帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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覚醒と結末です

 ミッテルトside

 

 

 

 

 

 他の助っ人の方々が優位に戦いを進めている中、うち達は苦戦を強いられていた。

 

「キシシシシ! コノ、程度、カ!」

 

「うっさい、調子に乗るな!」

 

 エスプリが核撃魔法“熱収束砲(ニュークリアカノン)”を放つ。だけど、眼の前の蟲……マンティディーチはビクともせずに逆にうちらを鎌で斬りつけようとしてきた。

 

「流石に手強いっすね」

 

 イッセーみたいに相手の存在値を測ることはできないっすけど、それでもコイツはガビル様と同じくらいのエネルギーを感じるうえ、構成は戦闘特化みたいっすからね。でも、戦闘経験はないみたいで、先程から隙が多く見受けられる。

 まあ、その隙をついてもこちらの攻撃じゃ傷一つつけられないんスけどね……。

 

(でも、なんなんすかね……さっきから、むしろ、調子がいいんすよね……)

 

 ガギギィィンッ! 

 

 うちは“堕天刀(フォールン)”でマンティディーチの鎌をはたき落とす。マンティディーチの鎌は“伝説級最上位”……下手すれば“神話級”にも届く勢いっすけど、刃ではなく、側面を叩けばうちらの力なら問題なく弾けそうっすね。

 

「朧・流水斬!」

 

「朧・紫電突!」

 

 ガギギィィンッ!! 

 

 うちの流水斬とエスプリの紫電突が鎌攻撃ごとマンティディーチを弾く。マンティディーチは数メートルほど吹き飛びながらもうっとおしそうにうちらを見つめていた。

 

「……とはいえ、このままじゃジリ貧っすかね?」

 

 うちの“崩魔霊子斬(メルトスラッシュ)”や“崩魔・梅花ー五華突”を喰らわせれば、まあ殺せるんでしょうけど、うちの“霊子崩壊(ディスインテグレーション)”ではフル詠唱しないと発動できないっすからね。この激戦だと中々そんな暇がない。折角エスプリとアゲーラ先生がいるのに上手く行かないものっすね……。

 

「キシシシシ! オマエたち、俺二、勝テナイ!」

 

 さっきからイラッとくる喋り方っすね……エスプリなんか我慢強いほうじゃないんすから、今にも爆発するっすよ。

 

「そうイライラしなさるな。そうして冷静さを欠いてしまっては勝てる戦も勝てなくなってしまいますぞ」

 

 そう言いながらアゲーラ先生は凄まじいなんて言葉では表せないほどの領域の剣戟を雨のようにマンティディーチに浴びせる。流石に先生の斬撃はマンティディーチも堪えたらしく、敵意を込めた視線で師匠を睨んでいる。

 

「……とはいえ、流石に硬すぎるか……見たところ、カマキリとダンゴムシの“蟲魔人(インセクター)”……防御力と攻撃力には自身があるのじゃろう」

 

 相対的に速度ならば自分たちが遥かに上。やつの鎌攻撃は何度も放たれてるっすけど、こちら側の被弾がゼロなのもそらを証明していると言えよう。

 

「キシシシシ! 俺、新生十二蟲将ノ中デ、一番遅クニ生マレタ! デ、デモ、前の十一位ノ奴倒シテ、入れ替ワッタ! ツ、次モソウスル、ヨ、予定!」

 

 なるほど……それがコイツの戦闘経験低そうな理由っすか……。文字通りコイツは生まれたてなんでしょうね。でも、戦闘特化型として生まれたからこそ、即戦力として扱われている。

 他の蟲将の戦力は知らないっすけど、もしかしたら強さ的にはもっと上の順位でもおかしくないのかもしれない。

 

「さてと、どうすべきか……」

 

「全く……本当蟲って面倒臭いわね」

 

 エスプリはイライラしつつも冷静に魔法剣を駆使し、相手をいなしている。この状況が続けば他の人達の援護とかも期待できそうっすケド……。

 

(ただでさえ、アゲーラ先生とエスプリがきてくれただけでもありがたいのに、流石に他の人に頼りすぎるのもアレっすよね。なら、この場の戦力でどうにか倒すしかないっすね)

 

 そもそもエスプリは何気にプライドが高いし、ここで他者が介入してちゃちゃっとやっつけちゃう……なんて展開はきっと好きじゃないでしょうしね。

 つまり、このマンティディーチはうちら三人で倒さなければならない。

 そこでうちは以前“黒豹牙”フォビオさんに聞いた話を思い出す。

 フォビオさんはエスプリとともに蟲皇妃であるピリオドと戦って生き延びた時の話を自慢気にしていた。その時、フォビオさんとエスプリが生き延びるためにとある秘術を行ったことが生き残れる要因となったとも言ってたっすね。

 

「……ねえ、エスプリ!」

 

「ん? なに?」

 

 うちはエスプリに自らが思いついた策を話すことにした。ちなみに話してる間にも攻撃は続いているが、うちらはそれをいなしている。

 

「フォビオさんとやったっていう“契約”? でしたっけ? それを今、うちらでやれば結構勝率って上がんないっすか?」

 

「え!? それは……確かに多少は上がるかもだけど、それでも焼け石に水じゃない?」

 

 うちとエスプリの存在値を合算すると百万とちょっと。イッセーじゃないっすから、コイツの正確な存在値とかはわからないっすけど、少なく見積もって二百万強といったところっすかね? 確かに、うちとエスプリだけなら焼け石に水。……二人だけなら。

 

「確かにそうっすね。でも、そこにアゲーラ先生のちからが加わればどうっすかね?」

 

 それを聞いてエスプリは考え込む素振りを見せる。暫くするとエスプリはニヤリと笑う。

 

「……うん、行けそうね! 流石ミッテルト!」

 

「じゃあ、お願いするっすよ」

 

「OK。じゃあ、私と“契約”するわよ。願いは────」

 

「コイツをぶっ倒す力っす!」

 

 うちの言葉を聞き入れると、エスプリは“悪魔契約”を発動させる。エスプリは肉体を脱ぎ捨て、精神生命体本来の姿となり、うちの“魂”と同調する。

 悪魔の持つ固有のエクストラスキル“憑依”。本来なら契約を行った相手の肉体を乗っ取るためのスキルらしいっすけど、今回はうちと同化させることで二人の力を文字通り合わせること。

 

「イッセー! 受け取るっす!」

 

『リムル様に頂いた大事な身体なんだから、丁重に扱いなさいよ!』

 

 うちはエスプリの身体を負担をかけないようにイッセーに託す。イッセーはそれを抱きかかえ、グッドサインで応えた。

 

「わかった! 頑張れよ!」

 

「当然!」

 

 うちの“堕天刀”とエスプリの刀の二刀流でマンティディーチ相手に時間を稼ぐ。その間にアゲーラ先生は着々と準備を進める。

 

「我が身は刃。敵を滅ぼす不滅の刃なり! “刀身変化”!」

 

 アゲーラ先生は自らの“究極贈与(アルティメットギフト)”刀身変化を発動させる。この権能はアゲーラ先生の肉体を刀に変化させるという権能で、アゲーラ先生の意志がそのまま宿ってるから並の“神話級”を上回るほどの力を秘めてるんすよね! 

 

 ────ザンッ! 

 

「ギシィ!?」

 

 うち達の振るう刀とマンティディーチの鎌が交差する。先程までは固くて刃が立たなかった鎌も、今はまるで豆腐みたいによく斬れる。

 

「まだまだ行くっすよ!」

 

 ギィン! ガギィン! ガギギィィンッ! 

 

 マンティディーチは超速再生で鎌を即座に再生させるが、うち等の前ではもはや意味をなさない! うち等はアゲーラ先生で次々と鎌を落とし、甲殻を切り裂く! マンティディーチはそれを見て随分慌ててる様子だ! 

 

『私が“核”を探してるから、ミッテルトはそのまま押し切っちゃいな!』

 

「了解っす!」

 

 “蟲魔人”には心臓となる核が存在し、その核を破壊すれば倒すことができる。うちはエスプリに核の捜索を任せつつも、甲殻を斬り裂くことでうち自身目視で核を探す。このまま押し切れば勝てる……そう思った矢先、マンティディーチは羽を羽ばたかせ、空高く舞い上がった。

 

「チィ、マサカオ、オレガ追イ、詰メラレルトハナ。コウナッタラ奥の手ダ!」

 

 マンティディーチはそう言うと自ら核を引きずり出し、鎌で核を突き刺した! 瞬間、存在値が一気に跳ね上がり、鎌も赤く、禍々しい形態へと姿を変えた! 

 

 ガァァァァァァァァァっッ!! 

 

 マンティディーチは雄叫びを上げながら、虚空を斬り裂く! すると、その鋭すぎる刃が鎌鼬を起こし、うちにまで届かせた! 

 

『あれは……“暴走強化状態(オーバードライブ)”。気をつけなさいよ。アピト様とかは完璧に制御できるけど……あれは完全に獣に堕ちてる。でも、力も速さも数倍に跳ね上がるわよ』

 

 エスプリの言葉を証明するかのように、マンティディーチは即座に距離を詰め、うちに攻撃をする! うちは何とかそれを見切るもすぐに次が来る! 

 

 カギィン! 

 

「くっ!」

 

 何とか持ちこたえたっすけど、凄まじい衝撃で腕が痺れる。なんて馬鹿力っすか。うちはマンティディーチに攻撃を放つ。だけど、マンティディーチはそれを数倍に跳ね上がった速度で躱し、逆にうちを追い詰めるような動きを見せてきた! さっきまでとは戦法がまるで違う……本能的になってる分、直感的な動きが多くなってて凄くやりづらい! 

 

 ブゥンッ! 

 

「うおっ!?」

 

 距離を離すとマンティディーチは脱皮をし、古い甲羅を崩してぶん投げてきた! まるで流星群のようなそれは破片の一つ一つに魔力を帯びさせてるらしく、魔力感知も難しい。

 

 ドガァンッ! 

 

「がはっ!」

 

 うちが甲羅の破片を弾いていると、後ろからマンティディーチが猛烈なタックルでうちを吹き飛ばしてきた! 

 

(マズイっすね……)

 

 このまま押し切られれば敗北だ! でも、うちは絶対に負ける訳にはいかない! うちが負けても他の人がいるから大丈夫かもっすけど……。

 

(イッセーがうちを信じて見てくれている!)

 

 うちはチラリとイッセーの方を見やる。イッセーはうちのことをじっと見つめており、その瞳がうちを信頼してくれていることを雄弁と物語ってくれていた。

 

(こんな所で負けるようなやつがイッセーの隣で戦うなんてできるはずないっすからね!)

 

 決めた! こうなれば意地だと! うちは意地でもコイツに勝つために勝利の糸口を探る! エスプリのお陰でどんどんエネルギーも高まってるし、やってやれないことはないはず! うちはエネルギーを高め、気合を入れ直した……その時だった。

 

『いい心掛けです。ならば、力を授けましょう』

 

「え!?」

 

 なんか変な声が聞こえた気がする。まあ、幻聴なんでしょうけど、何故だが心地よい感じがする。うちはその幻聴に身を委ねることにした。

 

『なっ、何!? ミッテルト、凄く力が上がってるわよ!』

 

『ほう? このタイミングで覚醒するとは……随分と運のいいタイミングですな』

 

 か、覚醒!? このタイミングでっすか!? 

 確かに、うちも驚くほどの力が湧き上がってくるのを感じる。負ける気が全然しない! うちの耳に世界の言葉が響く。今なら何でもできる気がするっす! 

 

『確認しました。個体名ミッテルトのユニークスキル“思慕者(オモウモノ)”と“見栄者(カザルモノ)”を統合────成功しました。個体名ミッテルトが究極能力“月麗之王(エリミエル)”を獲得しました』

 

 

 

 

 

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 三人称side

 

 

 

 

 

「ギシィ!?」

 

 

 暴走状態にありながらもマンティディーチは困惑していた。突如としてミッテルトの力が跳ね上がり、本能的な脅威を感じているのだ。

 ミッテルトは元来、覚醒するだけの素地は持っていた。あと重要なのはキッカケだけ……それが命を懸けた闘争と負けたくないという対抗心だったのだ。

 コカビエルとの戦いでミッテルトは死にかけ、そこから生き延びることで徐々に力を蓄えていたミッテルトはマンティディーチという強敵との戦いと、エスプリとの統合により“超級覚醒者”の力を自ら体感したことでその力をモノにすることに成功した。

 もっとも、これにはエスプリとの融合を通じ、“大いなる意思(シエル)”と“魂の回廊”を繋げることができたことも一因している。

 だが、究極能力に関して言えば彼女が覚醒できた時点でシエルの手伝いがなくてもいずれは獲得できていたかもしれない。それほどまでに、『イッセーの隣で戦いたい』という彼女の純粋な思いは強かったのだ。

 彼女が獲得した“天使系”究極能力“月麗之王(エリミエル)”は『神霊覇気、超速思考、霊子操作、空間操作、万能感知、月の光』という権能を有している。

 “月の光”は支援系の権能であり、聖属性と魔属性の力を持つ者の力を増幅させる効果を持っていた。片方だけでも効果は絶大だが両属性を持つものへの支援力は凄まじいものとなる。ミッテルトは堕天使であり、聖魔両方の属性を持つ。さらに、ミッテルトに憑依しているエスプリや、刀となっているアゲーラもまた、この権能の対象内なのである。

 

『うわっ! すっごっ! ナニコレ!? 目茶苦茶力が上がってるんですけど!?』

 

『これがミッテルト嬢の心の形ですか……流石ですな』

 

「お褒めにお預かり光栄っすよ! さあ、とっとと敵を倒しましょう!」

 

 今のミッテルトはアゲーラ、エスプリと合算することで350万を遥かに超える絶大な存在値を獲得していた。更に、“霊子操作”による無詠唱“霊子崩壊(ディスイテグレーション)”もバッチリだった。加えてミッテルトの“堕天刀”もミッテルトの進化に呼応し、“神話級”の聖魔刀へと至っていた。

 今のミッテルトから見れば、マンティディーチなどもはや敵ではなかった。

 

「喰らうっす! “崩魔八重桜・八華閃”!」

 

「ギシィ!?」

 

 放たれた奥義は“核”ごとマンティディーチの全てを斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

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「喰らいなさい! “魔蟲虚玉崩(ホロウインセクター)”!」

 

 ラーヌは数多の蟲が一つになったかのような歪な宝玉を作り出す。星すらも砕くほどの力を込めたそれをルミナスに向かって容赦なく放った。恐らく直撃すれば、ルミナスをも殺すことができるだろう一撃だ。……直撃すれば、だが。

 

「フン、この程度で妾を倒せると思うなよ。“聖域の衝突(サンクチュアリブレイク)”」

 

 ルミナスはラーヌの創り出した宝玉を鋭い蹴りで打ち消したのだ。これにはラーヌも目を丸くする。いかにルミナスが強力な魔王といえど、蹴りで打ち消すなんてできる技ではないはずなのだ。

 

(あれは……“霊子”? まさか、“霊子崩壊(ディスインテグレーション)”の力を纏わせてるというの!?)

 

 普通に考えれば有り得ない。ルミナスが神聖魔法の超達人といえど、全てを打ち消す“霊子崩壊”を身に纏わせるなんてできるはずがない。そうは思いながらも眼の前の現実に起きてるのだから認めるしかない。

 

(……ですが、長時間の持続はできないようですね。数秒程度でしょうか?)

 

 迫りくるルミナスに対し、ラーヌは慌てて武器である短剣を構えるが、それよりも速く、ルミナスがラーヌの身体を斬り裂いた! それは間違いなく“崩魔霊子斬(メルトスラッシュ)”であり、ラーヌの堅固な装甲や魔法耐性すらも打ち消すには十分な威力を誇っていた。

 

「どうした? その程度ではあるまい?」

 

「くっ、あまり調子に乗らないでもらえます?」

 

 ラーヌは羽ばたきとともに“死と破滅の鱗粉”を撒き散らし、ルミナスの動きを阻害しようとする。この鱗粉は相手を死へと誘う性質を持っており、“精神生命体”であろうが例外ではない。だが、ルミナスの究極能力“色欲之王(アスモデウス)”は生と死を操る権能であり、死へと誘う鱗粉もルミナスにとっては鬱陶しいだけの物にしかならなかった。

 

「喰らうがいい。“華麗煌嵐(イルミネートストーム)”」

 

 ルミナスの光がラーヌを一気に貫く。ラーヌは鱗粉を束ね、盾のようにするが、一撃一撃に“生死反転”の力が込められており、“死”に傾いた力を持つ鱗粉は瞬く間に無力化されていく。

 

(情報と違いすぎる……ルミナスはこれ程の力を持つ存在だったのですか?)

 

 ラーヌはルミナスの圧倒的な強さに驚いていた。ルミナスが師である神祖の最高傑作であることは知っていたが、それでもラーヌが事前に持っていた情報では、戦闘力だけで見ればルミナスと自分ならばラーヌの方が圧倒的に上だと自負していた。それは正しく、少なくとも“天魔大戦”の時点ではラーヌの方が格上だっただろう。

 だが、天魔大戦の経験はルミナスにとって大きな挫折の経験だった。自らの攻撃はダグリュールに一切通じず、忌々しき駄竜(ヴェルドラ)に助けられるという屈辱、何より自分の弱さ故に都を再び失ったことが、ルミナスはどうしても許せなかったのだ。

 だからこそ、ルミナスはこの十年で徹底的に己を鍛え直した。ヴェルドラ不在を見計らい、リムルやラミリスに頼み込んでの迷宮攻略。原初との模擬戦。ヒナタや黒歌との切磋琢磨。これらの経験がルミナスの戦力を大きく向上させ、現在のルミナスは以前とは比べ物にならない程の力を得ていたのだ。そんな今のルミナスの存在値は千五百万を記録しており、流石にダグリュールには勝てないまでも、以前のように蹂躙されることなく戦いを成立させることくらいはできるだろうというのが彼女の目算であり、それは正しい。今のルミナスは間違いなく()()()最上位の領域に片足を踏み入れている状態なのだ。

 それを認識したラーヌは考える。

 

(“暴走強化状態(オーバードライブ)”を使っても勝てるかどうかはわかりませんか……。これは不味い状況ですね)

 

 ラーヌは“暴走強化状態(オーバードライブ)”を完全に制御下に置いている。コレを使えば少なくともオーフィス、グレートレッドといった()()世界最強の存在すらも一瞬で屠れるだろうと自負している。だが、それを用いても眼の前のルミナスを倒せるかどうかはやってみるまでわからないというのがラーヌの考えである。この時点でラーヌは撤退を視野に入れていた。この慎重さは父から受け継いだ性質であり、ラーヌは死力を尽くしての勝利はごめんと考えていたのだ。

 

「がふっ!?」

 

「……あらあら、ロキ殿は難しそうですわね」

 

 その複眼で辺り一帯の戦況を把握。ロキはシルビア相手に追い込まれており、逆転の目などなさそうだ。カグチは一見カレラと互角に見えるが、ラーヌはそうでないことを見抜いている。ツファーメはティアマットの相手で手一杯。ディオ・ガーチュは既にウルティマに敗北している。メロウは……どうやら肉体は生命活動を停止させているが、魂は肉体に残留させている。精神生命体だからこそできる荒業だろう。もっとも、速く適切な処置をしなくては本当の死を迎えるだろうが……。

 

「ギシィ!?」

 

 そしてこの瞬間、我が子たるマンティディーチが敗北した。コレが決定打となった。

 

(さてと、撤退はいいですがどうやって逃げれば……)

 

 自分一人なら逃げられるだろうが、ロキはともかくカグチやメロウ、ツファーメといった戦力をこの場で失うのはあまりにも惜しい。イッセーとセラを攫うという任務も達成できてないうえ、相手側の打撃は0ときた。これは大失敗だと彼女は悟っていた。

 

(そもそも、マンティディーチは経験を積ませるためだけに連れてきたようなもの。私の中でも傑作の一つ。こんな所で失うなんて想定外も良いところ。ルミナスに原初……この者達さえ来なければ……)

 

 マンティディーチは紛れもない彼女の傑作。いずれは新生“十二蟲将“の中でも最上位に位置するだろうと考えていただけに、ここで失うのは不本意だった。だが、失ってしまったものは仕方がないと切り替えるしかない。今は戦力の被害を最小限に抑え、撤退するのが最優先である。

 カグチの権能、究極能力“火迦之王(ヒノカグツチ)”には“神気楼”という権能がある。これは、発動中自らから攻撃することはできない代わりにいかなる感知、探知をも無効にするという、“完全なる隠密能力(パーフェクトステルス)”であり、ある意味では“王宮城塞(キャッスルガード)”と似た力を持っているといえよう。この権能があるからこそ、カグチは誰にも気づかれずに天魔大戦の情報を直に収集できたのだ。だが、この権能は“王宮城塞(キャッスルガード)”のように複数人に適用することはできない。故に使わせてもカグチ一人しか逃走できないため、この場では意味がないと言える。

 

(仕方がありませんね……)

 

「ぬっ? なんじゃ?」

 

 ラーヌは自らの権能を開放する。

 究極能力“妖蟲之王(シャン)”。その権能の一つである“魔蟲創造”。この権能は自らのエネルギーを代償に“魔蟲”を生み出す創造系の権能であり、生み出される量産型の魔蟲は一体一体がBランク〜Aランク相当の強さを持っている。ラーヌはその権能を用いて数千万匹の魔蟲産み出した。

 数だけあっても真の強者の前には意味を成さないが、数千万ともなれば時間稼ぎ程度にはなるだろう。

 数千万のB〜Aランク相当の醜悪な魔蟲。これを見たルミナスは流石に嫌悪感で顔を顰めるのだった。

 

 

 

 

 

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 イッセーside

 

 

 

 

 

「マジかよ!?」

 

「これは……流石に不味いですね……」

 

 俺とゾンダさんはそのあんまりな光景に思わず白目を剥く。

 

 ワシャワシャワシャワシャ! 

 

 気持ち悪っ!? 何だあの蟲の大群! アピトの支配する森林フロアの蟲を遥かに上回る膨大な数の蟲が縦横無尽に辺りを蠢いている。しかも、ただの蟲ではなく、一匹一匹が凄く気持ち悪い見た目をしている! ゴキブリとかの比じゃない! そんなのが大量に這い寄ってるんだ! 流石に生理的嫌悪が半端ない! 

 

「キャア!?」

 

「ひ、ヒィ!?」

 

 見るとレインさんと黒歌の結界にも膨大な数の虫が這い寄っている。破られることはないだろうが、結界の中にいる皆からしても溜まったものじゃないだろう。

 ギャスパーなんか悲鳴あげて気絶してるし、部長も皆も吐きそうになっている。

 

「……流石に無理……」

 

「レイン樣!? 気を確かに!」

 

 レインさん!? レインさんが凄い気分悪そうにしている! 白氷宮という蟲とは無縁の場所にいたからこそ、蟲に対する耐性が鍛えられていないのかもしれない。まあ、耐性あったとしてもこれは無理か……。

 

「それでも原初の悪魔かにゃ! もうちょい気合を見せるにゃん!」

 

「いや、流石にコレは気持ち悪いですって……うぅ、吐きそう」

 

「それはこっちも同じだにゃん! にゃあああ!! 勘弁するにゃあ!」

 

 見ると黒歌も必死だし……。ここは俺もフォローすべきだな! 

 

「ありがとうございます! ゾンダさん!」

 

「ん? イッセー殿、何を?」

 

「皆を助けに行くんですよ! “禁手”っ!」

 

 俺は赤龍帝の鎧を纏い、一気に加速! レインさんと黒歌の複合結界に近づき、這い寄る蟲をドラゴンショットで弾き飛ばした! それを見たレインさんは少し驚いたように俺を見つめている。

 

「あれ? さっきギィ様形態使ってましたよね? 身体大丈夫ですか?」

 

「……正直キツイですけど、数分なら保ちそうです!」

 

 実際、完全に回復はしていない。“真紅の赫覇魔龍帝(クリムゾン・ジャガーノート・ダークネス)”はそれくらいヤバイ形態だし、ゾンダさんの回復も正直気休めだ。普段は数ヶ月くらい保つだろう赤龍帝の鎧も多分数分が限界だ。それでも、やれるところまでやるしかない! 

 

「まあ、これ、明らかに目眩ましですからね。多分、撤退するつもりなんでしょう。なら、問題なさそうですね」

 

 そう言いながら、レインさんは大気中の水分を集め、凝縮することで無駄にメカメカしい謎のライフルを創り出す。照準をゆっくりと蟲達に合わせ、躊躇いなく引き金を引く。

 

「消し飛びなさい! “崩撃粒子砲(デモリッシュカノン)”!」

 

 レインさんの極太の狙撃は放たれると同時に幾重もの光を放ち、そのまま千を超える蟲達を同時に殲滅した! 流石は“原初の青”だな。素で究極能力に匹敵する威力が出てそうだ。

 

「私も負けてられないにゃん。“魔仙火車”!」

 

 黒歌は黒い火車を放ち、縦横無尽に走らせる! あの火車は聖魔両方の属性を兼ね備えており、聖なる力で魔の力が強い蟲を容易く浄化し、浄化し損ねた蟲を魔の炎で焼き尽くしている! これは原初の悪魔でも防ぐことが困難な黒歌の奥義の一つ。究極能力持ち水属性のメロウには消化させられてしまったが、本来の威力が発揮されれば凄まじい技なのだ。

 

「……長くは保ちませんわね……撤退しますよ」

 

「ああ。わかった」

 

 ラーヌの言葉と同時に蟲達はラーヌ、カグチ、ツファーメ、メロウ、ロキの身体を包み込む。カグチ達はそれを確認すると武器を下ろした。

 

「折角面白くなってきたと言うのに、残念ね……」

 

「ふん、悔しいが今の私ではお前に勝てないということはわかった。こちらも力を蓄え、備えるとしよう」

 

「……本当に変わったわね。今の貴方、嫌いじゃないわよ」

 

「ふん、嫌味と受け取っておこう」

 

 ツファーメはメロウの半身を持ち上げ、蟲に紛れて姿をくらます。

 

「……悪いなカレラ。今回はお開きだ」

 

「……逃げるのかい?」

 

「ああ、そうさ。まあ、今回は兵藤一誠に不覚を取ったうえ、無様に生き残っちまったからな……何か代償は払わねえと……」

 

 そう言いながら、カグチは何かを思い切り投げつけてきた! な、何だ!? 

 俺は警戒しながらも飛び退き、地面へと突き刺さった何かを見つめる。それは“神話級”の剣だ。以前、イリナを斬り裂いた時に使ったものだなアレ……。

 

「俺の予備武器だ。まあ、対価には釣り合ってないと思うが、せめてもの気持ちに貰っとけ……じゃあな、兵藤一誠! 次会うときは決着つけようぜ、カレラ!」

 

 そう言い残し、カグチはスゥーっと姿をくらました。俺の感知に反応はない。カレラさんも探しても無駄と悟ったらしく、少し不機嫌そうにしている。

 

「やれやれ、やっと決着をつけられると思ってたんだけどね……まあ、切り替えるしかないか」

 

「そうだね。僕も不完全燃焼気味だし、折角だから蟲達にでもぶつけようかな?」

 

 カレラさんは腰のホルスターから“黄金銃”を取り出し、照準を蟲達に向ける。ウルティマさんも空高く舞い上がり、凄まじい魔力を込めている。

 

「滅ぶがいい! “重力崩壊(グラビティーコラプス)”!」

 

「死んじゃえよ。“破滅の炎(ニュークリアフレイム)”」

 

 カレラさんの拳銃から凄まじいまでの破壊の力が、ウルティマさんの掌から毒を帯びた死の炎がそれぞれ放たれる! その破滅的な破壊力により、蟲達は一気に死滅していく。

 残る蟲は数十万ってところかな? これなら一気に行けそうだ!

 

「イッセー! うちらもやるっすよ!」

 

「……おう!」

 

 いつの間にかエスプリ達と分離したミッテルトが俺の横にて剣を構えていた。ミッテルトは霊子を進化した刀に集め、天に翳す。俺も拳に残りのエネルギーを集中させ、圧縮させた! 

 

「“崩魔霊子突(メルトストライク)”!」

 

「“赤覇竜滅爆炎掌(ドラゴニックブレイク)”!」

 

 俺の爆炎を纏った拳とミッテルトの霊子を纏った刺突が宙で交差し、一つとなる! 

 

 “二重複合絶技(デュアルスキル) 赤龍崩魔爆霊突(ドラゴニックメルトブレイズ)

 

 俺と覚醒したミッテルトの二重複合絶技! 二つの技の相乗効果は計り知れない威力の爆炎となり、残り全ての蟲達に襲いかかる! 俺の解析能力からなる命中率補正とミッテルトの新たなるスキルの上昇効果により、俺達の技は周りに被害を出すこともかく、全ての蟲を殲滅することに成功したのだった────

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「イッセー! ミッテルト!」

 

「部長……うわ!?」

 

 蟲達の全滅を確認するやいなや、部長は即座に結界の外に出て、俺達に向かって抱きついてきた! うおっ! 流石のおっぱいだぜ! 

 

「よかった……イッセーも、セラも……本当に無事で……」

 

「うう、ごめんなさいなの……」

 

 セラも黒歌に抱き寄せられながら、申し訳無さそうにしている。セラはどうやらアイツラに関して責任を感じているようだな。別にセラのせいじゃないんだけど……。

 

「あっ、そうなの! お兄ちゃん、お父さんとお母さんが!」

 

「えっ!?」

 

 焦りを含めたセラの言葉に俺はハッとする。

 そうだ! 父さんと母さん! あのツファーメが言うからには無事みたいだけど、どこまで信用できるかわからない! 速いところなんとかしないと……

 

「そこは心配ないさ。イッセーの両親は私達が責任持って保護したからね」

 

「今はヴェイロンの奴に任せてるよ。トーカ達もいたし、取り敢えずは大丈夫じゃないの?」

 

 カレラさんとウルティマさんの言葉に俺はホッとする。ヴェイロンさんはウルティマさんの執事を長年勤めてるだけあってかなり強いし、トーカ達もいるのなら安心だ。

 

「……さてと、イッセー。改めて聞かせてもらうぜ。あんた等にもだ」

 

「……ええ、もちろんですよ」

 

 時を見計らったアザゼル先生に応えるため、俺はここでやっと肩の力を抜き────

 

「────あれ?」

 

「っ! イッセー!?」

 

 ふらつきながら倒れ伏した。全然力が入らねえ……いや、当然か。覇龍に加え、回復しきってもないのに禁手使ったもんな……。

 

『……すまん、相棒……俺も限界だ……』

 

 ドライグの言葉を聞きながら、俺はゆっくりと意識を手放すのだった。

 

 

 

 




オマケ1




黒歌side



「ねえ、ルミナス様」

「ん? 何じゃ?」

 気絶したイッセーを運ぶ中、私は先程の戦闘を思い返していた。
 そうすると、一つ違和感があった。私は思い切ってその違和感をルミナス様に尋ねることにした。

「あの時、なんでメロウを殺さなかったんだにゃん?」

 ルミナス様は確実に気づいていたはず。両断されたあの時点で、メロウは確実に生きていた。まるでゴキブリのようなしぶとさだけど、生と死を操るルミナス様ならば気付くのは容易だし、簡単に滅ぼすこともできたはず……それなのに、何故ルミナス様はメロウにとどめを刺さなかったのか……。
 すると、ルミナス様は少し悩んだような素振りを見せ、そっぽを向く。

「ふん、あの下郎……生きておったか。なら、貴様がしっかりケジメをつけるがよい」

 その一言で私は察する。ルミナス様はメロウを私が倒すべきだと考えているんだ。あの時、肉親を玩具にされ、その恨みをイッセーに託すことに私は悩んだ。できることなら自分の手でケジメをつけたいと思った。
 この人はそれをわかっている。だから、私にメロウの始末を託したんだ……。

「……やっぱりルミナス様は最高の主だにゃん」

「いきなりなんじゃ、気色悪い……とっとと行くぞ」

「はい」

 ルミナス様の後ろに控えながら、私は密かに決意する。メロウは私が必ず屠る……私の母を弄んだこと、後悔させてやるにゃん。





オマケ2
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お兄ちゃん大好き
おしゃれはよくわかってない(服は着れれば同じだと思っているの)









今回の話で「放課後のラグナロク」編は終わりです。
次章「物置部屋のテンペスト」編となります。
書き溜めがまだできてないので、取り敢えず現状出来てる数話だけ投稿する予定です。
お楽しみにどうぞ
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