帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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紅き魔龍帝の力です

 木場side

 

 

 

 

 

 何が起きたんだ……。

 イッセー君が呪文を唱えた瞬間、僕達の身に今まで経験したことがないほどの暴力的な圧力が襲ってきた。

 ────震えが止まらない。

 これほどの圧力は、初めてメロウと相対した時にも、フェンリルに睨まれた時にも、グレートレッドと対面した時すら感じたことがない。

 圧倒的で禍々しすぎる脅威的な力────これ程の圧力を、イッセー君が放っているというのか!? 

 

「……なんだ、その姿は?」

 

「……このオーラは……何故……っ!?」

 

「ついに、きたか!」

 

 メロウとロキが動揺しているのに対し、カグチは嬉しそうに笑みを深めている。

 圧倒的な波動に巻き上がった砂埃が一気に霧消する。

 そこに現れたイッセー君は、いつもの鎧とは少し違う……どこか、生物的なフォルムと悪魔のような禍々しさを併せ持った鎧を纏っていた。

 何なんだ……あの姿は……?

 

「コレが俺の進化した覇龍────“真紅の赫覇魔龍帝(クリムゾン・ジャガーノート・ダークネス)”だ」

 

 イッセー君はそう言うと、静かに地面に着地する。

 その鋭い眼光は、静かに……しかし、確実にメロウ達に向いている。

 

「ふ、フハハハ! 進化した覇龍だと!? 面白い! 我が神の力と────」

 

『COUNT START!』

 

 ロキが冷や汗をかきながら、自ら恐怖を押し殺すように魔力を集中させる。

 ────瞬間、ロキの姿が消え、先程までロキがいた場所にはイッセー君の姿があった。

 

 ────ドゴォォン!! 

 

 凄まじいまでの爆風が僕達の元まで届く! ロキが消えたのよりも遅く、音が響いてきた……まさか、音よりも速く動いたっていうのか!? 

 

「チィ!? “音響衝撃波(サウンドウェーブ)”!」

 

 それに気づいたメロウが即座にイッセーくんに攻撃を仕掛けるが、イッセー君はそれを片手で受け止め、握りつぶす! 

 

「な、なに!?」

 

「……この程度の攻撃が……今の俺に通じると思うなよっ!」

 

 そう言いながら、イッセー君はメロウの鳩尾を凄まじい力で殴りつけ、怯んだメロウを投げ飛ばした! 

 

 ドゴォォン!! 

 

 どれほどの力を込めたのか、イッセー君に投げ飛ばされたメロウは凄まじいまでのクレーターを作りながら、地面にめり込んでいる。

 

「ガハッ!? こ、これは……」

 

 投げ飛ばされたメロウは内蔵を痛めたのか、血を吐きながら立ち上がり、イッセー君────ひいてはカグチをも睨みつける。

 

「……ククク、ハハハハハッ!! 最高だな! その力!」

 

「……おい、カグチ……これはどういうことだ……」

 

「ん? どういうことだも何も、赤龍帝である兵藤一誠が覇龍を使った……それ以外にあるのか?」

 

 覇龍を使った……本当にそうなのか? 今のイッセー君から、とんでもない力を感じる。こうして黒歌さんの結界の中にいなければ、戦闘の衝撃だけで吹き飛ばされてしまいそうなレベルだ。

 これが、覇龍の……赤龍帝の力だけで出せるものなのか……? 

 

「惚けるな! あれは覇龍なぞではない! あれは……あれは……」

 

 メロウは立ち上がり、僅かな畏怖を込めた目でイッセー君を眺めている。

 やがて、メロウは歯軋りをしながら叫んだ。

 

「あれは────ギィ・クリムゾンの力ではないかぁぁ────ッ!!!」

 

 ギィ? 誰のことだ……メロウの口から出たのはまるで聞いたことのない存在の名前だった。

 

「ギィ……クリムゾン……?」

 

「何者だ……それは……」

 

 タンニーン様やバラキエルさんですら聞いたことがないらしく、二人は首を傾げながら、イッセー君を見ている。

 そんな僕達をカグチは面白そうに笑いながら見ている。

 

「ギィ・クリムゾン……全ての悪魔の元となった存在……数万年なんてちっちゃな単位じゃない……天地開闢の遥か以前────数億年は生きてるであろう“原初の七悪魔”の一角! 最強の悪魔! 原初の赤! それがギィ・クリムゾンさ!」

 

 カグチの言葉に僕達は目を見開く! 

 原初の七悪魔!? 数億年の時を生きている悪魔だって!? そんな話、今まで聞いたことないぞ! 

 

「原初の七悪魔だと? 俺は悪魔になって長くなるが、そのような存在聞いたこともないぞ?」

 

「そうよ! 私も、お兄様からそのようなことは聞いた覚えはないわ!」

 

 最上級悪魔であるタンニーン様や、魔王様の妹である部長ですら聞いたことがない存在。二人の疑問に対し、カグチは嗤いながら言う。

 

「当たり前だ。このことを知ってるのは初代魔王や初代悪魔達の中でも極一部。現魔王や旧魔王を含む、大半の悪魔は存在すら知らないだろうな」

 

 そう言いながらカグチは視線を一誠君に向ける。彼はそのまま説明を続ける。

 

「聖書の神────魔王ルシファーや悪魔の母リリスを作った存在。奴は何を思ってコイツラを作ったと思う?」

 

「……初代悪魔達の母たるリリスは、元々人間であるアダムの妻として聖書の神に形作られた……そう伝えられている。でも、初代ルシファーがいかようにして生まれたのかは、記されていないわ……」

 

「なら教えてやろう。聖書の神は自らを作った生みの親の真似をしようとしたのさ……」

 

「なっ!?」

 

「……主の、生みの親ですって!?」

 

 カグチの言葉に、アーシアさんにゼノヴィア、イリナさんは動揺する。僕も同じだ。聖書の神の産みの親? そんな存在がいるだなんて……。

 

「聖書の神の産みの親……創造神と呼ばれる存在は自らの補佐を行う者として七柱の“天使族(エンジェル)”と呼ばれる種族を作った。それが聖書の神が作った天使の大元となった存在。“始原の七天使”だ」

 

「……そんな存在が?」

 

 “始原の七天使”────これも、どの文献にも記されていない事だ。聖書の神の手で天使として誕生し、今まで長き時を生きたであろうバラキエルさんですら、目を見開いている。

 

「光あるところには影も生まれる。創造神が“始原の七天使”を作ったことにより、偶発的に誕生したのが“原初の七悪魔”と呼ばれる存在。創造神の事を強く信望していた聖書の神は、それを模して自らを守護する存在として、天使……そして、その影となる悪魔を作った。それが、お前たちの始まりだよ」

 

 カグチの言葉に僕達は声を失った。

 どれもこれも初耳だ! 古き存在であるバラキエルさんやタンニーン様ですら、この事は知らなかったらしく、目を見開き、動揺している。

 敵の言葉を信じるなんて、どうかしてる。……でも、信じざるを得ない。何故ならば、カグチの言葉が本当であると、今のイッセー君の圧倒的な力が物語っているからだ。

 

「そして、今兵藤一誠が使っている力こそ、創造神の友にして、原初の中でも最強と称された存在……“暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)”ギィ・クリムゾンの力というわけさ!」

 

 ドゴォォン!!

 

 カグチの言葉と同時に轟音が鳴り響く。そこにはイッセー君の拳に吹き飛ばされ、土埃に塗れるメロウの姿があった。メロウはそれだけで人を殺せそうな視線でイッセー君を睨みつけている。

 

「くそっ! 調子に乗るなよっ!」

 

 メロウは再度、イッセー君に向かって波動を放つ! でも、イッセー君はメロウの攻撃など意にも介さず、メロウを再び殴り飛ばした! 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

「ぐっ、砕け散れ! “音破水流刃(サウンドカッター)”!」

 

 メロウは俺に対し、音波の乗った水刃を放つ。だが、俺はそれを片手で握りつぶしながら、メロウに迫り、再びメロウの顔面を殴りつける! 

 

「ぐはっ!?」

 

 メロウは遙か後方へ吹き飛びながらも、体勢を立て直し、再び音波振動攻撃を仕掛ける。だが、今の俺には通用しねぇ! 俺はメロウの攻撃など意にも介さずメロウを吹き飛ばした! 

 

「……振動が中まで届いていない……? それ程までの硬度があるというのか!?」

 

「まだまだ行くぞ!」

 

『Crimson Boost!』

 

 俺は魔力を高め、紅い魔法陣を地面に描く! 

 

 ブゥゥゥゥゥンッ! 

 

 魔法陣が地面に展開され、紋様からは相手を引き込む引力が発生する! その凄まじいまでの引力に、メロウは為すすべなく吸い込まれていく! 

 

「こ、これはギィの……っ!」

 

「味わってみな! “赫灼獄魔炎(デモンズブレイズ)”!」

 

 俺は魔法陣から、赤く、凄まじい極熱の炎を召還し、メロウを焼き尽くそうとする! 

 メロウは水を操り、何とか防ごうとするが、赤の炎を防ぐことは叶わず、メロウはその炎に身を焼かれ、ダメージを負っている様子だ。

 

 ゴオオオオオオオウッ! 

 

「ぐわぁぁぁぁぁあっ!? お、おのれぇぇぇぇ!」

 

 メロウは魔力を一気に集中させ、極熱の炎から脱出する。流石にEP400万超えの覚醒魔王だ。この程度じゃやられてくれねえか……。

 

「……気づいてねえとでも思ったか?」

 

「なっ!?」

 

 俺は魔力を断ち、直ぐそこまで迫っていたロキに裏拳を食らわせ、怯んだ隙に蹴りを叩き込む! 俺の感知能力嘗めるなよ? この程度の気配遮断、素の状態でも見破れるぞ。

 

 ドゴンッ!!

 

「ぐはっ!」

 

「ん?」

 

 蹴りの衝撃で辺り一帯が鳴動する。だが、蹴りを入れた感触が先程とまるで違う。よく見ると、ロキは何やら妙な鎧を着ているようだ。金属質の光沢を放ち、狼の意向が強い全身鎧(フルプレートアーマー)を装着している。

 

「……何だ? その鎧?」

 

「ふふふ、これは異世界の技術を融合させて作った新たなるフェンリル────“フェンリルUL”を鎧とした形態だ! 本来ならば、確実にオーディンを殺すためのとっておきだったのだが、やむを得まい!」

 

 そう言いながらロキは俺にカウンターの蹴りを叩き込もうとする。

 ふむ……“神話級”の鎧か。EPも上乗せされて、メロウに負けないくらい高くなってる。鎧に使われてるのは……セラと同じ材質の金属みたいだな。

 

「……まあ、だから何だって話だけどな!」

 

「な、何!? ぐおっ!」

 

 ズドンッ! 

 

 コイツの存在値が上がった所で今の俺には通じない。

 俺は蹴りを片手で受け止め、構わずロキの腹に重たいのを一撃食らわせてやる! 鎧はひび割れ、ロキは唾液を垂れ流し、悶絶しながらも俺に一撃を浴びせようとする。それと同時に、メロウは挟み撃ちの形で俺に杖を向けてくる。

 

「無駄だ!」

 

 ブゥゥンッ! 

 

「なっ!? がはっ!?」

 

 すかさず俺はロキの頭を鷲掴みにし、俺に近付いていたメロウに振り回し、ぶつける! 

 咄嗟のことにメロウは対処できず、ロキともども吹き飛んでいく。

 

「”火焔閃撃(フレイムスラッシュ)“!」

 

 そこにカグチが炎を纏った槍で鋭い槍撃を俺に叩き込む! 俺はそれを片腕で受け止め、弾き飛ばしつつ、カウンターの炎弾を御見舞する! 

 

「おっと、危ない!」

 

 カグチはそれをいなし、メロウとロキを掴み取り後退する。今の俺に対応する辺り、流石は戦闘特化の魔人といえよう。だけど……。

 

「遅えよ!」

 

 バギィッ! 

 

「うおっ!? ぐはっ!」

 

 俺はカグチの後ろに回り込み、鋭い拳を叩きつける! カグチはそれに気付き、咄嗟に槍で防御するが、俺の拳の威力を殺し切ることはできず、吹き飛び、後方の岩盤へと叩きつけられた! 

 メロウはそれを見つめながら歯軋りし、憎しみと怯えが入り混じった瞳で俺を睨みつけている。

 

「ふ、巫山戯るなぁぁ! 人間如きの分際でぇぇっ!」

 

 メロウは恐怖を圧し殺すように高く飛び上がり、上から音波を俺に放つが、今の俺には届かない。

 

「”赤死銃弾(デスクリムゾン)“!」

 

 俺は指先で魔力を圧縮し、弾丸のように固め、放つ! 放たれた紅い閃光はメロウの防御を突き抜け、心の臓を貫いた! この弾丸には強化された“結界崩壊(プリズンブレイク)”の権能が付与されており、簡単な防御は意味を成さないのだ。

 

「ガボッ! 有り得ん! 人間如きが……」

 

 メロウは腐っても精神生命体。心臓貫かれた程度じゃ死なないだろう。だが、内臓が潰れればそれなりのダメージが残るし、治癒にも魔力を使う。……そんな暇与えるかよ! 

 

 バゴンッ! 

 

「がっ……!」

 

 俺は失った部位を治癒しようとしていたメロウに高速で近づき、渾身のボディーブローをする。

 

「朱乃さんや小猫ちゃん、黒歌に辛い思いばかりさせやがって……お前は絶対に許さねえぞっ!」

 

「ぐっ! 許さないはこちらのセリフだっ! “震動音波(サウンドウェーブ)”!」

 

 メロウは俺の腕を掴み、振動を直接俺に届けようとする! 

 

「フハハハ! 如何に鎧が堅固だろうが、直接の振動は防げまい!」

 

 ブゥゥゥゥゥン!! 

 

 確かに……こうも密着した状態で振動を喰らえば、多少は俺にダメージも届く……。だが、そのダメージは微々たるもの。朱乃さんや小猫ちゃん達にお前が与えた痛みのほうが、遙かに上なんだよ! 

 

「オラァァ!!」

 

「なっ!?」

 

 俺は振動など意に介さず、メロウの顔面に思い切り拳を入れてやる! 普通なら女の子の顔を殴るなんて絶対にしないが、コイツは別だ! 朱乃さん達の痛みを少しは思い知りやがれっ! 

 

 ドガァァァン! 

 

 メロウはそのまま山を貫きながら、大地にめり込む。俺は即座に残ったカグチと満身創痍のロキに視線を向ける。

 

「ククク、本当に規格外の力だな……流石は兵藤一誠」

 

 カグチはそう言いながら、俺に鋭い槍の一撃を浴びせる。俺はそれを躱しながら、カウンターを食そうとするが、それを察知したカグチは即座に後ろに跳ぼうとする……させねえけどな。

 

「止まってろ! “傲慢なる結界(プライドプリズン)”!」

 

 キィィィィィィン! 

 

「うおっ! まじか!?」

 

 俺はカグチの動きを封じる結界を作り出し、跳ぼうとしたカグチの足を止める。少なくとも数秒間は動けねえぞ! 

 俺は目を見開くカグチに構わず、拳の弾幕を喰らわせてやる! 俺の拳をモロに受けたカグチは吐血しながらも結界を破壊し、即座に距離をおいた。

 

「ぐっ、あの赤き龍を噛み殺せ! 新たなる龍王共よ!」

 

 ロキの足元から影が広がり、そこから複数匹のドラゴンが現れる。

 あれは……あのグータラドラゴンか? そういえば、元々ミドガルズオルムはロキが作ったという話だったわけだし、さしずめ量産型のミドガルズオルムといったところか。少なくとも、一体一体が準魔王級はありそうだ。……まあ、一言でいうなら……

 

「うっとおしい!」

 

 ゴォォォォォォォッッ!!

 

「なっ、北欧の炎だと!?」

 

 俺は北欧の術式を構築し、炎を放つ。その炎は俺の力も加わっているため、量産型のミドガルズオルムでは防ぐことができない。そのまま俺は全てを焼き払う! そのままロキにも攻撃をするが、ロキは冷や汗をかきながらも生き残った量産型のミドガルズオルムと位置を入替え、それを回避する。

 どうやら、この”入れ替え“がロキのユニークスキルの権能らしいな。

 

「我が新たなる力────“狡猾者(トリックスター)”の力を存分に味わうがいい!」

 

 そう叫びながら、ロキは北欧の魔術を全方位に展開し、それを一気に解き放った。どうやら位置の入れ替えだけでなく、魔術的な攻撃に対する上乗せ効果もあるようだ。ロキの魔術は様々な属性を有し、それを無作為に放つことで、対処を遅らせようとしてるのだろう。

 

「“傲慢なる捕食者(プライドグラトニー)”!」

 

 俺はリムルの胃袋よろしく、ロキの魔術を()()する! もちろん、実際に食うわけじゃねえけど……このスキルはリムルと同じように食った魔法や魔力を解析したり、それを自分の力に還元したりすることができる! 俺は喰った魔力をエネルギーに還元し、アスカロンに凝縮し、一気に解放した! 

 

「“竜魔断裂斬(ドラゴニックスラッシュ)”!!」

 

「なぁっ!?」

 

 ロキの魔術をそのまま付与し、あらゆる属性を有した斬撃は、ロキを袈裟斬りする! あの謎鎧のお陰で両断は免れたようだが、それでもかなりのダメージを負っているのが見て取れる。

 それを見たカグチは興味深そうに今の現象を見ていた。

 

「……アスカロンの姿が変わってる……まるで“世界(ワルド)”みたいだな……しかも、今のは“傲慢者(プライド)”か……ギィのユニークスキルまで使えるとはな……素晴らしい! 極上だよ! お前は!」

 

 そう。この形態の俺はギィさんの失われしユニークスキル“傲慢者”を一時的に仕えるようになるのだ。傲慢者は捕食に結界に精神干渉など、様々なことを凄まじい水準で使うことができるぶっ壊れスキル。もともとの性能でも究極能力に届く数少ないユニークスキルの一つ。それに俺の“国津之王”と連動させて、究極級にまで性能を高めてるんだ。その力は元々の傲慢者よりも向上してるらしい。

 カグチは口から血を吐きながらも笑みを浮かべ、子供のようにはしゃぎ始める。戦闘狂らしく喜んでやがるな……。やはり、強さで言えばメロウよりカグチのほうが厄介そうだな。

 

「だけど、その強さ……長くは続かないだろ? お前は人間────である以上は、ギィの力に長くは耐えられない」

 

 カグチは鋭い視線を俺に向けながら、告げる。

 

「あぁ、勘違いしてほしくないんだが、俺は人間を舐めてはいない。かつて俺と互角に戦ったダムラダやグランベル……何より、人間でありながら、ギィと互角の力を持っていたルドラみたいな例外もいる」

 

 カグチはまるで昔を懐かしむかのように呟く。しかし、それも一瞬のこと。すぐに視線を俺に戻す。

 

「それでも、人間にとってギィの力は毒みたいなものだ。例え、ギィと同等の戦闘力を持つルドラでも、ギィの力を取り込めば、その闇の魔力に耐えきることはできないだろう」

 

『……どうやら、カグチは戦闘技術だけでなく、洞察力も高いようだな』

 

(ああ。厄介だな……)

 

 カグチの言う通り。ギィさんの名付けにより、生まれた“真紅の赫覇魔龍帝(クリムゾン・ジャガーノート・ダークネス)”は覇龍の力にギィさんの力を上乗せし、行使できる俺の切り札だが、その分負荷と負担が半端じゃない! 

 この形態は、臨んだ形に姿を変える特性を持つ“神器”の力と、それに宿ったドライグと俺の負担を分担することで成し得る……リムル曰く、無茶苦茶な形態だからな……。

 俺はチラリと視界の端を見る。視界の端にはこの形態を保てる残りの時間が記されている。先程のカウントスタートの音声から約十五分。それが、この形態でいられる時間であり、これを過ぎると俺は戦闘ができなくなる。継戦能力という観点で見れば、あまり使えない……正真正銘短期決戦型だ。

 

「ふむ、それならば……その時間が過ぎるまで耐えれば……」

 

「はあ? 何言ってるんだ?」

 

 ロキの言葉にカグチは不思議そうに言う。対してロキは、カグチの言葉の意図がわからないでいる様子だ。

 

「な、なにを……」

 

「俺が何で、メロウの胸糞悪い作戦に協力したと思ってるんだよ……俺は、この形態の兵藤一誠と戦いたいんだよ! そのために俺はここに来たんだからな!」

 

 それがコイツがメロウと共に来た理由か……。聞いた話によると、あの時はサーゼクスさんとの戦いのためにディオドラに協力したらしいし……とことんイカれた奴だな。コイツ。俺はそう考えながら、再度残り時間を確認する。

 

(……残りは八分か……)

 

 八分でカグチとロキ、メロウを確実に仕留めなければならない。

 ……上等だ! 

 

「来いよ! 魔の力と龍帝の力、思い知らせてやるぜ!」

 

 俺達は再び中空で激突する。

 

 

 

 

 

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 木場side

 

 

 

 

「な、なんて凄まじい戦いなんだ……」

 

 僕達は例外なく、イッセー君の戦いに魅入っていた。

 カグチの槍や、ロキの魔術。それらを無に帰すほどの、圧倒的な力。これが……イッセー君の本当の力……。

 

「……正確には、ギィ様の力でもあるんすけどね」

 

「……質問だミッテルト。原初の悪魔とは、あれより強いのか?」

 

 そう言ったのは、白龍皇のヴァーリだ。

 彼は戦いが始まってから、何も喋らずただただ戦いを観戦していた。

 その瞳には、羨望と……僅かながらの憧れが含まれているように見えた。

 

「……そうっすね。ギィ様は原初の中でも別格っすからね……」

 

 そう言いながらミッテルトさんは考え込むような仕草をしている。

 そんな彼女の答えを黒歌さんが引き継いだ。

 

「……明確にイッセーのあの形態より強いのは、大本である“原初の赤”ギィ様。あとは、”原初の黒“であるディアブロさんくらいだにゃん。以前、修行で他の原初の人達と模擬戦してた時は勝ってた記憶があるにゃん」

 

「そうっすね。でも、イッセーはあの形態でも原初の方々には確実に勝てるとは言い切れないって言ってたっすよ。他の人達も、大分規格外の力を有してるっすからね」

 

「……つまり、カグチの言う原初の悪魔とやらは、今の兵藤一誠と何ら変わらない力を有してるってことかぃ?」 

 

「凄まじいですね。それほどの存在が今の今まで秘匿されてたとは……オーディン様は知っていたのでしょうか?」

 

 確かにそうだ。それほどの存在がいるというのなら、今の今まで僕達は何で存在すら知らなかったんだ? 

 

「……この戦いが終わったら、全部話すっすよ……」

 

「……いいだろう。今はそれで納得しよう」

 

 タンニーン様の言葉で話を打ち切り、僕達は再度イッセー君の方に視界を向ける。

 

「ハハハハハ! もっとだ! もっと戦おう!」

 

 カグチは凄まじい槍術でイッセー君を襲う。槍より放たれる炎は結界越しでもわかる熱量を秘めている。

 それに対し、イッセー君は爪と尻尾を駆使している。メロウやロキの時とは違い、明確に防いでるように見える。

 

「……どうやら、兵藤一誠はカグチの槍を脅威に感じてるようだな」

 

「そうにゃんね。メロウは戦闘技術こそ高かったけど、慢心も多いし、多分同格や格上との戦闘に慣れてないんだにゃん」

 

「……だが、カグチとやらは違うというわけか」

 

「卓越した戦闘技術に裏付けられた戦闘経験値。うちの見立てだと、カグチは原初の方々と比較しても遜色ないレベルっすよ」

 

 それじゃあ、今のイッセー君でも勝てるかどうかわからない相手ということか! 僕は……僕達は歯ぎしりをしながらイッセー君を見つめる。

 あの戦いは、以前のセラちゃんの比ではない! 僕達はおろか、タンニーン様やバラキエルさんですら近づくこともできない異次元のものとなっている。

 僕たちじゃあ、見てることしかできないのか……? 

 

「……大丈夫っすよ。イッセーは負けないっすからね」

 

 不安気な僕達に対し、ミッテルトさんは笑みを浮かべながらそういうのだった。

 

 

 

 

 

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 イッセーside

 

 

 

 ロキは様々なものと自分を入れ替えながら俺に接近する。どうやらロキのユニークスキルは自らと他者、もしくは魔力を秘めた物質を入れ替えるスキルのようだ。だが、どうやら射程距離もありそうだな。俺の入替えがないを見るに、制約もあるのだろう。……それでも、メロウやカグチと入れ替えで時間を稼がれるのも面倒だな。

 

「邪魔だ!」

 

「なっ!?」

 

 ドゴォォン!!

 

 俺はロキの肩を掴み、入れ替えの隙を潰し、思い切り踵落としを食らわせる。その一撃はロキの意識を刈り取り、地に伏せさせるには十分な威力を誇っていた。

 

「ば、馬鹿な……神たるこの我が……」

 

 ロキは何とか立ち上がろうとするが、やがて倒れ伏し、鎧も解かれる。完全に意識を失ったようだな。

 

「おのれおのれおのれおのれ……たかが人間風情の分際でぇぇぇ!!!」

 

 メロウは絶叫しながら俺に凄まじい音波攻撃を仕掛けてきた! 下手な覚醒魔王級ですら、振動による分子崩壊を引き起こすであろう攻撃だが、今の俺には通じない。

 

「“黒魔滅却砲(ヘルエクスターミネート)”!」

 

 俺が放った紅い魔力の光線は、メロウの音波を容易く貫き、同時にメロウの胸をも貫いた! 

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!?」

 

 この光線にはギィさんの“傲慢者”によって作られた“破滅粒子”が付与されている。

 精神生命体にとって猛毒であるこの粒子はメロウの胸から全身を蝕む。

 

「……馬鹿な……この私が……人間如きに……」

 

 そう言いながら、メロウは力を失い、落下する。

 メロウはこの程度じゃあ死なないだろう。破滅粒子は俺も制御できるわけじゃないし、メロウ級の存在ならば、今の一撃を耐えきれても不思議ではない。

 だが、破滅粒子はメロウの精神を着実に蝕む。地獄の苦しみが続くだろうし、少なくともしばらく戦闘は不可能だろう。

 ざまあみろ! 少しは朱乃さんや小猫ちゃん達の苦しみを味わいやがれ! 

 さてと、コレであとはカグチだけか……。

 

「ふん!」

 

「おらぁ!」

 

 ドゴォォン!! 

 

 俺の拳とカグチの槍が交差するたびに、凄まじい衝撃が辺りを襲う。

 カグチはメロウとは比較にならない強さを持っている。権能の多彩さでいえば、メロウに軍配が上がるだろうが、戦闘能力のみならば、カグチの方が圧倒的に上だ。俺のこの形態の攻撃も上手くいなして致命傷を避けてるようだしな……。

 

『ここは強引にでも奴の守りを突破するべきだな』

 

 ドライグの言葉に俺はカグチを見据える。

 メロウとロキは正直問題ない。ロキは二人に比べ大幅に劣っているし、メロウは俺の防御を突破する手段を持ち得ていない。

 問題はカグチだ。奴だけがその超一流の槍術で俺にダメージを与える力を持っている。制限時間はあと5分……。

 

「ここが勝負だな」

 

 俺は更に魔力を高め、全身に行き届かせる。

 それを見たカグチは笑みを深め、槍を構えた。

 

「いいな。すげえ力だ。これは俺も最大火力で応えるのが礼儀だよな……」

 

 カグチは槍に炎を纏わせ、振るうことで灼熱を辺り一帯に振り撒いている。

 その火力はベニマルさんにも匹敵するほどだ。だが……。

 

「負けるつもりはねえぞ!」

 

 俺は全てのエネルギーを拳に集中させ、一気に圧縮し、高める! 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴッ! 

 

 エネルギーを限界まで高めた俺は拳を構え、敵を見据える。対するカグチも、槍に獄炎を纏わせながら、油断ならない瞳で俺を見据えていた。

 互いの凄まじい魔力により、大地が鳴動し、紫電が巻き起こる。

 先に動いたのカグチ! カグチは極大にまで高めた炎を槍に纏わせ、それを一気に放出した! 

 

「行くぜ! “極炎焔刺突(フレイムストライク)”!」

 

 そのすさまじいまでの炎の刺突は直線状にある者だけでなく、辺り一帯を焼き尽くし、溶かすほどの熱を振りまきながら、突き進んでいく! それに対し、俺は拳に収束させたエネルギーを一気に圧縮し、解放する! 

 

「喰らえ! ヴェルドラ流闘殺法“覇龍絶影拳(ドラゴニックバースト)”!!」

 

 俺が選択したのは数ある“ヴェルドラ流闘殺法”の技の中でも最も信頼すべき、師匠とともに編み出した必殺の技だ! 

 

 ドゴォォォォォォォォンン!! 

 

 二つの絶技がぶつかり合う! その破壊力はすさまじく、黒歌の究極の結界もすさまじい勢いで削られていく! それでも俺は炎の中を突き進み、ついにはカグチの胸を穿った! 

 

「……楽しいバトルだったぜ、兵藤一誠」

 

 胸元とともに、半身を引きちぎられたカグチは血をぶちまけながら、地面へと落下していく。俺はそれを見届け、“覇龍形態”を解除するのだった────

 

 

 




真紅の赫覇魔龍帝(クリムゾン・ジャガーノート・ダークネス)
EP 2534万1268
覇龍にギィの力を加えた決戦形態。王道と覇道の両方の道を指し示す力。普段のイッセーとは違い、ギィの思考回路が微妙に混じってるらしく、毒のような搦め手も使う。
負担は大きいが、原初の悪魔三人娘とも互角以上に渡り合うことができ、ゼギオンともある程度までは戦える。
なお、赤き龍の力が強化されてる分、炎に対して強い耐性があり、ベニマルの炎を持ってしてもダメージを与えることは困難。カグチは原初級の力を持ってるため、戦えるレベルではあるが、火属性のため相性が悪かった。
また、この数値はまだ途上であり、イッセーが神人に進化すれば、更に上がると予想されている。
強力な反面、ギィの闇の力に対する負担が大きく、十五分しか保つことができない諸刃の剣でもある。

赤死銃弾(デスクリムゾン)
当時空を飛べなかったイッセーが空を飛び、上から優位を取る相手に対抗するため、開発した対遠距離用の技。霊丸のように指に魔力を貯め、弾丸のように放つ。
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