帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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青い悪魔と交流です

 イッセーside

 

 

 

 

「な、なんで?」

 

「アラ、私がいては何かおかしいですか?」

 

 そう言いながら目の前の青いサボり魔は不思議そうに首をかしげた。

 いや、おかしいわ! 俺確かにこの人を“門”に突き飛ばしたよ! 

 この世界に残してたら絶対厄介ごとにしかならないもん! 

 

「フフフ、イッセーさん。どうやらあなたは私の権能をお忘れの様ですね」

 

 そこで俺は思い出す。

 そうか、あの時突き飛ばしたのはこの人の“偏在(ミスト)”か。

 この人は事前に肉体を分割するという権能を持っているのだ。“並列存在”に近しい権能で、分割した肉体はどれもが本体となりえる。

 恐らく、突き飛ばされる直前に本体を切り替えたのだろう。だから俺も気づくことができなかった。

 この権能はかなり厄介で、模擬戦でも相当辛酸をなめたものだが、こんなくだらないことに使うとは……。

 そんなに帰りたくないか!? 

 

「イッセー? 知り合いなの?」

 

「あ、え~と……」

 

 訝しげに尋ねる部長に返答に困ってしまう。

 この人のこと、なんて説明すれば……。

 

「この人はイッセーのフィギュア製作の師匠なんすよ」

 

「イッセーの?」

 

「イッセー君のフィギュア作りはこの人に教えて貰ったんだね……」

 

 そんな俺をミッテルトが庇うように説明する。

 それを聞いた部長と木場は驚きつつも、飾られてるフィギュアを見て納得したように頷いた。

 

「あらあら、確かにすごい数ですわね」

 

 朱乃さんが部屋の中を見渡しながらつぶやく。

 そこにあったのは途方もない数のフィギュアにプラモだ。

 恐らく、この人が趣味で作り上げたのだろう。それにしてもこの数……いったいどれだけの間此処にいたんだ? 

 

「まあ、それほどでもありますけどね」

 

「流石です! レ……雨葵様! 短期間でこれだけの量を作るだなんて、大変感服しました!」

 

 そう言いながら、()()()さんは拍手をしながらこの人を煽て始める。

 これだよ! これがこの人をだめにする要因なんだよ! 何でもかんでもすぐに煽ててさあ! 

 俺は調子に乗ってる悪魔を冷めた目で見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「……で、本日はどのような依頼で?」

 

 気を取り直して部長が……雨葵さんに問いかける。

 雨葵さんは芝居がかった感じで悲しそうに涙を流す。

 

「実は、私の家には数多の財産があったのですが、それが急に尽きてしまったのです。原因もわからず、このままでは明日食べるものにも困ってしまう状況なのです……」

 

 この人はおいおいと泣きながら告げた。

 うん。原因はこのプラモとフィギュア、そして別室にあった漫画にゲームの山だね。

 すごい労力がかかっていて、繊細なつくりだけど、この量を作っちゃえばこうなるよ。ゲームや漫画などもってのほかだ。

 趣味にお金をかけすぎてるだけなんだよ。

 

「私もアルバイトをしながらお金をためてますが、何故かお金は減るばかり……一体どうすれば……」

 

 そう言うのはミソラさんだ。

 うん。この人に馬鹿な真似をやめさせたらすぐに貯まると思うよ。

 ミソラさんはこの人関連以外では真面目だし、要領もいいから短期バイトでもすればすぐに貯まると思う。

 

「まあ、それはそうなんですけど……」

 

 ミソラさんはチラッと泣き真似をする雨葵さんを見つめる。

 目が合ったらしく、少し疲れた様子を見せながらも、俺たちに振り向き告げる。

 

「私もこの家の使用人という立場がある以上、長く家を空けることは避けたいんですよね。ですので、悪魔の皆様、何かいい儲け話はありませんか?」

 

 いや、あんたも悪魔だろ。そもそもミソラさんがやらなくとも、この人だって自炊できる……というか、職業柄家事とかは完璧なんだからこの人にもやらせなさいよ。

 そんなこと考えながらも俺はどうしたものかと考える。

 こうして依頼を出した理由はなんとなくわかる。俺への牽制だ。

 正直、お金だけならばいくらでも稼ぐ手段があるだろう。だから、お金が目的というのはただの方便だ。

 この人はろくでもないというか……戦力にはなるけど、正直扱いに困るのだ。

 (ギィさん)同僚(ミザリーさん)というストッパーがいない以上、タガが外れたこの人が何をしでかすのか想像もつかん。

 もしこの人が問題を起こしたら、正直俺は上手く止められる自信がない。

 だからこそ、俺がこの人がまだこの街にいることを知ったら再び元の世界へ戻すように動いていただろう。

 この人は部長たちと関わることでこの街にとどまろうとしているのだ。

 恐らく、今後も依頼を続け、部長とコミュニケーションを計ることで、簡単には出ていかせることができないように外堀を埋めるつもりだ。

 ここで俺が動けば部長が不振がってしまう。かといって、部長がいないうちに行動することはもう難しい。

 部長たちは今我が家在住だし、何よりこの人の顔を知ってしまった。

 知らないうちは、仮に見られてもミッテルトにも協力してもらい、軽い知り合い程度の説明で納得してもらえるし、それで話を終わらせることもできるだろう。

 だが、今この人が急に街から消えれば部長たちは疑問に思うことだろう。

 考えたな……。

 

「……これらのフィギュアは市販の物なんでしょうか?」

 

「いえ、すべて私が制作したものですよ」

 

 雨葵さんの言葉を聞きながら、部長は改めてフィギュアの山を見渡す。

 できはどれも素晴らしいんだよな。

 

「これ全部作るなんてすごいですね」

 

「ああ。正直、フィギュアのことはわからないが、とても精巧に思える」

 

「こんなのを作れるなんてすごいですぅ……」

 

 アーシアもゼノヴィアもギャスパーもその出来に圧巻されているようだ。

 小猫ちゃんも木場も黙ってはいるが、素直に感嘆してるようだ。

 

「う~ん、思い切ってこのフィギュアを売るというのはどうですか? これほどの物なら高く買い取りますわよ」

 

 え? 買いとるの? 

 まあ、でも確かに、どれも再現度が高く、ぶっちゃけ市販品と比べても遜色ないどころか、上回るほどの精巧さだからな。

 マニアには高く売れるだろう。あのガ○ダムとか、冥界のメガネのお姉さんが喜んで買いそうだ。

 

「ほう。それはいくらぐらいでしょうか?」

 

 部長の提案に雨葵さんは目を輝かせる。

 部長はギャスパーに計算させ、明細を雨葵さんに提示した。

 

「ふむ、この値段なら問題ありませんね。交渉成立です」

 

 そういいながら、雨葵さんは部長とがっしり握手する。

 これ、眷属全員なんていらないじゃん。部長と俺だけでいいじゃん。

 

「いえいえ、あくまで全員にわれらを認識してもらうのが目的ですからね」

 

 ミソラさんの言葉に思わずため息が出る。

 なんていうか、時間の無駄だったな……。

 

「では、一つ目の依頼も済んだことですし、二つ目の依頼です。皆でこれやりませんか?」

 

 そういいながら雨葵さんが出したのは……様々なキャラクターが大乱闘してスマッシュするゲームだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

「このゲーム、なかなか面白かったわね」

 

「うふふ、あまりやる機会はなかったのですけど、とても楽しめましたわ」

 

 そう言いながら、部長と朱乃さんは満足げな様子だ。

 確かに、家庭用ゲームはたいてい黒歌の専用になってたし、何より悪魔家業にレーティングゲームの研究、禍の団の対策などで忙しかった皆にとってはいい息抜きになったのかもしれないな。

 

「では、私たちは帰りますね」

 

「また、何か御用があれば、是非呼んでください」

 

 アーシアと木場はそう言いながら、礼儀正しく挨拶をする。

 特にアーシアはさっきまでとは違い、とてもいい表情になっている。

 ……こういうところは感謝しないとだな。

 

「じゃあ、行くわよイッセー……」

 

「ああ、俺は後でミッテルトと一緒に戻りますから、皆は先に帰っててください」

 

「そう? じゃあ、またあとでね……」

 

 少し名残惜しそうにしながらも部長たちは帰路につくのだった。

 ……さてと。

 

「……あの、いい加減にしないと本当にギィさんに怒られますよ────“レイン”さん」

 

 俺は雨葵さん改めレインさんに一応の忠告をしておく。

 レインさんは数万年以上────下手すると、数億年以上の長き時を生き抜く“原初の悪魔”。

 “原初の青(ブルー)”の名を冠する最強の悪魔王(デヴィルロード)の一柱なのだ。

 まあ、その実態はただの残念美人なんだけど。

 

「フッ、問題ありません。ギィ様へのお土産に聖典(漫画)やゲーム、珍しい世界の菓子などを用意してますからね」

 

「はい。これならばギィ様もきっと許してくださるでしょう」

 

「……それで許してくれるっすかね?」

 

 そう言いながら、拍手をするミソラさんに半目となる俺とミッテルト。

 ミソラさんは相変わらずレインさんに追従するだけだ。

 ミソラさんは数万年間レインさんに仕えている“公爵級”の“悪魔公(デーモンロード)”でEPも70万を超え、ギィさん配下の悪魔の中でも原初の二人を除けば最強の強さを誇ってる。

 そんなミソラさんは基本的には苦労人なのだが、レインさんに対して甘やかしすぎる傾向があるのだ。

 レインさんが間違ってると頭ではわかっていても、甘やかして煽てたり追従したりしてしまい、仮にそのしわ寄せで苦労することになってもレインさんには絶対に逆らわない。

 その姿はラミリスさんを甘やかすトレイニーさんを彷彿とさせるほどだ。

 だからレインさんがつけあがるんだよな……。

 

「まあ、今はいいでしょう。それよりも、ひどいじゃないですかイッセーさん。この私を無理やり送り返そうとするなんて」

 

「いや、当然でしょ。正直、この世界の悪魔とは違う悪魔がこの世界にいると何が起こるかわかりませんもの。同じ悪魔といえど、全然違う種族なんですから」

 

 この世界の悪魔と向こうの世界の“悪魔(デーモン)”は似て非なる存在だ。

 魔素の質は似通ってるのだが、決定的に違う点としては向こうと違い、こちらの悪魔は物質生命体である点だろう。

 だからこの二つの種族はまるで異なる種族であるといえる。

 ただでさえ、多種族に対し排他的な悪魔が向こうの世界の悪魔の存在が知れば、何が起こるか想像もつかん。

 

「……本当に、まるで違う種族なんですかね?」

 

「? どういうことですか?」

 

 レインさんのつぶやきに俺は思わず聞き返す。

 

「今、イッセーさんも言いましたが、魔力の質が似てるんですよ。私達とあの悪魔たち。読み方が違うとはいえ、同じ“悪魔”の名を冠し、同質の魔力を持つ。そんなものたちが、本当に私たちと関係がないといえるのでしょうかね……」

 

「……言われてみれば」

 

 世界が違うのだから、そういう偶然もあるだろう。

 俺は今までそう考えていたけど、本当にそうなのか? 

 確かに不思議だ。

 この世界の悪魔の起源は“聖書の神”だ。

 聖書の神が生み出した“ルシファー”と呼ばれる存在と原初の人間である“リリス”により、悪魔という概念が生まれたという。

 ……そもそも、聖書の神は何故新たに生まれた種族に悪魔と名付けたのだ? 

 それだけじゃない。なぜ、純白の翼を持つ使徒たちに天使という名を与えたんだ? 

 これって偶然なのか? 

 

「確かに、考えたこともなかったっすけど、ミカエルさんたちの名前って、何が由来なんすかね?」

 

 かの星王竜の生み出した究極の権能と同じ名を冠するミカエルさん。

 あの人は何故、聖書の神にその名を与えられたのか……。

 

「もしかしたら、この世界と私たちの世界は割と強いつながりがあるのかもしれませんね」

 

 レインさんの言葉に俺はその可能性を考える。

 ここまでくると偶然……という言葉では片付かないだろう。

 ここでレインさんは何やらハッ! と何かに気付いた様子を見せ、咳払いをして告げた。

 

「……何を隠そう、私はそれを調査するために来たのですよ」

 

 レインさんが最後に付け足した言葉に一瞬感心してしまう。

 だが、その気持ちは一瞬で冷めた。

 なぜなら、レインさん一の従者であるミソラさんが『え?』と初耳そうな感じでレインさんを凝視していたからだ。

 

「……それってたった今考えた方便でしょ」

 

「あ、ばれましたか」

 

 可愛らしい仕草でてへぺろと誤魔化すレインさん。

 こうしてみると滅茶苦茶可愛くて、思わず絆されそうになってしまう。

 

「全く、言っときますけど、変な事したらギィさんに言いますよ」

 

「まあまあ、慌てないでくださいイッセーさん。さっきの恩を忘れたんですか?」

 

「それは……」

 

 先ほどの恩とはアーシア達のことだろう。

 実はレインさん、ゲームに合わせて皆の不安と言った悪感情を喰らってくれたのだ。

 感情をエネルギーとして食べることができる特性をもつ“悪魔(デーモン)”ならではの療法だ。

 お陰でゲームが終る頃にはアーシア達の不安は完全に取り除かれていた。

 確かに、こういう部分は感謝すべきだろう。

 

「……というか、むしろ、ギィ様に見つかったら、イッセーさんが私のこと庇ってくれませんか?」

 

「いやですよ!? 無茶言わないでください!」

 

 そんなことしたら俺が死ぬわ! 怒れるギィさんをなだめるなんて命がいくつあっても足りねえよ! 

 

「まあまあ、そんなこと言わず、もし、庇ってくれるのであれば、私の乳を揉んでもいいんですよぉ」

 

 ・・・・・・え? まじで? 

 

「はい。これは()()です。私がギィ様に怒られた時、無事助けることに成功したら、一揉みくらいは構いません。し・か・も、布越しではなく直に……です。何なら今ならミソラもつけますし、悪い取引ではないと思いますよ」

 

「はい! わかりました!」

 

 ミソラさんは『え? 私も?』とでも言いたげな表情だが、レインさんの望みならばこの人もおっぱいをさらけ出すくらいはするだろう。

 その魅力的すぎる“契約”につい、二つ返事で飛び込んでしまった。気付いた時にはもう手遅れ。レインさんの手により、“魂”が縛られる感覚が俺を襲った。

 

「フフフ、たかが一回揉まれる程度でギィ様の怒りから逃れられるのであれば安いものです」

 

 クソ! やられた! 

 これで俺はレインさんのスケープゴートとしてギィさんに対抗しなければならなくなってしまった! 

 正直命がいくつあっても足りねえ! 

 

「大丈夫ですよ。イッセーさんはギィ様にとってもお気に入りですし、少なくとも殺されることはありませんよ……多分……」

 

「たぶんじゃ困るんですよ!」

 

 やべえ、どうしよう! 俺の魂の枷は、少なくとも簡単に解除出きる代物ではない! 

 流石に腐っても“原初の悪魔”の力だ! 俺の“呪縛崩壊(カースブレイク)”は自分には使えないし、マジでどうしよう! 

 ゾクッ! と俺はかなり冷たい気配を感じ、慌てて振り向く。そこには冷徹な表情のミッテルトが静かにこちらを見ていた。

 

「……イッセー」

 

「いや、そんな冷めた目で見ないでミッテルト!」

 

 呆れ……というか、心底軽蔑した感じのミッテルトの冷たい視線がメチャクチャ痛い! 

 だ、だけどさ、仕方ないじゃん! 数億年間揉まれることのなかったであろう、原初の青のおっぱい! 揉めると聞けば、誰だって飛びついちゃうだろ! 

 ミッテルトの視線にいたたまれない気持ちになりつつも、俺達は帰路についた。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「勝負は五日後か。すぐだね……」

 

「そうだな……」

 

 人生ゲームの駒を進めながらゼノヴィアはいう。

 家に帰ったら部長達は何故かコスプレ大会を開いていた。

 呆気にとられる俺を余所に、部長と朱乃さん、アーシア、ゼノヴィア、小猫ちゃんがそれはそれは可愛らしい姿で俺たちを出迎えてくれたのだ。

 部長に見とれてると、朱乃さんが負けじと対抗して、気付けばいつもの大喧嘩が勃発してしまい、俺たちは隣の部屋へと避難している所だった。

 ちなみに、小猫ちゃんは俺の膝の上に座っており、柔らかいお尻の感触に脳みそがとろけそうになる。

 

「────っ!!」

 

「────っ!!」

 

 どうやら部長と朱乃さんはまだ喧嘩してるみたいだな。

 まあ、いつものことだし大事には至らないと思うけど……。

 

 くすっ。

 

 そんな俺たちを見て、アーシアは小さく笑う。

 

「ん? どうした、アーシア?」

 

「はい。楽しいなって思いまして」

 

 そう言いながら、アーシアはサイコロを振り、駒を進める。

 

「イッセーさん、私、今の生活が大好きです。みんなのことも大好きです」

 

「わかってるよ。今度のレーティングゲームは心配するな。俺が必ず何とかする。チャッチャッと終わらせて、体育祭の二人三脚で一位とろうぜ!」

 

「はい!」

 

 満面の笑みでアーシアは答えた。アーシアはディオドラなんかには絶対に渡さない! 

 俺が覚悟を改めて決めていると、部長が部屋に入室してきた。

 その姿はバニーガール! しかも、かなりエロい感じの! 

 やべえ、鼻血が出そう……。

 

「突然で悪いんだけど……」

 

『?』

 

 皆を見渡す部長に俺たちは怪訝な面持ちとなる。

 何かあったのか? 

 

「取材が入ったわ。冥界のテレビ番組に私達が出るの。若手悪魔と眷属達の特集よ。もちろん、眷属候補のイッセーにも出て貰うわ」

 

『…………』

 

 俺を含め、全員がまの抜けた表情になり……。

 

「「「「テレビ番組ィィィィィッッ!!!?」」」」

 

 絶叫が兵藤家に響き渡った。




おまけ




「……よかったんですか?レイン様、あのような下賤な奴にあんな契約して!」

ミソラはイッセーがいなくなったことを確認し、毒を吐く。
イッセーに対し、別段悪感情を持ってるわけではない。むしろ、欲望に忠実で人間らしいとある種の好感を抱いていたほどだ。
だが、今回の契約に関しては別。レインを主と仰ぐ彼女にとって、レインの身体は至高のものだ。
そんなレインの胸をいじられるなど、彼女からすればすさまじい大罪なのである。
だが、レインは意に返さない。

「フッ、問題ありません。ギィ様に怒られるほうがよっぽど危険ですからね」

そういいながら、レインは屋敷へと踵を返す。
それと同時に自らの肉片を分割させ、“偏在(ミスト)”を作り出す。
ただし、それは丸い球体だ。触るととても柔らかそうな弾力をしている。レインは肉片との繋がりを完全に遮断するとともに、その肉片を玄関に置いた。

「え~と、レイン様、それは?」

ミソラの疑問にレインは立ち止まり、悪い笑みで答える。

「……()()()……とは言いましたが、だれも()を揉ませるとは言ってません。これは乳の弾力を再現した肉片ですよ。これも立派に私の乳です。そう言い張れば問題ありません。ちゃんと直に揉ませるし、なんの不備もないでしょう」

「なるほど、さすがレイン様!」

ミソラはレインの言葉に合わせ、褒めたたえる。
確かに彼女がこの肉片を乳と言い張れば、レインの胸をいじられる(最悪の)事態は阻止できる。
ミソラは融通の利く性格であり、切り替えも速い。肉片はあくまで肉片。レインから離れ、繋がりも断った以上、これはレイン自身とは一切関係はないのだ。
つまり、イッセーはこの18禁グッズ(肌色のボール)と引き換えにギィの怒りを引き受けることになるのだ。
これは面白い……と、ミソラは邪悪な笑みで笑うのだった。

「……まあ、可哀そうですし、ミソラの乳はマジで揉ませてやりますか……」

邪悪に笑うミソラはレインのつぶやきに気付くことはなかった。
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