帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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悪神襲来です

 イッセーside

 

 

 

 

 

「日本のヤマトナデシコはいいのぅ。ゲイシャガール最高じゃ」

 

「それはよかったっすね」

 

 オーディンの爺さんが来日して数日が経つ。

 俺達はスレイプニルという空飛ぶ馬が引く馬車に乗っていた。

 俺とミッテルトは爺さんと向かい合う形で座っており、外にはイリナ、ゼノヴィア、木場、バラキエルさんが護衛として並走している。

 はぁ、本当に面倒くさい。

 別にいいんだけどね。遊園地や高級寿司屋みたいな場所に行けたのは楽しかったしさ。

 だが、未成年に護衛任せといて未成年厳禁な場所行くのは流石にどうかと思うんだよ! しかも、俺達が怒ってもどこ吹く風で誤魔化しやがるし、本当に面倒くさい! 

 

「オーディン様! もうすぐ日本神話の神々との会談なんですから、旅行気分は収めください! このままでは、帰国したときに他の方々から怒られますよ!」

 

 ロスヴァイセさんもブチ切れてるし……どうやら我慢の限界みたいだな。

 

「大丈夫じゃよ。日本神話の天照はこの程度じゃ怒らんよ。寧ろ、国を褒められたことを喜ぶじゃろて。お主はもう少しリラックスしたらどうじゃ? そんなんだから男の一人もできんのじゃよ」

 

「か、彼氏がいないのは関係ないでしょう! 好きで独り身してるわけじゃないですからぁぁぁ!」

 

 あー、また涙目になったよ。本当に面倒くさい。

 早く帰ってくれないかな……。

 

 ガクン! 

 

 ヒヒィィィィィィィン!! 

 

「────っ!?」

 

 突然馬車が止まり、急停止する! 

 皆、不意の出来事に体制を崩していた。

 

「何事ですか!? まさか、テロ!?」

 

「わからん。だが、こういう時は大抵ろくでもないことが起こるぞ」

 

 俺は急いで外に出て、下手人の姿を確認する。

 外には既に、バラキエルさん達が臨戦態勢に入って敵を囲んでいる。

 前方には若い男性らしき者が浮遊している。目つきの悪いイケメンだ。

 こいつ……結構強いな。素で“超級覚醒者(ミリオンクラス)”に至ってる実力者だ。立ち振る舞いも“旧魔王”連中と違い、隙がない。

 気になるのはオーラの質だ。どことなく、オーディンの爺さんに近い感じがする。何より、驚いたようにしてるロスヴァイセさんの表情を見るに……

 

「……北欧の神様か何かか?」

 

 俺の言葉を聞いた男はマントをバッと広げ、高らかに喋りだした。

 

「はっじめまして、諸君! 我こそは北欧の悪神! ロキだ!」

 

 悪神……悪い神様ってことか? 

 

『その認識で問題ない。ロキは北欧の悪神と謳われる狡猾の神だ』

 

「狡猾の神様……そんな奴が何しに来たんだ?」

 

 俺の言葉にロキは腕を組みながら、口を開く。

 

「いやなに、我らが主神が我ら以外の神話体系と和平を結ぼうとしてることがどうにも苦痛でね。邪魔しに来た。滅ぼす……もしくは隷属させるのならばともかく、和平などと生ぬるいことをするなど……」

 

 悪意全開! 凄い物言いだな! 

 

「堂々と言ってくれるじゃねえか、ロキ」

 

 先生は怒気を含んだ声音で言う。だが、ロキはどこ吹く風だ。

 

「堕天使の総督殿か。貴様もオーディン共々我が粛正を受けるか? これは北欧の問題だ。邪魔しないでもらおうか」

 

 ロキはそう言いながら、オーラを開放する! 

 その圧倒的なオーラに部長達は冷や汗をかいている。

 ロキの存在値は160万といったところで鎧をまとった先生や素の俺よりも強力だ。厄介そうな相手だな。

 

「一つ聞く! お前のこの行動は“禍の団”と繋がっているか?」

 

「あのような愚者と一緒くたに考えるな……少なくとも“禍の団”との繋がりはない」

 

 禍の団じゃない……だけど、こいつの言い方は他の奴らとは手を組んでるみたいな感じだな。先生も同じことを考えたみたいだ。

 

「……カグチたちの所属する正体不明の組織か。どっちも変わらねえな」

 

「なんとでも言うがいい」

 

 ここでオーディンの爺さんとロスヴァイセさんが馬車からでてきた。

 

「ふむ。あやつらと手を組むか……そうまでして黄昏をおこないたいのかのぅ」

 

 爺さんは顎の長いひげを擦りながら呟く。

 

「ロキさま! これは越権行為です! 主神に牙を向くなんて! 許されることではありません! 然るべき公正な場で異議を唱えるべきです!」

 

 戦闘服を着たロスヴァイセがロキに言う。だが、ロキは同じ北欧の存在の言葉にも一切聞く耳を持たない。

 

「一介の戦乙女ごときが我の邪魔をしないでくれたまえ。我はオーディンに訊いているのだ。まだ北欧神話を越えたおこないを続けるつもりなのか?」

 

 返答を迫られる爺さんは至極平然と答えた。

 

「そうじゃよ、少なくとも、お主よりサーゼクスとアザゼルと話してたほうが万倍も楽しいわい。和議を果たしたらお互い大使を招き、異文化交流でもしたほうがいい」

 

 それを聞き、ロキは苦笑する。

 

「認識した。なんと愚かなことか。────ここで黄昏をおこなおうではないか」

 

「それは抗戦の宣言と受け取っていいな?」

 

「いかようにも」

 

 ドガァァァァァン!! 

 

 突如、ロキに波動が襲いかかる! 

 ゼノヴィアだ! 初手から最大攻撃を放ったみたいだな。

 ────だが

 

「……効かないか。さすがは北欧の神」

 

 ゼノヴィアの言葉通り、煙が収まると、何事もなかったかのように宙に浮くロキの姿があった。

 ゼノヴィアの攻撃など意にも介していないみたいだな。

 

「聖剣か……いい威力だが、我には通じん」

 

 ゼノヴィアが“伝説級(レジェンド)”の真価を引き出せてればまた違ったんだろうが、生憎ゼノヴィア単独でデュランダルの真価は発揮できない。

 木場とイリナも聖魔剣と光の剣を握ってロキに攻撃を仕掛ける! 

 それを見てロキは嘲笑する。

 

「ふはは! 無駄だ! これでも神なのでね、一介の悪魔や天使の攻撃など意味をなさん!」

 

 ロキは二人に向けて、左手を突き出し魔力を貯める! 

 ヤバイ! アレを放たれたら二人は一瞬で蒸発してしまう! 

 

「うちに任せるっす!」

 

 ミッテルトは翼を全開にし加速! “堕天刀(フォールン)”を構え、ロキを切り裂こうとする! 

 

「キサマは……」

 

 ロキは魔力を圧縮した波動を放つ! ミッテルトはそれを剣で迎え撃つ! 

 

 ギギギギッ! 

 

 凄まじい高音が鳴り響く中、ミッテルトは慌てずに魔力を刀に込める! 

 

「朧・流水斬っ!!」

 

 ザンッ!! 

 

 ミッテルトはそのままロキの放つ波動をぶった斬り、相殺した! 

 その爆風で木場とイリナが吹き飛ばされるが、すぐさま体制を立て直している。

 よかった! 無事みたいだな! 

 

「我の攻撃を幹部でもない堕天使が……そうか。貴様がアヤツラの言っていた“基軸”育ちの堕天使か」

 

 ロキの言葉に俺とミッテルトは目を見開く! こいつ、基軸世界のことを知ってやがるな! カグチに聞いたのか? 

 見ると、ロキの言動に驚いているのは俺達だけじゃない。

 

「……貴様、何故基軸のことを……」

 

 意外な人が動揺しながらロキを見ていた。

 オーディンの爺さんだ。

 爺さんはロキの言葉に反応し、驚いたような表情でロキを見つめる。

 

「どうした、オーディン! 何かおかしいことでも言ったか?」

 

「……いや、しかし……なるほどのぅ。お主等が人間や下級堕天使でありながら破格の力を持つのはそういうことじゃったのか」

 

 爺さんは何やら腑に落ちたように俺達にしか聞こえないくらいの小声で話し掛けてきた。

 ……この人、基軸世界のことを知ってるのか!? 何で!? 

 

「まあよい。少し話を聞きたいが……今はロキじゃな」

 

「滅びよ!」

 

「雷光よ!」

 

 爺さんのつぶやきと同時に部長と朱乃さんが馬車から飛び出し、ロキに不意打ちを仕掛ける! 

 ロキは慌てることなくそれを弾き、二人を眺める。

 

「紅色の髪……グレモリー……だったか? 現魔王の血筋だな。それに、堕天使の幹部が二人、天使が一匹、悪魔が数匹。赤龍帝に手練れの堕天使が一人。護衛にしては厳重だ」

 

 ……こいつ、さり気なく部長やイリナ達を匹呼ばわりで数えやがった。

 部長達は警戒するまでもないってことか……? 逆に、ミッテルトや俺は普通に数えてる分、警戒してるのかもしれないな。

 

「お主のような大馬鹿が来たんじゃ。結果的には正解だったわい」

 

 爺さんの言葉にロキは不敵な笑みを一層深める。

 

「よろしい! ならば呼ぼう! 出てこい! 我が愛しき息子よッ!」

 

 息子? 

 何だ? 何が出てくるんだ? 

 ロキの叫びに一拍開けて、魔法陣が出現する。魔法陣が輝き、そこから灰色の何かが現れた。

 あれは……狼か? 十メートル以上はあるな。

 ……というか、アレって明らかにロキより強くないか!? 

 存在値換算で350万を超えてるぞ!? エネルギーだけでもサーゼクスさんに匹敵する化け物だ! 何だアイツ!? 

 そんな狼が俺達のことを睨みつける。強いプレッシャーに慣れていない部長達は皆全身を強張らせて震えてる。

 無理もない。あれはとんでもない化け物だからな。牙や爪もかなり鋭い! 恐らく“神話級(ゴッズ)”に匹敵するだろう。

 

『……面倒くさいのが現れたな。アレはこの世界の魔物の中でも最強格の一体だ』

 

 だろうね。というか、ドライグはあの狼を知ってるのか。

 

「“神喰狼(フェンリル)”だと!? イッセー、距離をおけ!」

 

「フェンリル! まさか、こんなところに!」

 

「……確かに、まずいわね」

 

 先生の言葉に皆は驚愕と同時に納得したかのように警戒態勢を取る。皆もあの狼を知ってるのか。

 

「あいつはロキが生み出した最悪最大の魔物の一匹だ! 神を確実に殺せる牙を持っている!」

 

 ────神をも殺す牙! 

 なるほど。それはまた随分と強力そうだな。ドライグが警戒するのもよく分かる。

 

「気をつけ給え。こいつは我が開発した魔物の中でもトップクラスの部類だ。なにせ、こいつの牙はどの神でも殺せる代物でね。試したことはないが、他の神話体系の人物にも有効だろう。上級悪魔でも伝説のドラゴンでも余裕で致命傷を与えられる」

 

 そう言いながら、ロキは指先を部長に向ける。

 ……こいつ、まさか!? 

 

「本来、北欧の者以外に我がフェンリルの牙をつかいたくはないのだが……まあ、北欧の者以外の血を覚えさせるのもいい経験になるやもしれん。魔王の血筋。その血もフェンリルの糧となろう。────やれ」

 

 オオオオオオオオオオォォォォォォォオオオオオンッッ!!! 

 

 闇の夜空で灰色の狼が透き通るほどの遠吠えをした。

 それと同時にフェンリルの姿が視界から消える! 中々速いな……だが、俺の魔力感知なら充分追える! 

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

 俺は速度を倍加させ、即座にフェンリルの尻尾を掴む! 

 

 ガクン! 

 

「グゥ!?」

 

「────え?」

 

 眼前にフェンリルの牙が迫っていたことに気付いた部長は放心しながらフェンリルを眺めている。

 

「おらぁぁ!!」

 

 ドゴンッ! 

 

 俺はフェンリルをそのまま引っ張り上げ、鳩尾を思い切りぶん殴る! 

 ぶん殴られたフェンリルはそのまま吹き飛ぶが、宙空を回転することで勢いを殺し、静かに俺を見据えている。

 ────強い。

 最初、知能は低いかもと考えたりもしたが、どうやら喋れないだけで相当知能も高そうだ。

 今の一撃もインパクトの瞬間に身体を捻ることで威力を受け流していたし、同時に俺にカウンターを仕掛けやがった! 

 赤龍帝の鎧でも完全に防ぐことはできず、爪を受け止めた俺の右手は血を垂れ流してしまってる。

 まあ、この程度ならば戦闘に支障はないけど、厄介だな……。

 戦闘経験は低そうだし、総合的な強さで言えば圧倒的に劣るけど、単純な爪や牙の鋭さだけならば“ランガ”さんを上回ってるかもしれない。

 狼のくせに気闘法らしきものまで使ってるし、正直ロキよりも遥かに油断ならない存在だ。

 

「イッセー! 大丈夫なの!?」

 

「ええ。貫通はしてないですし、この程度なら全然問題ありません」

 

 そんな俺をロキは警戒するように見つめている。

 

「……驚異的だな、赤龍帝。フェンリルの動きに容易く追いつき、そればかりかダメージを与えた。自らのダメージを最小限にしながら……恐るべきことだ。今のうちに始末しなければならんな」

 

 ロキは再びフェンリルに指示を送り、それに応え、フェンリルは俺に向かってきた! 

 俺はフェンリルの動きを誘導しながら受け流す! 

 鎧を貫くとわかった以上、あまり攻撃を受けないほうが良さそうだ。死にはしないだろうけど相当ヤバいだろうしな! 

 フェンリルの攻撃を流しつつ、ロキの方を見ると、先生とバラキエルさんがロキ目掛けて槍と雷光を放っていた。

 だが、ロキは防御の魔法陣を展開し、容易く二人の攻撃を凌いだ! 

 

「フェンリルを使わずとも、堕天使二人程度では我を倒せんぞ」

 

「北欧の術式! 流石は魔法、魔術に秀でた神話体系だな!」

 

「だったら同じ術式で!」

 

 ブィィィィィンッ! 

 

 ロスヴァイセさんがロキと同じ魔法陣を展開し、縦横無尽の飽和攻撃を仕掛ける! 

 わかってはいたけど、ロスヴァイセさんも相当の使い手だな。少なくとも、“災害級(ハザード)”程度ならば今の一撃で消滅するだろう……。

 ────だけど、神には通じない! 

 ロキは全身に防御魔法陣を展開し、ロスヴァイセさんの攻撃を難なく防いでしまった! 

 

「所詮は半神。その程度では我の薄皮一枚焼くことすらできんよ」

 

「だったら直接叩き割るまでっすよ!」

 

 瞬間、ミッテルトがロキの防御魔法陣を刀で思い切りぶっ叩く! 

 

 ガキィィィン! 

 

「ぐっ……!」

 

 苦悶の声を上げるロキ。

 存在値ならば、ミッテルトよりロキの方が上だ! でも、ミッテルトには身体強化のユニークスキル“ 見栄者(カザルモノ)”がある。

 数倍まで上がった身体能力に達人級の剣術が加わるのだ! あれくらいの障壁なら十分割れる! 

 

「はぁぁ!!」

 

 バキィィン! 

 

 ミッテルトはそのままロキの防御を貫き、一閃を加えようとする! 

 それに対し、ロキは禍々しい剣を召喚し、ミッテルトの刀を受け止めた! 

 

「我にレーヴァテインを抜かせるとはな……!」

 

「その剣……“神話級(ゴッズ)”っすね! 本当に面倒な……!」

 

 ガキィン! という音とともに、ミッテルトは自ら飛び退いた! 

 ロキの剣は弱いけど間違いなく“神話級(ゴッズ)”だ。あのまま押し切ろうとすれば、ミッテルトの刀がへし折れていたかもしれない。

 ミッテルトの刀は最上位といえど、あくまで“伝説級(レジェンド)”だからな。

 ……これはまずい状況だな。

 ロキにフェンリル……覚醒魔王級が二人いるこの状況は俺達はともかく部長やイリナ達はかなり危ない。

 相手が“神話級”の武器を持ってるとなると、危険度も跳ね上がるし、そもそもロキに対抗できるのが先生、バラキエルさん、ミッテルトの三人しかいない。

 オーディンの爺さんの護衛という任務の都合上、むざむざオーディンの爺さんに戦場に立たせるなんてことするわけにもいかないし、俺はフェンリルを抑え込むので割りと一杯一杯だ。本気を出せば問題ないけど、ここは街の上空だから大きな力を使うわけにもいかないし……。

 せめてもう一人、魔王級以上の存在が欲しい! 

 クソッ! 今トーカと一緒に飲みに行ってるであろう黒歌の不在が悔やまれる! 黒歌がいれば結界で本気を出せるから一瞬で終わるのに! 

 

「面白そうなことをやってるな。俺達も混ぜてもらおうか」

 

「ん?」

 

 どこからともなく聞き覚えのある声が響く。

 瞬間、空間の歪みとともに見覚えのある白い鎧が現れた! 

 

『Half Dimension!』

 

 グバババンッ! 

 

「なんだ?」

 

 音声とともにロキとフェンリルの周りの空間が大きく歪む! ロキとフェンリルは慌てることなく歪みを断ち切ろうとする。

 

 取り敢えず俺はその隙を突いて、フェンリルに重たいのを一発食らわせてやった! 

 

「ギャン!?」

 

 流石に受け身を取ることもできなかったのか、フェンリルは口元から血を滴らせながら吹き飛んでいく! 

 だが、流石にこの世界最強の魔物。宙空で身体を捻り、即座に体勢を立て直した。

 それにしても今の歪みは……“半減”か? ということは────

 

「やあ、兵藤一誠」

 

「やっぱりお前か。ヴァーリ」

 

 俺達の前に現れたのは白龍皇ヴァーリ。

 助かったけど……何しに来たんだコイツ? 

 

「おいおい、フェンリルを簡単に吹き飛ばすとか……どこまで規格外だ? おっぱいドラゴン」

 

 横から金色の雲に乗って出てきたのは美猴だった。

 

「────ッ! 白龍皇か!」

 

 ロキがヴァーリの登場に嬉々として笑んだ。

 

「始めましてだな。悪神ロキ殿。俺は白龍皇ヴァーリ。────貴殿を屠りに来た」

 

 ヴァーリの宣戦布告を聞き、ロキは口の端を上げる。

 

「まさか、白龍皇が赤龍帝の味方をするとはな」

 

「そういうわけじゃないさ。ただ、赤龍帝を倒すのはこの俺だ。他の誰かに譲る訳にはいかないのさ」

 

 ヴァーリの答えにロキは興味深そうにしている。

 しばらく黙していたが、再び口の端を吊り上げると、ロキはフェンリルを自らのもとに引き寄せた。

 

「二天龍を見られて満足した。────今日は引き下がるとしよう」

 

 ロキがそう言いながらマントを翻すと、空間が歪みだし、ロキとフェンリルを包み込んだ。

 

「だが、この国の神々との会談の日! またお邪魔させてもらう! オーディンよ、次こそは我と我が息子フェンリルが! その喉笛を噛みきってみせよう!」

 

 そう言い残すと、ロキ達は姿を消した。

 ……本当に面倒くさい事になったな……。

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「ありがとう。アーシア」

 

 俺はアーシアの治療を受け、回復に専念していた。

 フェンリルを相手にしたことで、細かい傷が付いたりしてたので、念のためとのことだ。

 いや〜、やっぱりアーシアの神器は便利だな! 何ていうか、傷以外も癒やされてる感じがする! 

 

「……それにしても、フェンリルを相手に互角以上に渡り合うとは……本当に凄えな。お前」

 

「本当に先輩は規格外です……」

 

 先生と小猫ちゃんが呆れた視線で俺を見つめる。

 俺はそれに苦笑しながらも、先程のフェンリルを思い出していた。

 本当に手強い狼だった。何ていうか、ランガさんを彷彿とさせるレベルだ。

 聞いた話によると、フェンリルはこの世界の全勢力の中でも間違いなくトップ10入りするとまで謂われるほどの化け物らしい。

 封印される前のドライグをもってしても、勝てるとは言い切れないとのことだ。

 基本的には自信家のドライグがそこまで言うとは相当だな。

 

『ふん、まぁ今の俺達ならば十分勝てるだろう』

 

 まあ、そうだな。

 フェンリルは厄介な化け物だ。

 牙や爪の切れ味は間違いなくランガさんを超えている。基軸世界でも普通に通用するであろう実力を誇っている。

 ……だけど、ランガさんより強いかと言われると、首を横に振らざるを得ない。

 フェンリルの基本的な攻撃手段は爪と牙だけ。知能も高そうだけど、同格相手の戦いに慣れてる感じはしなかった。あれだけ強いと当たり前かもしれないけどな。

 だから、強さで言えば間違いなくランガさんよりは弱いと断言できる。

 他の皆だとヤバいだろうけど、ランガさんとの戦いに慣れている俺ならば十分対処可能なレベルだ。

 そんな俺に小猫ちゃんは近づき、手を握る。

 

「小猫ちゃん?」

 

「……先輩の強さは知っています。でも、心配したんですよ。本当に、無事で良かったです……」 

 

 ……小猫ちゃん達この世界の住民はフェンリルの恐ろしさを伝え聞いてるのだろう。

 まあ、たしかに肩書だけでも相当やばいしな。皆にも心配かけさせてしまったかもしれない。

 俺はそのことに少し反省しながら小猫ちゃんの頭を撫でる。

 すると、小猫ちゃんは気持ちよさそうに目を細めた。

 

「……にゃあ、先輩……」

 

「心配かけさせてごめんな。でも、大丈夫だ。心配するな」

 

「……話は済んだか?」

 

 ここでヴァーリが俺に話し掛けてきた。

 待っていてくれたのか……。意外と空気読めるんだなコイツ。

 ヴァーリの言葉を聞き、アザゼル先生は改めてヴァーリの目的を尋ねる。

 

「さてと、そろそろ話してもらおうか。ヴァーリ。お前はなぜ、ここに現れた?」

 

「ロキが妙なことを企んでいるという話を聞いてね。あわよくば戦おうと思ったのさ。そちらに害を及ぼしに来たわけではないよ」

 

 先生の言葉にヴァーリは苦笑する。

 つまるところ、神様であるロキと戦いたいから来たってことか…………いや、それも目的の一つではあるんだろうけど、どうやらそれだけでもなさそうだな。何を企んでいるのやら……。まあ、俺達に外を及ぼしに来たわけでないって部分は本当っぽいから今は気にしなくてもいいか。

 ヴァーリは俺達を見渡して、言う。

 

「そちらはオーディンの会談を成功させるために、何としてでもロキを撃退したい。そうだろう?」

 

 その問いに先生が答える。

 

「ああ、そうだ。だが、このメンバーだけではロキ、そしてフェンリルを退けるのは至難の技だ。英雄派のテロ活動のせいで、どこの勢力も大騒ぎ。とてもじゃないが、こちらにこれ以上人員を割くことは出来ん」

 

「だろうな」

 

 つまりはここにいるメンバーで対処するしかないってことか。

 ……英雄派と神祖の繋がりは見えないけど、これも予見してとなると相当面倒だな。

 ロキは恐らく神祖と手を組んでいる。場合によっては、神祖の弟子とも殺り合わないといけない状況になるだろう。

 ……そうなると、俺と黒歌、あとオーディンの爺さんくらいしか戦える奴がいない。

 それにロキやフェンリルを合わせると…………かなり憂鬱になってきたぞ……。

 

「それで? おまえがロキ達を倒すとでも言うつもりが?」

 

 先生の問いにヴァーリは肩をすくめる。

 

「そうしたいところだが、今の俺達ではロキとフェンリルを同時に相手はできないだろう」

 

 まぁ、そうだろうな。

 ヴァーリはチーム単位で戦えば、ロキは倒せる可能性がある。

 なにせ、こいつのチームメンバーはほぼ全員が旧魔王級。

 アーサーに少し似ている魔法使い風の女の子も旧魔王副官級はあるだろう。

 覚醒魔王級のロキが相手でも、何とかなりそうな布陣ではある。

 ────だが、フェンリルが加わるとそれは不可能に近くなるだろう。

 つまり、ヴァーリがこの場で話し合いを求める理由というのは……

 

「────だが、二天龍が手を組めばそれも不可能じゃない」

 

『!?』

 

 ヴァーリの提案にこの場にいる全員が驚愕した! 

 まあ、気持ちはわかる。でも、俺はこの提案を予想していたため、驚きはそこまでない。

 

「今回の一戦、俺は兵藤一誠と共闘しても良いと言っている」

 

 ヴァーリの不敵で好戦的な笑みに、俺は思わず苦笑で返すのだった。

 

 

 

 

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