帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

78 / 155
暴走を止めます

 イッセーside

 

 

 

 

 

 俺とアーシアが光に包まれた後、目を開けるとわけの分からん場所にいた。

 周囲は様々な色が混ざり合ったようなハチャメチャな景色。

 なんていうか、万華鏡を覗いているかのような感じだ。

 何処だココ? 

 

『ここは“次元の狭間”だ』

 

 次元の狭間? 

 どっかで聞いたことあるな。

 確か、様々な世界の隙間に存在し、世界と世界を分け隔てる境界……だったっけ? 

 

『ああ。天界に冥界、人間界といった風に、()()()()“次元”を隔てる境界線だ』

 

 そうそう。あくまでこの星の境界を担う場所だから、“多次元世界”を隔てる境界とはまた別なんだよな。

 ヴェルグリンドさんやリムルがそんなこと言ってた気がする。

 まぁ、今はどうでもいいか。

 それよりアーシアだ。俺は“精神生命体”の力を獲得してるから何ともないけど、アーシアではこの環境下は数分と持たないだろう。

 

『アーシア・アルジェントには相棒のオーラを纏わせておけ。それならば、暫くの間はもつだろう』

 

 了解だ、ドライグ! 

 早速俺はオーラをアーシアに付与する。俺の究極能力の力とドライグのオーラをアーシアに纏わせる。

 とりあえずはこれでよし。

 ……さて、どうやって向こうに戻るか。

 “時空間操作”と“空間支配”でどうにか……いや、目の届く範囲ならともかく、座標もつかめないこの場所じゃあ変なところに飛ぶ可能性もあるな。

 ただでさえ、そういう繊細な操作は苦手なんだ。海の中にでも出てしまえばたまったものじゃない。

 

『いや、その心配はない。“次元の狭間”は基本的に折り重なった世界だ。すぐに転移すれば同じところに出るだろう』

 

 あ。そうなの? なら、問題ないか。

 取り敢えず、速いところ出たほうがいいかな? 

 

『そうだな。アーシア・アルジェントのためにも早いうちに脱出するべきだろう』

 

 よし! そうと決まれば、さっそく実行するか。

 オーラを集中させ、次元を突破しようとする。そこで、誰かが俺たちのほうへと近づいてきた。

 

「兵藤一誠? こんなところで何をしてる?」

 

「ヴァ―リ!?」

 

 現れたのはヴァ―リだった。

 その後ろには美猴と“神話級(ゴッズ)”の剣を携える背広の男の姿があった。多分、コイツが先生の言っていた“聖王剣”とやらの使い手なのだろう。

 それはともかく、なんでこいつ等がここにいるの? 

 

「それはこちらのセリフなんだがな。君はどうしてここに」

 

「ああ、“禍の団”……多分、旧魔王派の奴にアーシアを狙われて、それを庇って、気付いたらここにいたんだ」

 

「なるほど、シャルバか……」

 

 シャルバ……それがあの男の名前か。

 恐らく元々がそこそこの力ある悪魔なんだろうな。

 カテレアと同じように“蛇”と“結晶”の相乗効果で“超級覚醒者(ミリオンクラス)”に至ってたみたいだし。

 まあ、向こうには黒歌とミッテルトがいるし、そこまで心配はしてないんだけど……。

 

「でも、急ぐに越したことはないし、俺はもう行くわ。またあとでな」

 

 ヴァ―リにそう告げると俺は自らの権能を籠手に宿し、空間そのものに傷を付ける。

 すると、何もない空間にひび割れが起き、元の世界へと続くであろう亀裂が発生した。

 俺はヴァ―リに手を振り、そのままその場を後にした。

 

 

 

 

 ****************************

 

 木場side

 

 

 

 

「アハハハハハハハ!」

 

 セラちゃんのすさまじい一撃が黒歌さんをとらえる。

 だけど、黒歌さんはそれをすべて障壁で防ぎながら、セラちゃんに攻撃を与えていた。

 

「“黒双爪撃”」

 

 ガキンッ! 

 

 黒歌さんの鉤爪とセラちゃんの鎧と激突する。

 耳を劈くようなすさまじい金属音があたりに響き渡る。拮抗した鉤爪と鎧は火花を散らしながら中空で鍔ぜり合う。

 

「ふん!」

 

「!?」

 

 しばらく続いた拮抗は、黒歌さんの一撃で崩れる。

 黒歌さんは一瞬のスキを突き、セラちゃんに蹴りを入れ、吹き飛ばしたのだ。

 セラちゃんはそのまま地面にたたきつけられ、すさまじい土煙を上げる。その風圧は離れた場所にいる僕たちにまで影響を与えるほどのものだった。

 遠目だけど、その一撃は僕たちはおろか、おそらくシャルバでも耐えられないものに見えた。

 これで勝負はついたのか……。

 

 カッ! 

 

 僕がそう考えていると、土煙から凄まじい数の光柱が伸びてきた! 

 それを驚いた様子もなく防ぐ黒歌さんを尻目に僕たちはセラちゃんのほうへと視線を向ける

 

「ウフフフフ」

 

 そこには傷一つなく、黒歌さんに砲門を向けるセラちゃんの姿があった。

 アレを食らって無傷なのか!? 

 

「……感触で予想はしてたけど、あの鎧、“神話級(ゴッズ)”ね。硬度だけでいえばゼギオンさんの外骨格に匹敵しそうにゃん」

 

 流石に距離があるため、内容までは聞えなかったが、何やら呟きながら黒歌さんは慌てることなく中空で指を振るう。

 

 ゴゴゴゴゴ! 

 

 すると、巨大な樹木が大きな掌を形作り、セラちゃんを握りつぶす! 

 

「グゥ!?」

 

 流石にこれには驚いたのか、樹木の腕に掴まれたセラちゃんは苦悶の声を上げる。

 距離があるというのにミシミシと鎧の軋む音がここまで響いてくる。

 

「……直接触れてないのに、仙術の気を送り込んでいる。そんなことができるなんて」

 

 何やら驚いたように小猫ちゃんがつぶやく。

 確かに、黒歌さんは地面に触れることなく、樹木を操っている。

 仙術は気を送り込んで生命を操る術。直接触れもせずにどうやって気を送り込んでいるんだ? 

 

「アハハハハハハハ!」

 

 樹木の腕に囚われたセラちゃんはエネルギーを貯め、強引にそれを打ち破る。

 

「……今ので大人しくなってほしかったにゃん」

 

 セラちゃんはそのまま高速で突っ込み、黒歌さんに肉弾戦を仕掛ける。

 だけど、黒歌さんは鉤爪とすさまじいまでの体術でセラちゃんの攻撃全てに対応して見せている。その姿はイッセー君を彷彿とさせるほどだ。

 

「黒歌っちはイッセー程じゃないっすけど、十分達人級の力を持ってるっすからね。力はセラちゃんが上回っていても、“技量(レベル)”は黒歌っちのほうが圧倒的に上っすよ」

 

 ミッテルトさんのその言葉を証明するかのように、黒歌さんは再びセラちゃんを地面にたたきつけた! 

 ────だけど、セラちゃんにダメージらしきものは一切見られない。

 セラちゃんは無機質な瞳に黒歌さんの姿を映しながら、再び光線を放ちだす。黒歌さんはそれを障壁で防ごうとするが……。

 

 クンッ! 

 

 なんと光線は途中で軌道を曲げ、黒歌さんを四方から撃ち抜かんとしたのだ! 

 黒歌さんは少し驚いたように目を見開くも、全方位に障壁を展開し、光線の一つ一つを防いで見せた。

 

「お返しするにゃん♪」

 

 そういうと黒歌さんは障壁の角度を変え、幾重もの光線をすべてセラちゃんに反射する。

 

 ガガガガガガッ! 

 

 幾重もの光線が逆にセラちゃんを貫かんと暴威を振るう。だけど、シャルバを吹き飛ばした光線が直撃しているにもかかわらず、セラちゃんは立ち上がろうとする。

 見ると、触手光線はセラちゃんの表面を焼いているだけで貫くには至っていないようだ。

 

「やれやれ、手のかかる子だこと。想像以上に骨が折れるにゃん」

 

 黒歌さんは肩をすくめながらそう言う。

 セラちゃんもここにきて動きを止め、黒歌さんを見据えている。現状はどちらにも決め手がない状態だ。

 一体どうなるんだ────。

 

「────これ、どういう状況?」

 

「「「!?」」」

 

 突如、背後から聞こえてきた声に僕たちは思わず後ろを振り向いた! 

 

「────全く、待ちくたびれたっすよ。イッセー」

 

 そこには気を失っているアーシアちゃんを抱え、困惑するイッセー君の姿があった。

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

「────よし着い────っ!? 何だこのオーラ!?」

 

 俺はアーシアを抱えながら、“次元の狭間”から脱出をすると、膨大な力がぶつかり合っているのを感じた! 

 片方は黒歌だけど、もう片方は────なんだ!? すさまじいオーラだぞ!? というか、この感じ、覚えがある? 

 慌てて皆がいた方向に向かうと、そこには凄まじい激闘を行う黒歌と鎧を纏う謎の存在の姿があった。

 

「────これ、どういう状況?」

 

「────全く、待ちくたびれたっすよ。イッセー」

 

「「「イッセー(君)!!」」」

 

 俺の姿を確認するや否や、皆が俺のほうに飛びついてきた。

 

「イッセー! アーシアは……」

 

「大丈夫、生きてるよ」

 

「そうか……よかった……」

 

 ゼノヴィアは涙を流しながらアーシアを抱き寄せる。

 よほどアーシアのことを心配してたんだな。

 皆の様子を見るに、俺も随分心配かけさせてしまったみたいだ。

 

「ホントっすよ。皆かなり心配してたんすからね」

 

「まあ、貴方がそう簡単に死ぬ奴じゃないのはわかってたどね」

 

「ごめんごめん」

 

 

 取り敢えず俺は皆から今の状況を聞くことにした。

 俺とアーシアが飛ばされた後、セラが暴走してシャルバを倒した。それでも暴走を続けるセラを止めるため、黒歌が戦ってる状況らしい────って……

 

「え!? アレセラなの!?」

 

 マジで!? いっちゃ悪いがアレ相当な化け物だぞ! 

 間違いなく“天龍”級! 存在値もEP換算で600万を超えている! 

 ミッテルトとトーカですら明らかに手に余る相手だ! 

 黒歌みたいに究極能力(アルティメットスキル)と鍛え抜かれた技量を兼ね備えた存在でなければ相手にするのは難しいだろう。

 

「黒歌っちも決め手がない状況っすね。じっくり戦えば勝ち筋もあるんでしょうけど……」

 

 そうだな。黒歌の権能は基本的に守りに特化してる。

 仙術による攻撃も機械であるセラにはそこまで効果を期待することができないし、何より正気に戻す方法がわからない。

 

「……俺たちが生きていたってことを教えてやれば止まるかな?」

 

 元々キッカケは俺たちが死んだ(と思われていた)ことだ。

 ならば、それ勘違いだったと教えてやれば、止まるのではないかと俺は考えた。

 だが、俺の言葉にトーカは渋い顔をする。

 

「今のあの子にわかるのかしら? 言葉すら通じてないように見えるけど……」

 

 トーカの言葉を聞き、改めてセラを見る。

 

「アハハハハハハッ!!」

 

 狂ったように笑いながら黒歌に攻撃するセラを見て、トーカたちは難しそうだと感じたようだ。

 確かに、あれ、明らかに理性が吹き飛んでいるもんな……。

 まずは動きを止めなければ始まらない。

 そう考えた俺は即座に鎧を纏い、臨戦態勢となる。

 

「俺も参戦する! 皆はアーシアを頼む!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

 “禁手”となった俺は早速背中のブースターに力をため、一気に放出する。

 ブースターで加速し、一気に接近した俺はセラを羽交い絞めにした。

 

「あ、イッセー! いいところに!」

 

「おい、セラ! 目を覚ませ!」

 

「がっ……」

 

 セラが力づくで脱出しようとするが、そううまくはいかない。

 力だけなら今のセラのほうが圧倒的に上だけど、力任せすぎて技術がまるで感じられない。

 それじゃあいくら力だけあっても抜け出すことは難しいだろう。

 ……まあ、長時間抑えられるかといわれると自信ないけど……。

 

「がぁぁぁっ!」

 

「うおっ!?」

 

 さらに力が上がりやがった! 

 今のEPは700万以上、カレラさんと比べても何ら遜色ないレベルだ! 

 正直想定以上だ! もし、これで技術があったらと思うとぞっとするな……。暴走状態故にタガが外れてる状態だけど、その点でいえば助かったかもしれない。

 力だけの存在ならば、どうとでもなる。

 

「おい! 聞こえるか!」

 

 俺は羽交い締めをしながらセラに改めて語りかける。

 だけどセラは呻くだけで一向に反応がない。

 力ずくでは振りほどけないと悟ったのか、セラは背中から伸びるケーブルで逆に俺を縛り付けようとする! 

 

「くっ! 危ねっ!?」

 

 俺は咄嗟に手を離し、ケーブルを何とか回避する。

 力では今のセラの方が圧倒的に上だ。

 もしも雁字搦めに捕まれば技術どうこうで抜け出すのは困難だろう。

 ……まあ、それは捕まればの話だけど。

 

「……グゥ!?」

 

「ん?」

 

 俺は改めてセラと向かい合う。

 すると、セラは一瞬頭を抱え、苦悶の声を上げた。

 ひょっとして、死んだ(と思っていた)俺を見て元に戻りかけてるのか? 

 ならば、できる限り正面から仕掛けたほうが良さそうだな! 

 

「イッセー! このまま押し切るにゃん」

 

「おう!」

 

 俺と黒歌はセラに向かって突撃を仕掛ける。

 

「ガァ!!」

 

 セラは負けじとケーブルと砲撃を織り交ぜた飽和攻撃を仕掛けてくる。

 俺は思念伝達を黒歌と繋ぎ、弾道の軌道を解析する。

 俺の解析で確定したルートを黒歌は的確に障壁で守っている。

 これは俺の“解析能力”と黒歌の“防御力”を最大限に生かす戦法で、ダグリュールさんとの戦いの際に編み出したものだ。

 流石に暴力の化身たるダグリュールさんには時間稼ぎくらいにしかならなかったけど、セラ相手には充分だ! 

 

 ドゴン!! 

 

「ガハッ!?」

 

 俺たち二人の一撃により、セラの装甲は大きく罅割れる。

 何せ、今の一撃は“洋服崩壊(ドレスブレイク)”の発展型────“装甲崩壊(アーマーブレイク)”の権能を帯びた一撃だからな! 

 生まれたばかりの“神話級(ゴッズ)”ならば充分破壊できる! 

 罅割れた部分が剥がれ落ち、セラの素顔が覗き始める。

 そこには目を黒く染め上げ、狂気に満ちた瞳が垣間見えた。

 

「グルルルッッ!!」

 

「……これでも駄目なのかよ……」

 

「鎧も少しずつ再生してるっぽいし、厄介だにゃん」

 

 どうすればセラを正気に戻すことが……そう考えているとき、何かがセラに近づき、抱きついた! 

 ────って、ちょ、なんで!? 

 

「止まってください! セラちゃん!」

 

「────あ、アーシア!?」

 

 そこには涙目になりながらセラを抱きかかえるアーシアの姿があった! 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 アーシアside

 

 

 

 

 

「うぅ……」

 

「────っ!? アーシア! 目が覚めたんだな!」

 

「ゼノヴィア……さん……?」

 

 目が覚めると私の目の前にゼノヴィアさんの姿がありました。

 ゼノヴィアさんはそのまま私に抱きつき、涙を流した。

 

「ぜ、ゼノヴィアさん。く、苦しいです……」

 

「アーシア! 私とお前は友達だ! ずっと、ずっと友達だ! だから、私を置いて行かないでくれ!」

 

 その言葉に私は少しだけ思い出しました。

 そうだ。私はイッセーさんと一緒に光に包まれてしまって……。

 

「はい。ずっとお友達です」

 

 私はゼノヴィアさんの頭を撫でて、気持ちを伝えました。

 すると、ゼノヴィアさんは安心したように笑顔を見せてくれました。

 

「よかったわ……アーシア……」

 

 見ると部長さん達も涙を流してるみたいです。

 こんなに心配をかけさせてしまい、少しだけ申し訳ない気持ちがあります。

 

「今はそれどころじゃないわよ! 結界貼るのもしんどいんだからね!」

 

 そう言いながら、トーカさんは叫びました。

 私は慌てて周りを見渡します。

 すると、そこには何かと戦うイッセーさんと黒歌さんの姿がありました。

 ────あれは……もしかして!? 

 

「セラちゃん……なんですか?」

 

「ハイっす。どうも、暴走してしまったみたいなんすよ。今、二人が抑えてるところっすけど……」

 

 そんな……私のせいで……。

 

「別にアーシアちゃんのせいじゃないっすよ。悪いのはあのシャルバとかいう阿呆なんすから」

 

「そうね。正直、あの場で何もせずに撤退してればよかったのに……そもそもイッセーや黒歌の力をまるで感じ取れないあたり、小物もいいところね」

 

 二人は私のせいじゃないと言ってくれました。

 ……でも、私が心配をかけさせてしまったから、セラちゃんはあんなことに……。

 

「········」

 

「ガァッ!」

 

 私はもう一度イッセーさんたちと戦うセラちゃんを見ました。

 戦うセラちゃんからはとても悲しい感じがします。

 …………それを見た私は覚悟を決めて、悪魔の翼を出しました。

 

「……なにをする気?」

 

 そんな私を不思議そうに見つめるトーカさん。

 私はトーカさんの疑問に答えながら、翼をはためかせました。

 

「……セラちゃんを止めてきます」

 

「なっ!?」

 

「ちょ、ちょっと、アーシア!? 止めなさい!」

 

 部長さんとゼノヴィアさんは私を止めようとします。

 ですが、あのセラちゃんを放ってはおけません! 

 

「……貴女一人じゃ無理ね。貴女、飛ぶことに慣れてないでしょ? その弱い翼じゃあ、今のあの娘を掻い潜るのは不可能よ」

 

「うぅ、で、でも……」

 

 確かに、私ではあの中に入ることはできないかもしれません。

 でも、今の苦しそうなセラちゃんを助けてあげたいんです。

 すると、トーカさんはため息を付きながら、龍のような翼を出しました。

 

「掴まりなさい。そこまで言うなら私が連れてってあげるわ」

 

「ちょ! トーカっち!?」

 

「このままでは、この娘一人で無茶しそうだし、さっきあの娘はイッセーを見て反応したわ。ならば、この娘も必要なんじゃないかしら?」

 

 トーカさんの言葉にミッテルトちゃんは唸るように考え出す。

 しばらくして……

 

「わかったっす! その代わり、アーシアちゃんのこと、絶対に守るんすよ!」

 

「わかってるわ。傷つけさせはしないわよ」

 

 私はトーカさんの腕に捕まり、一緒に空を飛びました。

 すると、ゼノヴィアさんが私達の側まで近づいてきました。

 

「アーシア……」

 

「ごめんなさい。ゼノヴィアさん。でも、私もセラちゃんを止めてあげたいんです」

 

 ゼノヴィアさんはとても心配そうにしていましたが、しばらくすると涙を流しながら言いました。

 

「……そうか。わかった。その代わり、絶対に帰ってきてくれ!」

 

「はい。約束です」

 

 私はゼノヴィアさんと指切りをしてセラちゃんの所へと向かいました。

 トーカさんはとても速く空を飛んで、あっという間にセラちゃんの元へとたどり着きました。

 

「覚悟は良い? いくわよ!」

 

「はい!」

 

 私はトーカさんのもとから離れ、セラちゃんへと抱きつきました。

 

 

 

 

 ****************************

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

「────あ、アーシア!?」

 

 な、何でアーシアが!? 

 トーカと一緒ってことは、トーカが連れてきたのか!? 

 いくらなんでも無茶だ! 今のセラ相手に立ち向かうなんて無謀すぎる! 

 

「アーシア! 離れろ!」

 

「そうにゃん! 今のセラは危険だにゃん!」

 

 俺たちはアーシアを説得しようとする。

 だが、アーシアは決意を秘めた目で反論をする。

 

「危険なんてありません! セラちゃんはどんなに変わってもセラちゃんのままです!」

 

「グルルルッッ!」

 

 セラは背中のケーブルを使い、アーシアを引き剥がそうとする! 

 だが、そのケーブルがアーシアに届く前にクナイによって弾かれた! 

 

「ミッテルトとの約束なの。この娘を傷つけさせはしないわ」

 

 一撃の重さにトーカは苦しい顔をするが、それでもその猛攻からアーシアを辛うじて守り抜いている。

 

「セラちゃん。私は大丈夫です。だから、どうか元に戻って……」

 

「!?」

 

 セラはアーシアを見て動きを止める。

 すると、何やら苦しそうに頭を抱え始めた。

 もしかして、元に戻りかけているのか!? 

 

「……ここが執念場だにゃん」

 

「ああ! 俺達もアーシアを守るぞ!」

 

 俺達はトーカと共にアーシアの防衛に専念する。

 ケーブルや光線を防ぎ、アーシアの説得の邪魔をさせないようにするのだ。

 

「皆さんもセラちゃんのことを心配していますよ。お願いです。元に……元に戻ってください!」

 

 ────瞬間、アーシアの神器が光り輝く! 

 淡い……優しい光だ。その光にセラは忽ち包み込まれていく。

 これは……

 

『恐らく“禁手(バランスブレイカー)”だ。亜種かもしれんが間違いないだろう』

 

 これがアーシアの禁手か! 

 アーシアの放つ光に包み込まれたセラは徐々に動きを止めていく。

 

「ゔ、ゔぅ……お……姉ちゃん……?」

 

「────! セラちゃん!」

 

 すると、セラの目から狂気がどんどん消えていった! 

 それと同時に鎧は完全に砕け、地面にパラパラと落ちていった! 

 そのままセラは力なく、鎧とともに落ちようとする。

 

「おっと、危ない!」

 

「……黒歌お姉ちゃん?」

 

「元に戻ったようね。よかった……」

 

 黒歌に抱きかかえられ、セラは不思議そうに辺りを見回す。

 何があったのかはわかっていない様子だ。

 

「……イッセーお兄ちゃん。アーシアお姉ちゃん。ちゃんと生きてる?」

 

「当たり前だろ? あんな奴に殺されてたまるかよ。俺もアーシアも……」

 

「……そう。よかった……」

 

「アーシア! イッセー! セラも無事か!?」

 

 ここでゼノヴィア達も俺たちのもとに駆け寄ってきた。

 皆には相当心配かけさせてしまったな。

 

「いいのよ。皆が無事で、本当に良かったわ」

 

 そう言いながら、部長は俺を抱き寄せた! 

 おっぱいが顔に当たってるぅ!? 柔らかくて良い匂いがしてマジで最高です!! 

 

「無事か! お前ら!」

 

「あ、先生!」

 

「お兄様!?」

 

 ここでアザゼル先生がやってくる。サーゼクスさんも一緒のようだ。

 聞いた話によると、セラの暴走を見てはいたそうだが、状況がわからず、周りの被害も大きかったため、倒れていた悪魔達を保護し、守っていたそうだ。

 その中にはディオドラの眷属も含まれてるらしい。まあ、彼女達も被害者のようなものだし、あのまま放置は可哀想だよな。

 

「たく、マジで心配したんだぞ? 何だったんだあれ?」

 

「セラもよくわかってないみたいです。取り敢えず、後で報告まとめますよ」

 

 俺がそう話していると、空間がネジ曲がり、歪みが発生する。そして、歪みから見覚えのある奴が現れるのだった。

 

「どうやら終わったみたいだね」

 

「あっ、ヴァーリ」

 

 どうやら“次元の狭間”から戻ってきたようだ。

 “禍の団”であるヴァーリの登場に皆は警戒するが、ヴァーリはどこ吹く風だ。

 まあ、部長達ではヴァーリに太刀打ちできないから当然といえば当然か。

 ……あれ? そういえば? 

 

「なあヴァーリ。そういえばお前、何で“次元の狭間”にいたんだ?」

 

 何かを企んで……という線はないな。

 こいつは旧魔王派みたいな汚いマネはしないだろう。

 むしろ、真正面から堂々と挑んでくるタイプだ。

 だからこそ、こいつが何をしに“次元の狭間”なんて場所にいたのか全く分からんのだ。

 そんな俺の疑問に対し、ヴァーリは嬉しそうに答えた。

 

「俺がここに来たのはあるものを見に来たんだ。……そろそろか。空を見ていろ」

 

「?」

 

 俺は訝しげに思い、何もないフィールドの空を見上げる。

 すると。

 

 バチッ! バチッ! 

 

 空中に巨大な穴が開いていく。

 そして、そこから何かが姿を現した。

 

「あれは────」

 

 そこから出現したものを見て、俺はかなり驚いた。

 他の皆も同様だった。

 

「よく見ておけ、兵藤一誠。あれが俺が見たかったものだ」

 

 空中に現れたのは真紅の巨大なドラゴン。

 なんだあれ!? 

 メチャクチャデカいじゃねぇか! 

 カリュブディスと比べても大差ねえぞ! 

 だが、問題はそこじゃない! 真に注視する点はその圧倒的なエネルギーだ! 

 存在値にして二千万! “始原の七天使”と比べても遜色ないレベルの化け物だ! 

 ……ひょっとして、あれが以前ドライグの言っていた……。

 驚く俺を他所にヴァーリは続ける。

 

「“赤い龍“と呼ばれるドラゴンは二体いる。ひとつは君に宿るウェールズの古のドラゴン、ウェルシュ・ドラゴン。俺に宿るバニシング・ドラゴンも同じ伝承から出てきている。そして、もうひとつは“黙示録”に記されし、赤いドラゴンだ」

 

「じゃあ、やっぱりアレが……」

 

「なんだ? 知ってるのなら話が早い。“真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)”グレートレッド。“真龍“────“D(ドラゴン)×(オブ)D(ドラゴン)”と称される偉大なドラゴンだ。自ら次元の狭間に住み、永遠にそこを飛び続けている。今回、俺はあれを確認するためにここへ来た。シャルバ達の作戦は俺にとってはどうでもいい」

 

 ふえ〜、アレが……。

 なるほど。確かにこの世界最強のドラゴンと呼ばれるのも頷ける威圧感だ。

 もしも敵対したらと思うとゾッとするな。

 

「でもよ、どうしてそんなところを飛んでいるんだ?」

 

 自らの棲家である“次元の狭間”から出てきてこんなところを飛ぶ理由は何だ? 

 だが、それはヴァーリにもわからないものらしい。

 

「さあね。それは俺には分からない。いろいろ説はあるが……。あれがオーフィスの目的であり、俺が倒したい目標だ」

 

 ヴァーリの目標────。

 なかなか高い目標だな。でも、コイツなら数千年もすればあの領域に届きうるかもな。

 

「俺はいつか、グレートレッドを倒す。そして、“真なる白龍神皇”になりたいんだ。赤の最上位がいるのに白だけ一歩前止まりでは格好がつかないだろう?」

 

 なるほど、こいつがテロリスト集団に身を置いてるのもあのドラゴンを倒すためか。

 こいつらしいな。

 

(まあ、“赤”も“白”も最上位は別にいるんだけどな……)

 

 俺はそう考えながら、“灼熱竜”と“白氷竜”と称される二人のことを思い出していた。

 それはともかく、ヴァーリにもヴァーリの夢があるんだな。取り敢えず応援くらいはしてやるか。

 

「だけど、その前にまずは君に勝たないとな。赤龍帝、兵藤一誠。あの戦いを見て改めて思い知ったよ。君は強い。俺よりもな。だからこそ、俺は君に挑戦する。この挑戦、受けてくれるかい?」

 

 ……全く、戦闘狂っていうのは本当に厄介だよな。

 

「あー、いいぜ。父さんと母さんを巻き込まない約束を守ってくれてるうちは何度でも挑戦を受けてやるよ。いつでもかかってこい。真正面からぶつかってやる」

 

「そうか。礼を言うよ、兵藤一誠」

 

 短い返しだったけど、満足したような表情のヴァーリ。

 すると、一つの気配が現れる。 

 

「グレートレッド、久しい」

 

 振り返ると俺達のすぐ近くに黒髪黒ワンピースの少女が立っていた。

 ……この存在感。コイツが……。

 

「ひょっとして、オーフィス?」

 

「ああ。彼女がオーフィス。“無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)”さ。“禍の団”のトップでもある」

 

 やっぱりか! こんな美少女の見た目してるんだな! 

 滅茶苦茶可愛い! 小猫ちゃんと同じくマスコットみがある! 

 少女────オーフィスはグレートレッドに指鉄砲のかまえでバンッと撃ち出す格好をした。

 

「我は、いつか必ず静寂を手にいれる」

 

 バサッ

 

 今度は羽ばたきの音。それと同時に見覚えのあるドラゴンが降ってきた。

 タンニーンのおっさんだ。

 

「どうやら無事なようだな。兵藤一誠。────と、オーフィスの気配を追ってきたらとんでもないものが出てきたな」

 

 タンニーンのおっさんは空を飛ぶグレートレッドに視線を向ける。

 おっさんだけじゃない。

 サーゼクスさんもアザゼル先生も揃って視線を向けている。

 

「懐かしい、グレートレッドか」

 

「タンニーンも戦ったことあるのか?」

 

 先生の問いにおっさんは首を横に振る。

 

「いや、俺なぞ歯牙にもかけてくれなかったさ。風のうわさだとティアマットが一度だけ殺り合ったらしいが……」

 

 ……ティアマットさん、挑んだんだ。

 そういえば、あの人武者修行でかなり無茶やったって言ってたっけ? 

 まあ、あの師匠に比べれば大幅にマシな相手と判断したのだろう。

 正直な話、俺はあのドラゴンに勝てる気は全くしないけどね。

 

「久し振りだな、アザゼル」

 

 ヴァーリが先生に話しかける。

 

「おう。元気そうじゃねぇか、ヴァーリ。旧アスモデウスはサーゼクスが、シャルバ・ベルゼフブは……イッセー達が倒したみたいだな」

 

 先生は視線をヴァーリからオーフィスに変え、彼女に言う。

 

「オーフィス。各地で暴れてた旧魔王派は退却及び降伏した。末裔共を失い、旧魔王派は壊滅だ」

 

「そう。それもまた一つの結末」

 

 オーフィスは全く驚く様子もなかった。

 痛くも痒くもないって感じだな。

 まあ、オーフィス本人がここまで強いんだし、あの程度の奴らが消えたところで痛くも痒くもないんだろう。

 それを聞いて、先生は肩をすくめた。

 

 

「おまえらの中でヴァーリのチーム以外に大きな勢力は人間の英雄や勇者の末裔、神器所有者で集まった“英雄派“だけか」

 

 英雄派? 

 まだそんな勢力があるのかよ……。

 あの霧の“神滅具”の使い手もそこに所属してるのかな? 

 

「さーて、オーフィス。やるか?」

 

 先生が光の槍の矛先をオーフィスに向ける。

 えっ、戦闘開始ですか!? でしたら流石に止めますよ? 

 正直な話、先生では太刀打ちできないだろうし……。

 だが、オーフィスは興味もないのか先生を無視して体の向きを俺の方に変える。

 

「赤龍帝。そしてそこの猫又。我の仲間になってほしい」

 

「え?」

 

「にゃん?」

 

『なっ!?』

 

 この場にいる全員が驚愕の声をあげる。

 そりゃそうだ。俺も正直意味わからん。黒歌もいきなりのことで呆けている。

 だが、オーフィスはそんな俺達の混乱など知ったことかといわんばかりに言葉を続けた。

 

「我の仲間になってほしい。我と共にグレートレッド、倒す」

 

 いやいや、流石にそれは無理! 

 俺にテロリスト集団に入れってか! 嫌だよ! 

 

「悪いけど、断るよ」

 

「私も……」

 

「なぜ? ”蛇“を使えば今以上に力、手に入る」

 

「いや、そんなの興味ねえよ。俺はテロリストになるつもりはない。そんなのは絶対にゴメンだ」

 

「私には生涯仕えると決めた主がいるんだにゃん。その人以外の下に付くつもりはないにゃん」

 

 力につられてテロに入るつもりなんか毛頭ない! そもそも力というのは自分の手で掴むものだしな。

 俺がハッキリと断ると「そう、残念」と言って、俺に背中を向けてしまう。

 

「我は帰る」

 

 あら、戦闘意欲はゼロですか。

 まあ、俺としてはその方が助かるからいいけど……。

 

 ヒュッ! 

 

 一瞬、空気が振動したと思ったら、オーフィスは消え去っていた。

 先生達も嘆息してる。

 

「俺たちも退散するとしよう」

 

 ヴァーリもそう言いと、背広の男の作り出した次元の裂け目に入ろうとする。

 流石は“神話級(ゴッズ)”の聖剣だ。空間属性も持ってるようだな。

 

「またいずれ決着をつけよう」

 

「ああ。またな」

 

 それだけ聞くと、ヴァーリ達はこの場を去ろうとする。

 ここで背広の男が振り向き、木場とゼノヴィアに言う。

 

「私は聖王剣の所持者にして、アーサー・ペンドラゴンの末裔です。アーサーと呼んでください。いつか、聖剣を巡る戦いをしましょう。では」

 

 こうして今度こそヴァーリ達は次元の裂け目へと去っていくのだった。

 ……アーサーか。只者じゃない雰囲気だな。

 多分、あのシャルバとかいう奴よりかは遥かに強い。

 それはエネルギーではなく、技量の問題だろう。

 ミルたんもそうだけど、この世界の人間も案外馬鹿にならないものだな。

 

「さてと……」

 

 俺はアーシアの手を取り、笑顔で言う。

 

「帰ろうぜアーシア。俺たちの家に」

 

「はい。お父さんとお母さんが待つ家に帰ります」

 

 俺の言葉にアーシアは笑顔で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。