帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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奪われたアーシアです

 イッセーside

 

 

 

 

 

「なんでてめえが……」

 

 俺は驚愕とともにカグチを睨む。

 俺の問いかけにカグチは気だるそうに答えた。

 

「ああ。実は俺たち、少しの間“禍の団”に支援をしてやることになってね、その一環さ。正直、雑魚シスターの捕縛なんざどうでもいいんだけど、こいつらの計画は利用するのにちょうど良さそうだったからな……」

 

 ……最悪だ。“禍の団”はまだいい。

 あの悪魔たちも、俺が戦えば三分で片が付く程度だしな。だが、こいつは話が別だ。

 今の一撃もメロウ以上の鋭さだった。そのうえ、前回同様まるで気配が感じ取れなかったのだ! 

 咄嗟にガードしたが、正直かなりのダメージだ。

 

「悪いな。なんか不意打ちしちまって……。まあ、お前なら数分もすれば回復するだろう? 個人的にはお前とは普通に戦いたいんだが、今回俺はお坊ちゃんの補佐ともう一つやることがあるからな……」

 

 そう言いながら、カグチはディオドラの後ろに移動する。

 ディオドラはいびつで醜悪な表情を見せながら、俺達を嘲笑う。

 

「ははは! 一撃でダウンとは、“歴代最強の赤龍帝”が聞いてあきれるね! 所詮人間、魔王の血族たる僕が出るまでもないということかな? ハハハハッ」

 

 クソッ! 好き放題言いやがって! 

 だが、今飛び掛かればディオドラに抱えられているアーシアの負担になっちまうし、そもそもカグチがそれを許さないだろう! 

 

「アーシアを返せ!」

 

「ゼノヴィア!?」

 

 ゼノヴィアは翼を広げ、ディオドラに斬りかかる。

 カグチは興味がないのか、ゼノヴィアを素通りさせるが、ディオドラはゼノヴィアに魔力弾をぶつけようとした。

 躱すことはできたものの、翼に慣れていないゼノヴィアは体勢を崩し、そのまま落下してしまった。

 ディオドラは笑いながら、高らかに宣言する。

 

「ま、最後のあがきをしていてくれ。僕はその間にアーシアと契る。意味はわかるかな? 僕はアーシアを自分のものにするよ。追ってきたかったら、神殿の奥まで来てごらん。素敵なものが────」

 

「ふざけんな! アーシアを返せ!」

 

 ディオドラの言葉に俺は即、鎧を纏い、ディオドラをぶん殴ろうとする! 

 瞠目するディオドラはそれに反応できないでいる! 入った! 

 だが、横から伸びた腕がそれを阻止する! 俺の拳をカグチが片手で受け止めたのだ! 

 

「ふむ、すごい拳だな。腕がしびれるのはいつぶりだ……よっ!」

 

 ギリギリとしばらく交錯したが、やがて、カグチの高まった魔力により、吹き飛ばされてしまう! 

 ゼノヴィア無視するなら、俺のことも無視しろよ! 

 

「そいつは無理な相談だ。聖剣使いはともかく、お前は危険だからな。お坊ちゃん達の計画自体にそこまで興味はないけど、契約は契約。少なくとも今この場では邪魔させてもらうぜ」

 

「か、感謝するよカグチ! では、また会おうか! 赤龍帝!」

 

「い、イッセーさん! ゼノヴィアさん! いっ────」

 

 助けを求めるアーシア! 俺はとっさに飛び出そうとするが、「ぶぅぅん」と空気が打ち震え、空間が歪んでいく。ディオドラとアーシアさんの体がぶれていき、次第に消えていった。

 

「アーシアァァァァァァァ!」

 

 クソ! 何が心配するなだ! 何がアーシアを守るだ! 俺は自分への怒りと目の前の存在への怒りを感じながら、敵を見据える! 

 

「おお、怖い。やっぱりお前は極上だ。是非とも戦ってみたいぜ」

 

「なら、今すぐに味合わせてやろうか?」

 

 コイツは許せねえ! 俺はカグチに拳を構えるが、カグチは面倒くさそうに髪を搔きむしった。

 

「俺は今戦ってもいいけど、お坊ちゃんの言ってたこと忘れたのか? 速くいかねえと手遅れになるぞ?」

 

 いけしゃあしゃあと……誰のせいだと思ってやがる! だが、カグチは一向に構える気配を見せないでいる。

 

「俺の仕事は顧客であるお坊ちゃんの作戦の手伝い、及び()()()の力を測ることだ。お坊ちゃんの手伝いはあくまでシスターを攫うまでだから、ここらでお暇させてもらうわ。個人的には戦いたいんだが、任務優先。悪いな兵藤一誠。また会おう」

 

 そう言うと、カグチはその場にいたことが嘘みたいに消えていった。

 ……どういう権能だよ!? 俺は“国津之王(オオクニヌシ)”の“万能感知”を最大限に高め、“空間支配”で空間のゆらぎを逐一完璧に把握していた! 

 それにも関わらず、あいつは一瞬で姿を消した……。

 いや、いまはいい! 考えるだけ時間の無駄だ! 今優先すべきはアーシアだ!

 

「イッセー! 危ない!」

 

 部長の声が聞こえる。

 俺のすぐ後ろには武器を構え、斬りかかろうとする複数の悪魔たちがいる。

 …………だからなんだよ? 

 

 ガキン! 

 

「……は?」

 

 俺の身体を切り裂こうとし、逆に砕けた刃を見て放心する悪魔。

 俺はその悪魔の顔面に容赦なく拳を入れてやった。

 

「今、それどころじゃねえんだよ……。闘うってんなら……容赦はしねえぞ?」

 

 ドン! と大地が鳴動する。

 “英雄覇気”を全開に放ち、そのオーラをもって、悪魔たちを吹き飛ばしたのだ。

 

「な、なんだ!?」

 

「ひ、ひい!」

 

「う、うろたえるな! 所詮は人間、我らの敵でぐばっ!?」

 

 指揮官らしき上級悪魔を殴り飛ばし、はるか上空へと吹き飛ばす。

 うろたえる悪魔たちを尻目に俺はう鬱憤を晴らすかのように拳を握る。

 簡単なことだ……。こいつら全員ぶちのめしてとっととディオドラのところへ行き、奴をぶん殴ってアーシアを取り戻せばいいだけの話だ。

 ディオドラァァァッ! てめぇは許さねえ! 

 悪魔達が魔力の弾を一斉に放つ! だが、俺はそれを全て拳でねじ伏せる! 

 驚く悪魔を見ながら俺は気弾を放ち、薙ぎ倒す。

 時間はかけられねえ……とっとと終わらせて……。

 

「キャッ!」

 

 そんな中、朱乃さんの悲鳴が上がる。

 とっさに視線を移すと……そこには北欧神話の神“オーディン”が朱乃さんのスカートを捲り、パンツを覗いていた! 

 

「オイ! クソジジイ! 何しやがる!!」

 

 俺はとっさに朱乃さんを抱え、距離をおいた。

 

「全くっすよ……イッセーと同等のスケベっすね……」

 

「なの!」

 

 見ると、オーディンさんの後ろにはミッテルトに黒歌、セラも控えていた。

 

「オーディン様! 黒歌にセラも! どうしてここへ?」

 

 オーディンさんは顎の長い白髭を擦りながら言う。

 

「うむ。話すと長くなるがのぅ。簡潔に言うと、“禍の団”にゲームをのっとられたんじゃよ」

 

 やはり、ゲーム自体が乗っ取られていたのか! 

 ディオドラめ、面倒くさいことしやがって……。

 

「いま、運営側と各勢力の面々が協力体制で迎え撃っとる。ま、ディオドラ・アスタロトが裏で旧魔王派の手を引いていたのまでは判明しとる。先日の試合での急激なパワー向上も赤龍帝の小僧の言うように、オーフィスの“蛇”でももらいうけていたのじゃろう。だがの、赤龍帝の小僧はともかく、お主らはこのままじゃと危険じゃろ? 救援が必要だったわけじゃ。しかしの、このゲームフィールドごと、強力な結界に覆われててのぅ、そんじょそこらの力の持ち主では突破も破壊も難しい。特に破壊は厳しいのぅ。内部で結界を張っているものを停止させんとどうにもならんのじゃよ」

 

「なるほど、アザゼル先生の用意した助っ人がアンタってわけか……。で、どうやって入ったんだ?」

 

「ミーミルの泉に片目を差し出したとき、わしはあらゆる魔術、魔力、その他の術式に関して詳しくなったんじゃよ。結界に関しても同様」

 

 オーディンさんはそう言いながら、左の隻眼の方を俺達に見せる。

 そこには水晶らしきものが埋め込まれ、眼の奧に輝く魔術文字を浮かび上がらせていた。

 ……なるほど、“神話級(ゴッズ)”の水晶を義眼として眼に移植してるのか……。面白いこと考えるな……。

 

「うちもアザゼル先生に言われてオーディンさんと行動することになったんすよ。まあ、カグチが出てくるのは予想外っしたけどね」

 

「私達はミッテルトに付いて行ってたまたまこの事を知ってね……本当は止めようとも思ったんだけど……」

 

「アーシアお姉ちゃんが拐われて、私も放っておけないの!」

 

 曰く、セラはオーディンさんの転移術式に強引に着いていったそうだ。

 黒歌も咄嗟のことで止める間もなかったらしい。……いや、違うな。

 黒歌も仲間思いだし、なんのかんのでコイツもアーシアを助けたいと思ったわけだ。

 ちなみに、ゲームが乗っ取られた時点で中継は切れているため、黒歌のことが知られることはないという。……徹底してるな。

 

「相手は北欧の主神だ! 討ち取れば名が揚がるぞ!」

 

 オーディンさんの登場で少し落ち着いた俺たちを尻目に、旧魔王派の悪魔はオーディンさんにターゲットを移した。

 悪魔たちはそのままオーディンさん目掛けて一斉に魔力の弾を撃ってきた。

 バカだろ……力の差すらわからないのかよ……。

 案の定、オーディンさんは杖をトンと地に突くだけで、魔力弾は弾け飛び、消滅した。

 

「本来ならば、わしの力があれば結界も打ち破れるはずなんじゃがここに入るだけで精一杯とは……。はてさて、相手はどれほどの使い手か。ま、これをとりあえず渡すようにアザゼルの小僧から言われてのぅ。まったく年寄りを使いにだすとはあの若造どうしてくれるものか……」

 

 そうぶつぶつと言いながらもオーディンさんはグレモリー眷属の人数分の小型通信機を渡してくれた。

 

「ほれ、ここはこのジジイに任せて神殿のほうまで走れ。ジジイが戦場に立ってお主らを援護すると言っておるのじゃ。めっけもんだと思え」

 

 そういって杖を俺たちに向けると、俺たちの体を薄く輝くオーラが覆う。

 

「それが神殿までお主らを守ってくれる。ほれほれ、走れ」

 

「おお、ありがとうございます。オーディンさん」

 

 確かに、このオーラがあれば、無駄な戦闘など一切せず、アーシアのもとに行くことができそうだ。

 時間もどれ程残されてるかわかったものじゃないし、ここはオーディンさんに任せた方が良さそうだな。

 

「────グングニル」

 

 オーディンさんは槍を携え、それを悪魔たちに一撃繰り出す! 刹那────。

 

 ブゥゥゥゥウウウウンッ! 

 

 槍から極大のオーラが放出され、空気を貫くような鋭い音が辺り一面に響き渡る。

 悪魔たちはその一撃で消し飛び、数十人にまで数を減らしている。

 俺の“覇竜絶影拳(ドラゴニックバースト)”と変わらない威力ありそうだな。流石は神様ってところか! 

 

「なーに、ジジイもたまには運動しないと体が鈍るんでな。赤龍帝の小僧はそやつらを守ってやれい。それがおまえさんの役割じゃて。さーて、テロリストの悪魔ども。全力でかかってくるんじゃな。この老いぼれは想像を絶するほど強いぞい」

 

 そう言いながら、オーディンさんは“神霊覇気”を放出し、悪魔達を威圧した。

 流石神様、大したものだぜ。EP200万越えは伊達じゃないってことか。

 

「ありがとな、オーディンさん! 皆、行こう!」

 

「すみません! ここをお願いします!」

 

 部長とともに、オーディンさんに一礼すると、

 

 

 

 

 

 *****************************************

 

 

 

 

 

 神殿の入り口に入るなり、俺達はオーディン様から受け取った通信機器を取り付ける。

 すると、聞き覚えのある声が響いてきた。

 

『無事か? こちらアザゼルだ。オーディンの爺さんから渡されたみたいだな』

 

 ────先生だ。

 

『言いたいこともあるだろうが、まずは聞いてくれ。このレーティングゲームは“禍の団”旧魔王派の襲撃を受けている。そのフィールドも、近くの空間領域にあるVIPルーム付近も旧魔王派の悪魔どもがうじゃうじゃしている。だが、これは事前にこちらも予想していたことだ。現在、各勢力が協力して旧魔王派の連中を撃退している』

 

 まあ、予想はされてただろう。

 何せ、あのディオドラのパワーアップは明らかに不自然だったし……しかも、実は意外なところにも“禍の団”の関与があったみたいだ。

 

『リアスの耳には入っているだろうが、最近、現魔王に関与する者たちが不審死するのが多発していた。裏で動いていたのは“禍の団”旧魔王派。グラシャラボラス家の次期当主が不慮の事故死をしたのも実際は旧魔王派の連中が手にかけてたってわけだ』

 

 あのヤンキー悪魔の前の次期当主候補は“禍の団”に殺害されたのか……。

 グラシャラボラスは現アスモデウスが排出された家柄だ。現魔王の血筋だから、旧魔王の派閥により、狙われたのだろう。

 

『首謀者として挙がっているのは旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫。俺が倒したカテレア・レヴィアタンといい、旧魔王派の連中が抱く現魔王政府への憎悪は大きい。このゲームにテロを仕掛けることで世界転覆の前哨戦として、現魔王の関係者を血祭りにあげるつもりだったんだろう。ここにはちょうど、現魔王や各勢力の幹部クラスも来ている。テロリストどもにとって襲撃するのにこれほど好都合なものもない』

 

 つまり、俺達の試合は最初から旧魔王派に狙われていたということだ。

 敵のターゲットは現魔王と現魔王の血縁者────部長。そして、観戦しに来ていた各勢力の頭であるオーディンさんもターゲットの一人だったのだろう。

 あの悪魔たちもそんなこと言ってた気がする。ここまでは俺も想定していた。

 ……だが、カグチが関与してくるのは正直予想外だったな。

 先生曰く、確認されているメロウの仲間────神祖の高弟の数は3名。そのうちの一人であるメロウを倒した今、少なくとも直接的な関与はしばらくはしてこないと予想してたんだが……。

 

『あのカグチとかいうやつの所属する集団は謎が多い。数万年前から活動してるのは確かだが、詳しいことは何もわかってないからな。もしかしたら、他にも同格の仲間がいる可能性だってある』

 

 そりゃそうだ。今回は前情報をうのみにしてしまった俺の失敗だ。

 挽回するためにも、絶対にアーシアは助けないとな……。

 

『あっちにしてみればこちらを始末できればどちらでもいいんだろうが、俺たちとしてもまたとない機会だ。今後の世界に悪影響を出しそうな旧魔王派を潰すにはちょうどいい。現魔王、天界のセラフたち、オーディンのジジイ、ギリシャの神、帝釈天とこの仏どもも出張ってテロリストどもを一網打尽にする寸法だ。事前にテロの可能性を各勢力のボスに極秘裏に示唆して、この作戦に参加するかどうか聞いたんだがな。どいつもこいつも応じやがった。どこの勢力も勝ち気だよ。いま全員、旧魔王の悪魔相手に暴れているぜ』

 

 どの勢力もテロには屈しない姿勢というわけだ。まあ、言っちゃ悪いが大勢の覚醒魔王級(神様)相手じゃあの程度物の数ではないだろう。

 

「……このゲームはご破算ってわけね」

 

『悪かったな、リアス。戦争なんてそう起こらないと言っておいて、こんなことになっちまっている。今回、お前たちを危険な目に遭わせた。いちおう、ゲームが開始する寸前までは事を進めておきたかったんだ。奴らもそこで仕掛けるだろうと踏んだからな。お前たちを危ないところに転移させたのも確かだ。本当に済まないと思ってるよ』

 

「もし、私たちが万が一にも死んでしまったらどうするつもりだったんだ?」

 

 ゼノヴィアが何気なく聞くと先生は真剣な声音で言った

 

『もしそうなった場合は俺もそれ相応の責任を取るつもりだった。俺の首でことが済むならそうした』

 

 ────先生は死ぬつもりだったんだ。

 そこまで覚悟して、旧魔王派の連中をおびき寄せたのだろう。

 全ては今後の勢力の平和のために……。

 だが、それはそれ、これはこれだ。俺は先ほど起きた出来事を先生に伝える。

 

「先生。アーシアがディオドラの野郎に連れ去られました。俺達はアーシアを助けに行きます!」

 

『────っ、そうか。分かった。イッセーたちはともかく、リアスたちを危険なところに置けないんだが……一応聞く。退くきはあるか?』

 

「ないわ。悪いけど、私達はこのまま神殿に入ってアーシアを救うつもりよ。ゲームはだめになったけど、ディオドラとは決着つけないと気が済まないわ。私の眷属を奪うことがどれほど愚かか教えこまないといけないの!」

 

 部長の言葉を聞き、先生はしばし考えたのち、告げる。

 

『────わかった。イッセー、ミッテルト、黒歌。しっかりこいつらを見ててほしい。お前達がいるなら、俺も少しは安心できる。そいつらのことは任せる。……だが、くれぐれも油断はするなよ。このフィールドは“禍の団”所属の神滅具所有者が作った結界に覆われているために、入るのはなんとかできるが、出るのは不可能に近いんだよ。────神滅具“絶霧(ディメンション・ロスト)”。結界、空間に関する神器のなかでも抜きんでているためか、術に長けたオーディンのクソジジイでも破壊できない代物だ』

 

「了解です!」

 

 俺は気合を入れ、アザゼル先生の言葉にこたえる。

 

『最後にこれだけは聞いていけ。奴等はこちらに予見されている可能性も視野に入れておきながら事を起こした。つまり、多少敵に勘づかれても問題ない作戦があると言うことだ』

 

「つまり、相手は隠し玉を持っている可能性があると?」

 

『そういうことだ。それが何なのかはまだ分からないが、このフィールドが危険なことには変わりはない。ゲームは停止しているため、リタイア転送は無い。そちらにはイッセー達がいるから一応は大丈夫だとは思うが、絶対ではない。そのことを肝に銘じ、十分に気をつけてくれ』

 

 そこで先生との通信は終わった。

 隠し玉……一瞬、カグチの事かとも思ったが、違う。もしそうなら、ディオドラは最後までカグチを自分に控えさせていたはずだ。

 そもそも気になるのはアーシアが拐われた理由だ。ディオドラの妄執……だけではないだろう。そんなくだらないことなら、そもそも“禍の団”は協力しようともしないだろう。

 奴らがなにかを企んでいて、それにアーシアが必要ということか? 

 だとしたら、早くアーシアを助けないと。

 

「早いところ、アーシアちゃんを奪還した方がよさそうだにゃん」

 

 黒歌も俺と同じ結論に至ったのだろう。部長はそれに頷いた。

 

「分かったわ。それで、アーシアの位置は分かるかしら?」

 

「もちろんにゃん。あの神殿の奥、そこにアーシアちゃんとあのクソ悪魔がいるにゃん」

 

 吐き捨てるように言う黒歌。黒歌的にもディオドラは以前の主を思い出してしまい、かなり不愉快らしい。

 黒歌の言葉に小猫ちゃんも肯定する。

 

「はい。姉様の言うとおり、神殿の奧からアーシアさんとディオドラの気を感じます。このまま突っ切りましょう」

 

 俺達は無言で頷き合うと神殿の奧へ向かって走り出した。

 

 

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