帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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修学旅行と英雄派です

 イッセーside

 

 

 

 

 

「そういえば、二年生は修学旅行の時期だったわね」

 

 部長は優雅に紅茶を飲みながらそう言う。

 

「部長と朱乃さんは去年どこに行ったんですか?」

 

「私達も京都ですわよ。部長と一緒に金閣寺、銀閣寺を回りましたわ」

 

 曰く、部長達は様々な観光名所を回ったらしい。

 ただ、三泊四日では行く場所も限られるし、結局全部を回ることはできなかったとのことだ。

 

「だから、貴方達も詳細なスケジュールを決めてから行動したほうがいいわよ」

 

「部長ったら、駅のホームで悔しそうに地団駄踏んでましたわね」

 

 クスクスと笑う朱乃さんに、部長は頬を赤らめた。

 

「もうそれは言わない約束でしょう? 日本好きの私としては、憧れの京都だったから、必要以上に町並みやお土産屋さんに目が行ってしまったのよ」

 

 思い出を楽しそうに語る部長。余程楽しかったんだな。

 リムルに聞いたけど、ルミナスさんも京都をとても楽しんだらしい。

 俺も京都には行ったことないし、楽しみになってきたな。

 

「旅行もいいけど、学園祭の出し物も話し合わないと……」

 

「あー、確かにそうっすね。……てか、旅行のすぐ後なんすね」

 

 ミッテルトの言う通り、駒王では学園祭は旅行の後すぐになるのだ。 

 二年生は学校行事が多くて大変だな。

 

「確か、去年はお化け屋敷でしたっけ? 本物のお化けだったから印象に残ってます」

 

「あら、気づいていたの?」

 

 去年、俺は所属こそしてなかったけど、ミッテルトとのデートで一緒に色んな場所を回ったのだ。

 その際、オカルト研究部のお化け屋敷に行って中々楽しんだ思い出がある。

 

「ウフフ。後で生徒会に怒られましたわね。本物を使うなんてルール無視もいいところだわって……」

 

 まあ、確かにルール無視もいいとこだけどな。

 俺は気にせず楽しめたけど……。

 

「取り敢えず新しい試みを────」

 

 部長がそこまで行ったところで俺達全員の携帯が鳴り響いた。

 ────全く、懲りない連中だな。

 

「────行きましょう」

 

 部長の号令と共に俺達は部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 町にある廃工場。

 そこに俺達オカルト研究部の面々は訪れていた。

 すでに日は落ちていて、空は暗くなりつつある。

 薄暗い工場内に多数の気配。更に言うなら、殺意と敵意が俺達に向けて発せられている。

 

「────グレモリー眷属か。嗅ぎ付けるのが早い」

 

 暗がりから現れたのは黒いコートを着た男性。

 男の周囲からは人型の黒い異形の存在が複数姿を覗かせている。

 魔力感知からこの狭い工場内に黒い人型モンスターが百近くいるのがわかる。

 部長が一歩前に出る。

 

「“禍の団(カオス・ブリゲード)”────英雄派ね? ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。三大勢力よりこの地を任されている上級悪魔よ」

 

 部長の挨拶を聞いて、男が薄く笑みを浮かべる。

 

「ああ、存じ上げておりますとも。魔王の妹君。我々の目的は貴様たち悪魔を浄化し、町を救うことだからな」

 

「別に結構。寧ろ、街の平和を乱してるのお前らだから帰ってどうぞ」

 

 俺の言葉に英雄派の連中はギロリと睨みつけてくる。

 目の前にいる奴らは英雄派とかいう“禍の団”の構成員。

 ここのところ、この英雄派が俺達に襲撃してくる。……というか、各勢力の重要拠点も英雄派の襲撃を頻繁に受けているとのことだ。

 英雄派は英雄や勇者の末裔、神器所有者で構成されているためか、俺達の相手は人間が多い。

 

「赤龍帝。悪いことは言わない。此方に来い。貴殿も人間ならばわかるだろう? 人間と他種族は決して相容れん。さあ……」

 

 ────だからか、知らないけど、俺のことを勧誘してくる奴が結構な数いるんだよな。

 

「断る。俺はそうは思わないからな」

 

 もちろん俺は勧誘されても速攻で断ってる。

 人間と他種族が相容れない────そんなことはない。

 現に、俺とミッテルトは恋人になれたし、そもそもリムルはそれを可能にする国家を作ってみせた。

 正直な話、テロ行為をする奴らよりも部長たちの方が余程信じられるってものだ。

 俺の言葉を聞き、英雄派の男は舌打ちをしながら腕を上げた。

 

「ならば、死ね」

 

 合図とともに、男の横から人影が二つ。

 二人とも人間。一人はサングラスをした男性だ。もう一人は中国の民族衣装らしきものを着ている。

 あの三人の周囲にいる黒いやつは戦闘員。英雄派の思想から、他種族の力を借りるとは考えづらいし、恐らくは神器か何かで産み出されたものだろう。

 英雄派ではあれを兵隊として使っており、強さは大体Bランクってところだ。一般的な下級悪魔レベルでは相手にならないだろう。

 まぁ、俺とミッテルトは言わずもがな、他の皆の実力も殆ど上級悪魔レベルだから問題はないけどな。

 

「イッセー。ここは私達が行くわ」

 

「いつまでも、二人に頼ってばかりいられませんものね」

 

 そう言いながら、部長達がフォーメーションを組む。

 前衛が木場とゼノヴィア。中衛がイリナ、小猫ちゃん、ギャスパー。後衛が部長、朱乃さん、アーシアだ。

 俺がやれば、すぐに終わるけど、皆の成長をしるいい機会だし、俺とミッテルトはサポートに回るとするか。

 敵が俺達のフォーメーションを確認すると、黒いコートを着た男性が手から白い炎を発現させた。

 それを見た木場が目を細める。

 

「また、神器所有者か……」

 

「困ったものね。ここのところ、神器所有者とばかりと戦っているわ」

 

 部長も木場の発言に頷き、嘆息する。

 英雄派は構成員の殆どが神器の所有者らしい。

 神器は神が残しただけのことはあり、“ユニークスキル”に匹敵する性能のものも稀にだけどあるから結構面倒くさいんだよな。

 炎を揺らす男がこちらへ攻撃を仕掛けようとする。しかし……。

 

 ヒュッ! 

 

「なっ、は、速い!」

 

 それよりも速く、木場が炎の男に接近していた。

 男はそれを何とか躱しながら、炎を木場に放つ! 

 

「はあ!」

 

 しかし、木場は新たに聖魔剣を作り出すと、白い炎を切り裂いた! 

 

「なっ!? 炎を切り裂くだとぉ!?」

 

 木場の神器の強みは様々な特性の聖魔剣を作り出せる点にある。

 相手も木場の攻撃を躱す辺り、相当鍛えられてるけど、力も神器の格も木場が圧倒的に有利だ! 

 

「はあああ!」

 

 木場はそのまま炎の男を切り裂こうとする。

 そこに、サングラスの男が割り込んできた! 

 サングラスの男は影を操り、木場の剣を飲み込んだ。

 

 ビュッ! 

 

 次の瞬間、木場自身の影から聖魔剣の刀身が勢いよく飛び出してきた。

 木場はそれを躱し、後方へと下がる。

 

「影で飲み込んだものを任意の影に転移できる能力か……。厄介な部類の神器だね」

 

 ふむ。中々厄介な神器だな。

 恐らく、相手の攻撃を範囲内の影に自由に移動させるのだろう。

 だけど、相手が影の中に入って移動しないところを見るに、“影移動”のような使い方はできないのかな? 

 俺が相手の神器について考えていると、民族衣装の男が光でできた弓矢を放つ。

 狙いは木場────ではなく、アーシア! 

 矢は木場に斬り裂かれる直前に軌道を変え、アーシアへと向かっていく。

 矢の軌道を操作する神器か。俺は思わず飛び出そうとするが、我に返ってやめる。

 今回は手を出さないつもりだし、この程度なら問題ないしな。

 案の定、光の弓矢相手にはイリナが対応してみせた。

 

「光なら任せてちょうだいな!」

 

 イリナは光の槍を生み出し、相手の弓矢を相殺した。

 それを見た影使いは光使いの周囲に壁を作り出し、光の矢と白い炎の両方が放たれる。

 それを見たゼノヴィアはデュランダルを構え、一歩前に出る。

 

「ふん!」

 

 ドンッ! 

 

 刹那、それらの攻撃はすべてゼノヴィアのアスカロンによって容易く打ち砕かれた。

 流石ゼノヴィア。以前よりも増々パワーが上がってるな! 

 

「……ゼノヴィア先輩。後ろです」

 

「むっ!」

 

 小猫ちゃんの言葉に振り向くと、ゼノヴィアの後ろには緑の矢が迫っていた。

 

 ビュッ! 

 

「どうやら伏兵が潜んでいたようですわね」

 

 それを朱乃さんが雷光の矢によって相殺する。

 結構な気配の隠蔽だったうえ、工場の外から放たれた攻撃だったけど、言われなくとも気付くとは……小猫ちゃんの仙術の感知能力も上がってるようだな。

 ここで後方で機械をいじっていたギャスパーが叫ぶ。

 

「で、出ました! そ、そちらの方が炎攻撃系神器“白炎の双手(フレイム・シェイク)”! サングラスの方が防御系の“闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)”! 弓矢のほうが“青光矢(スターリング・ブルー)”と“緑光矢(スターリング・グリーン)”ですぅぅ!」

 

 ギャスパーはアザゼル先生の開発した“神器スキャンマシン”を使い、相手の神器を調べていたんだ。

 神器は所有者を変え、宿主に宿る……つまり、過去に所有者が別に存在した神器も数多くあるということだ。

 それらのデータを照合すれば、どんな神器かわかるってことだ。

 ギャスパーの言葉を聞いた部長は皆に指示を送る。

 

「前衛組、指示を出すわ。祐斗は影使いと炎使いを狙って! 小猫は工場の外に隠れてる弓矢の使い手を! ゼノヴィアは雑魚の方を蹴散らしつつ、活路を開いて! 中衛、後衛は全力でサポート一気に片をつけるわよ!」

 

『了解!』

 

 全員が応じ、一気に動き出す! 

 ゼノヴィアが先行して、デュランダルで凪ぎ払い、戦闘員を蹴散らしていく! 

 小猫ちゃんは戦闘員を殴り飛ばし、弓矢を容易くかわしながら外に隠れている相手との距離を詰めていく! 

 ゼノヴィアと小猫ちゃんの手により、戦闘員が霧散し、その隙に木場が詰め寄り、木場は影使いへと斬りかかる! 

 

 ドウンッ! 

 

 再び吸い込まれる聖魔剣の刀身! 

 この後、どこかの影から聖魔剣が飛び出してくるはず! 

 ……まあ、わかってるんだけどね。

 

 ビュッ! 

 

 飛び出してきたのは俺の影からだ。

 俺達は完全に蚊帳の外だったし、影使いも油断してる今なら当たると思ってたんだろうな……。

 

「イッセー! それをかわして、影へ弾を撃ち出して!」

 

 おっと? 部長からの指示が! 

 部長もしっかりと周りを俯瞰してみる目が身についてきたな。了解です! 

 俺は聖魔剣の刀身を避ける、影へ向かって魔力の弾を放った! 

 

 ドンッ! ドウンッ! 

 

 いちおう、部長の作戦は理解してるつもりだ。

 俺は木場たちの力に合わせた気弾を撃ち込んでみる。案の定、俺の気弾は吸い込まれていく。

 

「祐斗! 影で繋がってるから、イッセーの弾がそちらに来るわ! 出現する前に影の中で弾を両断して爆散させてちょうだい!」

 

「了解です!」

 

 部長の指示に従い、木場が影の中で聖魔剣を振るった! 

 

 ドオオオオオオオオンッ! 

 

「ぐわっ!」

 

 爆発音と悲鳴が工場内に響く! 

 見れば影使いがボロボロになって吹っ飛ばされていた! 

 

「影の中で攻撃がはじければどうなるか試したけど、処理できずに爆発したようね。攻撃そのものは受け流すことは出来ても、弾けた威力までは受け流すことは出来ない……といったところかしら?」

 

 部長が不敵な笑みを浮かべる。

 流石は部長、良い着眼点だ。

 実際、影移動を使うやつ相手には、影の中を攻撃するのがセオリーだし、あれ程の能力だと演算能力も必要となってくる。

 見た感じ、スキルの類はないみたいだし、影の中で爆破させればキャパオーバーしてしまうのは当然と言えよう。

 

「おのれ、燃え尽きろ!」

 

 炎使いは激高し、木場に炎を放つが、如何せん遅すぎる。

 それじゃあ木場には当たらねえよ! 

 

「はあああ!」

 

「うぉぉぉ!」

 

 その速度のまま、木場は一閃で炎使いを、ゼノヴィアはデュランダルで青の弓矢使いをそれぞれ吹き飛ばした! 

 

 ドゴォン! 

 

 工場の壁が崩れ、もう一人の弓矢使いが倒れ伏せる。

 小猫ちゃんは廻し蹴りで緑の弓矢使いを一撃で吹き飛ばしたのだ! 

 

「さすが小猫ちゃん。仙術の精度もだいぶ上がったな」

 

「……ありがとうございます」

 

 俺の言葉に少し照れたように言う小猫ちゃん。

 見た感じ、敵の気配もないし、とりあえずは戦闘終了かな? 

 ────そう思った瞬間だった。

 

「……ぬおおおおおおおおっ!!!」

 

 先程倒した影使いがふらふらの状態で立ち上がり、絶叫した。

 途端に男の体に黒いモヤモヤが包んでいく。更に影が広がり、工場内を包み込もうとしていた。

 これは……まさか!? 

 俺は即座に影使いを捕縛しようと立ち上がる……だが……。

 

 カッ! 

 

 影使いの足元に光が走り、何かの魔法陣が展開される。

 術式的に転移魔法……だけど、見たことがない紋様だ。

 この世界の転移魔法の魔法陣は、悪魔の家系や堕天使によって紋様が異なっているという特徴がある。

 つまり、悪魔でも堕天使でもない、別の存在の転移魔法陣! 

 魔法陣の光に影使いは包まれていき、一瞬の閃光のあと、影使いはこの場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「皆、お疲れさま。誰もケガしなくて良かったよ」

 

 影使いが消えた後、俺達はその場に残された神器所有者を捕縛して冥界に送った。

 倒した奴らは一応殺してはいない。

 一応、何かしらの手掛かりが見つかるかもしれないからなのだが、結構難航してるのが現状だ。

 ……というのも、敵は各勢力に神器所有者を送り込む際に記憶消去の術式プログラムを組んでいるのだ。

 この方式で消された記憶は元に戻すことがむずかしいらしい。

 

「できるだけ壊さずに戦闘しないといけないっすし、結構もどかしいものなんすね」

 

「これもレーティングゲームのルールの内と思えばいい経験よ」

 

 俺……というか、木場達が全力で戦えば、正直簡単に決着がつくだろう。

 でも、建物を壊してしまうと町の住人を誤魔化すのが大変らしく、できる限り建物を壊さないようにするという制限が俺達にはあるのだ。

 まあ、部長の言う通り、ここから先のレーティングゲームには変則的なルールもでてくるだろうし、この手の戦闘に慣れるのもいい経験だろう。

 

「でも、厄介なことになってきましたね」

 

 嘆息しながら木場が言う。

 

「どういうことだ、木場?」

 

 厄介なこと? 何のことだ? そう思いながら、俺は木場に尋ねてみる。

 

「刺客の神器所有者に特殊技を有する者が出てきたってことさ。今までは向こうも力押しで来ていたけど、テクニックタイプに秀でる者が現れてきた。最初はパワータイプやウィザードタイプばかりだったというのに……」

 

 ああ、確かに……言われてみればそうだな。木場が言いたいことが分かったぞ。

 俺は脅威をまるで感じなかったから、正直あまり気にしてなかったけど、言われてみると、相手の能力が複雑になってる気がする。

 さっきの影のやつとか顕著な例だしな。

 

「……先生も言ってました。神器には未知の部分が多いと」

 

「そう。だから、さっきみたいな特殊な力で聖魔剣に対応しようとした。直接防御できないなら、いなせばいいと考えたんだろうね」

 

 相手は手下をけしかけることで俺達の戦力を分析してるってことだな。

 どうやら英雄派とやらは、旧魔王派と違って戦闘における情報の大切さをよくわかっているらしい。

 ……それに、さっきの影使いを見るに、面倒臭いことも考えてるみたいだな。

 

「あの、疑問に思ったんだけど、意見いいかしら?」

 

 イリナの言葉に全員の視線が集まる。

 

「ええ。お願い」

 

 部長に促され、イリナは、ポツリと話し出す。

 

「私達を攻略しに来たにしては、英雄派の行動って変だと思うのよ」

 

「変?」

 

 怪訝そうに返すゼノヴィア。

 どうやら、イリナも違和感に感づいているみたいだな。

 

「だって、私達を本気で攻略するなら、二、三回くらいの戦いで戦術プランを組み立ててくると思うの。それで四度目あたりで決戦仕掛けてくるでしょうし……。でも、四度目、五度目とそれは変わらなかった。なんていうのかな……彼等のボス的存在がなにかの実験でもしてるんぞゃないかな……って」

 

「実験? 私たちの?」

 

 朱乃さんの問いにイリナは首を捻った。

 

「どちらかというと、彼ら────神器所有者の実験をしているような気がするの。……まぁ、ただの勘だから、合ってるかどうかはわからないんだけど……。この町以外にも他の勢力のところへ神器所有者を送り込んでいるのだから、強力な能力を持つ者が多いところにわざとしかけているんじゃないかしら」

 

「それは俺も思ってた。コイツラは俺達を攻略するために仕掛けてるんじゃないってな……。まあ、何を考えてるのか、その目的までは分からなかったんだけど……」

 

 これは俺もミッテルトもずっと感じていた違和感だ。

 何故、毎回特攻じみた攻撃をしてるのかという点に……。

 今までは確証がなかったけど、今日の戦いでハッキリと確信した。

 強者に兵をぶつけて、兵の力を引き上げるという戦略。

 俺は、この戦略に覚えがある。

 これはかつての“東の帝国”が行っていた戦略と全く同じことなんだ。

 神器所有者を追い込み、何を狙ってるか! そんなの一つしかない! 

 

「……劇的な変化」

 

 小猫ちゃんがぼそりと呟き、全員の顔が強ばった。

 どうやら皆も敵の作戦がわかってきたみたいだな。

 

「……英雄派の目的は、多分俺達に神器所有者をぶつけて禁手に至らせることなんだと思う」

 

「なるほど。確かに、あの影使いが魔法陣の向こうに消え去る前に見せた反応は……禁手のそれに似ているような気がするよ」

 

 俺は木場の意見に頷く。

 皇帝ルドラが帝国の強者を師匠にぶつけ、“聖人”に覚醒させようとしていたのと同じで、神器所有者を俺たちにぶつけ、一人でも多くの“禁手”の使い手を増やすことが目的なのだろう。

 あの影使いが見せた変化は“禁手化”だったってことか……。

 

「俺達は並の使い手からすれば充分脅威的と呼べる存在だ。戦うだけでも向こうからすれば、相当な試練になるだろうな……」

 

「……向こうからすれば、うちらは都合のいい経験値稼ぎのレア敵ってところっすかね? 面倒なこと思いつくっすね……」

 

「やり方としては強引で、雑とも言えるね」

 

 木場の言葉にイリナも頷く。

 

「何十人、何百人死んでも、一人が禁手に至ればいいって感じよね……。最低な発想よ……」

 

 全くだ。

 部下を駒程度にしか思ってない、“皇帝“ルドラみたいにロクなやつじゃなさそうだ。

 イリナの言葉に部長が肩をすくめる。

 

「わからないことだらけね。後日アザゼルに問いましょう。私達だけでもこれだけの意見が出るのだから、あちらも何かしらの思惑は感じ取っていると思うし」

 

 そうだな。

 アザゼル先生達上層部なら俺達よりも情報を持ってるだろうし、ここで話しても結論は出ないだろうしな。

 そういうわけで、今日は解散となった。

 俺は帰り支度をしていくなか、朱乃さんが鼻歌を歌っていた。

 すごく嬉しそうだけど、何か良いことでもあったのかな? 

 

「あら、朱乃。随分とご機嫌ね。S的な楽しみでもできたの?」

 

 部長の問いに朱乃さんは満面の笑みで答える。

 

「いえ、そうではないの。うふふ。明日ですもの。自然と笑みがこぼれてしまいますわ。デート。明日イッセー君は私の彼氏……やっとこの日がやって来ましたわ」

 

 あー、それか。

 どうやら朱乃さん、相当楽しみにしてたみたいだな……。 

 ……なんてことを考えた次の瞬間────女子部員の殺意の視線が俺に向いた! 

 怖っ!? 何かすげえ殺気立ってるんだけど!? 

 

「イッセー君、明日はよろしくお願いしますわ♪」

 

「え、ええ、俺の方こそよろしくお願いします!」

 

 皆の殺気を受けながら、俺は引き攣るような笑みを浮かべてそう答えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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