イッセーside
ロキの襲撃の翌日。
俺達は我が家の地下一階の大広間に集まっていた。
俺、ミッテルト、グレモリー眷属にイリナ、アザゼル先生、バラキエルさん、シトリー眷属に黒歌……そして、ヴァーリチームという錚々たる面子が集っている。
正直援軍が期待できない状況の中、ヴァーリチームが味方になってくれるのは心強い。
ヴァーリの強さは実際に戦った身としてよく知ってる。ヴァーリならば並みの覚醒魔王が相手でも互角以上に渡り合う事ができる。
俺の見立てではロキよりは多少劣るけど、十分戦力になってくれる筈だ。
ちなみにヴァーリ達のことはサーゼクスさんにも伝わっているらしく、このことは了承しているらしい。
部長は複雑そうだけど、先生とサーゼクスさんの意見を聞いて渋々承諾していた。
まぁ今回、ヴァーリに助けられたしそこら辺も関係してるのかもな。
今回の件は三大勢力上層部にも既に伝えられている。
その上でここにいるメンバーで対処しなければならないらしい。
ロキとフェンリル。特にフェンリルは厄介だ。
フェンリルに関しては封じられる前の二天龍に匹敵するほどの力を持っているという。
先生やタンニーンのおっさんでも単独では絶対に勝てない。
ヴァーリもまだ二天龍の力を全て引き出せていないので、フェンリルには勝てない。
単独で勝てるとしたら、俺か黒歌の二人だけってことになるな。
ヴァーリは“
……それに、問題はそれだけじゃない。
カグチやメロウを筆頭とした“神祖”の弟子達。コイツラも不確定要素の一つだ。
ロキの口ぶりから手を組んでるらしいのはほぼ確定だからな。
正直、このメンバーでどこまで行けるか……。
取り敢えず、状況整理のためにも作戦会議だ。
「まず先に……ヴァーリ。俺達に協力する理由は?」
ホワイトボードの前に立った先生が疑問をヴァーリにぶつける。
ヴァーリは不敵に笑むと口を開く。
「奴等と戦ってみたいだけだ。美猴達も了承済み。この理由では不服か?」
流石は戦闘狂。ヴァーリらしい理由だよ。
他にもなにか隠して入るんだろうが、今は追求しても躱されるだけだろう。
先生もそれをわかっているのか、呆れたように嘆息する。
「まぁ、不服と言えば不服だな。だが、こちらとしては戦力として欲しいのは確かだ。今は英雄派のテロで各勢力とも戦力を割けないからな。お前の性格上、英雄派と組んでる線はなさそうだし……」
「ああ。彼らとは基本的に不干渉だからな。俺は別にそちらと組まなくてもロキとフェンリルと戦うつもりでいるし、俺としてはどちらでも構わん」
酷い脅しだ。
ここで組むことを拒否すれば、ヴァーリはロキとフェンリルと戦うと同時に俺達にも攻撃するだろう。
流石にそれは面倒くさい。これで実質選択肢は一つになってるわけだ。
「……まぁ、サーゼクスも了承しているし、俺も協力してもらいたいと思っている。お前を野放しにすると何しでかすかわからんしな」
「納得出来ないことが多いけれどね」
部長が先生に続く。
文句はあるようだけど、現状が現状だし、何より王たる魔王が良しとしてるんだから、部長も強く言えないのだろう。
ソーナ会長も不満はあれど、了承してるみたいだしな。
実際、戦力としては申し分ないほどの強者達の集まりだからな。
「まあ、俺的には問題ないです。何かあれば俺が説得しますよ」
俺の言葉を聞き、ヴァーリは笑みを深める。
取り敢えずヴァーリは俺が抑えておけば問題なかろう。
先生もその提案に文句はないみたいだ。
「そうか。じゃあ、ヴァーリのことはお前に任せる。話をロキ対策の方に移行するぞ。ロキとフェンリルの対策はとある者に訊く予定だ」
「ロキとフェンリルの対策を聞く?」
先生が部長の言葉に頷く。
「そう、あいつらに詳しいのがいてな。そいつにご教授してもらうのさ」
「それは誰ですか?」
「五大龍王の一角“
おお、五大龍王!
ロキとフェンリルの対策を聞く……ってことは、北欧神話のドラゴンかな? どういう奴なんだろう。
「まぁ、順当だが、ミドガルズオルムが俺達の声に応えるのだろうか?」
ヴァーリの問いに先生が答える。
この口振りからして気難しいドラゴンなのかもしれないな。龍王級のドラゴンはプライド高いやつが多いと聞くし、その辺りも関係するのかもな。
『いや、気難しいというわけではないんだが……まあ、すぐにわかるか』
ん? 何だ?
ドライグの言葉が少し引っ掛かるな。まぁ、今は置いといたほうがいいか。
「二天龍、龍王────ファーブニルの力、ヴリトラの力、タンニーンの力で
へぇ。そんな方法があるのか。
伝説のドラゴンってそういう事もできるんだな。
「もしかして、俺も……? 正直、怪物だらけで気が引けるんですけど……」
匙がおそるおそる手を挙げる。
匙は自分のことを不相応だと考えてるみたいだな。こいつも五大龍王のヴリトラを宿してるんだし、もっと自身を持っててもいいと思うんだが……。
「まあ、要素の一つとして来てもらうだけだ。大方のことは俺達と二天龍に任せろ。取り敢えず、タンニーンと連絡がつくまで待機しててくれ。俺はシェムハザと対策について話してくる。バラキエル、付いてきてくれ」
「了解した」
先生はそう言ってバラキエルさんと共に部屋を出る。
残されたのは俺達オカ研と生徒会。そしてヴァーリチームの面々。
……少し微妙な空気が部屋に流れる。思えば、ヴァーリ達について俺なにも知らねえや。何から話せばいいんだ?
「赤龍帝!」
美猴が手を挙げる。
「なんだよ?」
取り敢えず、用件を聞くと美猴は悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。
「この下にある屋内プールに入っていいかい?」
…………よ、予想外の質問来たな。
俺的には構わないんだけど……俺はチラリと部長を見る。
すると、部長は不機嫌そうにしながら美猴に指を突き立てる。
「ちょっと。ここは私とイッセーの家なのよ。勝手な振る舞いは許さないわ」
い、いつから部長の家に……ま、まあ今更だからいいけど、一応部長ってホームステイ的な立ち位置のはずでは?
「まーまー、いいじゃねえか、スイッチ姫────」
スバンッ!!
部長が美猴の頭を鋭く叩いた! 凄え音したな! 部長、気闘法を使って強化してるし、それを喰らった美猴は思わず涙目だ!
「いってぇぇぇぇっ! 何すんだぃ! スイッチ姫!」
「その名前で呼ばないで! 私がその名称でどれだけ傷ついてると思ってるのよ!」
涙目なのは部長も同じだ。よほどスイッチ姫と呼ばれるのが嫌なのだろう。
最近だと、スイッチ姫特集なる企画までやるくらい浸透してるし、本人からすれば恥ずかしいどころの騒ぎではないのだろうな。
「こ、これが失われた最後のエクスカリバーなんですね! すごーい!」
「ええ。ヴァーリが独自の情報を得まして、私の家に伝わる伝承と照らし合わせた結果、見つかったのですよ。場所は秘密です」
声のする方を向けばイリナとアーサーがエクスカリバーについて話していた。
イリナって本当に誰とでも打ち解けるな。こういう険悪な空気の中だとマジで助かるわ。
横では木場とゼノヴィアが警戒しながらも二人の話を聞いていた。
剣士として、やっぱり伝説の聖剣かわ気になるんだろうな。
アーサーの持つエクスカリバーは等級こそ“伝説級”だが、他の剣と比べても明らかに別格だ。
というか、剣に付与されてる権能を見るに、下手な“神話級”よりも強力そうだな。
「面白い人達だにゃん」
黒歌の言うとおり、今までの“禍の団”とは全然違う。何ていうか、アットホームな連中だな。
「この猿! 滅するわ!」
「やってみろぃ! スイッチ!」
俺は混沌と化しつつある場を眺めるのだった。
「────はぁ……」
……部屋の隅で溜息をついている朱乃さんを尻目にしながら……。
****************************
先生が帰ってきた後、俺と匙、ヴァーリは転移魔法陣で兵藤家からとある場所へと飛んだ。
なんでも例の龍王を呼び寄せるためには特別に用意した場所じゃないと駄目らしい。
着いた場所は白い空間だった。
解析すると、レーティングゲームの会場とかに使われる空間みたいだな。
部屋自体には特にこれといって目立ったところは無い。
強いて言うなら、大きいドラゴンが先に来て佇んでいるくらいか。
あのドラゴンは────
「先日以来だな、兵藤一誠」
「タンニーンのおっさん! 久しぶり!」
タンニーンのおっさんだ。ミドガルズオルムを呼び寄せるのに必要だって聞いてたけど、先に来てるとは思わなかった。
事情を聞いてすぐに駆けつけたくれたのかな?
おっさんとの挨拶も程々にすると、タンニーンのおっさんは匙の方へと視線を向けた。
「……そちらがヴリトラを宿す者か」
匙を見つめるおっさん。対して匙は────前身を震わせてすげえビビっていた。
「ド、ド、ドラゴン……龍王! 最上級悪魔の……!」
おいおい、ビビりすぎだろ。
緊張だけじゃなくて、どこか尊敬が混じってるような様子だな。
このままじゃあ話が進まなそうなので、俺は匙の肩に手を置いて緊張をほぐす。
「緊張すんなって。おっさんは強面だけど、いいドラゴンだぞ」
「バ、バカ! 最上級悪魔のタンニーンさまだぞ! お、おっさんだなんて失礼だろ!」
「そうか?」
俺に指を突きつけて匙が言う。
「最上級悪魔ってのはな、冥界でも選ばれた者しかなれない。冥界への貢献度、ゲームでの実績、能力、それら全てが最高ランクの評価をしてもらって初めて得られる、悪魔にとって最上級の位なんだよ」
と、匙が熱弁する。へー、そこまですごいもんなのか。
最上級悪魔……俺も試合の映像は見させてもらったけど、魔王と比べても遜色のない実力者や魔王級の魔力を持つ者、凄まじい技量を持つ者等、結構バリエーション豊かだなという印象しか持ってなかったな。
実力者なのは間違いないんだろうけど、俺から見ると少しチグハグな印象がある。
まあ、1位の”皇帝“ベリアルさんは凄まじいの実力者だと思うけどな。アレはセラフォルーさんとかと比べても遜色ないレベルだろ。
匙の熱弁を聞きながら、そんな事を考えている俺を他所に、おっさんはヴァーリを睨んでいた。
「……白龍皇か。妙な真似をすればその時点で俺は躊躇いなく貴様を噛み砕くぞ」
その言葉にヴァーリは苦笑するだけだった。
その間にアザぜル先生が術式を展開して専用の魔法陣を地面に描いていく。
光が走っていき、独特の紋様を形作っていた。
「しかし、あやつ、来るのだろうか。俺も二、三度程度しか会ったことがない」
「二天龍がいれば否が応でも反応はするだろう」
タンニーンのおっさんの嘆息に先生が答える。
「それで、今から会うドラゴンってどんなのなんですか?」
これから会うドラゴンがどのような存在なのかを尋ねると、意外にもドライグが応えてくれた。
『そうだな。相棒。お前が“スリーピング”と聞いて、連想する奴がいるだろう?』
「ん? ……あっ!」
ドライグのその言葉に俺はピンときた!
俺の脳裏に映し出されるのは世界最強の剣豪でありながら、一切の労働を拒否する面倒くさがり屋。“
『そう。アイツのドラゴンバージョンとでも思ってればいいさ』
な、なるほど……。
それは応えてくれるかどうか怪しい訳だ。
どんなグータラなドラゴンが出てくるんだ? 俺はまだ見ぬ龍王への期待が一転して冷ややかなものへと変わっていくのを感じていた。
「……お前達が誰のことを話してるかは知らんが、あやつは本当に怠け者でな……基本的には動かん。世界に動き出すものの一匹だからな。使命が来るその時まで眠りについているのだ。最後に会ったのは数百年前だが、世界の終わりまで深海で寝て過ごすと言って、そのまま海の底へと潜ってしまった。それ以来あやつとは会っていない」
マジか……そんなドラゴンが龍王に……
一体どんなやつなんだ? 選ばれるからには相当強いんだろうけど……。
「さて、魔法陣の基礎はできた。あとは各員、指定された場所に立ってくれ」
先生に指示され、魔法陣の上に立った。
各自指定ポイントに立ったことを先生が確認すると、手元の魔法陣を操作した。
カッ
淡い光が下の魔法陣に走り、俺のところが赤く光り、ヴァーリのところが白く光った。
そんでもって、先生のところが金、匙のところが黒、そしておっさんのところが紫色に光り輝く。
『それぞれが各ドラゴンの特徴を反映した色だ』
と、ドライグが説明してくれる。
へぇー。特徴で色分けされるのか。中々面白いな。
『ちなみに、ティアマットが青。
なるほど。ティアマットさんはともかく玉龍は初めて聞く名だけど、感じからして五大龍王の一角かな?
そんな事を考えている間にも儀式は進み、魔法陣から何やらが投影され始めた。
立体映像が徐々に俺達の頭上に作られ────
「…………でかいな」
映像はどんどん広がっていき、やがて俺達の目の前にこの空間を埋め尽くす勢いの巨大な生物が写し出された!
よ、予想していたよりもでけぇぇぇぇぇぇぇ!!!
うわ、何だよこのドラゴン! 師匠やグレートレッドよりもデカいじゃねぇか!
師匠だって百メートルを越す巨体を持っている超巨大ドラゴンだ!
でも、コイツは百メートルどころかその数倍! 五、六百メートルはありそうだぞ!
見ると、匙は口が開きっぱなしになっている。相当驚いたんだろうな。何せ、巨大生物に慣れている俺ですらビックリするレベルなんだもん!
目の前のドラゴンはヴェルグリンドさんと同じく、東洋の細長いタイプのドラゴンで、その長い体でとぐろを巻いているようだった。
驚く俺の耳にデカイ奇っ怪な音が飛び込んでくる。
『……ぐごごごごごごごごごごごごごぉぉぉぉおおおおおおん……』
うるさ!? この巨体だと、いびきもかなり爆音だな。
というか、おっさんが言ってた通り、本当に寝てるよ、このドラゴン……。これがスリーピングドラゴンか……。
「案の定、寝ているな。おい、起きろ、ミドガルズオルム」
タンニーンのおっさんがミドガルズオルムの耳元で話しかける。すると、ミドガルズオルムはゆっくりと目を見開いた。
『…………懐かしい龍の波動だなぁ。ふああああああああっ……』
ミドガルズオルムは大きなあくびを一つする。うわあ、でけえ口! 二十メートル近くあるおっさんの巨体すらも余裕で一飲みできそうだな。
『おぉ、タンニーンじゃないかぁ。久し振りだねぇ』
なんともゆっくりな口調だな。どうやら基本的にサボりたがりなだけはあり、気性は穏やかなようだな。
『……ドライグとアルビオンまでいる。……それにファーブニルと……ヴリトラも……? 何だろう? もしかして、世界の終末なのかい?』
「いや、違う。今日はおまえに訊きたいことがあってこの場に意識のみを呼び寄せたのだ」
『……ぐ、ぐごごごごごごごごごごごごご……』
ミドガルズオルムが再びいびきをかき始めた! 話の途中で寝るなよ! ダメだ、このドラゴン! 話すら出来ないじゃん! 正直、ディーノさんのほうがまだ幾分かマシなレベルだぞ!
「寝るな! まったく、お前と玉龍だけは怠け癖がついていて敵わん!」
再度、怒鳴るおっさん。というか、玉龍とかいうドラゴンも怠け癖があるのかよ……。
おっさんの剣幕に、ミドガルズオルムも大きな目を再び開ける。
『……タンニーンはいつも怒ってるなぁ……。それで僕に訊きたいことって?』
「おまえの父と兄ついて訊きたい」
おっさんがそう訊く。
なんで、ミドガルズオルムの家族について訊いてるんだ?
……いや、待てよ。そういえば、フェンリルは元々ロキが作った魔物って話だったよな?
と、言うことは……ひょっとしてこのミドガルズオルムも……
そんな俺の考えを証明するように、先生が答えてくれる。
「お前が考えてるとおり、ミドガルズオルムは元来、ロキが作り出したドラゴンでな。強大な力を持っていながら、その巨体と怠け癖から使い道が見出だせず、北欧の神々が海の底で眠るように促したのだ。せめて、世界の終末が来たときには何かしら働けと言ってな」
「何かしらって……。それで良いのかよ五大龍王……」
なんていうか、残念な奴なんだな。コイツ。
確かに巨体に見合った強さはもってそうだけど、これじゃあ役に立たないと断じられるのも無理はないかもな。
でも、父親や兄弟の弱点なんか話してくれるのか?
『ダディとワンワンのことかぁ。いいよぉ。ダディにもワンワンにもこれといって思い入れはないしぃ、どうでもいいしぃ……』
いいのかよ!? 仮にも親と兄弟だろ!?
まあ、コイツずっと深海に眠ってるだけって言うし、実際コイツが言うように、接点が特になかったのかもしれないな。
『あ、タンニーン、一つだけ聞かせてよぉ』
「なんだ?」
『ドライグとアルビオンの戦いはやらないのぉ?』
ミドガルズオルムは俺とヴァーリを交互に見ながら言ってきた。
「ああ、やらん。今回は共同戦線でロキ達を打倒する予定だからな」
『へぇ。二人が戦いもせずに並んでいるから不思議だったよぉ。今代の赤と白はどちらも強そうだねぇ。……特に、ドライグの方は僕よりも強そうだねぇ……』
「ほう。ミドガルズオルムをしてそこまで言わしめるとは……やはり、君とは速く戦ってみたいな。兵藤一誠」
よ、余計なことを言わないでもらえますかね!?
ただでさえ面倒くさい
ミドガルズオルムはそんな俺の反応など知ったことではないと言わんばかりにマイペースに話し出す。
『ワンワンはダディより厄介だよぉ。噛まれたら死んじゃうことが多いからねぇ。でも、弱点はあるんだぁ。ドワーフが作った魔法の鎖、グレイプニルで捕らえることができるよぉ。それで足は止められるねぇ』
グレイプニル……“狂拳”フェンを封じ込めてた“
とはいえ、あのフェンリルを封じるとなると、相当強力な鎖みたいだな。
「……それは既に認識済みだ。だが。オーディンから貰った情報では、グレイプニルではフェンリルは抑えることが出来なかったそうでな。それでおまえから更なる秘策を得ようと思っているのだ」
ふむ、それはモウ試していたのか。
だが、通じなかったと……となると、ミドガルズオルムの情報が間違ってるのか、もしくは────
『……うーん、ダディったらワンワンを強化したのかなぁ? なら北欧に住むダークエルフに相談してみなよぅ。その人達に協力してもらって、鎖を強化してもらえばいいんじゃない? 確か長老がドワーフの加工品に宿った魔法を強化する術を知ってるはずぅ。場所はドライグかアルビオンの神器に転送するねぇ』
……エルフ。甘美な響だ。
向こうではよくお世話になったものだが……そうか、この世界にもいるのか。エルフ。
「感謝する。取り敢えず、ダークエルフが住む位置情報を……白龍皇に送ってくれ」
『はいは~い』
ヴァーリが情報を捉え、口にする。
「────把握した。アザゼル、立体映像で世界地図を展開してくれ」
先生がケータイを開いて操作すると、画面から世界地図が宙へ映写される。
ヴァーリがとある場所を指差し、先生がその情報を仲間に送り出した。
「……ほう、よくまあそんなことを知ってたな」
おっさんの言葉に俺も頷く。
実際、ずっと海で寝てたって割にはよく知ってるよな。
『まあねぇ。地上に上がった時、エルフやドワーフにはお世話になったからさぁ』
地上に上がったことあるんだ……。コイツが地上に上がったら色々と問題じゃないか? デカすぎるし、隠しきれないだろう。
「────で、ロキの方はどうする?」
『そうだねぇ。ダディを倒すなら、ミョルニルでも撃ち込めばなんとかなるんじゃないかなぁ』
ミドガルズオルムの話を聞いて、先生は考え込む。
「つまり、基本は普通に攻撃するしかないってわけか。ミョルニル……。確かにそれならばロキにも十分通じるだろうな。だが、雷神トールが貸してくれるかどうかわからないな。あれは神族が使用する武器の一つだからな」
『それなら、さっきのダークエルフに頼んでごらんよぉ。ミョルニルのレプリカをオーディンから預かってたはずぅ』
「物知りで助かるよ、ミドガルズオルム」
先生は苦笑しながら礼を言う。
本当に物知りだよな、このドラゴン。やっぱりディーノさんとよく似てるわ。普段は怠けっぱなしだけど、いざ働くとなると恐ろしく有能なんだよな。
『いやいや。たまにはこういうのも楽しいよ。さーて、そろそろいいかな? 僕も眠くなって来たから、また今度ね……。ふあああああっ!』
大きなあくびをするミドガルズオルム。それと同時に少しずつ映像が途切れて行く。
「ああ、すまんな」
おっさんの礼にミドガルズオルムは少し笑んだ。
『いいさ。また何かあったら起こしてよ』
それだけ言い残すと、映像は完全に消えてしまった。
ミドガルズオルム。大きくて変な龍王だったけど、いい奴だったな。変なドラゴンだけど。また会う機会もあるのかな?
こうして俺達はミドガルズオルムから得た情報を基に動き出すこととなった。