帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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アーシアと二人三脚です

 イッセーside

 

 

 

 

 ディオドラの騒乱から数日の時が経った。

 “禍の団”の旧魔王派の悪魔たちは指導者を失い、瓦解したらしい。

 残党の悪魔たちも降伏したり、身を潜めたりしたそうだ。

 ディオドラの一件でアスタロト家も信用を失い、魔王であるアジュカさんにも影響があったらしい。

 本当、迷惑な話だよな……。あいつのせいで、新人同士のゲームも仕切り直しになってしまったし……。

 部長とサイラオーグさんやシーグヴァイラさんの戦いとかも見てみたかったな……。

 まあ、サイラオーグさんの方は熱望する声もあり、実現する可能性が僅かながらあるらしいし、それに期待するか。

 

 ばーん! ばーん! 

 

 おっと、そろそろか。

 空砲が空に鳴り響き、プログラムを告げる放送案内がグラウンドに木霊する。

 

『次は二人三脚です。参加する皆さんはスタート位置にお並びください』

 

 そう、今日は体育祭の日だ。

 そして、今から俺とアーシアが出場する二人三脚が始まろうとしていた。

 俺はしゃがみ、アーシアの足首のひもを繋ぎ、きつく縛る。

 

「これで準備は万端だ。練習の成果、見せてやろうぜ!」

 

「はい!」

 

 そして、順番は俺達の番となった。

 お互いの腰を手でおさえ、走る構えとなる。

 

 パンッ! 

 

 空砲が鳴り響き、俺達はスタートを切る! 

 

「行くぞ! アーシア!」

 

「はい!」

 

 俺たちはスタート開始から抜群のコンビネーションで快走していく。

 練習の成果がしっかりと出てるな! 

 俺はちらりと息を合わせるアーシアを見つめる。

 思えばアーシアも心が強くなったな。あの一件で“禁手”に目覚めるほどに強い心を手に入れたのだろう。

 アーシアの亜種の“禁手”は“女神の微笑(トワイライト・ヴァルキュリア)”と名付けられ、肉体的な傷だけでなく、精神的な傷をも癒す力を持つかなりすごい能力となった。

 “禁手”を習得するくらい心が強くなったアーシアだ。

 数日間で練習も今まで以上に頑張ってきたし、今の俺達なら負ける気が全然しない! 

 

「ファイトっすよ! 二人共!」

 

「イッセー! アーシア! 一番取りなさい!」

 

「いけますわよ!」

 

「イッセー君! アーシアさん! 一番狙えるよ!」

 

「イッセー! アーシア! 行けぇぇぇ!」

 

「二人共頑張って!」

 

「イッセー先輩! アーシア先輩!」

 

「頑張ってください!」

 

 ミッテルトに部長や朱乃さん、他の部員の皆が応援をくれる! ギャスパーも小猫ちゃんも大声出してくれて嬉しいぜ! 

 それだけじゃない。一般の観客席の方からも馴染み深い声が聞こえてくる。

 

「お兄ちゃん! お姉ちゃん! 頑張るの────!!」

 

「イッセー! カッコいいところ撮影してるからな!」

 

「イッセーもアーシアちゃんも頑張ってーっ! ファイトォ!」

 

「頑張るにゃん!」

 

 父さん、母さんにセラも黒歌も観客席から応援してくれている! 

 セラはサーゼクスさん達が上層部を何とか誤魔化してくれたおかげで今もなお、俺達と一緒にいることを許されてるらしい。暴走したセラを止められそうなのが俺達くらいしかいないということもあるらしいけど、サーゼクスさんには頭が上がらないな。

 俺達の晴れ舞台、しっかり見ていてくれよ! 

 俺は一生懸命走っているアーシアに言う。

 

「アーシア、ずっと俺の側にいろよ。もう離れちゃだめだからな」

 

「────っ!」

 

 アーシアは泣きそうになるけど、我慢して走るのに集中した! 

 そして────

 

 バンッ! 

 

 空砲の音が鳴り響く! 

 それと同時に俺達はゴールテープを切った! 

 

「よっしゃああああああ!」

 

 一番の旗をもらい、俺はガッツポーズを取った! 

 どうだ! 俺とアーシアの走りは最速だぜ! 

 

「やった! やったぞ! アーシア!」

 

「はい! やりました、イッセーさん!」

 

 俺とアーシアら手を取り合って喜んだ! 

 練習の成果を遺憾なく発揮できた最高の走りだったぜ! 

 やっぱり俺たちの息は最高だな! 

 

「お疲れ様っす。二人共」

 

「お、ありがとう。ミッテルト」

 

 俺達はミッテルトからスポーツドリンクを受け取り、それを飲み干した。

 うん! 旨い! やっぱり走った後はこれだよな! 

 

「アーシア。疲れたでしょう? イッセーと一緒に体育館裏で休憩してなさい」

 

「は、はい?」

 

 部長の言葉にアーシアは困惑する。

 正直俺も困惑してる。別に、休憩くらいどこでも取れるし、何でわざわざ体育館裏? 

 ────と、そこで部長がアーシアに何やら耳打ちをする。

 

「────っ」

 

 驚いたような表情でアーシアはミッテルトを見る。

 それに対し、ミッテルトは少しため息をつけながら、アーシアに告げる。

 

「……まあ、普段なら許さないっすけど、今回は特別っす。アーシアちゃんも頑張ったわけですし、これくらいのご褒美ならあげるっすよ」

 

 ? 

 ご褒美? なんのこと? 体育館裏になにか用意してるのか? 

 俺が疑問に思っているなか、俺の隣ではアーシアは頬を赤く染めていた。

 そんなこんなで、俺はアーシアと共に体育館裏へと移動した。

 そこにはオカ研の皆が用意したであろう飲み物が隠されていた。ご褒美ってのはコレのことかな? 

 俺達はありがたく、それらを口にする。

 

「ふぅ。次のプログラムまで少し時間あるし、ちょっと休憩したら皆の応援にでも行くか」

 

「は、はい! そ、そうですね……」

 

 俺の言葉に少し挙動不審気味にアーシアは頷く。

 う〜む、どうしたんだアーシア? 

 

「あ、あの、イッセーさん」

 

「ん? どうした?」

 

 アーシアに呼ばれ、振り返ると────

 アーシアが踵を上げる。

 

「·········」

 

 俺の唇に────アーシアの唇を重なった。

 

 

 ・・・・・・・・!!?? 

 俺は突然のキスで何が何やらわからなくなってしまった! 

 や、やべ! 今の滅茶苦茶気持ちよかった! アーシアの唇、滅茶苦茶柔らかかった! 

 と、突然のことで頭がパンクしそうだ! 

 

「あ、アーシア、い、いいい今のって」

 

 余りの出来事にうまく言葉が出てこない! 

 そんな混乱する俺を見て、アーシアはクスリと笑い────

 

「イッセーさん、大好きです。これからもずっとお側にいますから」

 

 最高に眩しい笑顔で言われてしまった。

 その余りの可愛らしさに感無量になってしまい、俺は仰向けに倒れ込む。

 俺────。

 俺、今最高に幸せだぁぁぁぁぁぁっ!!! 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 ??? side

 

 

 

 

 

 ここは次元の狭間に存在する空間。

 ディオドラやシャルバが企てを起こし、イッセー達がセラと戦った浮島である。

 その爆心地に一人の男が立っていた。

 

「……まさか、あのガキ……“機械生命体(エヴィーズ)”だったとはな……しかも、間違いなく最上位の存在……」

 

 カグチは戦いの終わった跡地を見て呟く。

 その言葉には歓喜と困惑の二つが入り混じっていた。

 

「何故“機械生命体(エヴィーズ)”があんなところにいる? 何が起きてるというのだ?」

 

 そう言いながら近づくのは高弟第7位のドォルグだ。

 彼もまた、突如として出現した()()()の“機械生命体”に困惑しているのだ。

 

「……考えられるとすれば、数千年前の生き残りだな……」

 

「……“魔神”と称された機械生命体の軍勢が、とある世界で滅ぼされた……という話か?」

 

「ああ。まあ、仕方ないだろ? あの魔神は他の兄弟と違って“善神”との戦いにも関与せず、ひたすらに弱い星を砕くだけ……。今まで蹂躙ばかりで本物の“戦い”をまるで経験してこなかった……それじゃあ如何にエネルギーで同等といえど、()()()には勝てねえよ」

 

 カグチが言っている戦いは彼自身目撃したわけではない。

 だが、数多の戦場を駆け抜けた彼はその跡地に赴けば、戦いがどのような様相だったのかは見て取れるのだ。

 戦いがあったという星は鼓動を停止し、多くの機械の死骸で埋め尽くされていた。

 

「一方的な蹂躙で終わったんだろうな。今までが今までだから、皮肉なものだぜ」

 

 カグチはケラケラと笑いながら答える。

 それをドォルグは訝しげに見つめていた。

 

「魔神の軍勢の生き残りとして、我らの脅威になる可能性は?」

 

「まあ、あるだろうね。だけど、それがどうした?」

 

 カグチのあんまりないいようにドォルグは口を紡ぐしかない。

 カグチは神祖への忠誠心こそ本物だが、その本質は闘争本能の塊。

 特に命令がなければ“原初”にも平気で戦いを挑む戦闘狂だ。

 しかし、それ故に戦闘能力は高弟の中でも随一であり、同じく神祖の護衛であり、失敗作と評された双子の兄とは違い、次元移動の際に神祖に着いてくることを許された存在でもあるのだ。

 

「敵が増えた。それは厄介だろう。だが、一体くらいなら正直誤差の範囲内だ。唯でさえ、俺達は難しい戦いを仕掛けようとしてるんだからな……」

 

 神祖は強い探究心の塊だ。

 ヴェルダナーヴァに認められる完璧な種族の創造……そのためには邪魔者となる存在を排除しなければならない。

 かの“八星”はそれを認めないだろう。勿論、彼らと共に付き従う“竜種”達もだ。

 神祖やカグチは狂人ではあるが、彼我の差が分からないわけではない。

 天使の軍勢を退け、“蟲魔王”や“滅界竜”すらも討ち滅ぼした相手に真正面から向かっても敗北するだけということはわかっている。

 だからこそ、彼らは戦力増強に躍起になっているのだ。

 

「まあ、旧魔王の末裔とやらは揃いも揃って期待外れだったけどな。名前だけで大した覚悟も強さもない。それじゃあ負けて当然だ」

 

 その点、現魔王達は極上の存在と言えるだろう。

 彼らは才能にかまけてるわけではない。確固たる自分と強さを持っている。

 特に、“サーゼクス・ルシファー”に“アジュカ・ベルゼブブ”……この世界に四人しか存在しない、正真正銘“真なる魔王”に至った者達……。

 

「サーゼクス・ルシファーはどうだった?」

 

「最高だ! 魔力の量も精密操作も並の奴に比べ、桁違い! 旧魔王などと比べるのも烏滸がましいくらいだったぜ! ただ、仲間に引き込むことは難しそうとも感じたけどな……」

 

「そうか……であるなら、やはり消すのが一番か……」

 

「難しいと思うけどな。そっちは誰か協力者を得られたか?」

 

「……北欧の神の一柱……それと、真なる魔王の一柱が我らに協力してくれるらしい」

 

「……へえ?」

 

 ドォルグの言葉にカグチは面白そうに笑みを深める。

 “北欧の神”に“真なる魔王”。どちらも仮初めではない、正真正銘“超級覚醒者(ミリオンクラス)”に至った者だ。

 であるならば多少の戦力にはなるだろう。

 

「異世界に送り込んだ“復讐者”の連中も覚醒を果たしたらしい。これで幾らかマシにはなるだろう」

 

「ほう? アイツらがか? 正直な話、自力で覚醒できるかは半々だと思ってたけどね?」

 

 “復讐者“はメロウが拾ってきた幾人かの人材であり、生まれながらに“魔王種”を獲得していた存在でもある。

 だが、カグチは正直期待などしてはいなかった。”魔王種”を持つといっても、彼等はそれにかまけ己を鍛えることの一切を放棄した連中でもある。

()()()()()()()においても敗れて当然の存在だと考えていたからだ。

 そんな彼等はメロウの指示に従い、異世界への侵略を担当していたのだが……。

 

「……当時、戦いもせずに立場を追われ、今なお慢心が抜けない“禍の団”の旧魔王と違い、直に戦い、座を奪われたアイツラの復讐心は本物だからな。直系なだけあり、力も元々悪くはない。それに、自力覚醒を果たした以上、神祖様に与えられた“種”も発芽する。それなりの戦力にはなるだろう」

 

「なるほど……それは面白そうだ」

 

 カグチはそう呟きながら、笑みを深める。

 

(サーゼクス・ルシファーは強かった。それにシヴァや帝釈天を筆頭とした各神話の主神達もそれなりの力がある……この世界の強者も案外やるもんだな……だからこそ、戦うのが楽しみだ……)

 

 カグチは笑う。

 世界に挑む日を楽しみにして……。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 ??? side

 

 

 

 

 とある国の執務室。

 ここでは2つの影が時空を超えて送られる映像を見ながら会話をしていた。

 

「ふむ……中々凄まじい娘だったな」

 

「まあな。何せ、潜在的なエネルギーは竜種にも届きそうなんだからな」

 

「ふむ。となると、イッセー達だけに任せるのは難しいのではないか? 今回もピンチになっていたではないか?」

 

「……いや、あの娘はイッセー達に懐いてるみたいだし、暫くは任せたほうがいいと思う。問題は……」

 

「カグチとかいう若造だな?」

 

「ああ。ミッテルトの視線越しだから何とも言えないけど、凄まじい隠蔽能力だ。多分だけど、強力な()()()()の隠蔽能力だと思う」

 

「ふむ、厄介だな……」

 

 二人が厄介と感じるのはカグチの権能だ。

 二人は────いや、()()は大方どのような権能なのか目星をつけていた。

 ゆえに、厄介さを再認識していたのだ。

 すると、扉から誰かが執務室に入ってきた。

 美しい碧の瞳に金髪が特徴的な軍服の美少女だ。

 

「カグチは昔から戦闘と同じくらいに諜報が得意だったからね。進化したことでさらに強化されてるのだろう。だけど、イッセーとの戦いで使っていないし、無敵というわけではなさそうだね」

 

「よう、来てくれたか。仕事も忙しいのに、悪いね」

 

「なに、他ならぬ我が君の頼みだ。私にとっては全てに優先されるし、何より因縁のある相手だからね。問題はないさ」

 

「ありがとな……“カレラ”」

 

 金髪の美少女────カレラは眩しい笑顔を見せながら、映像を見る。

 

「君とは何度も殺し合った仲だからね。そろそろ決着をつけよう! カグチ!」

 

 カレラは笑う。

 カグチとは名もなき時代に幾度となく殺し合ったものの、終ぞ決着が着くことはなかった相手だ。

 久しい仇敵と決着をつける機会が巡ってきた。カレラはその時を楽しみにするのだった。

 




女神の微笑(トワイライト・ヴァルキュリア)
聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)”の禁手。外傷などの物理的な傷だけでなく、呪詛や病、精神に刻まれた傷すらも癒やす力を持つ。ただし、欠損など失った肉体は変わらず治せない。

体育館裏のホーリー編はこれにて完結です。
この後、一週間挟み、番外編を入れて第七章に入りたいと思います。
相変わらずの駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです。
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