賛否両論あるかも…。
イッセーside
レイナーレは困惑した様子だった。なぜ自分がここにいるかわからない。そんな感じの焦燥だ。
「あら?シラを切る気かしら?」
「い、いえ。そもそもここは一体どこなんですか!?」
「この期に及んで往生際が悪いですわよ」
部長と朱乃先輩は気付いていない。
レイナーレの困惑は本物だということに……。
「部長、朱乃先輩。どうやらこの人の言ってることマジっぽいすよ」
「……なぜそう思うのかしら?」
部長はミッテルトの言葉に怪訝そうに聞き返す。
ミッテルトのことを信用はしてるんだろうけどなぜそう思ったのかが気になるようだ。
「ちょっとした特技みたいなものなんすけど、うちは声音や表情を見れば相手がなに考えてるかわかるんす」
少し得意げにミッテルトはそう答えた。
本人曰く、ファルムスでずっと顔色うかがって生きてきたからこそ得られた特技らしい。
困惑するレイナーレにリアス部長が自分達のしたことを告げるとレイナーレは自分のしたことの重大さに青ざめ、部長たちに謝罪をする。
「も、申し訳ありませんでした!」
レイナーレの焦燥もわかる。
何しろ自分達に身に覚えのない行いがきっかけで停戦中の戦争が再開する危険性すらあるのだ。
レイナーレとしては何としても避けたいところだろう。
「……いいわ。許してあげる……」
どうやら部長はレイナーレの謝罪を受け入れる気のようだ。
まあ、アーシアももうレイナーレに怒りを向けてはいないみたいなので、俺としては許すのもやぶさかではない。
ただ、そうなると気になることがある。
それはどうやら部長も同じなようだ。
「その代わり、貴女達の身に何があったのか、洗いざらいはいてもらうわよ」
*******
レイナーレは堕天使アザゼルの率いる組織“
気の合う部下と共に
そんなある日、彼女は風の噂で癒しの力を持つ
人間だけでなく、悪魔すらも癒すことができる奇跡のような
駒王町には正体不明の強力な
「その矢先のことだったわ……。あの女が現れたのは……」
レイナーレ達の前に現れたのは漆黒のローブを被った謎の人物だったという。声色から女だということはわかったが、それ以外のことはなにもわかっていない。
その女は突如として自分達に襲いかかったのだという。
正体は不明だがその女はレイナーレ達とは比べ物にならないほどの強者であり、瞬きの内に自分達を無力化して見せたのだという。
そしてその女がレイナーレ達に何やら歌を歌いながら手を翳すと彼女達は徐々に思考が塗り替えられていったのだという。
自分の中に僅かながらも存在していた他種族を見下す感情、他の堕天使への劣等感、自尊心、そういったものがどんどん大きくなるのを感じながら意識が消失した。
そして気が付いたらこの場で俺たちに制圧されていたって訳だ。
「私はどんな罰でも受けます。ですからどうか、部下達には寛大な処置を……」
「レイナーレ様……」
彼女の話の合間にドーナシークとカワラーナとかいう堕天使達も目覚めていた。二人とも正気に戻っているようで、自分達の行いを悔いているようだ。
「……アーシアはどうしたい?」
「え?」
今回の件で一番の被害者はアーシアだ。
故にここは、アーシアの望むがままにした方がいいと思う。
少し戸惑ったような動作をするものの、アーシアはレイナーレ達に近づいていく。
「私はレイナーレ様を許したいと思います。確かに酷い目に遭いましたけど、私はこうして生きていますし……」
そう言いながらアーシアは俺とミッテルトに視線を向ける。
「この町に来れたおかげで素敵な出会いをすることができました。ありがとうございます」
この街に行く切っ掛けを作ったのはレイナーレなのだ。
だからこそ、彼女は感謝をしたのだろう。
「アーシア……本当に、ごめんなさい」
涙を流しながら謝罪をするレイナーレを見てあたふたと慌てるアーシア。
部長たちも少し呆れたようにしながらも、これ以上とやかく言うつもりはないようだ。
これにて一件落着だ………………
「「「「「!!??」」」」」
突如として濃密な殺気が俺たちに降り注ぐ。
殺気の方向に目を向けるとそこには黒いローブを纏った謎の女が木の上で寛いでいた。
「あ、あの女です!私を襲ったのは……」
あいつが……。おいおい、冗談だろ!?
凄まじく濃密な威圧感を醸し出してやがる……。
レイナーレの話ではそこまで気にしなかったがとんでもない化け物じゃねえか!?
「…………」
その殺気の主はまるで指揮者のように指を上下させる。すると何処からともなく美しい音楽の音色が鳴り響き、その音色が集まり魔力の塊を形作る。
ローブの女はその魔力の塊をアーシアに向かって解き放った。
「アーシア!危ない!」
濃密な殺気の中、動くことすら困難であろうにレイナーレはアーシアを突き飛ばした。
アーシアも咄嗟のことで何が何やらわかっていない……ってそれは俺らもだけど……。
不味い間に合わない。思考加速があるからこそ状況は分かっているけどギリギリで間に合わない距離だ。ドライグの倍加を使えばいけるだろうが、“
死を覚悟したのか目を瞑るレイナーレ。
しかし、その光がレイナーレを射つことはなかった。
いつまでも予想していた衝撃がこないため、レイナーレは恐る恐る目を開ける。
するとそこにはボロボロになった配下の姿があった。
「!?カラワーナ、ドーナシーク!!」
「れ、レイナーレ様……」
「ご無事でよか……」
カワラーナとドーナシークは事切れるように崩れ落ちる。
それを見たアーシアが直ぐに“
「そんな!?なんで……」
呼吸も脈もある……。それなのに二人はまるで目覚める気配を見せなかった。
「無駄よ……。傷を塞いだところで、私の“
俺の
すると二人の
「貴女!一体何者なの!?」
部長がローブの女に向かって滅びの魔力を放つ。本人曰く、全てを消し飛ばす消滅の力を持つという。
朱乃先輩も雷を同時に繰り出し、二つの魔力は挟み撃ちの形でローブの女に向かっていく。
しかし、ローブの女は興味なさげに指を振るう。
するとまたも音楽が鳴り響き、その音色に反応し、二つの魔力は容易く消失した。
あれは……カリュプディスと同じ魔力妨害だ。
「そんな!?」
「部長、下がってください!こいつは部長たちが敵う相手じゃない……」
あまりにも強さがかけ離れているため、部長たちは奴の危険度に気が付くことができないでいる様子だ。
だが、一定以上の強さを持っていれば、目の前の存在の危険度も押して図れる。
ミッテルトも翼こそ出していないものの木刀ではなく、愛刀である
こいつ……強い……。
身魂測定で測ってみるとスリーサイズは64、56、72と小猫ちゃんに近い小さい体型なのだが(重要)、その体型とは裏腹にとんでもない存在値だ。
存在値にして402万1861……。
……って
本当にこの世界の存在か!?
『ドライグ……なにか知ってるか?』
こっちは向こうとは違う世界。こっちの世界の住人ならばドライグなら知ってるかもしれないと思い、俺はドライグに目の前の存在について訪ねる。しかし、どうやらドライグにも心当たりはないようである。
『知らん!俺としても心当たりはないが、気を付けろ相棒。あれほどの手練れだ……。
可能性とドライグは言っているが、俺もドライグも本心では確定事項だと思っている。
そもそも俺たちはレイナーレたちが操られてることに気付くことができなかった。究極保有者の眼を欺けるのなら奴も究極保有者である可能性が高い。
奴はじっとアーシアのことを見つめていたが、まるで期待はずれだったとでも言わんばかりの失望した声音で呟く。
「治すことができるのは身体のダメージのみで精神的なダメージは癒せない……。この程度で世界最高峰の回復系神器とは笑わせるわね。どんなものかと少しは期待してたけどこの程度か……。ならば私には必要ないわね……。そんな紛い物があの御方と同じ名を冠するだなんて、許せないわね……。」
?何て言ったんだ?最後の方は聞き取れなかったな……。
すると今度は視線を俺に移す。その視線からは警戒の色が滲み出ている。
どうやら奴もまた俺を脅威と認識しているようだ。
「まさかこんなところにこれ程の使い手がいるとはね……。まあいい、今回は退いてあげる。今はまだ目立つことは避けたいのでね……」
そう言ってローブの女は空間転移を使い何処かへ飛んでいった。
俺たちに言い知れぬ不穏な空気を残して…………。
*******
カラワーナとドーナシークという堕天使は冥界の堕天使領にある病院に搬送したらしい。
レイナーレも一先ずそちらについて行くようだ。
ちなみにアーシアはしばらく俺が面倒を見ることになった。
しかも、予想外というかなんというか、なんと彼女は悪魔に転生を果たしたようである。
「アーシアなんで悪魔に転生したんだ?」
「実は……」
曰く、レイナーレ達堕天使の庇護を失ったアーシアには行く場所がなかったのだと……。
そこで部長がアーシアに悪魔に転生することを提案したそうだ。
神様に使えるシスターであるアーシアは当然かなり迷ったらしい。
だが悩んだ末に悪魔になることを選んだ。
これでアーシアは部長の庇護下に入ることとなり、生活費なんかも貰えるそうだ。
なお、悪魔になればずっと駒王町にいることができると言われたことが決め手らしいけど……。
「別に駒王町以外にもアーシアにとって住みやすい場所とかあったんじゃないの?」
そもそもこの家にホームステイする意味もないように思えるしな……。
「いえ、私はお二人と一緒の場所がいいんです。ダメでしょうか?」
しょんぼりとするアーシア。目茶苦茶可愛い!!
思わず二つ返事で了承してしまった。
だが、まあ両親は納得してくれたし別にいいか……。
「では、行ってきますね!」
アーシアは父さん母さんと共にちょっと遠くのスーパーに買い物に向かった。
今日はアーシアのホームステイ記念ということでかなり豪勢にすると張り切っている。
ちなみに俺とミッテルトは用事があるため買い物には参加しない。
アーシアがいなくなったのを見計らって俺たちは自分の部屋のクローゼットを開ける。
服が大量に入っており、一見では普通のクローゼットと代わりはないだろう。しかし、服を避けると隠し部屋へと繋がる扉があるのだ。
この扉はかつて遊びに来た師匠が遊び心でつけた扉で空間操作で作り上げた隠し部屋に繋がっている。
扉のなかは少し殺風景な部屋だ。
その中心には転移用の魔法陣がある。
……そう、向こうの世界……基軸世界に繋がる“
今回の事件で現れた謎の存在。
可能性は低いと思うが、もしもあいつがこちらの世界ではなく、基軸世界から来た存在だとしたらそれはこちらの世界だけの問題ではない。
そう考えた俺たちは今回の事件をリムルに報告するべきだという結論に至ったのだ。
「……そういえば、
「少し緊張してきたっすね……」
まあ、でも楽しみではあるな……。
久々に皆に会える。そう考えるとワクワクしてきた。
魔法陣の上に乗った俺達は早速魔法陣に魔力を通す。
すると魔法陣から光が溢れ、俺たちの視界を白一色に塗り染めたのだった。