが、何より必要とされることが嬉しかったんです。
そんなある日でした。
私は怪我をしていた悪魔を見かけました。悪魔は敵だと教わっていましたが怪我をしている人を見捨てたくないと思いその方の怪我を治してあげました。ですがそれを教会の関係者に見られてしまいました。
私は「魔女」として人々から恐れられ教会から追放されてしまいました。
そして、レイナーレ様に拾われ、今殺されかけている……。
(これは主の与えた試練なのでしょうか?そうですよね、私がバカだからこんなことになっちゃったんですよね……)
もしかしたら、友達が欲しいなんて願いを持ってしまったことがいけなかったのでしょうか?
私には今まで友達が一人もいませんでした。
よく、教会の窓から楽しそうに遊ぶ子供たちを羨ましがっていたな……。そんな思いを持ったからバチが当たってしまったのかもしれません。
「最後に言い残すことはあるかしら?」
(……イッセーさん、ミッテルトちゃん……)
思い出すのは教会の場所がわからず途方にくれていた私に親切にしてくれたお二人のこと……。
あの二人なら、もしかしたら、友達になってくれたのかな……。
「……イッセーさんやミッテルトちゃんと、もっとお話したかった……。お友達になりたかったな……」
バゴン
大きな音と共に天井が崩れ落ちる。
瓦礫が大量に落ちてきて、私を磔にしていた十字架が崩れ落ちた。でも、不思議なことに私に痛みはなかった。
誰かが私に被害が出る前に庇ってくれたということを悟り、私は目を見開く。
そこには泣いてしまった私に対し、必ず助けにいくと言ってくれたイッセーさんの姿があった。
「イッセーさん……。本当に来てくれたんですか……?」
「当たり前だろ。俺たちは友達なんだから」
そう言いながらイッセーさんは私に微笑みかけた。
その笑顔はとても眩しく感じた。