イッセーside
最深部の神殿。俺たちが内部に入っていくと、前方に巨大な装置らしきものが姿を現した。
壁に埋め込まれた巨大な円形の装置で、あちこちに宝玉が埋め込まれている。
これ自体が何らかの魔方陣を形作る巨大術式のようだ。
────っ!
俺は装置の中央を見て、叫んだ。
「アーシアァァァァッ!」
装置の中心にはアーシアが張り付けにされていた。
見た感じ、外傷は無いし服も破れている様子はない。良かった! どうやら間に合ったようだな!
「やっと来たんだね」
装置の横から姿を現したのはディオドラ・アスタロトだった。
やさしげな笑みが俺の怒りを更に高める! こいつは俺がぶん殴る!
「……イッセーさん?」
アーシアが顔を上げる。
目元が真っ赤に腫れ上がり、涙の跡が見えた。
腫れ上がり方からして、尋常じゃない量の涙を流したのだろう。
俺はそれを見て、嫌な結論にたどり着いた。
「……ディオドラ。おまえ、アーシアに話したのか?」
先程、フリードから聞かされたこと。
あれは絶対にアーシアに聞かせてはならないものだ。
だが、ディオドラはニンマリと微笑む。
「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか? 本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」
アーシアがすすり泣き始めている。
「……最低だにゃん」
「こいつ……許せないの……」
黒歌とセラはそれを見て、静かに魔力を高める。
他の皆も同様だ。目に見えるほどに激怒していた!
ところが、ディオドラはそれに気付かず話を続ける。
「でも、足りないと思うんだ。アーシアにはまだ希望がある。そう、君たちだ。特にそこの薄汚れた赤龍帝。君がアーシアを救ってしまったせいでら僕の計画は台無しだよ。全く、偶然その場にいた人間がまさか赤龍帝とは思わなかった。まあ、人間ごときに倒されたあの堕天使も情けないったらありゃしないけどね。おかげで計画は遅れてしまったけど、アーシアはついに僕の手元に帰ってきた。これで思う存分アーシアを楽しめるよ」
「黙れ」
こいつは最初に見たときから小悪党だと感じていた。
だが、その実態はそれを遥かに超越した外道だ。
こんなクソ野郎がアーシアに愛を語ったというだけで虫酸が走る!
「アーシアは処女だよね? 僕は処女を調教するのが大好きなんだ。眷属たちも最初は嫌がってたけど、やがては従順になっていくんだ。アーシアも同じさ。でも、その前にまずは君を倒させてもらおうかな? ボロボロになった君の目の前で無理矢理抱くのも面白そうだ」
「殺す!」
その言葉に俺の怒りは頂点に達した。セラに至っては、既に飛び出そうとしてる────いや、それは他の皆も同じだ。
だが、俺は飛び出そうとするセラを手で制した。
「お兄ちゃん!? 何を……」
「部長。セラ。皆、ここは俺に任せてくれ」
俺の言葉と怒気を感じ取ったのだろう。皆は一瞬眼を瞑り…………。
「────手加減をしては駄目よ」
「わかったの。その代わり、あの生ゴミはしっかり処理するの!」
部長とセラのお許しが出た。
コイツには地獄を見せてやる。
俺は凄まじい殺気とオーラを放ち、ディオドラに拳を構える。
「……ディオドラ。てめえには真の恐怖と絶望を味あわせてやるよ」
「アハハハ、凄い殺気だね! これが赤龍帝! でも、無駄さ! 僕もパワーアップしているんだ! オーフィスからもらった“蛇”でね! キミなんて瞬殺────」
ドゴオオオオオオオオオオオンッ!!!
俺は奴が言いきる前に拳を鋭く打ち込んだ。
「……がっ」
ディオドラの身体が壁にめり込み、巨大なクレーターを作り出す。
ディオドラは内容物と血を吐き出し、その場に突っ伏した。
「瞬殺……とか言ってたな? してみろよ」
ディオドラは腹部を押さえながら、後ずさりをする。
その表情からはあの胡散臭い笑みが消えていた。
「ば、馬鹿な! 鎧すら纏ってないのにどうして!?」
そう。今の俺は鎧を纏ってない。素の一撃だ。
理由は簡単だ。誇り高き“赤龍帝”の力はコイツごときには勿体ない。
こんな奴に使うだけでドライグまで汚れそうだ。
「お前ごときには使うまでもないんだよ。以前、人間である俺のことを蛆虫とか言ってたよな? どうした? 蛆虫の一撃でもうダウンか?」
ディオドラは手を突き出すと、無数の魔力弾を展開した。
「ぐっ……ふざけるなよ! 僕は上級悪魔だ! 現魔王ベルゼブブの血筋なんだぞ!」
ディオドラは無数の魔力弾を雨のように俺にぶつける。
だが、俺はそれを避けない。避けるまでもない。
この程度、鎧を纏わずともオーラで身を包めばダメージにすらならないんだ。
「そ、そんな馬鹿な! なんで生身の人間がこれをくらって生きていける!?」
ディオドラはその光景に信じられないように叫ぶ。
俺はゆっくり歩いていき、奴の眼前まで迫った。
「ひ、ヒィ!?」
ディオドラは攻撃を止め、距離を取ろうとする。
だが、俺はそれを先回りして、ディオドラの目の前に立ちふさがった。
「なっ!?」
それを見たディオドラは悲鳴をあげながら幾重にも防御障壁を展開する。
…………で?
バリンッ!!
俺の拳は防御障壁を全て壊し、ディオドラの顔面に突き刺さる。
ゴン!
あの程度の障壁、スキルを使うまでもない! 俺にとってはあってないようなものだ!
それにしても、気持ちいい! これほど気分が爽やかになる一撃も珍しい!
ディオドラは顔から血を噴出させ、涙を溢れさせていた。
「……痛い、痛いよ! どうして! 僕の魔力は当たったのに! オーフィスの力で最強になったはずなのに!」
俺は喚くディオドラを無視して顎を蹴りあげる。
そして、そのまま一撃! 二撃! と連続して拳を叩き込む!
「ぐわっ! がはっ!」
更にもう一発! 顔面に再び拳をめり込ませ、ディオドラを地面に叩き付ける!
「ありえない……。たかが蛆虫ごときにぃぃ……ぐばっ!」
ディオドラは苦し紛れに障壁を展開するが、俺の拳を防ぐにはまるで足りてない。
俺は障壁なんて一切気にせず、ディオドラを殴り続ける。
「ふ、ふざけるな! この腐れドラゴンがぁぁぁぁ!!」
防御は無駄と悟ったのか、ディオドラは至近距離から魔力弾を俺の顔面にたたきつける。
すると、魔力弾は俺の顔に着弾し、大きな音とともに爆発する。
流石に顔面だ。精神生命体といえど、肉体は生身なわけだし、ツーっと少し鼻血が垂れる感覚がしたが、正直全くダメージになってない。
だが、ディオドラは煙から垂れた血を見て何か勘違いしたらしく、狂ったように笑い出す。
「ハハハハハハ! ほら見たことかっ! 上級悪魔をなめるなよっ! たかが人間がこの僕に勝てるはずないんだっ!」
そう言いながらディオドラは笑うが、煙が収まるにつれて徐々に笑いも収まっていく。
鼻血を流しただけで、まるでダメージを与えていないことに気付いたのだろう。
「────で?」
ドガンッ!
俺はディオドラへの攻撃を再開した。
ディオドラは俺の拳を受け、再び地面へと転がり落ちる。
「勝てないってことがわかったか? 言ったろ? お前には真の恐怖と絶望を味合わせてやるって……」
鼻血をぬぐい、俺は吹き飛んだディオドラに近づいていく。
床に落ちたディオドラはゴキブリみたいに地を這いながら叫ぶ。
「嘘だ! 何かの間違いだ! アガレスにも勝った! バアルにも勝つ予定だ! 才能のない大王家の跡取りにも、情愛深いグレモリーにも、ましてや人間ごときが相手になるはずがないんだぁ! ぼ、僕はアスタロト家のディオドラなんだぞ!」
……この程度の力でこいつはサイラオーグさんに勝つつもりだったのか? 映像から見たサイラオーグさんの一撃は、俺にダメージを与えるに足るものだった。
だが、こいつは“蛇”を使ってもこの程度。部長もタイマンでなら苦戦するだろうが、言ってしまえばその程度だ。
部長たちも会長戦の時に比べ、強くなってるし、仮にこれが通常のゲームでも部長たちが勝っていただろう。
ディオドラは今度は魔力で円錐状の物を作り出し、俺にぶつけようとする。
ミサイルみたいな感じだが、俺には通じない。俺はそれをすべて拳で相殺しながら徐々にディオドラに近づき……。
メキッ……。
鈍い音が神殿にこだまする。俺はディオドラの太ももを蹴り飛ばし、骨を砕いたのだ。
「ぐああああああっ!?」
あまりの痛みに絶叫をあげるディオドラ。
だが、俺はそれにかまわず蹴りを入れてやる。アーシアはもっと傷ついてるんだぞ?
「おいおい、どうした? 上級悪魔なんだろ? 意地を見せてみろよ」
部長からは手加減するなと先ほど言われたが、実は俺は手加減している。
「俺ん家のアーシアを泣かすんじゃねえよ!」
コイツに騙され、アーシアは深い傷を負ったんだ! もう二度とコイツにアーシアを近づけたりしない! コイツにはトラウマを刻み込んで、二度と俺達に関われないようにしてやる!
「アーシアを、俺の家族を傷つけるやつは例えどんなやつでもぶちのめす!」
俺はディオドラの胸ぐらをつかみ、全身に蹴りと拳を放つ!
気絶はさせないように、体の各部を破壊し、痛みを与えながら、ディオドラの身体を壊していく。
ディオドラは数秒もたたないうちのぼろ雑巾のようにズタボロになっていった。
それでも気を失うことができないため、うつろに目を開けているが、その目からは怯えの色しかなかった。
『相棒。そいつの心はもう終わりだ。────そいつの瞳はドラゴンの恐怖を刻み込まれたもののそれだ』
……そうか。ならばここまでだな。
コイツはもう立ち直ることができないだろう。そうなるように、意識を保たせていたわけだしな。
俺はボロボロになったディオドラを部長たちのほうに投げる。
そんなディオドラをにらみながら、ゼノヴィアは訪ねる。
「殺さないのか? アーシアにまた近づくかもしれないし、今この場で首をはねたほうがいいのでは?」
「そうだよ。こんな生ごみ、生かしておく必要がないの!」
アーシアととくに仲のいい二人は殺意がマックスだ。
特にセラは、普段からは想像もつかないほどに凶悪で冷たい瞳をしている。
だが、俺は首を横に振った。
「……こんな奴でも、一応は現魔王の血筋だ。殺したらサーゼクスさん達に迷惑をかけるかもしれないし、そのとばっちりが部長に行く恐れもある」
「……わかった。私はイッセーが言うなら私はやめる」
「……わかったの。リアスお姉ちゃんにも迷惑がかかるかもしれないし、今回は引いてあげるの」
そう言いながら、ゼノヴィアとセラは矛を収めるが、心中納得はしてないだろう。
「まあ、生き地獄は味合わせてやったし、大丈夫だろ。不安なら、今この場で手足を叩き折るくらいはするか?」
「ひ、ヒィ!」
俺の言葉にディオドラはうずくまり、ガタガタと震えていた。
「……いや、確かにこの様子なら大丈夫かもしれないな。だが、それでも再びアーシアに近づくようだったら────」
「……そんなことになったら、そんなの関係ないの────」
「あぁ、その時は仕方がない────」
俺とゼノヴィア、セラはそれぞれの武器をディオドラに向けた。
「「「殺す」」」
「もう二度とアーシアに近づくな」
俺達の声にディオドラは恐怖で瞳を潤ませ、何度も何度も頷いた。
俺達はそんなディオドラを無視して急いでアーシアのもとへと駆ける。
「アーシア!」
装置のあるところへ皆が集合していった。
「イッセーさん! 皆さん!」
俺はアーシアの頭を優しくなでてやる。
「助けに来たぞ、アーシア。必ず守るって言ったのに、怖い目に合わせて本当にゴメンな」
俺が言うとアーシアは首を横に振った。
「私は大丈夫です。イッセーさんが……皆さんが助けに来てくれると信じてましたから」
「そっか」
安堵したのか、アーシアは嬉し泣きをしていた。
よし、アーシアを救出したら安全な場所を確保して、俺も先生達のところに加勢しよう。
……まだカグチが残っているしな。
アーシアを装置から外そうと木場達が手探りに作業をし始めていた。
────だが、少しして木場の顔色が変わる。
「……手足の枷が外れない」
何!?
俺は急いでアーシアの枷を解析し、その術式内容を閲覧する……っ!?
な、なんてこと考えやがる! “禍の団”の奴ら、これが目的だったのか!
「……多分、これは先生が言っていた結界系最強の神器“
「なんですって!?」
俺の言葉に部長たちが驚く。
会長が使っていた手と同じだ。つまり回復の能力を反転させることで俺たちを一網打尽にするつもりだ。
「効果範囲はわかるかい?」
その恐ろしさを身をもって知っている木場はさらに問いだす。
「……このフィールドと、観戦室」
その答えに全員が驚愕した。
アーシアの回復の効力は凄まじい。
もしも、それが増幅されて反転させられたら……っ!
「……各勢力のトップ陣がすべて根こそぎやられるかもしれない……ッ!」
そんなことになれば、人間界も天界も冥界にも、世界中に影響が出る。
この装置が発動すれば、俺でも耐えられるかどうかはわからない。耐えれるとしたら、防御系の究極を持つ黒歌くらいだろう。
……だけど、驚愕する皆と違い、俺は────安堵していた。
「────よかった、発動される前に間に合って」
「本当っすね。これならイッセーの得意っすしね」
「にゃん♪」
「……どういうこと?」
怪訝そうにする部長たちをよそに、俺はアーシアへと近づいていく。
うん。アーシアにぴったりくっついてる。これならいけるな。
「アーシア。先に謝っとく」
「え?」
俺の言葉に可愛らしく首をかしげるアーシア。うん、ごめんね! でも、アーシアを助けるためだから!
俺はイメージをする。
アーシアの全裸! 何も纏ってない生まれたままの姿のアーシアを!
スベスベの肌! 柔らかい身体! きれいなピンクの乳首!
その高まった煩悩に呼応し、俺の“
・・・・・・・いまだ!!
「いくぜ! “
バキンッ! バババッ!
金属がはじけ飛ぶ音と、衣服がはじけ飛ぶ音が同時に鳴り響く。
アーシアの四肢を問えらえていた枷は、シスター服とともに粉みじんに消し飛ぶのだった……。
「いやっ!」
アーシアは一瞬何が起きたのかわからずに呆けたが、すぐに自分の
ブブッ!
アーシアの成長中の全裸を見て、先ほど止まった鼻血がまた垂れてきた!
うん! いつみても美しいおっぱいです! 最高かよ!
「あらあら大変」
「はい、タオルっすよ。アーシアちゃん」
ミッテルトはすぐさまタオルをアーシアに差し出し、アーシアもそれで秘部を隠す。
ちなみに、ライザー戦でも配っていたけど、ミッテルトはあのタオルを常に常備しているらしい。
曰く、俺の被害者を慰めるためだそうだ……解せぬ!
「……あれって、女性の身につけてるものなら、何でもいいの?」
「まあ、基本はそうっすね。ああいった結界だけじゃなくて、呪いの類も解呪できるし……」
まあ、スキルのおかげで昔よりもパワーアップしてるしな。
何はともあれ、アーシアは無事! 装置も破壊!
ディオドラもぼこした! 俺たちは元気! 任務完了だな!
「イッセーさん!」
「アーシア!」
朱乃さんが用意してくれた予備のシスター服に身を包んだアーシアが俺に抱き着いてくる。
うんうん、アーシアが戻ってきてくれて良かったよ!
「信じてました、イッセーさんが助けに来てくれるって信じてました」
「当然だろう。でも、本当にごめんな。辛いこと、聞いてしまったんだろう?」
「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」
うう、可愛すぎる! アーシアマジ天使! お兄さん、絶対に嫁には出しませんからね!
ゼノヴィアも目元を潤ませていた。
「アーシア! 良かった! 私はおまえがいなくなってしまったら……」
「私もなの。アーシアお姉ちゃん!」
セラも瞳を潤ませ、アーシアに抱き着く。二人とも、本当に心配してたんだな。
アーシアはゼノヴィアの涙を拭い、セラのことを抱きしめながら微笑む。
「どこにも行きません。イッセーさんとゼノヴィアさん、セラちゃんが私のことを守ってくれますから」
「うん! そうだな! 私はお前を守るぞ!」
そう言いながら、抱き合う親友同士。
アーシアとゼノヴィアの友情は美しいなぁ。
「私もなの!」
セラもそれに対抗し、アーシアに抱き着く。
微笑ましい光景だ。
俺は木場と────うん、絶対に断る!
「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……」
アーシアが一礼すると美羽や皆も笑顔でそれに応える。
すると、部長がアーシアを抱きしめ、やさしげに告げる。
「アーシア。そろそろ私のことを部長と呼ぶのは止めてもいいのよ? 私はあなたを妹のように思っているのだから」
「────っ。はい! リアスお姉さま!」
部長とアーシアが抱き合っている。感動のシーンだな!
「よかったですぅぅぅぅっ! アーシア先輩が帰ってきてくれて嬉しいよぉぉぉぉ!」
「ギャー君、よしよし」
ギャスパーもわんわん泣いてやがる。
小猫ちゃんに頭撫でられてるし……羨ましいな。
ま、何はともあれ一件落着かな?
「さて、アーシア。行こうか」
「はい! と、その前にお祈りを」
アーシアは天になにかを祈っている様子だった。
「何を祈ったんだ?」
尋ねるとアーシアは恥ずかしそうに言った。
「内緒です」
笑顔で俺のもとへ走り寄るアーシア。
────瞬間、俺は上空より空間のゆらぎを感じた!
上を見上げると、一人の男が掌をアーシアに向けている!
このタイミングで新手かよ! 面倒くさい時に! ちったあ空気を読みやがれ!
「アーシア!」
「キャッ」
既に光は発射されている!
間に合わないと判断した俺は、咄嗟にアーシアを庇うように抱きつく。
瞬間、俺達は光に飲み込まれるのだった。
*********************
木場side
僕達は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
いや、今でもよく分からない。
ディオドラ・アスタロトと神滅具の装置をイッセー君が打倒し、アーシアさんの救出が無事に終わり、僕たちはこの場から退避するはずだった。
だけど、その瞬間のイッセー君がものすごい勢いでアーシアさんのもとに向かうと同時に二人はまばゆい光の中に消えていった。
……何が起きた?
「神滅具で作りしものが神滅具も使わない攻撃で散るとは、霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ」
聞き覚えのない声。
声のしたほうに視線を送ると、そこには見知らぬ悪魔が宙に浮いていた。
……なんだ、この体の芯から冷え込むようなオーラの質は……。
部長が口を開く。
「……誰?」
「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正当なる後継者だ」
────旧ベルゼブブ!
アザゼル先生が通信で言っていた今回の首謀者がご登場とは……。
ディオドラ・アスタロトがボロボロの体で旧ベルゼブブ────シャルバ・ベルゼブブに懇願する顔となった。
「シ、シャルバ! 助けておくれ! キミと一緒なら、こいつらを殺せる! 旧魔王と現魔王が力を合わせれば────」
ピッ!
シャルバが手から放射した一撃がディオドラの胸を容赦なく貫いた。
「愚か者め。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、モノにできずじまい。赤龍帝とはいえ人間……しかも、神器を使ってすらいない者に敗れるなど……たかが知れているというもの」
嘲笑い、吐き捨てるようにシャルバは言う。
ディオドラは床に突っ伏すことなく、チリと化して消えていった。
────光の力? 天使や堕天使に近い能力か?
僕の視界にシャルバの腕に取り付けられた見慣れない機械が映る。
もしや、あれが光を生み出す源か?
まさか、イッセー君とアーシアさんは……。
嫌な予感にこの場にいるみんなが震える。特に、ゼノヴィアさんは体をわなわなと震えさせている。
「さて、サーゼクスの妹君。突然で悪いが、貴公には死んでもらう。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため」
冷淡な声だ。瞳も憎悪に染まってる。よほど現魔王に恨みがあるのだろう。
主張と家柄、魔王の座を取り上げられ、冥界の端に追われたことを深く恨んでいるようだ。
「グラシャラボラス、アスタロトに続き、私を殺すと言うのね」
部長の問いにシャルバは目を細める。
「その通り。不愉快極まりないのだよ。我ら真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのは耐えがたいことなのだよ。故に我らは現魔王の血族を滅ぼすことにしたのだ。今回の作戦は失敗だ。クルゼレイも死んだようだが、まあ問題はない。私がいればヴァ―リがいなくとも十分動ける。真のベルゼブブは偉大なのだ。さて、去るついでだ。────サーゼクスの妹よ、死んでくれたまえ」
「────外道っ! イッセーとアーシアをどうしたというの!?」
部長は最大までに紅いオーラを全身から迸らせ、シャルバに問い詰める。
朱乃さんも顔を怒りにゆがめ、今までにないほどの雷光を迸らせていた。
それに対し、シャルバは興味なさそうに答える。
「ああ、あの赤い汚物と堕ちた聖女か。あの者達は私が次元の彼方に消してやった。“次元の狭間”に居続ければ、“無”に当てられて消滅する。あの娘はもちろん、“赤龍帝”も例外ではない。ましてや人間だ。おそらく抗うことすらできず、今頃は死んでいるだろう」
僕は怒りでどうにかなりそうだった!
これほどの怒りを感じたのは聖剣以来だ!
アーシアさんはやっと今の幸せをかみしめられるようになったんだ! イッセー君だって、これからじゃないか!
僕の大切な仲間を! 親友を! 消し去った罪! その命をもってしても償えるものではない!
このテロリストには、ここで確実に死んでもらう!
「許さない……ッ! 許さない……ッ! 斬るっ! 斬り殺してやるっ!!」
ゼノヴィアが涙を流しながらデュランダルとアスカロンを強く握りしめ、シャルバ達に斬りかかろうとする!
────瞬間、シャルバの姿がぶれた。
「がはっ!? な、なんだ!」
地に落ちるシャルバ。どうやら何かに叩き落とされたようだ。
その場に突っ伏している。
「……セラ?」
先ほどまでシャルバがいた場所を見ると、そこには宙に浮くセラちゃんの姿があった。
「────許さない。よくも……よくもお兄ちゃんとお姉ちゃんを────」
セラちゃんの瞳はじっとシャルバをとらえている。
だけど、その姿は異様に見えた。無表情のまま、じっとシャルバを見つめているのだ。
「ふん、噂の機械人形か。どこのだれが作ったのかは知らんが、生意気だな。偉大なるベルゼブブの力、見せてやろう」
そう言いながら、シャルバはセラちゃんに魔力弾を放つ。
凄まじい力だ! セラちゃんはその一撃に対しても見つめるだけ。避けることなく、魔力弾の直撃を浴びた。
魔力弾は着弾と同時にセラちゃんを巻き込み、大爆発を起こす。
────しかし、煙がはれると、そこには無傷のセラちゃんの姿があった。
「────なに?」
予想外の光景に驚くシャルバ。
セラちゃんはなおもシャルバを見つめ、呪詛を口に出す。
「……許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない────」
「────タカダカ“
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
神殿が大きく揺れ、セラちゃんから凄まじい圧力が感じ取れる!
魔力じゃない! オーラを感じ取ることができないが、すさまじい力だというのが見て取れる!
その圧力を前に、シャルバは一歩後ずさる。
それだけじゃない。ミッテルトさんや黒歌さんまでもが冷や汗を流していたのだ!
「……せ、セラ?」
その圧倒的な圧力の前に、部長は思わず問いかける。
だけど、それを無視して、セラちゃんはシャルバに手をかざす。
「────────死ネ」
瞬間、僕たちの視界を光が覆うのだった────