帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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基軸の強者達です

 イッセーside

 

 

 

 

 

「なんだ……アイツラは……?」

 

「なんなの? この威圧感?」

 

「アヤツラは……まさか……!?」

 

 アザゼル先生達は眼前の集団から感じられる凄まじい力を前に、冷や汗をかき、呟く。

 信じられない……。俺の今の気持ちを率直に表すなら、そんな感想が即座に浮かぶ。俺は眼の前に現れた頼もしすぎる軍団を見て、驚愕することしかできなかった。

 

「やあイッセー! 随分ボロボロじゃないか」

 

「情けないね。戦いから離れてるうちに大分鈍ったんじゃないの?」

 

 横を見ると、カレラさんとウルティマさんが何時の間にか移動しており、そんなことを言ってくる。

 カレラさんはまだ心配してくれてるが、ウルティマさんは俺を嘲笑ってるのが見てわかる笑みを浮かべている。

 

「やあ、久し振りだね。イッセー君。無事みたいで安心したよ」

 

「あ、バーニィ!」

 

 次に俺に話しかけてきたのは帝国のバーニィ。槍を携え、人のいい笑顔で俺に話しかけてくる。

 

「ふん、無様なものね。変態ドラゴン」

 

 そこにジウが心底侮蔑したかのような瞳で俺を見つめながら言ってくる。

 

「そんなこと言って、カレラ様にイッセー君の現状を聞いた途端に僕達の首根っこ摑んで飛び……」

 

 ────シュン! 

 

 空が斬り裂かれる音が辺りに響く。見ると、ジウは手に“伝説級“の剣を携えバーニィの首に当てていた。

 

「殺すぞ? バーニィ」

 

「あ、ハイ。ゴメンナサイ」

 

 ジウは目が血走っており、目茶苦茶怖い。

 

「相変わらず君も素直じゃないね」

 

「全くだ。そんな感じでは、いつまで経っても振り向いてもらえないぞ」

 

 帝国勢はこの二人だけじゃない。帝国の宰相であるミニッツさんや軍務大臣であるカリギュリオさんまでここにいる。帝国の中でもトップクラスのお偉いさんであるこの二人までどうしてここにいるんだよ!? 

 そんな俺の困惑をよそに、カレラさんはレインさんを放り投げ、指示を出す。

 

「話は後でいいだろう。さあ、レイン。とっとと結界を張ってくれ!」

 

「やれやれ、なんて人使いの荒い……これだからカレラは粗暴なんですよ……“霧と霜の防御結界(ミストフィールド)”」

 

「なっ!? この結界は!?」

 

「す、凄く綺麗……」

 

 レインさんはブツブツ言いながらも結界を張り、安全地帯を作り出す。流石にギィさんやヴェルザードさんの戦闘に何万年も付き合ってるだけのことはあるな。黒歌の防御結界を堅固な壁とするのなら、レインさんの結界はすべてを包み込む膜のような感じだな。その結界は凄まじく、黒歌程ではないにしても、大抵の攻撃ならば簡単に弾けるだろう。

 

「ゾンダ。取り敢えずイッセー達を回復させといて」

 

「承知しました。お嬢様」

 

 ウルティマさんの号令でゾンダさんが回復魔法を俺達にかける。ゾンダさんはウルティマさんお付きの料理人であり、ユニークスキル“調理人(マゼルモノ)”は対象を“調理”することでどんな怪我も回復させるという権能を持っている。アーシアと比べると、傷の治癒率は劣るけど、疲労も回復するというメリットがあるため、俺も何とか立ち上がれるところまでは回復する。

 

「大丈夫? ミッテルト?」

 

「アハハ、結構ヤバいところでした。感謝するっすよ。エスプリ」

 

「全く、情けないわね。まだ戦れそう?」

 

「あったりまえっすよ! なんか今、凄く調子がいいんすよね!」

 

 ミッテルトはエスプリの手を借りながら何とか立ち上がる。立ち上がったミッテルトは刀を杖にしながらも、ヤル気いっぱいといった感じだ。

 

「全く、随分ボロボロね。タンニーン」

 

「てぃ、ティアマット。何故お前が?」

 

「助けに来たのよ。まあ、成り行きだけどね」

 

 その横ではボロボロのタンニーンのおっさんをティアマットさんが持ち上げている。キレイな美人さんがでっかいおっさんを片手で持ち上げている姿は中々にシュールだ。

 

「あ、貴女達は一体……?」

 

 突然現れたカレラさん達に部長は困惑を隠しきれない様子。まあ、当然か。この中ではティアマットさんしか知らないわけで、あとの人は全員初対面なんだし。

 

「ああ、私達は────」

 

「る、ルミナス様!」

 

 黒歌が小猫ちゃんを抱え、ルミナスさんを見つめる。それを見たルミナスさんは、小猫ちゃんのことを察したらしく、小猫ちゃんに近付き手を翳す。

 

「案ずるでない黒歌。“死者蘇生(リザレクション)”」

 

 ルミナスさんは小猫ちゃんに向かって神の奇跡“死者蘇生(リザレクション)”を発動する。魂は黒歌が固定していたお陰でまだ小猫ちゃんの身体に残留している。これなら問題ない! 

 

「ガハッ!」

 

「!? こ、小猫さん!?」

 

 心臓が再生され、止まっていた血流も戻ったのだろう。小猫ちゃんは吐血し、息も絶え絶えになっている────つまり、生きている! 

 

「……あれ? 姉様? ここは……」

 

「白音!!」

 

 ガバッ! 黒歌は小猫ちゃんが生き返ったことを確認し、力強い抱擁をする。目尻には涙が浮かんでいる。俺もそうだ。良かった……本当に……。

 

「ありがとうにゃん! ルミナス様!」

 

「気にするでない。お主の妹であれば、妾にとっても身内同然。当たり前のことをしただけじゃて」

 

 ルミナスさんは白銀に輝く長髪を靡かせ、笑みを浮かべる。仲間思いのルミナスさんにとっては本人の言う通り、当たり前なのかもしれない。口ではつっけんどんでも、ルミナスさんはお人好しなところがあるからな。

 

「……ルミナスっ! 貴様っ!」

 

 ルミナスさんを確認したメロウは目を血走らせ、ルミナスさんに向かって特攻を仕掛ける! ルミナスさんはそれを苦も無く紅く輝く魔爪で受け止める! 

 

「久しぶりじゃのメロウ。まだ生きてるとは恐れ入ったぞ」

 

「黙れルミナス! 裏切り者がっ! 今この場で殺してやろうっ!」 

 

 メロウは音波攻撃をルミナスさんに放つ! だが、ルミナスさんが回避するまでもなく、メロウが逆に吹き飛んでいく! 

 

「がはっ!」

 

 そこにいたのはシルビアさんだ。何時の間にか負傷者達を腕に抱え込み、ついでと言わんばかりにメロウを蹴り飛ばしたのだ! 

 

「久しぶりねメロウちゃん。短気なのは相変わらずみたいねぇ」

 

 シルビアさんは負傷者を結界の中に入れながら言う。それを見たメロウは歯をギリギリ鳴らしながら、シルビアさんを睨みつける。

 

「シルビア……貴様もいたな……」

 

「あ、貴女は……?」

 

 バラキエルさんはシルビアさんに問う。すると、シルビアさんは振り向かえり、笑顔を振りまきながら言う。

 

「初めまして、私はシルビアよ。ちょー強い助っ人だから安心していいわよぅ」

 

 こんな状況では初対面でそんな事言われても納得できないだろう。だが、意外にも助け舟はすぐに出た。

 

「シルビアか……随分久しぶりじゃのぅ……」

 

「オーディン様、お知り合いなのですか?」

 

 オーディンの爺さんがシルビアさんに向かってそんな事を言ってきた。え? なに? 知り合いなの!? それに気付いたシルビアさんは、少し驚いたふうな表情をしている。

 

「……やっぱりオー君なのねぇ! 昔、サリオンやゼーちゃんと一緒に馬鹿やってたあの! 懐かしいわぁ!」

 

「「「お、オー君!?」」」

 

 オーディンの爺さんからはあまり想像もつかないような渾名! 先生やロスヴァイセさん達は思わずと言った風にオーディンの爺さんを見つめる。それに対し、オーディンの爺さんは呆れ顔だ。

 

「もういい年の爺じゃて、その呼び方は恥ずかしいからやめい。お主、ちっとも変わらんのぅ」

 

「なぁに言ってるのよ。貴方も精神生命体なんだから、老いとはあまり関係ないでしょ? それにしてもこんなに老け込んじゃって……一瞬誰だかわからなかったわよぅ。何でこんな姿になってるのよぅ」

 

「まあいいじゃろう。年齢的にも儂はこれくらいの見た目がちょうどいいんじゃて」

 

 二人はまるで旧知の仲のように気さくに話している。……いや、実際に旧知の仲なのだろう。それを見ながら俺は考える。

 サリオンっていうと……ラプラスのことだよな!? オーディンの爺さんは昔ラプラスの友達でシルビアさんの知り合いだったと……意外な繋がりがあるんだな……。というか、世界が違うはずなのにこれは一体どういうことなんだ? 

 

「まあ、その話は後じゃ。今は……あっちじゃろて」

 

 ……確かにな。オーディンの爺さんの言う通り、今はあいつ等だ! ラーヌは興味深そうに俺達を観察しており、カグチは先程までのつまらなさそうな表情から一転して、嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

「奴等は?」

 

「アイツラは基軸世界の強者たち。俺達が攻略すべき敵さ」

 

 ディオ・ガーチュの疑問にカグチは答えるように述べる。

 

「よう、久しぶりだな“原初の黃(ジョーヌ)”」

 

 カグチにそう呼ばれたカレラさんは露骨に不愉快そうな表情となる。

 

「その呼び方は好ましくないな。私には偉大なる我が君より賜った“カレラ”という名前があるのだぞ」

 

「……そうだったな。スマン、カレラ」

 

「分かればいいさ」

 

 ディオ・ガーチュとツファーメはカグチの呼び名を訊き、大きく目を見開いている。どうやら、こいつ等も知っているようだな。原初の悪魔の詳細を……。

 

「ジョーヌ……そうか、こいつが」

 

「ああ。あそこの金髪はカレラ。“原初の七悪魔”の一柱で、原初の黄……“ジョーヌ”の異名を持つ女さ」

 

「……では、その隣りにいる紫髪は……」

 

「ウルティマ。原初の紫“ヴィオレ”。毒姫と恐れられた存在……あそこで結界を張っているのが原初の青“ブルー”ことレイン。アイツらも“原初の七悪魔”の一角。お前達悪魔の大元となった始まりの悪魔共だよ」

 

 部長やアザゼル先生達は驚いたような表情でカレラさんとウルティマさん、そしてレインさんを見つめる。

 

「あ、青原さんが……!?」

 

「隠してて申し訳ありません。あまり知られたくなかったので」

 

 皆目茶苦茶驚いているな。まあ、今まで人間だと思ってた人がその実自らの祖先的な存在だったと知ったのだ。そりゃ驚くだろう。部長は眼の前に立っているカレラさんに対し、少し緊張した面立ちとなっている。

 

「あ、貴女様が原初の悪魔……様……?」

 

 部長は恐る恐るとカレラさんに尋ねる。原初の悪魔の存在自体は先程知ったばかりだろうが、本能的に自分より上位の存在だと悟ってるのだろう。それに対し、カレラさんは大らかに答える。

 

「そうかしこまらなくていいさ、リアス・グレモリー。私は君を買っているんだ」

 

「わ、私を……」

 

「ああ。私はミッテルトを通して、君達のことをずっと見ていたからね。あのイッセーが傅く気になっただけはある! たとえ力及ばずとも、仲間を守るために命を張ろうとする姿はとてもよかったよ。私はね、自分が認めた相手には種族や強さ問わず敬意をはらう主義なんだ」

 

 カレラさんはそう言いながら、部長に肩を貸して立ち上がらせる。カレラさんは部長を結界の中に入れ、改めてカグチたちと向き合った。

 

「後は私達に任せ給え。……さてと、久し振りだね。カグチ」

 

「ああ」

 

 カグチとカレラさんは向かい合い、お互いの武器を構えている。どうやら二人は知り合いみたいだな。

 

「アイツは僕やカレラにとって因縁の敵なのさ。それにしても、あの“焔の王”がこんなところにいるなんて思わなかったね」

 

「焔の王?」

 

 ウルティマさん曰く、カグチは一国を治めていた国王であり、苛烈な戦闘を好む戦闘狂の多いイカれた国だったらしい。ウルティマさんも何度かカグチとは戦ったことがあり、カグチに受肉を邪魔された────なんてこともあったんだとか。

 

「僕も何度かちょっかいを受けたことがあってさぁ……まあ、カレラの支配領域と被ってたから、一番因縁があるのはカレラだろうね」

 

「なる程……」

 

 それでか。何だか二人共楽しそうにしてるのは。カグチもカレラさんも戦闘狂同士、気があったのかもしれないな。

 

「……奴らが原初というのならば、他の奴らは何者だ?」

 

「どいつもこいつも厄介な化け物さ」

 

 カグチは視線をそれぞれの強者に向け、自らの陣営や俺達の方にも説明するかのように言う。

 

「あそこにいるのはシルビア。元々は俺達の同胞であり、全てのエルフの祖となった“風精人(ハイエルフ)”。神祖様の高弟第三位にして“雷帝”と呼ばれた女さ」

 

「え、エルフの祖ぉ!?」

 

 ロスヴァイセさんが驚いたようにシルビアさんを見やっている。エルフは北欧の領域にいるらしいし、そんなエルフの祖の登場に驚いているのだろう。対するシルビアさんはVサインで返していた。

 

「アイツはティアマット。“天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)”。五大龍王最強の存在。かの創造神の妹……あらゆる異世界をも含めた全世界最強の赤き竜……“灼熱竜”ヴェルグリンドの弟子の一人さ」

 

「あら? 詳しいわね?」

 

「この世界でも屈指の強者。前々からお前には興味があったからな。……というか、後ろの奴らは帝国の連中だな。お前も基軸に行く手段を得ているってことか?」

 

 これには皆もビックリだろう。ティアマットさんの強さは知ってただろうが、彼女自身秘匿してただけはあり、ヴェルグリンドさん周りのことは知らなかっただろうからな。

 

「そして……あの女こそ、俺達が最優先で攻略すべき“八星魔王(オクタグラム)”が一人にして、我等が主たる神祖様の一人娘……“夜魔の女王(クイーンオブナイトメア)”ルミナス・バレンタインだ」

 

「……なるほど、奴が“八星魔王(オクタグラム)”……」

 

「……長ったらしい説明は終わったようじゃのう」

 

 ルミナスさんはそう言いながら、戦闘態勢に入る。というか、わざわざ待っててあげたのか? 

 

「ああ、というか、なんでお前がここにいるんだ?」

 

 それは俺も気になっていた。何でルミナスさんがこんなところにいるの!? ルミナスさんだけじゃない! カレラさんもウルティマさんもティアマットさんもジウ達も、どうしてこの地球にいるんだよ!? 

 

「ふん、それは……」

 

「そんな事はどうでもいい!!」

 

 ルミナスさんが何かを言おうとすると、それを遮るようにメロウが声を荒げる。その瞳はギラついており、視線だけで人を殺せそうな感じだ。

 

「貴様の愚に罰を与える時が来たのさ! 随分と長かったがな!」

 

 メロウは指揮棒を構え、ルミナスさんに向ける。それに対し、ルミナスさんは観察するようにメロウを見つめ、やがて“夜薔薇の刀(ナイトローズ)”を携え、居合のような構えを取る。

 

「何処からでもかかってくるがよい」

 

「……嘗めているつもりかルミナス? だが、いいだろう。貴様はここで私が殺す!」

 

 メロウは指揮棒を短剣のように突き立て、凄まじい速度で猛進する! だがルミナスさんはそれを容易く見切り……

 

「は?」

 

 メロウの胴を両断した! メロウは何が起きたのか把握できないまま、徐々に光が失われていく。メロウは何が起きたのかもわからずに、その生を失ったのだ。

 

「妾がここに来た理由……じゃったな」

 

 ルミナスさんは倒れ臥すメロウを一瞥し、美しくも獰猛な笑みでラーヌ達に切っ先を向け、告げる! 

 

「知れたことを。今ここで、あの神祖(腐れ外道)との因縁を断ち切りに来たまでじゃ! 覚悟するがいい!」

 

「そうかい、相変わらずで安心したよ!」

 

 その言葉を合図に景色が暗転し、廃鉱山から朽ちた建物が浮かぶ、不思議な空間へと舞台が変わる。原初勢が特殊なフィールドを創り出し、相手をそこに誘い込んだのだ! それを見たラーヌとカグチは笑みを深め、飛び込んでくる。ルミナスさんを筆頭とした皆も笑みを浮かべ、それぞれの武器を構えて迎え撃った! 

 

 

 

 

 

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 三人称side

 

 

 

 

「さてと、やるか……」

 

「ふん、人間風情が生意気な! やれ、ミドガルズオルム」

 

 帝国のカリギュリオ、ミニッツ、バーニィは正直何故自分がここにいるのかわからないでいた。というのも、彼らは魔国との会談及び、客人であるティアマットの護衛の為にテンペストを訪れていた。仕事も終わり、寛いでいたところに血相を変えたジウがいきなり現れ、間髪を容れずにこちらの世界に連れてこられたのだ。一応、ジウの想い人(本人は隠しているつもりだが……)のイッセーがピンチに陥っているという事くらいは道中把握したが、実際わかってるのはそれくらいである。

 そんな帝国の四人はロキ率いる大量のミドガルズオルム及び、子フェンリルを自らの対戦相手として選択した。彼らはこの場に集った強者の中では一歩も二歩も劣っているという自覚があり、自らにできることとして異世界の魔獣を相手にすることを選択したのだ。

 

「……ロキ……北欧の神……か。まさか、神話の神様なんてのが本当にいたとは驚きだね」

 

 バーニィはロキを見ながら呆れたように呟く。

 彼はアメリカ出身の異世界人であり、この地球ではとある大学の学生として様々なことを学んでいた。その中には地球の神話についての知識もあったため、北欧神話や聖書の神々といった存在が本当に存在していたことに少し驚いていたのだ。

 まあ、彼自身異世界転移に基軸世界で神に等しい存在と多く遭遇してきたため、今更だとも思っているのだが。

 

「さあ、行くわよ!」

 

「フッ、いつになく気合が入ってるねジウ殿」

 

「それは当然でしょう。何しろ愛しのイッセー君が……」

 

 ────シュン! 

 

 空が斬り裂かれる音が辺りに響く。見ると、ジウは手に“伝説級“の剣を携えバーニィの首に当てていた。

 

「消すぞ?」

 

「は、ハイ。申し訳ありません」

 

 こんな時にまでしなくても……そう考えるバーニィ。なんやかんやで何度もこんなやり取りをしてる分、懲りない男である。それを見たミニッツとカリギュリオは苦笑をしながら眼の前の敵を見据える。

 

「さてと、茶番はそこまで。異界の神に我等帝国軍人の意地と誇りを見せつけようではないか!」

 

 カリギュリオの鼓舞に対し、ジウ達は戦意を持って答える。量産型のミドガルズオルムは一体一体が準魔王級の力を持っている。だが、帝国最上位に位置する四人にとってはまるで脅威には感じなかった。

 

「ワシャワシャと出てくるね。龍というよりは虫みたいだ。全く、虫はすっかりトラウマだというのに────ねっ!」

 

 べゴンッ! 

 

 ミニッツがミドガルズオルムに向けて腕を振るう。すると、ミドガルズオルムはまるでプレス機にでもかけられたかのように大地にめり込んでいく。

 

 ────グシャ! 

 

 それでも終わらない圧力に掛けられた量産型のミドガルズオルムは耐えることすらできず、そのままペッシャンコになってしまった。これにはロキも、結界内のリアス達も目を丸くする。これはミニッツのユニークスキル“圧制者(オゴルモノ)”の権能、引力操作である。ミニッツは引力干渉波を放つことで、量産型ミドガルズオルムを圧殺したのだ。

 

「流石はミニッツだ。俺も負けてられないな!」

 

 眼帯の男、カリギュリオは剣にエネルギーを高め、圧縮する。カリギュリオは元来、聖人に覚醒した存在であり、その力は失われたものの、膨大なエネルギーを込める器は残っているのだ。器にエネルギーを常時溜め込み、開放することで、カリギュリオは“疑似聖人”とでも言うべき存在に昇華される。

 

「喰らうがいい! “破軍・激震烈衝”!」

 

 カリギュリオが選択するのは帝国の英雄“軍神グラニート”の奥義である剣撃。この技はヴェルグリンドに多少の指導はしてもらったもののほぼ自力で辿り着いた帝国剣術の極致とも言うべき技である。

 

 ドゴォォォォォンッ! 

 

 その凄まじいまでの破壊の一撃は正しく“軍隊”すらも一撃のもとに破壊しきるエネルギーを秘めていた。そのエネルギーの奔流に飲み込まれた残りの量産型ミドガルズオルムは抵抗すらできず、この場から消滅するのだった。

 

 ガルルルルゥゥゥッ!! 

 

「むぅ!?」

 

 大技を放った一瞬の隙を見逃さず、子フェンリルが牙を剥く。子供であり、戦闘経験こそ未熟だが、獣ゆえの直感から最適な選択を選んだのだ。だが……

 

「おっと危ない!」

 

 バキィッ! 

 

 ギャウッ!? 

 

 寸での所でバーニィが子フェンリルの頭を槍で弾く。バーニィはマサユキの護衛として力を磨く過程でカリギュリオとは違い、完全に“聖人”としての力を取り戻しており、素で“超級覚醒者(ミリオンクラス)”の力を持つ実力者なのだ。故に、龍に混じった子フェンリルこそ魔獣の中で最も警戒すべき存在であると即座に見抜き、常に動きを警戒していたのだ。

 彼の持つユニークスキル“代行者(リプレスメント)”は自らより格下の存在に対する優位性があるのだが、自らより存在値で上回っている子フェンリル相手には効果が薄い。だが、まるっきり効果がないわけではなく、その力を用いれば、戦闘経験の低い子フェンリルを抑え込むことは容易かった。

 

「ランガ殿に比べれば大した事ない……というか、普通の犬程度にしか見えないね……“代行者の刺突(オルタナティブストライク)”!」

 

 ビュカッ! 

 

 バーニィは“伝説級”の槍に“代行者”の権能を集中させ、一気に開放する。槍は光となり、そのまま子フェンリルの脳天を貫いた。子フェンリルは何が起きたのかも理解することなく、そのまま意識を闇に落とした。

 

 ガルルルァァッ!! 

 

「おっと、そういえばもう一匹いたんだね」

 

 自らが仕留めた子フェンリルの背後より、もう一頭の子フェンリルが鋭い爪を自らに向けて放とうとしていた。子供とはいえ、フェンリルの爪は“神話級”に届く可能性がある凄まじい武器であり、貫かれれば“聖人”といえど、生命の保証はないだろう。だが、バーニィはまるで慌てていない。何故なら、この場に自分を引っ張ってきた張本人の姿が消えていることに気付いていたからだ。

 

 ガァ…………ッ!? 

 

「悪いわね。私、暗殺が得意なの」

 

 密かに子フェンリルの()()()()()()()ジウの凶刃が子フェンリルの頸を斬り裂いた。彼女のユニークスキル“代行者(リプレスメント)”は気配や姿を隠蔽することに特化したスキルであり、その力を持って密かに動向を伺っていたのだ。最も、リーチ故に両断することは叶わなかったが、傷をつければそれでいい。斬り裂かれた子フェンリルは頸だけでなく、目や鼻から血液を垂れ流す。彼女の刃には猛毒が塗ってあり、弱った子フェンリルを蝕むには十分な力を持っていたのだ。

 

「眠りなさい“代行者の凶刃(オルタナティブスラッシュ)”!」

 

 ザシュッ!! 

 

 ジウは自らの権能の全てを込めた一撃を叩き込み、子フェンリルを絶命させる。それを見たロキは歯軋りをしながら帝国の四人を睨みつける。ロキは自らの手で四人を始末することを決め、武器を構える。

 もし、ロキが四人と戦えば、帝国の四人は善戦こそすれど、敗北は免れないだろう。通常のロキであれば、帝国勢には敵わないだろうが、“フェンリルUL”の鎧を纏ったロキは存在値400万を超えており、究極能力を持たないと彼等ではその存在値の差から敗北していたであろう。故にロキは余裕を持ち、眼前の敵をどう始末しようか思考を巡らせていた。

 だが、ロキの思惑はかなわない。

 

「流石は帝国。敵だった時は厄介だったけど、味方になると凄く頼もしいわねぇ」

 

「なっ!?」

 

 ────ドゴォォン!! 

 

 突如としてすぐ眼前にまで迫っていたシルビアの手により、ロキは吹き飛ばされる! シルビアは今や数少ない昔の友を傷つけていたロキに少し怒りを抱いていたのだ。

 

「ガハッ! 何だいまのは……この我が見えなかった……だと?」

 

 ロキは怪訝にしながらもシルビアを見詰める。シルビアは右手に本来の自らの武器である“金剛杵(ヴァジュラ)”、左手には()()()()()()()が握られていた。

 

(あれは、ミョルニルのレプリカではないか!?)

 

 ミョルニルは雷を放つ大槌であり、シルビアもまた雷を操る天候系最上位の究極能力“雷霆之王(インドラ)”の所持者である。そんな彼女だからこそ、ミョルニルのレプリカを見て不思議な縁を感じ、手に取ってみたのだ。

 

「いいわね、この武器。手に馴染むわぁ」

 

 シルビアはミョルニルと金剛杵に雷を纏わせ、笑みを浮かべる。ロキにとって恐怖となる時間はまだまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

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 ガギィィィン! ドォンっ! バジュッ! 

 

 辺り一帯に凄まじいまでの轟音が響く! カレラの黄金の刀とカグチの持つ紅い槍が交差する度に衝撃が響いていた。

 

「“炎螺旋激槍(スパイラルフレア)”!」

 

 一瞬の隙をつき、カグチの炎槍がカレラに向かって突き進む。だが、カレラはそれをたやすく回避し、逆に黄金刀をカグチに向ける。

 

「甘いな。“朧・流水斬”!」

 

「うおっ!?」

 

 紫電を纏うカレラの一閃はミッテルトの流水斬を遥かに凌ぐ破壊力を持っており、その剣圧でカグチの背後の朽ちた残骸が真っ二つに両断される。

 それを見たカグチは苦笑しながらカレラと再び槍を放った。

 

「わかってはいたが……凄え剣技だな。大魔法や核撃魔法をぶっ放すだけだった数万年前とは大違いだ!」

 

「私も成長するということさ! そういうカグチも、以前よりも槍さばきが向上してるじゃないか!」

 

 ガギィィンッ!! 

 

 槍と刀が交差し、辺り一帯の浮かぶ残骸が砕け散る。その衝撃だけで、力のない存在は跡形もなく消滅するだろう。しかし、朽ちていく周囲の光景などお構いなしに、カレラとカグチは何度も何度も互いの武器をふるった。

 

「アハハッ! 楽しいな、カグチ!」

 

「ああ! 俺もだよ! お前との戦いは数万年ぶりだからなっ!」

 

 ドゴォォン! 

 

 カグチはカレラと刃を交え、冷や汗をかきながら言う。カレラとの戦いは楽しいが、現状負けるのは自分だとカグチは考えている。それは、槍から伝う衝撃と、自らの身体の気だるさが物語っていた。

 ラーヌは蟲魔王ゼラヌスと蟲皇妃ピリオドが産み出した古き“蟲魔神”であり、その正体は蟲皇子ゼスの双子の姉なのだ。ゼスがゼラヌスの因子を強く引き継いでいたのと同じように、ラーヌはピリオドの因子を強く引き継いでいた。だが、ラーヌの“生命再構築(リストライフ)”はピリオドのように完璧なものでなく、溜め込んでいるエネルギーの少ない現状では傷の治癒と多少の回復程度しか見込めなかった。メロウが一撃のもとに倒されたのも、実は本来のエネルギーの三分の一も回復していなかったのが原因である。

 カグチはそれを正確に把握していた。今の自分の魔素量は全開時の半分にも満たない。技量(レベル)が互角だからこそ戦闘が成り立っているが、カレラはまだ黄金銃も究極能力も使用していない。カレラがその気になれば、勝負は一瞬で終わってしまうだろう。

 

(正直、兵藤一誠との戦いに満足したんだが、消耗したところを別のやつに殺されるのはまた違うしな……)

 

 イッセーとの戦いに敗れ、死ぬことはカグチにとって当然のことであるため、今、この瞬間にもイッセーにとどめを刺されるのなら問題はない。だが、横から来たカレラに殺されるのは本人としては許容しかねることなのだ。

 死ぬのなら、戦いの中であり、生殺与奪の権限は勝者にのみ与えられるというのがカグチの考えなのである。

 悪魔であるカレラはそんなカグチの複雑な心境を察しており、現状のカグチと対等に戦うため、敢えて刀のみを使用している。それでも、カレラの剣術は魔国の中でも三指に入るほどのものであり、消耗したカグチではとてもではないが捌き切れるものではない。

 だから、カグチは戦闘以外で集中を削ぐことを試みる。

 

「それにしても、お前の部下……強くはなってるようだが、蟲将相手はキツイんじゃないか?」

 

 カグチは正々堂々の勝負を好むが、それは好むだけ。現状勝ちが厳しいと見れば、精神的な攻撃も容赦なく行えるのだ。故に、不満には思っていても、メロウの策に協力したのだが、カレラには通じない。

 

「問題ないね! エスプリもアゲーラも自慢の部下だからね! ミッテルトもいるし、あんな生まれたての蟲如きに遅れは取らないさ!」

 

「チッ、気付いていたのかよ……」

 

 カグチは効果がないと判断し、カレラに槍の切っ先を向け、放つ。カレラはそれを容易くいなし、逆にカグチを斬りつけようとする。二人はまるで演舞のように刀を、槍をぶつけ合い、互いに隙を伺っていた。

 

 

 

 

 

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 二つの水がぶつかり合う。ティアマットはツファーメを相手に興じていた。ツファーメは自らの肉体を龍に転じるという力を持っており、その力を応用し、自らを“竜人化”させることで出力を上げ、ティアマットに肉薄していた。

 

「凄い水ね。下手したら私を上回りかねないほどに……貴女、こんなに強かったかしら?」

 

「かの五大龍王最強に褒められて光栄だわ。水を操る龍同士、遊びましょうか」

 

 ツファーメはかつて、傲慢なる王だった。魔王レヴィアタンの実子として教育され、自ら以外の存在など有象無象としか考えていなかった。

 しかし、その考えは数千年ほど前に打ち砕かれた。彼女は悪魔同士の内戦の際、アジュカと相対し、自身の全てを粉々に打ち砕かれたのだ。どれほどの攻撃を放っても、自らを龍化し出力を上げても、アジュカはそれらを全て読み解き、いとも容易く自らを打ち破った。その後、彼女はメロウに拾われ、命を救われた。それでも当初はアジュカに対する復讐に燃えていたが、程なくして彼女はアジュカや父たる魔王すらも上回る圧倒的強者────神祖と相対した。異次元の存在を前にツファーメはようやく自らの分を悟り、更に上を目指すようになったのだ。そういう経緯もあってか、彼女は“復讐者”とされているが、実のところもはやそこまで現魔王を恨んでいるわけではないのだ。魔王の座を奪われたかつては凄まじいまでの憎悪と嫉妬を覚えたものだが、今では寧ろ、高みに行く機会をくれたことを感謝してるくらいだ。もっとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()はまた別の話だが……。

 そんなツファーメは“真なる魔王”に自ら覚醒するために他の世界の侵攻を開始した。その世界は争いの絶えない戦乱の世界で、地球と同じく海に覆われていた惑星は自らの力を最大限にまで発揮するのに都合よく、苦戦もあったが数十年の時をかけて彼女は世界そのものの制圧を完了させた。その際、彼女はユニークスキルを取得、それをさらに練り上げることにより、ついに究極能力“海蛇之王(リヴァイアサン)”の獲得に成功したのだ。この権能は大気中にある水分、もしくは魔素から水を生成できるという権能があり、その力を使えばほぼ無限に水を生み出すことができるのである。

 この権能は彼女が生まれつき持つレヴィアタンの特性“掉尾の海蛇龍”と相性がよく、この力を用いることで神祖の高弟達と比べても遜色のない戦力を得ていた。

 そんなツファーメだが、ティアマットを相手に攻めあぐねていた。強いとは思っていたが、ティアマットの技量は彼女の想像の遥か上をいっていたのだ。

 

「ふむ、いくらなんでも水を操る練度が可笑しいと思っていたケド……もしかして貴女も究極能力を持ってるのかしら?」

 

「……も、ということは貴女も究極能力保持者……というわけね……」

 

 ティアマットは元来、覚醒魔王に匹敵するか、それを上回るほどの力を持っていた。ヴェルグリンドに直弟子と認められるほどなのだから、ある意味では当然とも言えよう。

 しかし、彼女は自らの強大な力を封じ込めていた。理由は簡単、修行にならないからだ。彼女と互角に戦える存在は同じくヴェルグリンドの直弟子として切磋琢磨した“ルネアス”と、ヴェルグリンド相手に無謀にも立ち向かっていく過程で強くなっていた“クロウ・クルワッハ”くらいだろう。それ以外だと、他神話の神や“二天龍”なども該当するが、それでも自らが本気で戦えば問題にならないと彼女は考えていた。だからこそ、彼女は自らの力を秘宝に封じ、力を制限していたのだ。そうしなければ、戦いが成立する存在が少なすぎたからこそ……。

 しかし、近年になって盟友となったアジュカやサーゼクスといった、本気の自分にすら匹敵するかもしれない存在が次々誕生し、師の弟の弟子・イッセーとの戦いが決定打となり、彼女は自らの力を取り戻す時が来たのではないかと考えるようになった。

 故に、ドライグのせい(とある事情)で行方不明となっていた“力の秘宝”を回収し、自らの制限を解き放とうとしたのだ。

 魔国の密偵“藍闇衆(クラヤミ)”の情報収集、隠密能力はティアマット自身、心底驚くほど凄まじく、彼等はこの世界で数ヶ月の時をかけ、ティアマットの秘宝をすべて回収した。結果、彼女は真の力を取り戻すと同時に究極の力にも目覚めることができたのだ

 究極能力“焔海之王(ティアマット)”。自らと同じ名を持つこの権能は、水属性の炎という矛盾したものを生み出すことができ、性能こそ劣るものの、ベニマルの“陽炎之王(アマテラス)”とゼギオンの“幻想之王(メフィスト)”を合わせたような力を持つ権能である。

 そんな彼女もまたツファーメの実力には驚いていた。内戦以前にかつて一度だけ見たことがあったのだが、その時とは完全に別人である。

 少なくとも、水の支配力ではツファーメが上手。技量や存在値ではティアマットが上回っているため、時間をかければティアマットが勝利するだろう。それでも、油断をすれば敗北するとティアマットは感じており、久しくなかった真に命を懸けた戦いの感覚に酔いしれる。ティアマットもティアマットで戦いは大好きなのだ。

 

「いいわよツファーメ。もっと楽しみましょうか!」

 

「いいでしょう! 極みに至ったレヴィアタンの真の力を見せてあげましょう!」

 

 互いに“神話級”の武器を取り出し、二人の戦いは更に激化する。

 二頭の強大な力を持つ龍の対決は暫し続くのだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「僕の相手は……君がしてくれるかな?」

 

「舐められたものだ。原初の悪魔だかなんだかしらんが、ナマモノごときが私と戦おうナド……」

 

 可愛らしく首を傾げるウルティマは、そのまま“金王”ディオ・ガーチュと戦闘を始める。先手必勝。ディオ・ガーチュはそのケーブルでウルティマを絡め取り、蹂躙しようと考え、即座に行動に移した。

 ディオ・ガーチュのケーブルは強度で言えば“伝説級”最上位に匹敵しており、雷を纏わせることで下手な神話級とも渡り合うほどの力を持っている……しかし……。

 

「それっ!」

 

 ドゴォォン! 

 

 ウルティマの鋭い手刀が空を切り裂き、ディオ・ガーチュのケーブルを両断する。それに驚いた素振りを見せるも、ディオ・ガーチュは慌てることなく空に舞ったケーブルを繋ぎ止め、即座に再生。ウルティマ目掛けて破滅的な威力を誇る光線を放射する。だが、ウルティマはそれすらもいとも容易く回避してしまった。

 ディオ・ガーチュは機械生命が支配する異世界の“邪神”メルヴァゾアに仕える“羅睺七曜”の第六位であり、その力は地球神話の主神級と同等か、それを上回るほどのものである。そんな彼を持ってしても、ウルティマの動きはまるで捉えられないでいた。高感度のセンサーとケーブルから発する電気からなるレーダー、この二つを駆使した感知能力は凄まじく、魔力感知はおろか、万能感知にも匹敵するほどのものである。それらを持ってしても、この結果は彼にとっては想定外だった。

 

「ならば」

 

 彼は自らの頭部から背部にまで及ぶケーブルを最大限に伸ばし、捕獲網のように配置することでウルティマの動きに対応しようとする。それを見たウルティマはその鋭い紫爪で斬り裂こうとするが、先程までとは違い、千切れずに終わっている。

 

(……なるほど、機械生命体ってだけはあるね。どうやら、僕のさっきの攻撃を学習したみたいだね。見た感じ、あのケーブルを編み込むことで、先程以上の硬度を得た……といった感じかな?)

 

 面白いな。ウルティマはそう考える。ここ最近、真に命を懸けた戦いなど久しくなかった。だからこそ、ウルティマは現状を楽しんでいた。

 

「こんな感じかな?」

 

「なっ!?」

 

 ウルティマは自らの翼から鞭状のオーラを創り出し、ディオ・ガーチュのケーブルを絡め取った! ただの鞭ではなく、その見た目からは考えられないほどの質量の魔力の紐が編み込まれている。その強度はディオ・ガーチュのケーブルのそれを遥かに上回っていた! 

 

「ふん、それは悪手だな! 我が電撃で朽ち果てるがいい!」

 

 ディオ・ガーチュはケーブルから発する高圧電流をウルティマのオーラに直接流し込む! だが、ウルティマはそこまでのダメージがない。それも当然だろう。ウルティマは高い自然影響の耐性があり、魔力も込められていないただの電気など、何億Vだろうが効果が薄いのだ。

 

「ねえ、それだけなの?」

 

 ギュンッ! ドゴォォン! 

 

「ぐはっ!?」

 

 ウルティマは鞭状のオーラを巻き上げ、一気にディオ・ガーチュに接近し、そのままその鋭い拳を叩き込んだ! ちなみにそれを見たイッセーが“立体機○装置”かよ!? と思ってしまったのは余談である。

 その重い一撃を喰らったディオ・ガーチュは機械でありながら感じる“痛み”に悶絶する。

 

(な、何だこれは!? い、痛み!? この私が、ナマモノの如き痛みを感じているのか!?)

 

 ディオ・ガーチュは知る由もないが、ウルティマは殴る際に痛みを情報としてディオ・ガーチュに直接送り込んでいたのだ。この攻撃は痛覚無効を持っていようが意味はなく、たとえ機械であろうと魂を持つ生命体であれば、あらゆる存在に効果ある一撃となる。もちろん、防ごうと思えば防げる。ウルティマが送り込む情報を上回る力で抑え込めばいいのだ。少なくとも、ディオ・ガーチュのエネルギーはウルティマと比べても遜色のないものであり、それを知っていれば抑え込めただろう。だが、ウルティマは悶絶するディオ・ガーチュに対し、更に一撃二撃と拳の弾幕を叩きつけた! 

 

 グシャ! ドゴンッ! メキッ! ボギィッ! 

 

 機械部分がウルティマの拳を喰らうたびに鈍い音を響かせながら砕けていく。ウルティマは魔国でも指折りの拳法家であり、純粋な拳法だけでもイッセーとも切磋琢磨するほどの力を持つ。だが、ウルティマの本質はそこではなく、脅威となるのはその多彩さだ。ウルティマは自らの六対十二枚の翼を変形させ、拳や鈍器、剣のようにすることで、イッセーですら対応できないほどの怒涛の攻撃を叩き込むことができるのだ! ────そして、彼女の何よりも恐ろしい権能は……

 

「……どうやら、僕はハズレを引いたみたいだね。異世界の神と聞いたからどんなものかと思ってみれば、ガッカリだよ」

 

 ウルティマは心底ガッカリしたという表情でディオ・ガーチュを見つめる。彼女が対戦相手としてディオ・ガーチュを選択したのは異なる世界の神、それも機械の肉体を持つ異質の存在であるという点に興味を持っていたからなのだ。しかし、蓋を開けてみればこの様である。これならば、普通に強そうな方を選択すればよかったと後悔していた。こうなればもう作業である。だが、ディオ・ガーチュは自らが神であり、負けるはずのないというプライドから、最もしてはいけない選択をしてしまう。

 

「ふ、巫山戯るな! ナマモノごときが! コレならばどうだ! “電子粒子砲(ボルテージブレイク)”」

 

 ディオ・ガーチュは自ら最大火力の攻撃を、皆が避難した結界の方へと放つ! それを見たウルティマは数億倍の思考加速で思考する。

 

(あの人達はリムル様も気に入って入るんだよね。目の前で死なれちゃ困るんだけど……まあ、この程度なら問題ないか)

 

 ウルティマは構わずに攻撃の下準備をする。彼女が選択をした理由として、レインと黒歌の存在が挙げられる。原初たるレインは言わずもがな、黒歌もウルティマが認めるほどの強者であり、あの程度の攻撃は簡単に防ぐだろう。恐らく、庇うなりのリアクションを期待していたであろうディオ・ガーチュは目を見開きながらも、その一撃を結界へと叩き込む! 

 

 バシュゥゥゥゥゥゥッ!! 

 

 だが、ウルティマが予測したとおり、その一撃は二人の結界に容易く阻まれてしまう。それを見たディオ・ガーチュは目に見えて狼狽え、現実を否定しようとする。

 

「ば、馬鹿な! ありえん! ナマモノごときがいまのを防ぐだと!?」

 

「……いや、この程度の攻撃ならば別に私一人でも防げる程度ですよ」

 

「正直、私も一人で行けると思うにゃん。この結界を破りたいなら、もう少し威力高めて出直してきな?」

 

 ディオ・ガーチュが歯軋りしながら周囲を見渡すと、そこは濃い紫の霧で覆われていた。ウルティマがいないことに気付くも手遅れである。ウルティマは遥か上空にて、ディオ・ガーチュを仕留めるべく一撃の準備を進めていたのだ。

 

「随分とダサい手を打つね。とことん君は僕を失望させてくれる……もういいや、君は苦しませて殺してあげる────死んじゃえよ。“死叫絶毒爆(ポイゾネート・ノヴァ)”!」

 

 ウルティマは自ら生成した濃い“毒霧”を濃縮し、一条の光線として放つ! ウルティマが生み出した霧の正体は彼女の究極能力“死毒之王(サマエル)”の権能で生み出した“死毒”である。“死毒之王”はあらゆる生命体の弱点を見抜き、それに適した状態変化を生じさせる「毒」を生成する能力……言い換えるならば、相手がどのような存在であろうと効果のある毒を生み出す権能であり、機械生命体とて例外ではない。

 

「ぐっ、ぐああああああああっっ!?」

 

「どう? 僕の毒の味は? そのまま永遠に続く責め苦を受けながら、後悔するといいよ」

 

 ウルティマは普段はなりを潜めているが、その本質は残虐。嗜虐的な笑みを浮かべながら、彼女は嘲る。それを見たディオ・ガーチュはこの時になって始めて目の前の存在と自分の格の違いに気づくのだった。

 

「ぎ、ギザマ……ハ何……者なの……ダ?」

 

 それがディオ・ガーチュの最期の言葉となった。それに対し、ウルティマはディオ・ガーチュの魂を回収しながら彼に告げる。

 

「僕はウルティマ。聖魔十二守護王の一柱、“残虐王(ペインロード)”のウルティマだよ。ま、もう聞こえてないんだろうけどね」

 

 ウルティマはリムルから貰った名を名乗るのが大好きなのだ。その名はディオ・ガーチュの魂に深く刻まれるのだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

「す、凄い……」

 

「まじかよ……。何だあの強さ……」

 

 結界内にて避難している皆は信じられないものを見たようにウルティマさんを眺めている。まあ、普通はそうか。俺からすれば、当然の結果にしか見えないんだけど……。あのディオ・ガーチュとかいうやつもエネルギーだけならウルティマさんにも匹敵する感じだったが、それにしてはアザゼル先生やセラフォルーさんの攻撃に一杯食わされたりしてたし、あまり戦闘はしてこなかったのかもしれないな。権能もどちらかというと、探知特化といった感じだったし、戦闘経験はそこまででもなかったのだろう……。

 

「あのエルフの祖だという方も凄まじいですね……。ロキ様を相手に完全に圧倒してる……」

 

「シルビアは昔から儂より強かったからのぅ。当然じゃろ」

 

 ロスヴァイセさんはロキさんと戦っているシルビアさんに目が行っているようだ。シルビアさんは俺と違い、ミョルニルに所有者として完全に認められてるらしく、その性能の全てを完璧に引き出していた。存在値ではロキのほうが二倍近くあるけど、究極能力も持ってないみたいだし、シルビアさんの敵ではないだろう。

 

「……私としては、あの者達に興味がありますかね。私よりも遥かに強い人間の強者がまだいたとは……」

 

 アーサーは帝国勢に興味があるようだな。アーサーも“仙人級”に匹敵する力を持った人間だ。同じ人間の強者である帝国勢にこそ惹かれるものがあるのかもしれない。

 

 ドゴォォン!

 

 俺のすぐ近くで轟音が響く。

 

「キシシシシ! お前、コノ程度!」

 

「ああ、もう! 本当蟲って面倒臭い!」

 

 俺は声のする方に目をやる。そこにいるのはエスプリとアゲーラさんの二人が新たなる蟲将であるマンティディーチと戦っている。技術の上ではアゲーラさんが勝っているが、その硬度と魔法耐性の高さから攻めあぐねているようだ。

 

「はぁ!」

 

 ガギィィィンッ!! 

 

「ギシィ!?」

 

 マンティディーチの鎌による凶刃が突如として何者かに弾かれる! 弾いたのはミッテルトだ! ミッテルトはマンティディーチの鎌の軌道を上手く見切り、側面を叩くことで斬撃を弾いたのだ! 

 

「ふん、流石ミッテルトね。私も負けてられないわね!」

 

 それに触発されたエスプリも魔力を帯びた“魔法剣”を用いてマンティディーチを斬り裂く! だが、エスプリ級の魔力を持ってしても、傷が付くだけで内部までは届いていない様子だ。

 

「俺も……」

 

「イッセー殿はまだ戦える状態ではないでしょう。暫し、そこで見ててくだされ」

 

 相性が悪いと判断した俺は飛び出そうとするが、それをアゲーラさんに制止される。アゲーラさんは余裕そうな笑みを浮かべ、俺を諭す。

 

「イッセー殿。ミッテルト嬢はお主にとって恋仲のハズ。そんなに頼りない存在ですかな? 信用できない存在ですかな?」

 

 アゲーラさんの言葉に俺はハッとする。そうだよ! ミッテルトを信じてるって言ったのは俺じゃねえか! そんな俺が、ミッテルトを信用しないでどうするんだって話だよ! 俺は暫し悩むが、覚悟を決め、ミッテルトを見据えた。

 

「……わかりました。ミッテルトのこと、任せますよ」

 

「承知!」

 

 そう言うと、アゲーラさんは再び戦線に経ち、ミッテルトやエスプリと共にマンティディーチに挑む。俺はミッテルトの勝利を信じ、それを見守るのだった。

 

 

 

 

(……仕方ないんだけど、私の名前が会話に出てこないのもひどくない? 私も頑張ってるんですけど?)

 

 




ディオ・ガーチュ
EP 362万1968
種族 機械生命体(エヴィーズ)=上位聖魔霊
称号 羅睺七曜・金王(ゴルト・プライム・クルアーン)
魔法 電気操作
スキル なし
 基軸世界とも地球とも異なる異世界“E×E(エヴィー・エトゥルデ)”の存在。邪神メルヴァゾアに仕える“眷属(プライム)”であり、第6位に位置する。地球の主神級と同等以上の力を持っており、電気を纏うケーブルを操る。ケーブルから発せられる微弱な電波で敵の挙動を正確に感知することができ、電気の最大威力は数億Vの電圧を誇る。
 主であるメルヴァゾアが神祖と手を組んでいることから、神祖の配下とともに襲来。有機生命体を下に見ており、内心では神祖やその高弟達も蔑んでいた。
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