アザゼルside
バン! ギュバン! ゴォウ!
衝撃と滅び、炎の音がこだまする。
俺達の前ではすさまじい激闘が繰り広げられていた!
「いいねいいね! 最高だ!」
「……セカンドの炎を上回る火力か。危険だね」
俺の目の前でカグチが恐ろしい熱量の炎を繰り出す。
あの炎……計測器の故障じゃなけりゃ十億度は軽く超えてやがる!
それは地球の核……どころか太陽の熱すらも軽く上回るほどの火力だ!
タンニーンですらそれほどの炎を扱うことはできねえ!
それに対し、サーゼクスは滅びの魔力を用いて対応している!
「“
サーゼクスは巨大な滅びの魔力を作り出し、さながらドラゴンの様に形作った!
……以前のレーティングゲームで、ソーナが水のドラゴンを作っていたが、こいつは滅びの魔力でそれを作りやがるのかよ。出鱈目だな。
────だが、出鱈目なのはカグチも同じ。
「“
カグチは腕を交差させ、炎を加えた斬撃を繰り出してきた。
計測されたその熱は二十億度以上……ここまでくると、笑えねえな。
滅びの龍と、極滅の炎はしばらく拮抗するが、どちらも大爆発を起こし、消失した。
「うおっ!」
「なんという闘いだ!」
「…………」
タンニーンも俺も、何とかサーゼクスの援護に回ろうとするが、熱波の影響で近づけねえ!
闘いには興味もないだろうオーフィスすらも魅入るくらいだ! この戦いのすさまじさがわかるだろう!
「ハハハ! すげえな! 今のを相殺するってことは、やっぱりお前も究極に至ってるんだな!」
「……究極。この力を知ってるのかい?」
「ああ。よ~くな。何しろ、俺達はみんなそれに至ってるんだ────ちなみに、兵藤一誠……あと、黒歌もそれを持ってるらしいぜ」
その言葉を聞いたサーゼクスは目を見開く。
究極? 何の話だ? というか、一誠も関係あるのか?
「……ところでお前、本気にならないのか? さっきから様子見ばかりで、お前が本気になれば、もっと楽しめると思うんだけどな」
「…………」
カグチの言葉にサーゼクスは一瞬俺たちに視線を向ける。
それを見たカグチは何かを察したように、ため息をついた。
「……なるほど。あいつらを気にして本気が出せないのか。“赤”の悪魔らしいといえばらしいかもな。あの化け物も自分が気に入った存在に関しては甘いところがあったしな……」
あの化け物? 誰のことを言ってやがる?
俺の思考をよそに、カグチはうんうんうなり続けるが、やがて殺気を霧散させた。
「まあ、お前の力は大体わかった。不完全燃焼ぎみだが、これで任務完了にしとくか……できれば本気のお前とやりたいが、それはまたの機会にでもするかね?」
その言葉にサーゼクスも臨戦態勢を解く。
どうやら終わりみたいだな。……にしても、俺達は認識を改める必要がありそうだ。
“禍の団”だけじゃない。こいつらの組織も危険極まりない存在だ。
見た感じ、このカグチはまだ交渉の余地が幾分かありそうだが、イッセーが戦ったというメロウはかなり傲慢な性格だと聞いている。
さらにこいつらを率いる正体不明の存在。
俺達も対策を練る必要がありそうだぜ。
「────ん?」
「────おん?」
俺の考えをよそに、何かを感じ取ったらしく、サーゼクスとカグチは同時に神殿のほうを見る。
何かあったのか?
────そう思った次の瞬間!
ズンッ!!
凄まじい圧力が俺たちを襲った!
「な、なんだこの波動は!?」
「知らねえよ。だが、何かが起きてるのは間違いなさそうだな」
俺とタンニーンは変化しっぱなしの状況に思わずぼやいてしまう。
今度は何が起きたってんだ?
「……この波動は……」
カグチは何やら心当たりのありそうな表情になると、霞に隠れるかのように姿を消した。
どこに行きやがった!?
「アザゼル! 今は向こうが優先だ! 僕たちも行こう!」
……確かに、カグチも問題だが、今はリアス達の方がヤバそうだな。
この圧力は只事じゃない!
「ああ。レイナーレ、タンニーンと一緒にオーフィスを監視しててくれ!」
「は、はい。総督」
「任せておけ!」
ずっとそこに居座るオーフィスも気になるが、現状コイツは動く気配がない。今の状況だと、あちらのほうがやばいかもしれない。
俺はレイナーレとタンニーンにオーフィスの監視を任せ、イッセーたちのいる神殿へと向かうのだった。
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木場side
凄まじい閃光と轟音で、一瞬僕の視界が途切れてしまう。
目が慣れ始め、恐る恐る開けると────そこには更地となった神殿、辺りにはおびただしい数のクレーターが広がっていた。
「────皆、大丈夫にゃん?」
見ると、僕たちの周りだけが神殿だった名残を残している。
咄嗟に黒歌さんが僕たちを庇ってくれたみたいだ。
「あ、ありがとうございます。姉さま」
「な、何が起きたというの!?」
「……それは、見ればわかるにゃん」
ビュッ!
黒歌さんの言葉と同時に、何かが空を切る音がした!
慌てて音がした方向を見ると、そこには片腕を失ったシャルバが血走った瞳で何かを見ていた。
「おのれぇ……よくもぉぉぉ!」
シャルバの視線の先にいたのは、大量のケーブルと、禍々しくも美しい光沢を放つ鎧を纏う存在だった。
まるで映画で見たエイリアンじみた風貌をしており、無機質ながらも不気味な圧力を与えてくる。
「……あれって、セラちゃんすか?」
「……みたいにゃん」
なっ! あれがセラちゃんだって!
よく見ると、触覚のように生えているケーブルには、シャルバの物であろう腕が絡まりついている。
セラちゃんはそれを容赦なく砕き、地面に放り投げる。
「よくも私の腕を……死ねっ! 化け物がぁ!」
シャルバは残った右腕で光をセラちゃんに放つ。だが、セラちゃんはケーブルを束ね、シャルバの光をはるかに上回る質量の光線を放った!
驚いたシャルバは慌てて回避するも、なんと光は方向を変え、シャルバめがけて襲い掛かってくる!
「ぐわぁぁっ!」
その光は悪魔にとって毒となり、シャルバの腕をむしばんでいる。
だけど、通常の光を浴びた悪魔みたいに塵と化する様子はまるで見受けらない!
「イタイ? フフ! ネエ、イマドンナキブンナノ?」
セラちゃんの発したその言葉は────今までに感じたことがないほどゾッとするものだった。
一言でいうならば、言葉そのものが悪意に満ちている感覚だ。
「ふざけるなっ!」
両の手を失いながらもシャルバは魔力の弾を生成し、それをセラちゃんに放つ!
その一撃は、まさしく極大といえるほどのものだった!
「ウフフ!」
それに対し、セラちゃんは躱すでも構えるでもなく、息を吹きかけるかのような動作をする。
────すると、極大の魔力の帯は、ほどけるように消え、霧消していった!
「ば、馬鹿な……」
その光景に震えるシャルバ。だが、セラちゃんはそれを見てけらけらと笑い始めたのだった。
「アハハハハハハハハハッ! イイ! ソノ表情! 実二、実ニイイワヨ? モット、モットミセテヨッ!」
「────っ! がはっ!?」
セラちゃんは狂ったように笑いながら、シャルバをいたぶり始める。
触手のように蠢くケーブルで、シャルバの身体を嬲り、殴り、弄んでいる。
あれが本当にセラちゃんなのか? まるで別人だ!
アーシアさんとイッセー君を殺された影響? だけど、それにしたって人格が違いすぎる。
今のセラちゃんは、心底シャルバをいたぶることを楽しんでいるように見えるのだ。
僕達はそれを呆然と見ているしかできなかった。
それだけじゃない。先ほどから、本能に訴えるかのような恐怖が僕を襲ってくるのだ。
見ると、部長も目を見開き、全身を震えさせている。朱乃さんもゼノヴィアちゃんも小猫ちゃんもギャスパー君も、皆セラちゃんに恐怖を感じているのだ。
────あれはいったい何なんだ?
ドンッ!
何かが墜落した音で僕はハッと我に返る。見るとそこにはぼろぼろとなり、血まみれになって倒れているシャルバの姿があった。
「くっ! 私はこんなところで死ぬわけには……」
グチャッ!
シャルバが転移用の魔方陣を足で描こうとするが、その足が動きを────いや、足そのものが消失する。
何が起きたのかわからず呆然とするシャルバ。
「サガシモノハコレカシラ?」
見ると、セラちゃんはシャルバの足だったものをその手に持っていた。
いつの間に!? 恐怖に震えながらも、僕は目を一瞬たりとも離さなかった!
まるで見えなかったぞ!?
セラちゃんはうろたえるシャルバを無視し、すさまじい波動を出し始める。
「き、キサ────ガハッ!?」
激高したシャルバはセラちゃんに魔弾を放とうとする、 だが、それよりも早く、セラちゃんの触手がシャルバの脇腹を抉り取った!
「……モウイイヤ。オ姉チャントオ兄チャン二手ヲ出シタコト……後悔シナガラ……死ネ!」
そう言うと、セラちゃんは触手のようなケーブルを重ね合わせ、凄まじい大きさの砲門を作り出す。
────ゴゴゴゴゴゴゴッ!
セラちゃんの身体から、恐ろしいまでの圧力がかかり、大地が鳴動する。それを見たシャルバは、危険を感じ取り、叫び出す!
「バ、バカな……! 真の魔王であるこの私が! ヴァーリに一泡も吹かせていないのだぞ!? こんなところで死ねるかぁぁぁ!」
最後の抵抗といわんばかりに、シャルバは魔力弾を放とうとするが、それよりも早く、嘲笑するセラちゃんの砲門がシャルバをとらえた。
「“
ズバァァアアアアアアアアアンッ!
放射された暗黒の閃光にシャルバは包み込まれていき、やがて光の中に完全に消え去った────。
────終わったのか?
「────まだにゃん」
黒歌さんの言葉とともに、セラちゃんを見る。
セラちゃんは暫くはシャルバのいた場所を見て放心していたが、しばらくすると頭を抱え、再び狂ったように笑いだした!
「ウフ! ウフフ! アハハハハハハハハハッ!」
瞬間、セラちゃんのケーブルから成る砲門が、全体に向き、一斉に放射された!
その範囲は広く、僕たちのほうにまで向かっている!
それは黒歌さんの結界のおかげで防がれてるけど、先ほどまではわずかに感じた理性がもうほとんど感じ取れない!
何があったというんだ!
「……イッセーとアーシアちゃんを目の前で失ったショックにより、セラはあの形態になった。あの塵がいる間はまだ“復讐心”からわずかばかりに理性を保っていたけど……」
「……あのカスが消えて、邪悪な力が行き場をなくし、暴走を引き起こしてるってことっすかね?」
黒歌さんとミッテルトさんが今のセラちゃんの状態を冷静に分析している。
今のセラちゃんは完全なる暴走状態ということなのか……。
「アハハハハハハハハハハハハッッ!!」
セラちゃんは敵を倒した今もなお、狂ったように笑い続ける。
────でも、その瞳からは涙が流れているようだ。
兄と慕っていたイッセー君も、姉と慕っていたアーシアさんも失い、悲哀と慟哭に包まれてるかのようだ。
「クソッ! どうすればいいんだ……」
ゼノヴィアの慟哭に僕は何も答えられない。
ゼノヴィアだけじゃない。皆も同じだ。セラちゃんの異変もそうだし、何より親友と愛する者を同時に失った悲しみから逃れられないでいる。
僕も同じだ。でも、セラちゃんを放っておくわけにもいかない。いったいどうすれば……。
「……とりあえず、止めるしかなさそうっすけど、あれは確実にうちの手には余るっすね。頼るようで申しわけないんすけど、黒歌っち、行けそうすか?」
「……そうね。今のセラはかなりのものだし、止めるとなると相当骨が折れそうにゃん。その間、ミッテルトと
「ええ。了解したわ」
瞬間、黒歌さんの影からトーカさんが突如として表れる。
以前イッセー君から聞いたけど、トーカさんは影に潜る不思議な術を使うらしい。
……いや、そんなことはどうでもいい。
気になるのは三人の反応だ。
三人共、イッセー君と深いつながりがあったはず。特に、ミッテルトさんはイッセー君の恋人だ。
それなのに、イッセー君たちを失って、どうしてこんなに冷静にいられるんだ?
「……そんなの簡単っすよ」
僕の疑問にミッテルトさんは笑顔で答える。
「イッセーがあの程度で死ぬわけがない。うちたちはそう信じてるんすよ」
────っ!
確信が込められたその言葉に僕は瞠目する。ミッテルトさんの言葉に黒歌さん達も続く。
「あの変態ドラゴンをあんな簡単に殺せるならだれも苦労しないわよ」
「イッセーは絶対に生きてる。イッセーがいるならアーシアちゃんも生きてるはずにゃん」
三人のその言葉に、皆は目に光を取り戻していく。
そうだ。あのイッセー君が簡単に死んでしまうはずがない。
確証もない話だけど、僕もそう思えてくるんだ。
「……そうね。イッセーが死ぬはずないもの。アーシアだって大丈夫。なら、へこたれてる場合じゃないわね」
部長はそう言いながら、涙を拭う。
その目は強い意志が感じ取れた。
「その様子なら大丈夫ね。でも、今のセラは皆とは次元が違う。くれぐれも、ミッテルトの結界から出ないようにね」
そう言うと、黒歌さんは悪魔の翼をはやし、暴走を続けるセラちゃんのもとへと飛び立った。
それを確認したセラちゃんは、先ほどシャルバに放ったものと同質の光線を黒歌さんに向けて放つ。
だげ、黒歌さんはそれを強力な障壁でいともたやすく防いだ!
「メロウみたいな権能でもない限り、私の障壁は簡単には壊せないにゃん」
「アハハハハハハハハハ!」
ならばとセラちゃんはケーブルを使い、直接攻撃を仕掛ける。
だが、それすらも黒歌さんの障壁を突破するには力不足のようだ。
あのケーブル一本一本がシャルバを障壁ごと砕く、凄まじい威力だというのに、黒歌さんの障壁はそれを通す気配すらない。いったい、どんな強度をしてるんだ!?
黒歌さんは鉤爪のような武器を出し、セラちゃんに向かって構えた。
「とりあえず、イッセーが戻ってくるまでお姉ちゃんと遊んでるにゃん。掛かってきなさい♪」
「アハハハハハハハ!」
セラちゃんと黒歌さん。凄まじい力を持つ者同士が目の前で激しくぶつかり合うのだった。