帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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波乱のゲームの幕開けです

 イッセーside

 

 

 

 

 

「ぷはー」

 

 俺は家の地下一階にある一室にてフルーツ牛乳を飲んでいた。

 あー、うまい! やっぱり風呂上がりの牛乳は格別だぜ! 

 夏休みの改築により、地下に大浴場が設置された兵藤家には入浴後の飲料として各種牛乳が完備されてるのだ。

 部長のこだわりらしいが、俺も向こうではずっと牛乳をあおっていたから、なんだか懐かしい気分になる。

 

「ふ~、いい湯だったの~」

 

「セラちゃん、きちんと身体は洗わないと駄目ですよ」

 

「はいなの~」

 

 そう言いながら、風呂から出たのはアーシアとセラだ。

 この二人は遊園地以来、二人でいることが多くなっており、セラもアーシアにはかなり懐いている。

 

「あ、イッセーお兄ちゃんなの」

 

「おう、セラ。なに飲む?」

 

「う~ん……今日はフルーツ牛乳で!」

 

「はいよ」

 

 セラは日替わりで飲むものを変えている。時折、牛乳以外にもお茶だったりジュースだったり、色々なものを飲むみたいだ。

 ちなみに俺は牛乳オンリーだが、味は日替わりで変えている。

 部長はフルーツ牛乳派で朱乃さんとアーシア、小猫ちゃんがノーマル牛乳、ゼノヴィアと黒歌はコーヒー牛乳派らしい。

 

「……いよいよ、明日ですね」

 

 アーシアは少し不安そうに呟く。

 まあ、無理もない。俺は負ける気さらさらないが、億が一でも負ければアーシアはあのクソ野郎の……。

 

「……大丈夫なの」

 

 俺がなんとか安心させようと考えていると、セラがポツリと呟いた。

 その瞳は真剣そのものだ。

 

「お兄ちゃんもお姉ちゃんたちもあんな奴に負けることはないの。あの眼鏡のお姉ちゃんと戦ってた映像……パワーアップしてたのを見ても、お兄ちゃんが負ける確率は0.000012%なの。それも、戦闘じゃなくてゲームのルールで負ける確率なの。だから、お兄ちゃんと戦わせれば確実に勝てるの」

 

 お、おう。

 こうして可愛いところを見るとつい忘れがちになってしまうがセラは機械生命体だ。

 根性論ではなく、データでアーシアを安心させようとしている。

 アーシアはそんなセラの言葉を聞いて少し困惑してる様子だ。

 

「まあ、セラの言う通りだ。確かに、ディオドラは不気味な奴だけど、俺が負けることは絶対にないよ。だから、安心してほしい」

 

「イッセーさん……」

 

「……それに、アーシアのためを思ってるのは俺とセラだけじゃないぜ」

 

 俺はアーシアを連れて、先程から感じていたとある気配のある部屋に向かうことにした。

 そこは大浴場の横に広がる大広間。

 映画観賞もできるし、各種トレーニングもできるという、かなり広い部屋だ。

 そこを覗いてみると、練習用の剣を振るうゼノヴィアの姿があった。

 

「よ、ゼノヴィア」

 

「……イッセーにアーシアか。セラも一緒のようだね」

 

「ゼノヴィアお姉ちゃんは特訓してるの?」

 

 セラの言葉にゼノヴィアは頷いた。

 

「ああ。ゲームも近いからね」

 

「でも、ゼノヴィアさん、先程もずっと練習をしてませんでしたか?」

 

 アーシアの言葉通り、ゼノヴィアは日に日に練習量を増やしていた。まあ、オーバーワークになると逆によくないので、要所要所で俺が止めてるんだが……。

 

「……私は木場より弱い。イッセーとは比べるまでもない」

 

 ゼノヴィアは真っ直ぐな瞳で言う。

 出会った当初は正直五分五分って感じだった。

 あの時木場が負けたのは、復讐に囚われ、焦りと視野が狭まっていたことが大きい。

 だが、木場はそこからさらに強くなった。“禁手”に至ったこともあり、より才能を開花させたと言えるだろう。

 

「前回の試合では、私はほとんどなにもできなかった。イッセーに託されたアスカロンを奪われ、呆気なく終わってしまった。今のままでは、次のゲームで足手まといになってしまう」

 

 ゼノヴィアは少しの間瞠目し、やがてアーシアを見据えた。

 

「イッセーがいるとはいえ、頼りすぎるのもよくないと思うんだ。私も、友達であるアーシアを守りたいからね」

 

「……ゼノヴィアさん」

 

 ゼノヴィアの言葉にアーシアは眼を見開く。

 そう。俺や部長たちだけじゃない。ゼノヴィアだってアーシアのことを心配していたんだ。

 

「アーシアは、私にとっても大切な友達だ。そんなアーシアを、あのような得体のしれない輩に渡したくはない」

 

 ゼノヴィアは元々悪魔祓い。相手がどのような悪魔かを見抜く眼をきちんと持ってはいるのだ。

 実際、ゼノヴィアは初対面でアーシアが神への信仰心を持ってることを即座に見抜いていたし、本質的に見抜く力を持っているのだろう。

 ゼノヴィアの言葉を聞いたアーシアはその美しい瞳から一筋の涙を流していた。

 

「お、おい、アーシア、大丈夫か?」

 

 突然の涙にゼノヴィアは少し慌てるが、アーシアは涙を拭き取り、俺たちを見据える。

 

「……ありがとうございます。ゼノヴィアさん、セラちゃん、イッセーさん。皆さんにここまで思ってもらえて、私、幸せ者ですね」

 

 そう言いながら、アーシアは花のような笑顔を見せた。

 ああ。アーシアは今まで辛い目に遭ってきた。

 だからその分、名一杯幸せにしてやるよ……。

 俺たちは決意を改め、明日のゲームに控えるのだった。

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「そろそろ時間ね」

 

 部長がそう言いながら、立ち上がる。

 決戦の日。俺たちはオカルト研究部の部室に集まっていた。

 ゼノヴィアはキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「ミッテルトはいないのか?」

 

「ええ。ミッテルトは眷属候補ではないからね。今はアザゼル先生と共に別室で観戦してるはずよ」

 

 そう言いながら、部長は中央の魔方陣に集まり、転送を待つ。

 そこで、アーシアは不安げに俺の手を握ってきた。

 俺は無言でほほ笑み、アーシアの手を握り返す。すると、緊張がほぐれたのか、アーシアは俺に微笑み返してくれた。

 ディオドラ・アスタロト……何を企んでいるのか知らないが、絶対にアーシアを渡してたまるかよ! 

 覚悟を新たに、魔法陣が光り出す。転送の時を迎えたのだ。

 

「……ここが会場か」

 

 転移した先にあったのは、だだっ広い空間だった。

 一定間隔で柱が立って並んでおり、後方には巨大な神殿の入口がある。

 ギリシャの神殿をモチーフにしたステージか。空が紫で、どことなくアダルマンさんの居城を思い出す雰囲気だ。

 ……だが、妙だな。いつまでたってもアナウンスが来ない。

 

「……おかしいわね?」

 

 部長も違和感に気付いたようだ。

 他のメンバーも訝しげにあたりを見回している。

 ────瞬間、真後ろから数多の魔方陣が出現する。

 

「……アスタロトの紋様じゃない!」

 

 悪魔は転移の際、魔法陣の紋様が家系で異なっている。

 だから、紋様を見れば、どの家系はすぐにわかるのだ。

 

「……魔法陣全て共通性はありませんわ。ただ────」

 

「全部、悪魔。しかも記憶が確かなら────」

 

 部長が紅いオーラをまといながら、厳しい目線を辺りに配らせていた。

 魔法陣から現れたのは大勢の悪魔たち。全員、敵意、殺意を漂わせながらのご登場だ。

 その悪魔たちは俺達を囲んで激しく睨んでくる! 

 数にして千人ぐらいか、さすがに数えるのが面倒くさいから、正確な数は判らないけど、そこそこの数に囲まれている。

 

「魔法陣から察するに“禍の団(カオス・ブリゲード)”の旧魔王派に傾倒した者たちよ」

 

「やっぱりか……」

 

 俺は呟きながら、冷めた目で悪魔たちを眺めていた。

 

「忌々しき偽りの魔王の血縁者、グレモリー。ここで散ってもらおう」

 

 囲む悪魔の一人が部長に挑戦的な物言いをする。

 やはり、旧魔王を支持する悪魔にとってみれば、現魔王とそれに関与する者たちが目障りなのだろう。

 そして、それだけじゃない。隠れてこそこそとアーシアを狙う影が一つ……。

 

「させねえよ!」

 

「!?」

 

 俺はとっさにアーシアを引っ張り、距離を開ける。

 先ほどまでアーシアがいた場所にはくそ野郎────ディオドラ・アスタロトの姿があった。

 

「くっ、気付かれていたとはね」

 

「バレバレだ。俺達が目を奪われてる隙にアーシアを奪おうって魂胆だったんだろうが、当てが外れたな」

 

「ディオドラ!? い、イッセー! どういうこと!?」

 

 部長は状況の移り変わりについていけないのか、俺とディオドラ、そして悪魔たちを交互に見ながら訪ねる。

 

「こいつは“禍の団”と繋がってたんですよ。多分、若手の交流会が始まるずっと前からね」

 

 それを聞いた部長は憤怒の形相でディオドラを睨む。

 周りのメンバーも同様だ。

 当然だろう。悪魔にとって、大事なものであるはずのレーティングゲームで不正どころじゃない……テロの手引きをしたうえ、アーシアを奪い去ろうとしたんだ。

 

「あなた、“禍の団”と通じてたというの? 最低だわ。しかもゲームまで汚すなんて万死に値する! 何よりも私のかわいいアーシアを奪い去ろうとするなんて……ッ!」

 

 部長のオーラがいっそう盛り上がる。

 俺もブチギレてる。アーシアが危険だから抑えてるけど、今すぐコイツの面をぶちのめしたいくらいにはな。

 

「彼らと行動したほうが、僕の好きなことを好きなだけできそうだと思ったものだからね。まあ、気付かれてるとは思わなかったけど……」

 

「真面目に言ってるなら、頭見てもらったほうがいいぜ。不自然すぎるんだよ。シーグヴァイラさんとの戦い。……“蛇”だっけ? あれを使ったんだろ?」

 

 何度も言うが、シーグヴァイラさんとディオドラならば、圧倒的にシーグヴァイラさんのほうが上だ。

 にもかかわらず、あれ程のパワーアップを急激にしたのは、カテレアと同じく“蛇”と呼ばれる強化アイテムを使ったからだろう。“魔王種”を得ていないコイツでは、魂の結晶を使うことはできないしな。

 アーシアはぎゅっと俺の服をつかむ。俺は安心させるため、アーシアの髪を撫でた。

 

「アーシアはお前には渡さねえよ!」

 

「アーシアは私の友達だ! おまえの好きにはさせん!」

 

 ゼノヴィアは俺が貸したアスカロンを取り出し、ディオドラに向ける。

 その瞳は怒りで燃え上がっていた。

 

 ────その時だった。

 

「よう♪ また会ったな」

 

「────っ!?」

 

 ドゴッ!! 

 

 俺は何者かに鳩尾に叩き込まれた強烈な一撃で後方まで吹き飛ばされた! 内臓を痛めたらしく、口の中が血の味で苦い! 

 

「なっ、イッセー!?」

 

 部長の声が響く。

 ……問題はなさそうだ。痛えけど、“聖人”の回復力なら数分で完治する程度の傷だ。

 

「も、問題ないです……っ!?」

 

 俺はすぐに立ち上がり、そして気付く。先ほどまで、確かに手の中にいた、大事な存在がいないことに……。

 

「イッセーさん!!」

 

「────っ、アーシア!!」

 

 俺は先ほどまで立っていた場所を見ると、黒いローブを羽織った男がアーシアを抱えていた。

 男は俺を興味深そうに一瞥すると、宙へと浮かび上がっていった。

 それを見て、ディオドラも悪魔の翼を羽ばたかせ、男のほうへと飛んでいった。

 

「ほれ、お坊ちゃん。大事な花嫁は離しちゃだめですよ」

 

 男は気だるそうにアーシアをディオドラへと渡す。すると、ディオドラは醜悪な笑みを浮かべながら高笑いをしだした。

 

「ハハハ! ついにアーシアを手に入れたぞ! ありがとう。君にはぜひとも礼を言いたい」

 

「……いえいえ、仕事ですからね」

 

 興味なさそうにつぶやく男に怪訝そうな顔をしながらも、アーシアを抱え、宙へと浮かぶディオドラ。

 ……ローブの男は濃密ながらも鋭い気配とオーラをその身体から醸し出している。そのオーラに、俺は見覚えがあった! 

 

「てめえ……カグチ!!」

 

「よう、久しぶりだな。兵藤一誠」

 

 男はローブを取り、その姿をあらわにする。

 瞳からは獲物を見極めるような鋭い眼光。特徴的な鬼のような角。

 神祖の高弟の一人、“カグチ”の姿がそこにあった。

 

 

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