帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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悪神と人魚の策謀です

 イッセーside

 

 

 

 

 

「ふん、相変わらずいけ好かん奴だ。赤龍帝」

 

 メロウはそういいながら、静かに降りていく。

 それを見て、ヴァーリは警戒するようにメロウを観察する。

 

「なるほど、これは凄まじいな」

 

 鎧越しながらも冷や汗をかいているのがわかる。どうやら、ヴァーリも本能的にメロウの脅威を感じ取ったみたいだな。

 

「ロキ。他の勢力と組む我らを批判しておきながら、自らは他勢力と手を結ぶというのか!?」

 

 バラキエルさんがロキに対して叫ぶ。だが、ロキはどこ吹く風だ。

 

「我の目的は“神々の黄昏(ラグナロク)”を執り行うこと。すべての神話体系を滅ぼすために、彼らと手を結んだわけだ」

 

「こちらにしても、神話勢力の滅亡は都合がいい。どの道我らは、この星に住まう全ての生命を消し去るつもりだからな」

 

 とんでもないこといいだしやがった! 全ての生命を消し去るだと!? 何考えていやがるんだ!? 

 

「そんなことをして何になる?」

 

「そこまで言う義理はないわ」

 

 メロウは会話を打ち切ると、指揮棒を回し、音楽を響かせる! 

 

「皆、気をつけろ! メロウは音を操る! 何をしでかすかわからねえぞ!」

 

 メロウの音楽は他者を操る効能がある! 俺は即座に英雄覇気を開放し、メロウの洗脳効果を相殺できないかを試す! 

 英雄覇気は言うなれば威圧だ! 洗脳をも打ち消すほどの威圧を皆にかければ洗脳されることはないはずだ! 

 

「ほう。対策はしていたようだな……だが」

 

「我を忘れてもらっては困るな!」

 

 嬉々とした表情のロキは全方位の魔術攻撃を仕掛けてきた! 

 俺とヴァーリはそれを躱しながら、距離を詰めていく! 

 

「俺はメロウをやる! ヴァーリはロキを頼む!」

 

「本当は逆がいいんだが……やむを得んか」

 

 何かアホなこと言ってるけど気にせず俺はメロウの元へと突っ込んでいく! 

 メロウは俺に対し、音波振動による攻撃を放つ! これは当たっちゃ不味いんだったな! 

 俺はそれを回避しながらメロウに突っ込み────

 

 ガキィンッ!! 

 

 メロウの指揮棒と俺の拳が交差する! 

 その衝撃で、辺りの岩が崩れ、大きく土埃が立ち上る! 

 俺は片手からハンマーを取り出し、魔力を流してメロウにぶつける! 

 

「!?」

 

 それを見たメロウは咄嗟に音の壁を展開し、ハンマーを止める! 

 ロキはヴァーリと戦いながらも俺が手にしているのを見て目元をひくつかせていた。

 

「……ミョルニル。レプリカか? そのような物を託すなど……! オーディンめ、それほどまでして会談を成功させたいか……!」

 

 ロキはオーディンの爺さんがこれを渡したことが許せないといった様子だな。

 だが、俺が今相対してるのはメロウだ! 俺はミョルニルを振り上げ、そのままメロウへと迫る! 

 

 ミキミキッ! 

 

「……チッ!」

 

 本来ならば、ミョルニルは神の雷を放つ至高のハンマーだそうだ! 

 だが、ミョルニルはレプリカといえど、意思を持つ“神話級”! 俺はどうやらミョルニルに完全に主だとは認めてはもらえないみたいなんだ。

 少し前にこっそり試したが、雷はいくら振るってもついぞでてこなかった。だが、ある程度は俺のことを認めてくれてるらしく、それ以外では“神話級”としての潜在能力を発揮できる! 

 

 バキィィン! 

 

 拮抗していた壁と縋はついに壁を破ることで均衡を崩した! 

 

「流石にやるな。私の音壁を破壊するとは……だが、ミョルニルの真価は発揮できないと……」

 

 メロウが気味の悪い笑みを浮かべると同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()! 

 

「なっ!?」

 

「食らうがいい! 北欧の魔術を!」

 

 ドドドドドンッ!! 

 

 余りに突然のことに反応が遅れ、俺はロキの攻撃をもろに受けてしまった! 

 痛ってぇ!? 何だこの威力! 先日見たときよりも遥かに威力があるぞ!? 少なくとも、ロキのエネルギーだけではこの威力はできないはず!? 

 ────ここで俺は気付く! ロキの攻撃にメロウの魔力が上乗せされていることに……っ! 

 

「そうか! この音楽か!」

 

 メロウの奴、操ると共に会長を強化していたように、自らの権能でロキの力を底上げしてやがるのか! 

 

 ドン! 

 

「がはっ!?」

 

「ヴァーリ!」

 

 俺がロキに気を取られていると、視界の端にヴァーリがメロウに吹き飛ばされる光景が映った! 

 メロウの蹴りが鳩尾に直撃したらしく、腹の部分に大きく罅が入っている! 

 

「ほう。後ろに跳ぶことで衝撃を逃がしたか……雑魚かと思っていたが、それなりのセンスがあるようだな」

 

「くっ、言ってくれるな!」

 

 ヴァーリはメロウに向かっていき、拳と魔術を掛け合わせた連撃を放つ! メロウは大した脅威を感じてないらしく、すべての攻撃を受け止める! 

 

『DividDividDividDividDividDivid!!』

 

 メロウが攻撃を受け止めるたび、“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバインディング)”の効果が発揮される。だが、メロウの力は一向に下がる気配がなかった。

 

「その力、神格が相手だと上手く作用しないのだろう。私も神格を有していてな、残念だが、私には通じんよ」

 

「くっ!?」

 

 メロウがヴァーリの攻撃を弾き、カウンターで指揮棒を刃のように振るおうとする! 

 助太刀に行きたいが、メロウの力で底上げされたロキの弾幕を掻い潜りつつ、ヴァーリのもとに行くには間に合いそうもない。

 ────けど。

 

 ガギィィィンッ!! 

 

「っ! この結界は!」

 

 無類の硬度を誇る結界がメロウの斬撃を弾く! 

 今回、お前達神祖の弟子が来ることはわかっていたからな……だからこそ、何時でもサポートできるように控えさせていたんだ! 

 

「大丈夫にゃん? 白龍皇」

 

「ヴァーリだ。助かったよ」

 

 そう、黒歌だ! ルミナスさんの配下筆頭格にして、究極保持者の黒歌なら、相性が悪いメロウが相手でもうまく立ち回ることができる。

 

「黒猫ぉっ! 会いたかったぞぉ!」

 

 メロウが狂気的な笑みで黒歌を見据える。その瞳には復讐心がありありと感じ取れる。

 メロウは黒歌に向かって音波振動攻撃を放つ! メロウの攻撃はあらゆる結界を振動で内部から破壊するという力があり、結界系究極能力の黒歌とは相性の悪い相手だ。だが、黒歌はそれを結界で防ぎ、逆に“気”を纏わせた仙術の拳をメロウに放った!

 

「なに!?」

 

「お生憎様。私が何の対策もしてないと思ったかにゃ?」

 

 成る程。黒歌は自らの結界をミルフィーユみたいに幾重の層に分けることでメロウの振動攻撃を防いだのか! あれなら表面の結界が破壊されても次々と層が続くため、一撃で破壊されることはない。考えたな。

 

「こっちも負けてられないな!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

「なっ!? 速────」

 

 ドオオオオオオッン!! 

 

 俺の鋭い一撃がロキに向かって放たれる! 

 ロキはそれを防ごうとするが、その障壁を用いても全てを防ぎ切ることは叶わず、メロウと同じ場所にまで吹き飛ばされる! 

 

「ふん!」

 

 メロウは音でクッションを作り、ロキを受け止める! 

 ロキは口元から血を流しながらも、不敵な笑みを浮かべ、俺達を見据えていた。

 

「フハハハ! 凄まじいな! 赤龍帝! うーん、すごい! 基軸の強者とはここまでのものなのか! メロウの補助がなければ、今の一撃で戦闘不能になっていたかもな!」

 

 どうやら身体能力もメロウの力で底上げされているみたいだ。俺としても、今の一撃で終わらせるつもりだったから、少し残念な感じだ。

 俺はちらりとヴァーリを見る。“禁手”となった神滅具は神話級と同等の力を有する。つまり、使い方や本人の力量次第ではあるけど、究極能力相手でもなんとか闘うことはできるのだ。

 

「行けそうにゃん? ヴァーリ?」

 

「ああ。問題ない」

 

 ヴァーリはまだまだ闘志充分といった感じだな。

 ヴァーリも覚醒魔王級の戦力を持つ実力者。メロウはともかく、ロキが相手ならば勝てないまでも、戦いが成立するところまでは行くだろう。

 

「フフフ、高鳴るな……しかし……」

 

 ロキはふと視線を別の方に向ける。

 そこにはフェンリルと戦いを繰り広げる皆の姿があった。

 鎖はまだ届いていないらしく、部長がそれを受け取るための魔法陣を描き、その間は皆が時間を稼ぐという筋書きとなっている。

 相手は“天龍”級の化け物だ。皆苦戦してる様子だな。

 

「────神をも殺す牙。それが我が下僕フェンリルだ。神を上回る力を持つ貴様らが欠けたなか、あやつらだけで勝てると思うのか?」

 

 ロキは嫌らしい笑みを浮かべながら、挑発するように言う。

 どうやら俺の冷静さを欠きたいようだな。だけど────

 

「はあ!」

 

 ドゴンッ! 

 

 俺の視界にはフェンリルを殴る小猫ちゃんの姿が写った。

 尻尾が二股に増えている。黒歌との修行で得た新形態“猫又モードレベル2”だ。

 あの状態では存在値も一気に20万近くまで跳ね上がり、仙術の力も増大する。

 

「ほう。貴殿に受けた傷があるとはいえ、フェンリルに攻撃を与えるとはな……」

 

 どうやらフェンリルは俺を警戒してずっと俺のことを睨んでいたからな。

 取るに足らないと警戒していなかった相手から攻撃を受けたことで、フェンリルは相当苛立ってるみたいだ。

 フェンリルは自らの気を完全に操れてるわけではなさそうだ。ダメージは通ってないみたいだが、仙術の対処法を知らないわけだし、フェンリルをある程度弱体化させるだけの気を送り込めれば充分だろう。皆の目的は時間稼ぎなのだから。

 

「心配無用! 皆ならフェンリルだって倒すことができる! 俺はそう信じてるからな!」

 

「美猴達がそう簡単に死ぬことはないさ。アイツラの強さはよく知ってるからな」

 

「そういうことにゃん。私も白音に色々仕込んだし、フェンリル一匹くらいなら充分勝てる見込みがあるにゃん」

 

「ほぅ? それは面白い」

 

 ロキはそれを聞きながらも不敵な笑みを崩さず、俺達に剣を向ける。それを見た俺はロキとメロウを見据えながら、戦力を分析する。

 先程の入れ替わりも気になるが、原理がわからない以上、警戒することしかできない。取り敢えずは俺達でこの二人に対処し、フェンリルの相手は皆に託す! 皆なら、絶対にフェンリルに勝てるはずだ! 

 

「行くにゃん!」

 

「ああ。足を引っ張るなよ、ヴァーリ」

 

「言われるまでもない!」

 

 俺達三人は顔を見合わせ、メロウとロキに向かって突っ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 *********************

 

 木場side

 

 

 

 

 

 ガルルルルルル! 

 

「くっ!」

 

 ガキィン!! 

 

 フェンリルの牙が僕たちを襲う! 

 僕はギリギリのところでフェンリルの攻撃を見切り、なんとか回避をする! 

 あ、危ないところだった……もしも、フェンリルが万全だったら、いまので終わっていたかもしれない。

 

「フェンリルの動きは私がある程度乱します……」

 

 そう。フェンリルの動きを小猫ちゃんが仙術である程度のところまで抑えているのだ。

 黒歌さんから教わった仙術でしかできないことだと思う。

 小猫ちゃんは黒歌さん譲りの体術と気闘法を上手く操り、気配を消しながらフェンリルに一撃を与えることに成功した! これはフェンリルがイッセー君を敵視し、視線を向けていたことやロキの指示がなかったことも関係してるだろう。

 何はともあれ、そのときに小猫ちゃんはフェンリルに気を送り込み、フェンリルを弱体化させたのだ! 

 

「凄えな。あのフェンリルを抑えるほどの仙術だなんてよぅ」

 

「……姉様との修行の成果です」

 

 同じく仙術を使えるらしい美猴も興味深そうに小猫ちゃんを見ている。

 それを煩わしく思ったのか、フェンリルは凄まじい速度で小猫ちゃんの方へと向かい、牙を突き立てようとする! 

 

「そいつはやらせん!」

 

 そこへ、タンニーンさんの炎がフェンリルを襲う! 気が乱れたことで、耐久力もある程度は下がっているのか、少しだけどダメージも通ってるみたいだ。

 

「ぬぅ、弱体化してなお、俺の炎がほとんど効かんとは……」

 

 そう。フェンリルは小猫ちゃんの仙術により、通常よりも弱体化した状態にある。

 ────それでも、イッセー君を彷彿とさせる速度に、龍王の炎をも難なく耐えるほどの耐久力を兼ね備えている! イッセー君の速度に慣れていなければ、皆とっくに終わっていたかもしれない。これで弱体化してるというんだから、恐ろしい。

 もしも小猫ちゃんによる弱体化がなければ────ゾッとするね。

 

「……私の仙術もそう長くは持ちません。部長は今のうちに準備を……」

 

「ええ。わかってるわ!」

 

 部長は直ぐ様魔法陣を描き、グレイプニルを使う準備をする。

 何かを察したのか、フェンリルは部長へと視線を向け、魔法陣を展開する部長に攻撃を仕掛けてきた! 

 

「だから、させないっすよ!」

 

 ザンッ! 

 

 だが、それよりも速く、ミッテルトさんがフェンリルの脚を切り裂いた! 

 フェンリルは脚から血を垂れ流しながら、敵意を込めてミッテルトさんを睨みつけている。

 

「ふ〜む、流石に硬いっすね。両断するつもりが薄皮しか斬れないとか……肉体はもとより、あの体毛も鎧の役割を果たしてるようっすね」

 

 ミッテルトさんはフェンリルを見つめながら、考察をする。

 確かに、先程から僕は雷や氷、炎など様々な聖魔剣を使い、多面的に攻撃をしてフェンリルの脚を止めようとしているが、フェンリルは痛痒すら感じることなく動いている。

 

「しかし、空間ごと削り取れば────」

 

 そう言いながら、アーサーは聖王剣を構え、フェンリルに斬りかかる! 

 

 ゴリュ! 

 

 聖王剣は空間を削る力がある! アーサーは聖王剣を使い、周囲の空間ごとフェンリルの肉を削り取った! 

 

「────防がれてますね。ある程度は削れても、大したダメージにはならなさそうですか」

 

 空間ごと相手を削る聖王剣ですら、フェンリルに致命傷を与えることはできないのか……。

 

「でも、ダメージはあるっすよ。相手は“超速再生”を持ってないみたいっすし、削るだけ削りましょう」

 

「フッ、貴女も凄まじい剣士のようですね。一度手合わせしてみたいものですよ」

 

 そう言いながら、アーサーとミッテルトさんはフェンリルの肉を少しずつ削り取る。

 

 グルルッ! 

 

 流石のフェンリルもこの連撃には痛みを感じてるみたいだ。

 ……でも、決定打にはなっていない。フェンリルの隙を作るには、まだ足りてないみたいだ。

 どうすれば────。

 

 ブオオオオオオオオオオオオンッ! 

 

 その時、黒い炎が突如として巻き起こり、フェンリルを飲み込んだ! 

 その炎は特殊な性質を持っているらしく、フェンリルの力が徐々に抜けていっているのを感じる! 

 

「────っ! このオーラは……黒邪の龍王(プリズンドラゴン)ヴリトラか!?」

 

 ヴリトラだって!? 瞬間、地面から巨大な魔法陣が現れ、その中心から黒いドラゴンが現れる! 

 

『皆さん、聞こえますか? 私はグリゴリ副総督シェムハザです』

 

 緊急用のイヤホンマイクから声が聞こえる。聞こえてきたのは堕天使の副総督シェムハザ様の声だった。

 

「シェムハザ様。あの黒いドラゴンはもしかして……」

 

『ええ、皆さん勘づいているとは思いますが、そのドラゴンは匙元士郎君です』

 

 やっぱりか! あのオーラは間違いなく匙君のものだ! でも、どうして……。

 

『簡単に言うと、彼にヴリトラの神器を全部くっつけました。そもそもヴリトラは幾重にも切り刻まれ、その魂を分割して封じた存在。故に、所有者は多いのですが、分別すると、『黒い龍脈』『邪龍の黒炎』『漆黒の領域』『龍の牢獄』の4つです。それらは全て、グリゴリが保管していたたま、今回その4つを匙君に埋め込み、合わせたのです。結果、神器は統合され、ヴリトラの意識は復活しました。匙君は何とか抑えてますが、長くは持たないでしょう』

 

 なるほど。結果として、匙君はあの巨大な龍の姿になったということか。

 

『匙君。あとはいけますか?』

 

 シェムハザさんがそう尋ねると黒いドラゴンから声が発せられる。

 

『はい! 何とかやってみます!』

 

 そう言いながら、匙君は再度、その黒い炎をフェンリルに向けて放つ! 

 

 ────この時、フェンリルに決定的な隙が生じた! 

 

「今よ!」

 

 ついに届いたか! 

 部長は魔法陣からグレイプニルを召喚し、僕達グレモリー眷属やバラキエルさん、ヴァーリチームの面々に託した。

 

「はあああ!」

 

 僕達はグレイプニルを一斉にフェンリルへ投げつける! 

 

 バヂヂヂヂヂヂヂッ! 

 

 ダークエルフによって強化された魔法の鎖は意思を持つかのようにフェンリルの体に巻き付いていく! 

 

 オオオオオオオオオンッ……。

 

 フェンリルは苦しそうにあたり一面に悲鳴を響かせる。

 

「────フェンリル、捕縛完了だ」

 

 バラキエルさんは身動きができなくなったフェンリルを見て、そう口にするのだった。

 

 

 

 

 

 *********************

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

 流石! 完璧だな! 

 俺は動きを封じられたフェンリルを見て笑みを浮かべる。

 というか、匙もそうだけど、小猫ちゃん大活躍だな! 一見すると、ミッテルトとアーサー、最後に登場した匙に目が行きがちだけど、初手でフェンリルの気を断ち切り、フェンリルを弱体化させた小猫ちゃんがMVPと言えるだろうな。もし、小猫ちゃんがいなければ、結構危なかった。下手したら、死者が出てた可能性すらある。

 匙も龍王の力を見事に覚醒させている。まだ、完全に制御できてるわけじゃなさそうだけど、いずれは魔王級以上の存在になりそうだな。

 さてと、あとはロキとメロウの二人だけ。俺は改めて視線を向ける。

 ────だが、二人共全く慌ててない。少しは焦ると思ったが、ロキは感心するように見てくるだけ、か。

 まだ何かある。そう感じた俺は油断せずにロキを睨みつける。

 

「この状況でまだ余裕があるのか?」

 

 俺は思い切ってロキに問う。ロキは意外にもすぐに答えてくれる。

 

「よもや、貴殿が抜けた状態でフェンリルを封じられるとはな。グレイプニルを強化したのは……ダークエルフかな? そして、そのことを貴殿らに教授したのはあの怠け者だろう……」

 

「怠け者……噂に聞いたミドガルズオルムとやらか。面倒な真似をしてくれたな。────仕方あるまい!」

 

 そう言うと、ロキとメロウは新たに空間の歪みを出す! 

 何をする気だ!? 

 空間の歪みから現れたのは、見覚えのある紅い髪! 忘れもしない、あの野郎は……

 

「カグチ!」

 

「よう、兵藤一誠。久しぶり」

 

 現れたのはカグチだ。何やら複雑そうな表情をしながらメロウを見つめている。

 

「ご苦労カグチ」

 

「……あの方の命令だから、協力するけどさ、お前本当に嫌らしいことするよな……」

 

「なんとでもいえ。勝つためだ」

 

 カグチの言葉にメロウは笑みを深め、反論する。何だ? 仲間割れか? 

 カグチはよく見ると、何かリードのようなものを手に持っている。

 それを引っ張ると現れたのは────

 

「さてと、スペックは劣るが……紹介しよう」

 

 灰色の毛並み、鋭い爪、大きく避けた口を持つ二頭の狼が鎖に繋がれ、現れた! 

 

「スコル! ハティ!」

 

 オオオオオオオオオオオオンッ! 

 

 マジ!? フェンリル!? 

 現れたのはフェンリルそっくりの二頭の狼! 

 どちらもEP150万を超えており、凄まじい威圧感を放っている! 

 

「紹介しよう。フェンリルの子、スコルとハティだ。ヤルンヴィドに住まう巨人族の女を狼に変え、フェンリルと交わらせたことで生まれたものたち。親のフェンリルよりは劣るが牙は健在だ。十分に神を屠ることが出来るだろう」

 

 マジかよ……! フェンリルに子供なんていたのかよ! 

 ミドガルズオルムも知らなかったってことだよな……? この最悪の状況でとんでもない奴らが現れやがった! 

 

「……ん? 誰か乗っかってい────っ!?」

 

 子フェンリル二頭の頭上に誰かの影が見えた。

 それを見た黒歌は────今までにない表情で固まっていた。

 

「────な、何で……?」

 

 見ると、朱乃さんとバラキエルさん、そして黒歌が信じられないものを見たかのように動揺して言葉を失っている。

 なんだ? 二人共、見覚え……というか、面影がある! 一人は巫女服を着た黒髪の女性、もう一人は猫又らしく、白髪に大きいおっぱいが特徴的な美女。共にうつろな瞳をしている。精気をまるで感じない。まるで死体のようだ。

 ────アレは……まさか!? 

 

「……か、母……様!?」

 

「……朱璃!?」

 

 そう、フェンリルの頭上に乗っている二人は片方は朱乃さん、片方は小猫ちゃんによくにていたのだ! それを見た黒歌はワナワナと身体を震わせる。

 

「……お前……何考えてるんだにゃん! メロウッ!!」

 

 全てを察した黒歌が凄まじいまでの殺意と怒りを込めてメロウを睨みつける! 

 それに対し、メロウは嫌らしい笑みを浮かべるだけだった。

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